起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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毎回感想を複数、そして好評価も新たに入れていただきまして評価の赤バーを維持できているのは本当にありがたいお話です。今後も若干不安定更新ですが懸命に続けていきたいと思います。


選抜レースに向けて

 

 今日の午後はトラックでの練習はなく、前半が目前に迫りつつあるという選抜レースの事前説明会、後半はジムで筋力トレーニングという内容だ。説明会は普段の教室ではなく大講義室で行われる、聞くところによると他のクラスとも合同らしい。

 講義室の入り口で出欠確認と資料を受け取り、空いている席へ。クラス毎に大きく区割りされているだけでどこに座るかまでは指定されていないが、既に後ろの方は空きがない。2班の連中は抜け目なく後ろの方で固まっていて、テトラちゃんが俺を見つけて手を振っている。俺はリズちゃんと二人横に並んで、まだ空きのあったE2組エリアの真ん中辺りに腰を据えた。

 

「大半の人は入学式でも見たことあるけど、一番入り口に近い方は知らない人ばかりだね」

 

 リズちゃんがそんな事を零す。そこで改めて資料と共に渡された席割表に目を通すと、入り口に近い辺りはDクラスと書いてある。

 

「Dクラスだそうですね。どういうクラスなんでしょう」

 

 すると俺たちのすぐ後ろに座っていた黒髪の娘が教えてくれた。

 

「Dクラスっていうのは中等部入学の人たちだよ。本格化が遅かったりとかで選抜レースがまだの子たちだね」

「詳しいね」

「小学校で同級だった友達がDにいるんだ。同じクラスの子らと走っても、なかなか勝てないっていっつもぼやいてる」

「そうなんですね」

「中等部からの子らってさ、小さい頃からクラブ入ったりして走りを鍛えてる子が多いんだよね。だから根性とか技みたいなメンタルは持ってるわけ。

 私たちと同じ時期に選抜レース走るからって、同じレベルだって思ってるとダメかもね。彼女らに本格化が来たらフィジカルが一気に伸び始めるから、そしたら元からあるメンタルと合わせてあっという間に上の方へ行っちゃうんだろうね。

 私たちももっと頑張らないとね。私も友達には負けたくないし」

「……」

「……」

 

 教えてくれてありがとうとひと言残して、俺とリズちゃんは再び前を向く。説明会が始まろうとしていた。

 

 それは想像もしていなかったハードな話だった。いや、実のところこの3日はそれどころではなかっただけだ。

 黒髪の子は軽い調子で話してくれたけど、現実としてそれに相対するのは紛れもなく今この場にいる俺たち、気を引き締めて掛からなくてはいけない。

 

 昨日や一昨日の授業練習にDクラスは参加していなかった。走行練習は各人の得意距離や走力を考慮して班が組まれていると聞く。そんな授業練習にDクラスが混ざっていなかったということは、DとEの差は俺たちが想像しているよりも既に開きがあるのだろう。

 

 そんな事に気づいてヤバいと感じるよりも、負けていられない、と思った。それは自分でも意外なほど自然に出てきた想いだ。強いと思われる者相手に臆することなく闘志が湧いて出る様子は、どことなく違和感がありながら、自分の意志として納得もある。矛盾を感じながらも腑に落ちているというなんとも不思議な思考の渦が、俺の脳内をぐるぐる回っていた。

 

 説明会は静かに進んで行く。このレースは学業で言ったら期末テストみたいなものだが、その成績が与える影響は期末テストなど比べものにならないほど重要だ。だからこの場にいる生徒は皆真剣そのものだ。レースで競り負けるのはまだ良い、それは自分の力不足だから。でもその他の部分で失格ということにでもなったら悔やんでも悔やみきれない。

 レースに参加する際の登録方法から服装、シューズのレギュレーションまで、各人に配られた資料とスクリーンに大写しにされたプロジェクター両方を使って説明は続いた。

 

 1時間弱に亘ってみっちり詰め込まれた説明会が終わった。申し込みの締切はこの週末を挟んだ月曜日のお昼まで。レースの本番は来週末金曜日と伝えられた。

 申し込みに必要な項目は参加希望するバ場の種類と距離、そしてもちろん自分の所属と名前だけというシンプルさ。

 だが困るのは俺の場合、これまでの記憶がないせいで自分の適性がほとんど分からないことだ。2班で一緒に走ったプリ子ちゃんたちが言っていた事によれば俺の適性は中距離らしいが、細かなところは分からない。関わりのあった人たちの意見を聞きながら最終決定するのが良さそうに思える。

 

§

 

「え? アンタの適性バ場と距離だって?」

 

 ジムトレーニングが終わった後、多分一番良く俺の走りを知っていると思われるプリ子ちゃんに訊ねてみた。だが表情は芳しくない。

 

「んー、まぁ確かに普段練習では一番近くで見ちゃいるけどさ……、正直ざっくりとしかわかんないよなぁ……」

「2班は2000メートルくらいが適性で集められてると以前聞きましたが……」

「……入学して最初にあった適性試走の話なんだよ、それ」

 

 彼女が言うにはその試走ではまず芝とダートでそれぞれ800メートル走って、どちらが向きそうか、それとも両方なのかを調べたという。そしてより有利そうな方で今度は1600を走り、距離適性を見たのだという。

 

「で、結局アタシとかアンタとか、あと2班の連中は芝の1600以上だろうって事で集められたわけさ」

「なるほど……そういうことがあったんですね。あれ? でもリズちゃんはどうして班が違うんでしょう」

「リズの場合は経験のあるなしがさらに加味されてるんじゃねえかな。ホラ、あの子は学外クラブで走ってた経験あるって聞いたし、その時から2000以上走ってたって話だからさ」

 

 プリ子ちゃんの話によれば、本格化が来る前はステイヤー適性……長距離の適性があったとしてもあまり長距離を走ることはないそうだ。身体ができていないうちに無理をすると故障が多くなるからだそうで、さらに

 

「クラブで走ってたって事と今の走りっぷりを見るに、本来ならリズは中等部からトレセンにいてもおかしくはないはずなんだけどな。詳しいことは聞いたことないから滅多なことは言えないが……、もしかしたら小学校の時にケガでもしてるのかもな。いや、これ本人には絶対言うなよ?」

 

 言いません言いませんと慌てて確約すると満足げな表情を見せたプリ子ちゃん。最後に「いっぺん教官に相談してみるのが良いんじゃねえか?」と残して彼女は去って行った。

 

 意外なところでリズちゃんの過去を知ってしまったが、俺の適性を知るという仕事はまだ終わっていなかった。

 




次回、大ダメージ。
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