起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
ドーロちゃんの食べる量を再検討していました。とりあえず多少の齟齬はあったもののおおむね合ってるのでこのまま行くことに。
結論から言おう。さっき『しっぽ洗いはもう大丈夫』なんて言ってた自分がいたな? あれは幻覚だった。
体洗いと同様に泡もこもこで臨んだしっぽ洗い。少し刺さるような感触があった櫛梳きとは違い、ひたすら柔らかく撫でられる感触が続くそれはやっぱり耐えがたかったのだ。しかもだ、昨日のルジェさんよりも今日のリズちゃんの方が……上手い。……なにが、とは申せません、が……ぁ。
「や、やっぱり……ダメです……うぅ」
「えっ、逃げちゃダメだよドーロちゃん。まだまだだからねっ、がんばって」
いや、がんばってと言われましても、ですね。その、リズちゃんの指先なんでこんなに絶妙なんだ。……いやっ、まだこれっ、しっぽ本体の先の……ほうっ……なのに。
全身を震わせながら、ジンジンと脳天を、下腹を攻めてくる感覚に耐える。辛うじてしっぽを伸ばしたまま保ってはいるが、身体の方はとっくの昔に逃げだそうと藻掻いてる。それを理性で押さえつけていたのだが、その理性も既に怪しい。
「くは……っぁむっ……うぅ……」
お風呂イスの上で身体を折りたたんで感覚に耐える。顔を膝の間に
「もう少しだからねっ」
リズちゃんが掛けてくれる声がする。その直後にもう一段強い刺激が突き刺さった。
「……!
……っあ、っは……ぁ……っ!」
意識がホワイトアウトする。全ての感覚が遠くに消え去って、そこにあるのは自らの拍動と呼吸だけ。その韻律もついさっきまでの昂ぶりが幻であるかのように凪ぐ。
そこに再び波を起こしたのはリズちゃんの声だった。
「ドーロちゃん、終わったよ。結構辛そうだったけど大丈夫?」
ハッと気がつく。俺は相変わらず膝の間に顔を埋めたままでいた。息はすっかり落ち着いていたが、今一度入れて身体を起こし振り向く。
少しばかり心配そうな顔を向けたリズちゃんがいた。
「もう大丈夫……ですよ」
多分微笑み返すことができた、と思う。息は落ち着いていても身体は大層疲れていて、俺としては微笑んでいたつもりでも、なんとなく身体からのフィードバックがいつもより希薄なせいだ。そのまま視線を落とすとすっかり泡の落とされた俺のしっぽ。リズちゃんの膝の上で伸びているそれを自分の意志を込めてゆるりと巻き取った。
§
大きな湯船にどーんと浸かる。俺を真ん中にして右にルジェさん左にリズさん。3人並んで湯船の縁に頭をもたせかけていた。
「ん~~~~~~っ。やっぱり広いお風呂は最高です」
両の手を組んでぐいーんと背中を上に伸ばす。
「あらあら、昨日はシャワーで良いですか? なんて言っていたのにえらく変わりましたねえ」
「むう。それは言わないで下さいよ」
昨日は恥ずかしさが先に立ってしまって、女の子と一緒にお風呂とかとてもじゃないけど俺の何かが耐えられる気がしなかったが、わずか1日にしてもう馴れてしまった。必要以上に敏感だったしっぽのせいで、なにもかも吹っ飛んでしまったというのが大きいが。
それにしても、昨日にも増してこのお風呂は心地よい。
目覚めるとそこは更衣室だった。視界を時折白い物がゆっくりひらひらと舞って、そのたびに優しい風が頬を撫でていく。
そのひらひらを目で追いかけていくと透き通るような白い手が現れて、さらにその先には少し赤らめた頬のルジェさんが穏やかな表情を作っていた。ルジェさんの視線は少し先の方にあって、俺が目を開いたのには気づいてない風だ。
「あの、ルジェさん?」
声に反応してひらひらがぴたり止まった。それは白い
「ああ、ドーロちゃん起きましたかあ」
「あの、私どうなったんですか?」
「湯船で眠っちゃったんですよう。そのまま沈んじゃいそうだったので、リズちゃんと二人で引っ張り起こしてここまで運んできたんです」
ルジェさんの表情はあくまでも柔らかく微笑むだけだったが、昨日今日と何度目かのやらかしに、俺の頬はまたもや火が出そうなくらい熱くなる。
「す……すみません。なんかもう何度も何度もやらかしてしまって」
「今日のドーロちゃんは大活躍でしたからねえ。疲れているのですし、これくらいはやらかしなんかじゃありませんよ。
それにこうやってお世話できるのでわたしは嬉しいんです」
今日何度目かになるルジェさんの優しい笑顔が咲く。菩薩って言葉はきっと彼女のためにあるんだろうなと、その姿はそんなことを思わせてくれる。
「顔が火照っていますねえ。まだ暑そうですからもうしばらく
再び団扇がひらひらと舞い始めた。
いや、熱くなったのはルジェさんのせいですからね。そう吐き出したい思いをぐっと堪えて、横たわったまま降り注がれるそよ風を堪能する。
日中の疲れも相まってそのまま蕩けていたら、近づく影がもう一人。
「あっ、ドーロちゃん起きたね」
リズちゃんだった。
横になったまま返事するのも不躾だとは思ったものの、そよそよと絶妙な加減で火照りを冷ましてくれる涼しさには抗えず、転がったままお詫びを口にした。
「リズちゃん。またもやお騒がせを……」
「気にしなくていいよ。ドーロちゃんあれだけ頑張ったんだからね」
そう言って見せる笑顔。こちらもまたルジェさんに勝るとも劣らない美しさだ。
美少女3人、お風呂場の更衣室で湯上がりの一時をまったり過ごしていたら、子犬の鳴き声のような音が響いた。
『きゅぅ~ん。きゅるる~ん♪』
ま た
これで6度目になる腹の虫の自己主張。猛獣のように唸る時もあれば、今みたいに甘えた風な声を出すこともある。
俺自身の意思とはあまり関係ない振る舞いを見せるそれは、やっぱり別の生き物なんじゃないかと思えたりもする。俺からすれば前触れなく急に割り込んで来られるし、いざ食事となれば身体の主導権を握られてしまうようで恐ろしさを感じる場面もあるわけだが、ルジェさんとリズさんにかかればそんな腹の虫も俺の可愛い一面らしく。
「まあ、本人は疲れていてもお腹は元気そうですねえ」
「早く食べたいって甘えてるみたいな声だね」
などと暢気なものだ。
ともあれ腹の虫が鳴いたら空腹感が湧き出てきた。今晩ももうすぐ夕食の時間が始まる。
次回、そのウマ娘の名は。