起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
まずい、マズイ、拙い。
なんとなく嫌な予感がする。昨日はされるがままになるしかなくて、結果かなりの痴態を曝してしまったわけだが今日は違う。しっぽはもう自在に動く。ルジェさんの櫛梳きから逃れるのは
だがウマ娘は洗いっこするものという先の会話と、今も思い出す昨日のルジェさんがなにかに耐えていた様子。あとドーロは元々しっぽが敏感だったというルジェさんの発言。しっぽ洗いが苦手であっても耐えなければならない、そんな強迫観念が頭をよぎる。
さり……さり……と毛を梳く音と共に、櫛先がしっぽの皮膚に当たる感覚。それはやっぱり鋭く脳天を突いてくる。けれど逃げ出すことはせず、昨日と同じくされるがままになってしまった。違うのはその感覚がまだ耐えられる範囲で収まっているということ。とはいえ気を抜けばやっぱり同じ結末が待っているのは確実で、今日もそのなんとも言えない感覚に対して俺は全身全霊で耐えている。耳には力が入りまくって絞りきっているのが分かるし、しっぽの方も細かく震えている。そしてなお拙いことにこの後本番のシャンプーがまだ待っているのだ。
そのうちに櫛梳きが終わった。なんとか耐えきったと安堵したのも束の間、今度は俺がルジェさんのしっぽを梳く番だ。リズちゃんのしっぽはルジェさんが梳くことになった。二人とも俺のように砂を被ったりはしていないそうなので、軽くで大丈夫だと思いますよ、とはルジェさんの弁だったが。
櫛梳きですっかり荒れてしまった息をゆっくり整えながら、こちらもまたゆっくりと、ルジェさんの銀に輝くしっぽを梳いていく。あらかじめ言われていた通り、砂っ気は感じられなかった。でもその代わり青みのある銀色に輝く毛並みが昨日にも増して美しい。先端の方から、徐々に付け根へ。梳き櫛は抵抗感のないまま滑っていく。3人とも無言のまま櫛梳きタイムは続くが、先ほどから俺のしっぽも誰かにいじられている感触がある。視線をずらすとリズちゃんがしっぽの先の毛で遊んでいた。
少し手を止めてしっぽを軽くふわん、ふわんと動かしてみる。リズちゃんがその動きに合わせて手を伸ばして捕まえに行く。その動きも表情もすごくかわいい。なんかこう、小動物的なかわいさというやつ? そのうちに両手でしっぽをハシッと捕まえられてしまう。少しジタジタと動かして脱出を図ってみたが放してくれないので、俺はルジェさんのしっぽに再び集中する。
櫛が付け根に近づいた。それまでほとんど動きのなかったしっぽがピクッと震える。やっぱりルジェさんも敏感だ。櫛通りは相変わらず滑らかなので、なるべく刺激を与えないように軽く梳いていく。そのまま付け根まで梳き終わったので声を掛けると、それはするりと俺の手を離れて行った。
そこから後は昨日と同じく頭の方から順番に洗っていく。
「耳は前に倒すのが良いんですか、それとも後ろに絞ります?」
「そこは横ですよねえ。リズちゃんはどうですか?」
「リズは前かな。あっ、でも前の方洗う時は後ろに絞るよね」
「だそうですよ」
要は耳にお湯が入らなければなんでも良いらしい。
耳を前、横、後ろと倒して頭を洗う。耳の付け根もしっかり洗う。ルジェさんの手が出てこないところ見ると、傍目にも危なげなくできているようだ。
シャワーで泡を流す。流しながら耳の向きを前横後ろと変えていくが、真っ直ぐ上からシャワーを浴びる分には耳が寝てさえいればどの向きにしてもお湯は入らない。問題は耳自身に隠れてしまう付け根ぐらいだろうか。その耳の付け根を流すのはどうしたら良いか正解が分からなかったので、まだ髪を洗っているルジェさんのやり方を見て覚えることにした。
ルジェさんの髪は腰の上ぐらいまで長さがあるので傍目で見ていても洗うのが大変そうだ。シャワーを止めてじーっと見ていたら反対側の隣にいたリズちゃんから声が掛かる。
「ドーロちゃん、どうしたの?」
「いえ、耳の付け根をシャワーで流すの、どうやったら良いのかなと」
「あぁそうだね、少し怖いよね。リズはこうやってるんだよ」
そう言って早速実演してくれた。シャワーを右手に持って近くから右耳の周りにお湯を掛けていく。どうしてもお湯が顔に掛かるので右目だけ閉じていたりと少し大変そうだ。耳穴の近くは左手を添えながら髪の間に残る泡をていねいに落としていく。
「こんな感じかな。耳の中に泡が残ってるといけないから、最後は濡れタオルで拭き取るんだよ」
ていねいに教えてもらったので見様見真似でとりあえずやってみた。耳の中まで生えている毛のおかげで、少しぐらいシャワーが耳穴の方に掛かっても、奥までお湯が入ってくることはないのが分かる。右の耳、左の耳と交互に手を替えて流していく。だんだんと慣れて来るとギリギリを攻めてみたくもなるもので、いい気になって流していたら何かの拍子にゴバッと水の音がして左耳の音が籠もってしまった。
「うえぇ……、やってしまった……」
何事も過ぎたるは及ばざるが如し。ぴぴぴぴっと耳を振ってみるがそんな程度で奥に入ったお湯が飛ぶわけもなく。
ドライヤーコーナーに綿棒があるからそれで吸い取ると良いよとはリズちゃんから教えてもらったけど、ルジェさんの洗髪がちょうど終わったのでそれも後回し。3人揃って泡モコになって体を洗い終え、いよいよ本日もしっぽ洗いの時間がやってくる。
「なんだか緊張します。さっき櫛で梳いてもらってる時もしっぽ本体に触れられると危なかったですから」
「危ないって、昨日みたいなふにゃふにゃになっちゃうって事?」
「……ありのまま言ってしまうと……、そういう事ですね」
リズちゃんのストレートな物言いのせいで俺の方が恥ずかしくなる。あー、昨日の痴態を思い出しただけで妙な気分になりそうだ。
でもルジェさんもなにかに耐えてるような雰囲気だったし、ウマ娘はみんなしっぽ洗いの時は多かれ少なかれあんな感じになってしまうのかもしれない。
それに先ほどの櫛梳きではなんとか耐えられた。昨日も最後の方はいじられても平気だったし、強烈に疼くような感覚はもうやってこないのかもと、希望を胸にしてしっぽ洗いに臨んだ。
ストック尽きたので次回予告はありません。