起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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どうにも話の続きが書けなくなってお休みしました。申し訳ありません。

それから、今後レースが増えてくるのでリズドロルジェさんに2班メンバー以外にもネームドが出てくる流れに多分なるだろうと思うので、そこら辺をどうすれば良いか未だに悩んでいるシルバーウィーク。

思いつきのまま進めてきた報いが今ここに。


経験者現る

 

 3人並んで湯船の縁に背中を預け、今宵もまた(ぬる)めの湯に疲れを溶け込ませている。まだ3回目の大浴場だがこの巨大な湯船と高い天井、そして肌当たりの良いお湯は本当に身も心も安まる。

 今回のしっぽ洗いもやっぱり一悶着あった。どうも俺はしっぽが他2人よりも敏感のようだ。ルジェさんによると元のドーロ並の敏感さに戻っているらしいが、これが俺自身の普通なのだとすれば少し心配になるレベルだ。不意に触られたらいつでもどこでも腰砕けになってしまいそうで危険極まりない。

 

「服を着ている時は一番敏感な付け根は服の中ですからあ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよう?」

 

 今までのところは確かにそうだ、服がしっぽに擦れて変な気持ちになったことはないし。これからもそうだと本当に良いのだが。

 そんな心配事はさておき、良い塩梅のお湯にのんびり浸かっていると全てを忘れてしまいそうになる。だが、俺にはルジェさんに聞いておきたいことがある。

 

「そうだ、ルジェさんに聞いておきたいことがあったんです」

「はい。なんでしょうドーロちゃん?」

「私の選抜レース、どの距離で出たら良いと思います?」

 

 俺の問いにルジェさんはちょっとの間上目遣いで考えている様子だったが、答えはすぐに返ってきた。

 

「やっぱり中距離がメインなんじゃないでしょうかあ。今回なら2000メートル、ですよねえ。あとは最高速度が少し苦しいかもですけれどマイルですか。芝とダート、どちらも行けそうですけどどちらかといえば芝、なんじゃないかと思います。

 やっぱり足の使い方ですよねえ。つま先から滑らかに着地して、蹴りはあまり立てずに後ろへ送っていくような感じに見えますから」

「なるほどです。教官にも尋ねてみたんですけど今のルジェさんとほぼ同じ見立てでした。リズちゃんも同じ見立てで」

「まだ本格化が弱いみたいですし、今後パワーが付いてきたらだんだんと変わっていくと思いますけどねえ」

 

 教官、リズちゃんに続いてルジェさんも同じ見立て。メインは芝の2000、サブで1600ということで良いようだ。

 だがルジェさんは引き続いて心配そうに声を掛けてくれた。

 

「……でも、確か選抜レースではスターティングゲートを使いますよねえ。どうなんでしょう?」

「それについては解決策が出てきたので……、続きの話は寮室に戻ってからしますね」

 

 ルジェさんがやや腑に落ちないと言った表情でこちらを注視する。

 ゲート難の解決策は他の人に聞かれて誤解を受けても困る内容だ。だからルジェさんには心の中でひたすら謝りつつ、話をこちらから切り上げるしかなかった。

 

 そうこうする内に身体が温まって額から汗が垂れてきた。そろそろ上がりましょうと声を掛け、3人連れ立って浴場から出た。

 

「ふぅぅ~、涼しいね~」

 

 少し長めに浸かっていたせいか、リズちゃんの肌がいつにも増して赤く火照っている。汗もたっぷり出ていて体を洗った意味がなくなりそうなくらいだ。あまりにも汗が噴き出してくるせいか、ちょっと冷やしてくるねと一言残してリズちゃんはクーラーの前まで行ってしまった。残された俺とルジェさんはいつものようにお風呂上がりのケアを始める。

 この3日で分かったのは、ウマ娘はみんな暑がりだということ。俺もその例に漏れずで走った後は汗だくになる。お風呂の湯船が(ぬる)めなのも暑がりで汗っかきのウマ娘のために調整されている道理だが、それでも暑い季節にさしかかっているせいか結構汗が出る。

 今もリズちゃんほどではないけど、俺もルジェさんもその肌は汗でしっとりだ。

 

「ウマ娘ってみんな汗っかきですよね」

「そうですよねえ。夏場とかもう大変ですけれど、よく食べてよく運動しているから身体の代謝が良いんでしょうねえ。

 それに汗をかきすぎるとレースに出るとき困り事も増えてしまうのですよねえ……」

 

 汗かきがレースで困る、と言われてもピンと来なかった。それが顔に出ていたせいか、ルジェさんは続けて説明してくれる。

 

「G2までのレースなら良いんですけど、G1レースは出走するときに必ずメイクしなければならないんですよねえ。

 汗っかきだとメイクが崩れちゃって大変なことになるんですよう。わたしも先輩方から教えてもらってウォータープルーフとか色々試してなんとか抑えてますけど、それでもダメな人がいますから。そういう人は本当に大変そうです」

 

 なんだかその場で経験した事のように話すルジェさん。

 他にもG1レースでは髪やしっぽのセットも特別なのだそうで。

 

「前日までに自分でもきれいに整えてはおくのですけど、当日はメイクアップ専門の方が控え室の方にまでいらして完璧に仕上げてくれるんです。名の通った家の人だと専属がいたりするらしいですよ」

 

 メイクのことはまだ分からないことだらけだが、レース場にまで専属の人が来るというのは凄いことだと分かる。

 そんな凄いことをしている名家とはなんなのか、興味が出たので聞いてみると。

 

「有力なウマ娘が多く生まれる一族、みたいなものが確かにあるんだそうですよ。そういう所のウマ娘というのは名前の一部がその一族の名になっていることが多いそうです。そうですねえ、一番の名家と言えば『メジロ』とか。ここはすごいお金持ちでもあるので、先ほどの専属メイクさんのお話もそのメジロ家のお話ですね」

「そうなんですね」

「多く生まれる一族と言っても、親やその子供がみんな名ウマ娘というわけでもないらしいですけどね。親戚筋も含めて名ウマ娘が多くいるというお話だそうです」

 

 そこまで話が進んだところで、俺はあることに気がついた。

 

「……そういうお話ができるっていうことは……、ルジェさんって実はもうG1を走ったことがあるんですか?」

 

 その問い掛けが届いたとたん、彼女はちょっと驚いたような表情を見せた。

 

「まあっ、どうして分かっちゃったんですか? わたし、自分が出走してただなんて一言も喋ってませんよ」

「……いえ、その話しぶりはどう考えてもルジェさん自身が経験者じゃないと……」

「えぇ~、そうなんですかあ……? おかしいなあ」

 

 いや天然か。あ、天然だったわこの娘。そんなことを考えつつさらに話を聞いてみると、実はかなりすごい戦歴を持っていた。

 

「ひのふの……えーと、G1は3戦ですね」

 

 指折り数えたそれは、なんでもない事のようにあっさりと暴露される。

 さすがにこの3日で多少の知識が付いたので、俺でもレースのグレードくらいは分かるようになった。G1と言えば最高峰のレース。選びに選び抜かれた18人ほどが頂点を賭けて挑む競走だと。

 それをルジェさんは3回も出ているという。普段ののんびりした姿しかほとんど知らない俺にとって、それはまさに青天の霹靂とも呼べる事柄だった。

 




次回、たぶんゲートの特訓。
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