起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
……12とか11とかあるよ?
熱烈応援エール確かに受け取りました。これからもがんばって書いていきます(なお激遅進行)。
「実はね、ヴェントドーロさんのことは教務と医務の両方から話を聞かされているんだ」
開口一番もたらされたのは驚きだった。
俺はもちろんルジェさんもリズちゃんも、その場にいたトレーナー以外の3人全員が顔を見合わせるほどには。
「教務の方からは事実関係だけだけどトレーナー陣に対する一斉通知があったし、医務の方は医師の織田先生から直々にね」
「織田先生、ですか」
「それは……、もしかしなくてもハク先輩絡みで、でしょうか?」
「そうだね。ルジェントの言うとおり、ハクタイセイのリハビリトレーニングが非常に上手くいった手腕を買われたようだ。
……その様子だとヴェントドーロさんは織田先生のことを知っているのかい?」
「はい。3日前に記憶喪失と、おそらくそれが原因で走れなくなってしまっていたので、その治療を兼ねた指導を先生にはしていただいています」
「そうなんだね。それで経過はどんな感じかな?」
「走る方はほぼ治りました。クラスメイトに遅れることなくトレセンのダートコースを1周走りきれるようにはなっています。……ただ……」
「ただ?」
「記憶喪失と、あとゲート難がまだです、多分」
「多分というのは?」
「記憶喪失後のゲート経験が1回しかないので、治っているのかどうか分からないのです」
トレーナーは手を
「織田先生から来たのは、少々難しいことになったウマ娘がいるから手を貸してくれないかというお願いだったんだ。それが昨日の夕方で、昨日は他にも昼の内に教務から連絡が来て、そうしたら今度は夜になってルジェントから本人に会って欲しいとLANEが届いた。
急に話が複数から飛び込んできたものだから少々面食らっていたけど……、今ここでその全てが繋がったというわけだね」
彼はそのままの体勢でここまでの経緯をつらつらと語り始める。その終わり、瞳は俺を見据えて鋭く刺さった。だがその鋭さも一瞬だけ。
「……すみません。なにやら色々と大事になってるみたいで」
俺が詫びている間に、その瞳はすぐに温和な光に戻っていた。
「いやいや、君がそんなに恐縮することはないよ。
さてそれで。ゲート難については何か方策を織田先生から聞いているのかな?」
「そうですね。織田先生ではなく教官の方からですけど、週明けの月曜日から木曜日までの4日間、ゲートの特訓をすることに。
担当は織田先生にという話は伺っています」
「……木曜日まで……そうか、来週末は選抜レースだったね」
「そうです。この機会を逃すと夏休み明けまで選抜レースがないので、デビューが遅くなりすぎるだろうと教官からは言われました。
なので少しでもゲート難を解消して下さいと」
彼の眉が訝しげに皺を寄せた。
「うーん……、教務がそこまでするのは今まで聞いたことがないね」
「そうなんですか?」
「授業については教務の担当だけど、特定の生徒を特別扱いすることはないのが通例だよ。もちろん不得手があれば補習や課外授業を設定して対応することはあるけども……、それにしたって普通はグループ練習が精一杯だね」
ひとりだけ特別メニューというのは前例のないこと。トレーナーはそう強調する。俺から考えられるとすれば生徒会長の差し金くらいしかないが、それは憶測に過ぎない。それに会長との話を内密にしておくことは俺の方から申し出たことで、ここでそれを明かすのは筋違いだとも思った。
「……どうしたものかな……そうだ、一度僕の方から織田先生に特訓の詳細を尋ねてみよう。何か分かったら連絡するから、ヴェントドーロさん、LANE登録をお願いしてもいいかな?」
「それは構いませんけれど……良いんですか? トレーナーさんお忙しいのでは」
「まぁ忙しいのはそうだけど……。三方からそれぞれ話がやって来て、ここで収束した。そこには何か運命のようなものがあるんじゃないかと思うんだ。
……だけど少し時期が悪いかな、これは」
「というと?」
「選抜レース直前だからね」
「これがもう少し前だったら少々のことは問題なかったのだろうけど……、今はみんなピリピリしている時期だからね。いらない刺激は避けたいね。まぁその辺も絡めて織田先生と話を詰めてみるよ」
よろしくお願いしますと一礼した後、トレーナーとLANE登録を交わす。それで俺の話は一旦終わりになった。
続けてルジェさんのトレーニングの話に移ったのだが。
「さて、ヴェントドーロさんの件はとりあえず終わりだ。
ルジェント、お待たせしたね。今日のトレーニングスケジュールの詳細を渡しておくからこれでお願いするよ」
「わかりました。
……あのー、トレーナーさん。今日のトレーニングってわたしひとりでしたよね?」
「そうだね、ハクは安田記念の疲れがまだ残ってるからお休みだし。他のメンバーは別メニューだしね」
「それじゃ、ドーロちゃんと一緒にトレーニングしちゃいけませんか?」
「うぇぇ? ルジェさん、私ですか?」
前触れもなく巻き込まれて目を剥いていると、渋い表情をしたトレーナーさんからダメ出しされた。
「ルジェント~? それはダメだよ、ヴェントドーロさんはチームメンバーじゃないんだから」
「ええ~? ダメなんですかあ? 一人で屋内トレって淋しいじゃありませんかあ」
「トレーナー付きの
さあ時間も押してしまってるし、トレーニング行ってきなさい」
「はあい……」
心底残念そうで未練がましい表情をまき散らしつつ、ルジェさんは重い足取りでトレーナールームから去って行った。ドアが開いたときにミーティングルームから話し声が聞こえたので、他のチームメイトも徐々に集まってきているようだ。
これ以上長居も無用だと思って帰ろうとすると、白埜トレーナーがリズちゃんを呼び止めた。
「ところで、リーゾアラチェートさんは普段何を? ヴェントドーロさんの付き添いだと聞いたけども」
「リズはドーロちゃんのクラスメイトなの。ドーロちゃんは普段の生活とか練習とかで忘れてしまったことが多いのでサポートしてるの」
「なるほど、同じクラスということは君も競走ウマ娘なんだね。それじゃ選抜レースが近いよね? サポートだけじゃなくて自分の練習もちゃんとできてるかい?」
「うん、それは大丈夫」
「なら結構だね。選抜レースの走りっぷりを楽しみにしておくよ」
ニコッと笑ったリズちゃんに対して、トレーナーも笑みを返した。
「トレーナーさんも見に来るの?」
「もちろんさ。ああでも、僕はサブトレだからね、誰をこのチームに招き入れるのかまでは決められないんだ。上に推薦はできるけど」
「リズはね、ドーロちゃんと一緒のチームがいいなって。だから選抜レース、がんばるよ」
「そうか、その願いが叶うといいね」
今度こそさよならを伝えて、俺たち二人は<カペラ>のチームハウスを後にする。
ミーティングルームには3人ほどウマ娘がいてこちらを窺っていたけれど、特に何を言われる事もなかった。
次回、とんち娘。