起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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プリ子カワイソース……。

好評価をまた戴きました。ありがとうございます。なんとか2日更新ペースを維持していますが、また辛くなるかも……一応2話分くらいのストックを維持できてはいるのですが。


闘い終わって日が暮れて

 

 織田先生を前にして、今日もお騒がせしてすみませんと頭を下げた。先生は笑っていたけれど、わずか2日の間に2度も3度もここを利用する生徒はそうはいないだろう。

 こちら3人の沈み方とは対照的に、明るい雰囲気の先生から当時の状況を聞かされた。プリ子ちゃんとの競走、ゴールに設定していた400ハロン棒を過ぎてすぐに俺は足をもつれさせ、走っていたスピードのままダートに転がったという。

 自分で思っていた以上にスピードは落ちてしまっており、ゴロゴロと勢いよく転がった訳ではなかったそうで、コロンと1回転余りしただけだったらしい。なので目立ったケガはしておらず体力枯渇による一時的な意識不明という診断を受け、病室で回復を待っていたのが現在の状況だった。ただ、既に脚の筋肉痛が酷くはある。

 

「脚の方は筋肉痛ですね。普通に走れるようになったと言って急に使いすぎましたね。2日くらいは激しい運動を避けるようにして下さい。あとあまり揉まない方が良いでしょうね、揉み返しで余計痛むと思うので。

 それからお薬も出しておきますよ。湿布と塗り薬、どちらがいいですか?」

「湿布はちょっと……目立つので止めておきます」

「では塗り薬で。塗りやすいスチックにしておきますね……そうそう、話は変わりますが、今日抱えてきてくれたのはリズさんでしたね」

 

 は?

 いやそんな情報必要ですか? あ、リズちゃんのてっぺんから湯気が立ってる。

 

「そういえばプリ子ちゃんはどうなったんでしょう? 一緒に競走していたレプリケーションさんは?」

 

 これにはルジェさんが答えてくれた。

 

「レプリケーションさんの方も体力を使い果たしていましたよ。でも彼女は転んでもいませんでしたし、普通に走り終えたようですね」

 

 静かに坦々と答えるルジェさんの表情が今まで見たことのないくらい塩だ。おまけに刺さるくらい冷たい波動が漏れている気配がする。これは憧れの人相手にプリ子ちゃんが大いにやらかしてしまった感が半端ない。心の中でプリ子ちゃんに合掌していたら、織田先生から帰宅許可をいただいた。

 

「無事意識も戻られましたし、筋肉疲労以外には特に問題はなさそうですので今日は帰寮してもらっても大丈夫ですよ。お薬はナースステーションに用意してもらっていますから、帰りに受け取っていって下さいね」

「ありがとうございます。昨日今日と重ね重ねご迷惑おかけしました」

 

 俺がベッドの上で上体だけ起こした姿で再び頭を深々と下げると、先生はお礼なんて良いんですよといつもの調子を見せた。

 

 §

 

「……いたた……、腿上げすぎると結構痛みます……、いたっ」

「リズが支えようか?」

「いえそこまでは。大丈夫ですよ」

「それともまたわたしが抱っこしていきましょうか?」

「いやっ、ルジェさんほんとそれだけは勘弁して下さい」

 

 外はまだ明るい時間帯だった、とはいえ授業はとっくに終わっている時間。例によってルジェさんの練習は大丈夫だったのか尋ねてみると。

 

「ドーロちゃんより大事なことなんてありませんから」

 

 あ……ハイ、尋ねるだけムダでしたね。

 ……ホントに大丈夫なのかな??

 

 よくよく話を聞いてみると、年間予定としてはオークスが終わったところ。次の目標レースは9月頭まで間が開くそうで、7月からの2カ月間は夏合宿があるけれど、6月頭のこの時期はややゆったりとしたスケジュールなのだそう。

 

「シニア級を走る方々はもうすぐ宝塚記念ですから、追い込みの真っ最中ですけれど」

 

 そう静かに話すルジェさんの横顔は、なにか遠くを見ているようなそんな顔つきだった。

 

 寮へ戻る前に、リズちゃんの案内で運動系教官室に立ち寄った。先ほどの授業で主任教官だった先生から事情聴取を受けなければならないらしい。

 

「失礼します。高等部1年E2組のヴェントドーロです」

 

 すっかり慣れた教官室、そしていつもの位置から茶色のウマ耳がぴょこんと出迎える。昨日今日とお世話になった教官だ。

 よくお世話になるからそろそろ名前を確認しといた方が良いのかも知れない。

 

「来たわね。ヴェントドーロ、ケガはどうでしたか?」

「筋肉疲労はかなり残っていますが、ケガはなく大丈夫と織田先生が」

「そう、それなら良かったわ。こっちの相談室に来てもらえるかしら? 付き添いの二人も入ってちょうだい。先ほどの経緯を聞くわ」

 

 コンクリートの壁に囲まれた6畳ほどの個室に通された。ドアもしっかりと厚みがあって、閉めると耳が少し圧迫感を感じるくらいに音が遮断されていた。

 

「あら? 耳が少し絞られてきているわね。なにか恐れている?」

「いえそんなことは。この部屋がすごく静かだから、ですかね」

「ああ、この部屋は相談室ですからね。ウマ娘の聴力だとパーティション程度では聞かれてしまうので」

 

 気づかないうち耳に力が入っていたらしい。両手を添えて耳を揉みほぐす。

 

「面白いことをするわね。耳を手で揉むなんて」

「思うように動かないことがあってですね……あれこれ忘れていることが多すぎなんです」

「そう……まだまだ大変そうね。まあそちらに3人、座ってちょうだい」

 

 聴取の内容は、最後のトラック練習が始まる前に何が起きていたか、に絞られた。リズちゃんはその時俺の位置からは離れていて顛末を知らない。俺は当事者で、ルジェさんはちょうど隣にいたので一部始終を伝えることになった。

 

「つまり、レプリケーションが急に勝負を持ちかけてきたということね?」

「はい、勝負は400のハロン棒までの1200メートルと言っていました。でもすぐ直前まで彼女のドーロちゃんに対する態度は、どちらかと言えば好意的であったように思えたのですが」

「なにか変わった様子とか、あった?」

「生徒が騒いだので先生が注意をしに来ましたよね? あの騒ぎの発端がレプリケーションさんでした。わたしに対する問いかけでしたが……その……あまりにも大声で急でしたので、それで近くにいた生徒が驚いて騒いだのです」

「なるほど……。その、問いかけの内容は覚えていますか?」

 

 ルジェさんがそこで言い淀む。自身の事だけに話しづらそうだ。

 

「あの、それについては私が良いですか?」

「良いわよヴェントドーロ」

「あの時のプリ子ちゃんが問いかけた内容は、ルジェ先輩と私の関係性についてでした。『どういうご関係ですか?』と、それだけではありましたけど。ただルジェ先輩が言われた通り、かなり大声でしたので」

「急に大声が出たので周囲が驚いてざわついたということ?」

「そうですね。なにか思い詰めたような雰囲気もあったので、それが周りに伝わったのかも知れません」

 

 さすがにトスたんに耳打ちされた内容をここで話すことはできなかった。既にルジェさんはプリ子に敵意を抱いているのは間違いなく、それをここで出せば火に油を注ぐ結果になりそうだった。

 だからそれ以上ここで話す内容はなくなって、事情聴取は終わりを迎えた。

 




次回、ウマ娘の義務。
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