起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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この週末はGIRLS' LEGEND U 完全版が出せない出せないと大騒動しておりました。

結局無事に出たんですが、執筆はまったく進まず。次回更新が危ういです。


呼び出された

 

 3日目の朝はなにやら重い感じで目が覚めた。何かが俺の上に乗っている。

 

 部屋の明かりは全て消されているが、小窓から見える外の空はうっすらと明るさを帯びた群青色だ。その色は今がまだ夜明け前な事を教えてくれている。

 またルジェさんがベッドに潜り込んできているのかなと思いつつ視線を下の方に向けるが、乗っかっているのがなんなのか微妙に見ることができない。それではと顔を横に向けて隣のベッドを見やると……

 

(あれ? ルジェさんのベッド、布団が盛り上がってる……)

 

 では、今確かに俺の体の上には結構な重みが掛かっているのだが、その原因はいったい何か?

 ……まぁなんとなく分かってはいるのだが、これがオカルトの類でなければ。

 

 幸いにしてウマ娘のパワーで抱きつかれているわけではなく単に乗っかられていただけだったので、その誰かを起こさないよう慎重に掛け布団から体を引き抜く。さすがに少し動いたので、その時だけはなにやらムニャムニャ寝言を言っていたようだが。

 そしてようやく乗っかっていたモノの全貌が明らかになった。予想通り、リズちゃんだ。だがこれ、実はあんまり良くはないことだ。一昨日の夜に三人で話していて出てきた話では、消灯時間を過ぎてから翌朝の外出可能時間までの間、自室から出ているのは寮則違反になってしまう。この違反にはちゃんと罰則があるので、この事が寮長にでもバレれば騒動になるだろう。だからこそ昨日は朝練前にその外出可能時間まで彼女は自室で待っていた訳なのだが。

 

「どうしたものでしょうか、この状況……」

 

 いつの間にかリズちゃんにベッドの真ん中を占拠され、すっかり寝る場所がなくなってしまった。チェストの上に置いてある目覚まし時計の針はようやく4時半を回ったところで、夏至の近いこの季節でもまだまだ空は暗さが勝っている時間。もちろん寮室から出られるのはあと1時間以上も後だ。

 

 それにしてもなぜリズちゃんがこの部屋で眠っているのか。

 確か昨夜は夕食が終わったあとで3人揃ってこの部屋に集まっていて、いくらか話をしているうちにだんだん眠たくなったのだ。ベッドに腰掛けて話を聞いているところから記憶がないので、多分俺はそこで眠ってしまったのだと思う。

 

「つまり、リズちゃんは私が眠ったあとも自室に戻らなかったということですね」

 

 俺のことを好きなのは良いのだが、規則を破ってまで傍にいようとするのは拙いだろう。とはいえ対するルジェさんの俺への態度も少々、というかかなり熱心ではあるから、そこら辺もリズちゃんが焦る要因なのだろうが。俺としては既にどちらも大切なお友だちで、どちらかに絞れと言われてもすごく困る話ではある。

 

「できれば3人このまま仲良く行けたら一番なんですけどねえ」

 

 床に腰を下ろしてベッドにもたれた。目を閉じて一昨日のこと、昨日のことを思い出しているうち、俺は再び眠りに落ちた。

 

 §

 

「ドーロちゃん、ドーロちゃん。起きて下さいね」

 

 身体を揺すられて目が覚める。ベッドにもたれかかったまま二度寝してしまったようだ。

 

「……あれ? リズちゃんがいない……」

 

 薄目を開けると俺のベッドで眠っていたはずのリズちゃんがいなくなっていた。それに、部屋は既にかなり明るくなっていた。

 

「リズちゃんは自室に戻りましたよお。ドーロちゃんも起きて下さいねえ、もう朝ご飯の時間ですから」

 

 ルジェさんのその言葉に慌てて目覚まし時計を見た。午前7時半。言われる通りの時間になっていた。いっぺんに目が覚めて立ち上がる。

 

「すみませんルジェさん、朝練すっぽかしてしまいました」

「良いんですよ、昨日はすごくお疲れでしたから。それに、もうちゃんと走れるようにもなったんですから焦る必要もなくなりましたし」

 

 朝一番から慈母の笑顔が満開だった。彼女に促されるように俺は身支度を整えて、腹の虫に急かされるように寮食へ向かう。

 寮食では妙にツヤツヤ顔のリズちゃんと、例の2段トレーに山盛りの朝食が待っていた。

 

 §

 

 それは例によっていきなりではあったが、昨日の呼び出しに比べれば穏当にやって来た。

 

「ねえ、このクラスにヴェントドーロって人がいると思うんだけど。どこに座ってるのかな?」

 

 教室の戸口で手近な生徒に声を掛けていたのは背の高めな黒鹿毛のウマ娘。頭に白い小さなシルクハットを乗せていた。

 教室の視線がそのウマ娘に集まって、ざわつきが起こる。

 

 教室の比較的奥に位置する俺の席からも、その様子は良く見えた。隣に来ていたリズちゃんに尋ねる。

 

「私を探しに来てる? あれ、どなたでしょうか?」

「あの人はミスターシービー先輩だよ。クラシック三冠達成した」

「クラシック三冠……けっこう凄い?」

「凄いもなにも、学園が始まって以来3人目って聞いたよ。リズたちよりも大分年上のはずなんだけど、特別にまだここの生徒でいるんだって」

 

 ドーロの記憶があれば他の生徒たち同様に挙動不審になっていたかもしれないが、今の俺ではクラシック三冠と言われてもどうもピンとこない。いや、三冠王って言い方もあるぐらいだからなんとなくすごいとは思えるが。

 そんなことを考えているうちに、そのシービー先輩が俺の前に立った。

 

「やあ、キミがヴェントドーロだね?」

 

 にこやかに笑みを浮かべてはいるが、目は笑っていない。隠しきれないなにかが彼女の瞳の奥で燻っているのを感じる。

 こういう時は、こちらもできるだけ穏当に話を進めるべき、そう心に浮かんでくる。

 彼女の瞳を見上げて、静かに答えた。

 

「はい。私がヴェントドーロですけれど、何かご用でしたか?」

「ウチの会長さんがキミと話をしたいって言うんだ。今から来てもらっても良いかな?」

「……」

「……」

 

 教室は俺のアクションを待ち構えて静まりかえった。そこへ切り込むように言葉を発する。

 

「……分かりました。案内していただけますか?」

「良かった、断られちゃったらどうしようかと思ってたんだよね。それじゃ、ついてきて?」

 

 そう言ってにっこりと笑うと、踵を返し教室の外へと向かうシービー先輩。

 

 続いて立ち上がった俺を心配そうに見るリズちゃんに、大丈夫ですから、と一言残して先輩の後を追う。

 俺の知らない大先輩の登場に未だ静まりかえる教室は、もう遙か後方へと去った。

 




次回、差し向かい
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