起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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別腹の方がメイン、あると思います。

休載している間に温かな感想をいくつかいただきました。お返事はまだですけどすぐに目を通させていただいてます。いつもありがとうございます。
相変わらずストック少なめ進行なんですが、書けたら出していこうかな、と。不定期更新になりますが、よろしくお願いします。

それから、評価がまた増えましてトータル20件になりました。平均値も上昇して少し安心できそうな位置に。好評価いただきありがとうございます。


戻ってきたカフェテリア競走 別腹杯

 

 拘束ベルトが緩められ、繋がっていたコード類も外されて装置から解放された。タキオン氏が何か話しに来るかと思っていたが、特に何もないまま今日の検査は終了となった。データは無事に取れたのだろう。

 

 医務室から検査着のまま来ていた俺には更衣室をあてがわれ、そこで一苦労しながら制服に着替えた。着替えが終わるまで待っていてくれた織田先生と共に、クルマで研究所を後にする。

 またそのうち追加の検査もあるでしょうと先生は言う。先ほどの検査でどういったことが分かるのか見当も付かないが、夢のような世界でまたあの女の子と会えるのなら、断る理由は俺にはなかった。

 駐車場から医務室建物の中を抜け、先生とは別れて玄関から出た。

 

「あっ、ドーロちゃん! やっと出てきたね」

 

 リズちゃんがこの暑い中待っていてくれた。耳と尻尾をピコピコ振りつつ木陰から出て駆け寄ってくる。

 

「もしかしてずっと待っていてくれたんですか? こんなに暑いのに。それに、授業はどうしたんです?」

「授業なら午前中が全部終わったところだよ。ドーロちゃんお腹空かせてるでしょ?」

 

 そういえば研究所を出た辺りからお腹も起きてきたのか少しずつ騒がしくなってきていた。

 

『きゅるきゅるぎゅるん』

 

 いつもの鳴き声が響いた。向かいに立つリズちゃんはその声を聞いて満足げな笑顔を見せている。俺の腹の虫が鳴るのはそんなに嬉しいことなのだろうか……。ともあれお昼を食べに行かないとと彼女が急かすので、二人静かに走って学園のカフェテリアを目指す。

 

 カフェテリアの入り口は既に長蛇の列。この分だと結構待たされそうだが、ちょっとずつ大きくなる腹の声のせいで、周りの生徒達が俺の存在に気づき始めた。俺を中心にして動揺みたいなものが広がっていく。ひそひそと話す声も聞こえてくるが、感度良好動きも良好になった俺の耳はそれらを余さず捉えていた。あんまり良い噂話ではないだろうと腹を括り、目を瞑って聞き耳に集中してみると……

 

『あの娘だよ、美浦寮で寮の夕食一人で全部食べ尽くしたって』『昨日のお昼もここのカフェテリアの料理総ざらえしたって聞いた』『私傍で見てたけどおかずがまるで飲み物だったし』『オグリキャップ先輩の再来だーって騒いでる先輩がいたよ』『走りも凄いらしいね、よく食べるとパワーも凄いんだろうなあ』「ドーロちゃん、列動いたよ?」『高等部入学らしいけど既に模擬レース総ナメだとか聞いた』「あらまあ、ドーロちゃんにリズちゃん、こんな所に並んでたんですかあ」『ぎゅるるるきゅるる♪』『いっ!? なに今の音』「ルジェ先輩……列の前の方から下がってきたけど、いいの?」『おーあそこにいるの噂のヴェントドーロじゃねーか、こりゃ今日のお昼なくなっちまうかも?』「いいんですよ。ドーロちゃんリズちゃんと一緒に食べる方が楽しいですし」『列開いちゃったじゃん前進んでくれないかな』

 

 ん?

 なんか周りの声に交じってルジェさんの声が聞こえてないか?

 

 俺は慌てて目を開く。前にはやや焦った表情のリズちゃんが俺の方を見て何かを訴えてる。時折横にぶれる彼女の視線を追うと、その方向にはルジェさんがにこやかに立っていた。というか列の前がかなり開いてしまって、後ろの方から怨嗟の声が上がっている。とりあえず3人慌てて列を詰めた。

 

「すみません、目を瞑っていたもので列が進んでいるのに気がつきませんでした」

「まあ、ドーロちゃん何か考え事でしょうか?」

「いえ……少し耳を澄まして周りの音を拾っていただけですよ」

 

 言葉に合わせて耳をピコピコ動かしてみる。

 

「わぁっ。ドーロちゃん耳動いてる」

「本当ですねえ。いつの間に治ったんでしょう?」

「えへー。今朝医務室に呼ばれて検査を受けてからです。合間に少し練習していたら動かせるようになりました。

 まだちょっと思うとおりにならないところがありますけど」

「良かったねぇ。リズとっても心配してたんだよ」

「ありがとうございますリズちゃん。でもこれでもう安心です」

 

 リズちゃんが本当に嬉しそうな笑顔を見せる。

 

「あとは走りの方だけですねえ。そちらはさすがにじっくりやるしかないのでしょうけれど」

 

 ルジェさんもいつもの微笑みを見せてくれて、こちらも嬉しそうだ。

 

 そんなやり取りをしていたら、いよいよ俺たちの順番がやって来た。トレーを持って料理を取っていく。腹の虫はさっきからもう待ちきれないのかキャインキャインうるさい。ワンコですかお前は。いや自分のお腹のことだが、なんだか自分以外の動物をお腹で飼ってるみたいな感覚なんだよな。

 そして今日のお昼もトレーの上におかずピラミッドが形成された。昨日は少し多くて一度には食べきれなかったので今日は若干控えめにしたつもりだったが、周りの生徒達にはかなり引かれていた。解せぬ。ルジェさんとリズちゃんはもうすっかり慣れてしまったようで、おかずピラミッドを見ても動じなくなった。リズちゃんが先陣を切って席の確保に向かう。

 

「ドーロちゃん、ルジェ先輩、こっちだよ」

 

 向かい合わせで3人分の席確保に成功したリズちゃんが、少し先のテーブルから大きく手を振っている。

 例によって周りの生徒がすっかり引き払ってしまっていて、そこに至る道筋だけ人のいない空間ができていた。そんなに人をバケモノ扱いしないで欲しいとは思う。ワタシフツウノウマ娘デスヨ?

 三人向かい合わせに着席したものの、会話もそこそこにバクバクと食べる。午後の授業まで時間もあまりない中で、量を食べるウマ娘は大変だ。俺ぐらい流し込むように食べるのならまだしも、リズちゃんなんかは人の倍ほど食べると言っても人の倍食べるのが速いわけではないし。

 食べ始めこそそんな事を考えてはいたものの、気がつくといつも通り一心不乱にご飯を掻き込んでいて、トレーの上が空になると同時に気持ちが落ち着いて正気に戻る。ルジェさんはとうに食べ終わってお茶を片手に俺の方をじっと見つめてにまにま笑顔を隠さないし、リズちゃんはまだ黙々と食事中。そして周りの生徒は俺たちを中心に距離を置く、食事終わりのいつもの光景(5時間ぶり3度目)が展開していた。

 

「ドーロちゃん。午後のご予定はレース授業でしたよね?」

 

 まだスケジュールが頭に入っていない俺は、ポケットからスマホを取り出してスケジュールを確認する。

 

「えーと……、そうですね。午後の時間全部、トラックで走行練習になってます」

「そうすると、わたしも近くにいますねえ。またサポートに出向きますから、フォームチェックとか必要があれば声を掛けて下さいね?」

「え?……あ、ルジェさんのチーム練習もトラックなんですね」

「そうですよ。それから、今日もゲート練習はあるんでしょうか?」

「それは表示されてないので多分ないと思います。でもルジェさん、良いんですか? 昨日もチーム練習放ったらかして私に付きっきりでしたよね?」

「昨日はトラブルがありましたので仕方がありませんでしたし、担当のサブトレーナーさんには同室の娘だからと訳をお話ししたら、快く送り出していただけましたので」

「練習の時、リズと併走しようよ。そうしたらいろいろ見てあげられるよ」

 

 リズちゃんがトレイの上をすっかり空にして、話に加わってきた。

 

「……そうですね。上手く走れなかった時、その方が安心ですよね」

 

 どうやら今回はリズちゃんがメイン、ルジェさんがサブで俺のコーチングをしてくれる流れになりそうだ。

 

 まだ時間が少しあるから甘いものはどうですかとリズちゃんが言い出して、残る二人も同意。俺たちは食後のデザート(別腹)をしっかりいただいてから、午後の授業、チームトレーニングへとそれぞれ出かけていった。

 




次回、兆し。
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