起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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リズちゃんのカラー絵を描きました。目次の方に貼り付けてます。前描いたのは一旦下げてます。ドーロちゃんとルジェさんは……もうちょっと待って。


Ondargento

 

「どうしたって言うのさ、トドちゃんゲートは得意中の得意だったはずだよね?」

 

 俺のゲート難は本気の本物だと彼女たちに伝えたとたん、プリ子ちゃんの不思議そうな声が返ってきた。他の4人も驚きから腑に落ちないと言いたげな表情に変わってこちらを覗き込む。

 

「……どうして、っていうのは自分でも分からないんです。とにかくゲートを見ただけでも心の底の方から恐怖が湧いてくるというか。

 ……前は得意な方だったっていうのはリズちゃんからも聞いてます。でも、ダメなんですよ、今はもう」

 

 俺だってあんな恐慌状態は二度と経験したくない。でも原因が分からない今その治し方も分からないし、治らなければレースに出ることだって適わない。

 あの時の様子を思い出すと今でも冷や汗が出るほどだが、俯いてなんとか堪えている。

 

「……その表情から察するに、なんかとんでもなく重い話になりそうだね……、拙いこと訊いちまったか」

 

 まさにプリ子ちゃんが今指摘した通りで、この件は暗い話にしかなりようがなかった。2班の全員が重苦しい空気に包まれる――

 

「ドーロちゃんのゲート難はきっと治りますよ。いえ、治してみせるんです」

 

 6人が一様に沈みきろうとしたその時、凛とした声が響く。俺も2班の皆もその出所に顔を向けた。

 

「オ、オンダルジェント……先輩……?」

 

 そこには普段とは少し違う引き締まった表情でこちらを見つめるルジェさんの姿があった。そして意外なことにプリ子ちゃんの態度にどこか(うやうや)しさが現れる。

 

「……ルジェさん」

 

 そう呟いた俺の顔を見るなり、ルジェさんの表情がいつもの柔らかさに戻った。

 

「遅くなっちゃいました。ごめんなさいねドーロちゃん」

 

 両手を顔の前で合わせてごめんねのポーズ。さっき一瞬とはいえ厳しい表情を見せていたのと同じ人とは思えない可愛さをふりまいて、その瞳は俺だけを捉えて2班の輪に加わった。

 ルジェさんが俺の隣に立つ。彼女の探る左手がそっと俺の右手を握ってきた。温かいそれが、ざわついていた心を徐々に落ち着けていく。……いや、それはすごくありがたいのだがルジェさん、人前でラヴを隠そうともしないのはどうしてですかね?

 

 どうやら2班の皆も異変に気がついたらしく、俺とルジェさんの絡まった手元に視線が集まっているのが分かる。そして一番の挙動不審に陥っていたのがプリ子ちゃんだった。

 彼女の顔は火が出そうに真っ赤だ。

 

「あっ、あっ、あのっ、先輩ッ!

 先輩はっ!……その……トド…じゃなかった…ヴェントドーロっさんとっ、い、いったいどんなご関係で!?」

 

 直立不動のまままくし立てるプリ子ちゃん。その姿は明らかに動揺していて、なおかつ俺とルジェさんの関係を盛大に勘違いしてるというか、疑っているというか。

 俺とルジェさんは寮で同室、ご飯とお風呂をご一緒するだけの仲だぞ? ……って、あれ、自分で言っていてちょっとこれは既に一線越えつつあるのでは? でもご飯とお風呂はリズちゃんもいるからセーフだよな、多分。

 というか今はまだ授業中だ。ルジェさんは部外者だしプリ子は大声を出してしまったものだから、騒ぎに気づいた2班以外の生徒と副教官が何事かとこちらを注視し始めてしまった。さらに悪いことに授業の主任教官が騒ぎを聞きつけこちらに向かってくる。

 

「そこ! なにを騒いでいますか!」

 

 怒気をはらんだ教官の大声には鍛えられたウマ娘から発せられる威圧がそのまま乗っているのか、俺たち2班はおろか教官との間にいた他の生徒達の身すら縮こまらせる。皆一様に耳をすぼめてしっぽを巻き込み嵐が過ぎ去るのを待つ中、ルジェさんだけは耳をピンと立て、泰然として構えたままいた。

 

「あなたは……オンダルジェントではないですか。2年生のあなたがどうしてここにいるのです」

「はい、ヴェントドーロさんの様子を見に来ました。昨日あのようなことがあったばかりですので」

「なるほど。それは殊勝なことですが、この時間あなたはチーム練習中では?」

「練習は休憩中なんです。ヴェントドーロさんの様子も見る限り大丈夫なようですから、すぐに退去いたしますので」

 

 ルジェさんがそこまで話すと、教官は授業の妨げにはならないようにと一言残し、踵を返して指導席に戻っていく。やれやれと胸をなで下ろす2班の面々だったが、一人まだ納得できてない人がいた。プリ子ちゃんだ。

 いつの間にか俺に目線が向けられていた。そしてかなりの敵意も。その様子に気がついたトスたんが、そっと俺に耳打ちしてきた。

 

「プリ子はさぁ、そこのオンダルジェント先輩を密かにお慕いしてるのさ。同じ高等部入学組で同じティアラ路線、そして中等部入学組の強い連中と肩を並べてティアラを争ってる。だからね」

「それが私に敵意を向けてくるのとどう関係が?」

「鈍いねぇ。そんな先輩に対してアンタが急接近してるわけだろ今。だからさ、嫉妬よ嫉妬」

 

 トスたんはそう言うが、どちらかと言えば急接近しているのはルジェさんの方だと思う。しかしとてもじゃないがそんな事を今ここで口走るわけにもいかず、俺はただ沈黙を守ってプリ子ちゃんの怨嗟を一身に浴びるしかなかった。まだルジェさんがこの場にいるから彼女が飛びかかってきたりしないだけだろうが、正直この状況は辛すぎる。

 するとプリ子ちゃんは俺を睨め付けたまま、ゆらり一歩、二歩とこちらに向かって歩みを進めて来る。そしてついに鼻先が触れ合うほどの近さで対峙した。まだルジェさんが俺の隣にいるのだが、それはもうこの際どうでも良いらしい。

 

「トド、アタシと勝負しな」

 

 ある程度予想はできていたが、なにもそんな事を今ここで言い出さなくて良いんじゃなかろうか。

 今のセリフはルジェさんにも聞こえていたはずで、何か反応はあるのかなと隣にいる彼女をちらっと窺い見てみたが、ニコニコといつもの微笑みを返すばかりだった。

 

 そうでした、ルジェさんはこう見えても結構脳筋なのだ。だから走って解決しよう(要約)というプリ子ちゃんの今回の申し出、ルジェさんからすれば至極当たり前の展開ではある。

 こうして誰も止めてくれないことが確定したので、俺とプリ子ちゃんの第2ラウンドはつつがなく執り行われることになった。……いや今授業中なんだけど、勝手にそんな事していいの?

 




次回、死力の果て。
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