起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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GIRLS' LEGEND U 完全版がどうしても手に入りません。人類にはまだ過ぎた楽曲なのか?(自分の育成が下手なだけ)


美浦寮食リステッド競走 夕餉賞

 

「今日はどんなメニューがあるのかな?」

「リズちゃんの好きなものが出ていると良いですねえ」

『ぐきゅるるん。きゅるきゅ』

「まあまあ。ドーロちゃんもメニューが気になりますか? あなたはなんでもよく食べる優等生ですから、今日もたっぷり食べられると良いですねえ」

「いえあのルジェさん、私の腹の虫と会話しないで」

 

 お風呂から上がって一度寮室に戻り荷物を置いた後、再び食堂に繰り出した。

 お腹は数歩歩くたびにぎゅるぎゅるきゅるきゅるとうるさい。

 

 昨日より少し早い時間帯だったが、食堂には既に行列ができていた。昨日は行列なんてなかったはずだ。

 疑問に感じつつ列に並ぼうとすると、既に並んでいた一人が俺に気がついて声を上げた。

 

「……暴食……の、(きみ)……?」

 

 その声がきっかけとなってその場にいたウマ娘全員から視線が集まった。耳を澄ますまでもなく、そこかしこから噂をする声が漏れ聞こえてくる。

 

「ヤッバ、ヴェントドーロ来たよ……」「……うわー、早めに来といて正解だったわー」「後から来た()らはこりゃご愁傷様だねぇ。食べるもの残るかぁ?」「今日は何人前平らげるつもりなんだろ?」「聞いた? 今日のランチタイムも中々のもんだったって」「聞いた聞いた、トレーにうずたかく盛って、目を離した隙に空になってたって」「カフェテリアは食い気全開のがどれだけ来ても大丈夫だって聞いたことはあるけど、ここ寮食だよ? 限界ってあるよね?」「多分対処はしてるんじゃね? 知らんけど」

 

 相変わらず中々の言われようではある。たかだか普通のウマ娘の食事4人前の量食べるだけなのだが。

 

「大丈夫ですよドーロちゃん、昨日のうちに寮食の主任さんにお願いしておきました。すごくたくさん食べる子が一人増えたので、と」

 

 なるほど、普段から寮食の厨房に出入りしているルジェさんならではの解決策だ。でもそこでひとつ気がついた。

 

「今日は料理を作りに行かなくて良いんです?」

 

 そういえばもう夕食時だというのに、ルジェさんは俺と一緒に食べる方に並んでいる。てっきり今日も料理を作りに行くものと思っていたのだが。

 

「寮長さんからお願いされているのは週に1回か2回ぐらいなんです。毎日お手伝いできるほど、わたしも時間があるわけではないですから」

「なるほど。それもそうですよね」

 

 寮食は学園カフェテリアと同じく、専任の調理担当者がいてカフェテリア同等の美味しい食事を提供してくれる。カフェテリアと違って寮のみんなが同じ定食メニューを基本に食べるのだが、その内容は日替わりで飽きることは滅多にないのだとか。

 

「それでも時々生徒が料理を作るんですよね、ルジェさんみたいに。それってどういう意味合いなんですか」

「寮長さんが言うには、寮食の料理が完璧すぎて逆に物足りなくなってくるとか。それからやっぱり家庭料理の味付けじゃないんですよねえ。プロの料理なので安定感はあるのですけれど。整いすぎている、といいますか」

 

 確かに外食は美味しいけれど、メニューが変わっても毎日となると飽きてくるのは確かだ。もちろんカフェテリアも寮食も、ウマ娘の健康に配慮して栄養バランスも味付けも注意が行き届いているので普通の外食とは同じではないそうだが。

 

「それからもうひとつ。生徒の中には料理が趣味だったり、実家でいつも作っていた子がいますから。そういった人たちが腕を鈍らせないために志願してやっているという側面はあるんです」

 

 その視点はルジェさんに言われるまで気がつかなかった。俺は素直に感嘆の意を漏らす。

 

「そう言うわたしもその志願した一人なんですよ、実は」

 

 寮長に調理をお願いされつつ志願もしていたと聞き、昨日のミートボールの味を思い出す。確かに絶妙な火加減でたっぷりと美味しい肉汁を封じ込めたあの大ぶりなミートボール、ルジェさんの料理の腕はかなりのものだと確信できる。そしてそんな想像を巡らせていたら、お腹の虫がグゴゴゴゴと怒りに満ちた叫びを上げた。

 破滅的な鳴き声を辺りに響かせて、そしてその音のせいで他の生徒からは目立って距離を置かれる中、俺たちが料理を取る順番がやって来た。

 

「おや、ルジェントちゃんじゃない。いつも手伝ってくれてありがとうね」

「いえいえ、こちらこそお邪魔ばっかりでえ」

 

 料理を盛り付ける係のお姉さん、というには少々妙齢のヒト女性が親しげにルジェさんへ声を掛けてきた。

 

「この子が昨日言っていたドーロちゃんなんですよう」

「あらあこの金髪の子がそうなのね。スラッとしていて人の何倍も食べる子には見えないわねえ」

「いえいえ、それがそれが。昨日もあれだけ盛り付けたお食事を全部一人であっという間に食べきってしまいましたあ」

「きれいめな子なのに……、人は見かけによらないものよねえ」

 

 どうやらこのお姉さん()がルジェさんの言っていた主任さんのようだが、そのまま世間話モードに突入してしまった。配膳窓口はいくつもあるので列が滞るということはなかったが、話が盛り上がるルジェさんとお姉さんを尻目に、食事を受け取って流れていく他の生徒から受ける好奇の目が痛い。

 リズちゃんは先に食事を受け取って席を探しに行ってしまったし、ルジェさんはこんな調子なので一緒に立っている俺にもなかなか食事がやってこない。ずーっと待てをさせられているような状況に、ついに腹の虫の怒りが頂点に達した。

 

『う゛う゛う゛ぐぎゅるぎゅぎゅごごごぎゅん!』

 

 ひときわ大きく怒気を含んで吠えた腹の虫。その声は寮食一帯に響き渡り、その怒気に当てられたのか騒がしかった寮食中が一瞬で静まりかえる。ある者は料理に目を凝らせたままフリーズし、またある者はこちらに目を奪われたまま顔を歪めていた。

 向き直ると怯えたような表情を見せた主任さんがいた。その後に控えていた別のお姉さんからおずおずと差し出されたのは、食べ物で満載になった二段重ねの特別なトレー。どうやらこれが今夜の夕食らしかった。

 トレーを軽々と抱えてリズちゃんの待つテーブルへと進む。昨日と同じく向かう先へと人垣が割れて行く。

 

 箸を手にいただきますと一拝して、今日も注目を浴びつつ晩ご飯タイムが始まった。

 




次回、レジェンド級。
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