起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
現在も次話を執筆中ですが……果たして金曜日に間に合うのか。(この話は水曜日更新)
スカーレットの絡みが見たくてマーちゃんをお迎えできましたが、公式でここまでやっちゃうのなら二次でも相当掘り込んだ事書いても(描いて)大丈夫だな、なんて感想を抱いてました。
チームハウスに来た時と同じように、傘を並べてリズちゃんと共に寮に戻った。
雨はまだ降り続いていたがかなり弱くなってきていて、遠くの空には明るさも見えて来た。ところが戻ってきたのは良いものの、今日の予定は全くの空白だ。
土曜日だから授業はないし、チームに所属していない身では練習場が自由に使えないのでダメ。外は止みつつあるとは言ってもまだ雨だから、走りに出るのも少し憚られる。
つまり授業の予習復習をして選抜レースの登録をしてしまえば、今日明日はやることが全然なかった。
例によって寮室まで一緒に来てしまったリズちゃんに訊ねてみる。
「ねえリズちゃん、選抜レースの登録はもう済ませました?」
「うん、昨日のうちにもう送ったよ。芝の2000と2400だね」
「じゃあ私ももう決めてしまいましょう」
スマホを操作して学園アプリを起動する。トップページの真ん中に『選抜レース登録』と派手に書かれた赤いアイコンがすぐ見つかった。タップして注意事項を読む。
この登録フォームから登録できるのは来週末の選抜レースに限られることや、月曜日の〆切時刻以降は出走レースの変更はできないこと。但しレースの出走取り消しはレース前日までできること。その他、適性に見合わない出走登録はしないこと等々と書かれた諸注意をスクロールさせて行った先、ページの一番下に登録フォーム本体が見えてきた。
リズちゃんが隣に来てスマホを覗き込む。
「フォームの一番上にクラスとドーロちゃんの名前があるのを確認してね、それからレースの日付も間違いがないか見てね。少し下にスクロールさせるとレース選択が出るよ」
リズちゃんの言うとおり、さらにスクロールさせていくと選択ボックスが現れた。ボックスは4つあるので最大4レースまではエントリーできるようだった。
「これね、最大で4レースまで登録できるらしいけど、そんなことする人っているのかなぁ?」
「どうなんでしょう。なかなかスカウトされないと、焦って無茶をする人も出てきそうな気がします」
「そんなことをしても余計に決まらないってリズは思うんだけど」
「あるいはどんなレースでも1着取れるって自信のある人とか」
「それは……もしかしたら、あるかも?」
そんなバケモノみたいな人がいるとも思えなかったが、ここは日本中から猛者が集まるトレセン学園だ。年度によってはそういうウマ娘が現れることもあるのかも知れない。
出走登録はここまで来るともう悩むこともなく、芝の1600メートルと2000メートルをそれぞれ選択。リズちゃんが見守る中、確認画面で決定をタップしてエントリーが完了した。
「完了と……、これでいいですね」
「ドーロちゃんは芝のマイルと2000だね。2000で一緒に走れるといいね」
「それではどちらか一人しかスカウトされないかも知れませんよ?」
「あっ」
もちろんそんな事はないのだろうけど、1着の方がスカウトされやすいのは明らかだろう。それに別の組になったところで、他のウマ娘が1着になってしまえば結局は同じ事。だから俺たちのやるべき事はひとつだけだ。
「ふふっ、冗談ですよ。でも組が一緒でもそうじゃなくても全力で走る、これだけは変わらない事かと」
「そうだね。じゃないとスカウトされるなんて夢のまた夢だよね」
お互い頑張ろうとエールを交わす。
おそらくリズちゃんには一発でスカウトが来そうな予感がする。対する俺はどうかといえばゲート次第の部分が大きいし、走りの方にしたって道中の駆け引きとか取り戻せていないことは山盛りだ。どう考えても俺の方がスカウトの来ない確率は高い。『お互い』とは言ったものの、頑張らなければならないのはむしろ俺の方だった。
『ピロン』
そんな事を考えているとLANEの着信があった。さっそく白埜トレーナーからかと思ったら、相手はルジェさんだった。
<ドーロちゃん、やっぱりジムに来られませんかあ? )
[今日は仲のいい人が誰もいないんですよう)
[淋しいですう)
別れてからまだ30分も経っていないのにと軽くショックを受けつつ、リズちゃんにも見せて考えを聞いてみる。
「やっぱり行ってあげた方が良いんでしょうか?」
「でもチームに所属してないウマ娘は練習場使用禁止だよね……」
「ですよねえ……、うーん」
しばらく向かい合って悩んでいたが、そうだと言ってリズちゃんが何かに気づいたようだ。
「練習しちゃいけないってトレーナーさんに言われたよね?」
「そう……言われましたよね」
「じゃぁ、練習しなければ良いんじゃないかな?」
「うぇ?」
「見学って形だったら叱られないかも」
「そうか、そうかも知れませんね。服もジャージじゃなくて制服にして」
「そうそう」
それならばと、まずはルジェさんに今から行きますとLANEを返し、返信を待つ間に制服へと着替えを始める。リズちゃんの手伝いで素早く着替え終わると、ちょうどのタイミングでLANEが返ってきた。
<来てくれるんですね! )
[レッグプレスしながら待ってますねえ )
文面から明らかにウキウキしている様子が浮かんでくる。湧いて出る苦笑を堪えつつ寮の昇降口へ急ぐと雨は既に止んでいて、雲の切れ間が青く覗いていた。
照り返す水溜まりを右へ左へと避けつつ、ジムの建物へ
上下に動くマシンの
「ルジェさん」
錘が下がったタイミングで声をかけた。ピッと銀色の耳が動き正確にこちらを捉えるとともに、目が合う。
「ドーロちゃん!」
俺を呼ぶその声は結構大きく響いた。思わず人差し指を唇に当てて、静かにしましょうとジェスチャーを送る。ルジェさんは手のひらを口に当てて、しまったと目を丸くした。
レッグプレスに腰掛けたままアワアワしているルジェさん、大声を出してしまったことが相当恥ずかしかったのか見るからに冷静さを欠いている。かわいいかよ。
周りでトレーニングしていたウマ娘たちは皆集中していたせいか大した騒ぎにもならず、俺とリズちゃんはルジェさんとすんなり合流した。
「遅くなってすみません。リズちゃんが知恵を出してくれたおかげです」
「知恵?」
「うん。トレーナーさんはね、『練習場を使った自主練はダメ』って言ったけど、『練習場に入っちゃダメ』って言わなかったよねって」
「あっ、言われてみればそうでしたねえ」
「だからこうして制服を着て、見学者という体でいる分には大丈夫だろうと」
その
ジムトレーニングはマシンを使う。その負荷を切り替えたりポジション調整したりを一人でやるのは案外手間が掛かるものだと分かった。特にウマ娘のトレーニングともなると錘の重さひとつにしても100キロの単位が普通に出てくるので、ちょっとした操作ミスが大ケガに繋がりかねなかった。中には一見してどう使うのか分からないマシンもあったりして勉強になる。
見学のつもりで来ていたのが、いつしか時間を忘れてサポートに、会話にと熱が入っていた。そんな熱中した時間をいつもの声が遮る。
『きゅ、きゅ、きゅ、きゅぅぅん』
まるで時報みたいな鳴き声がひときわ大きく響いて、俺たちの話し声では振り向きもしなかった周りのウマ娘が一斉にこちらを見た。集中した視線が恥ずかしくなり顔を伏せると、ルジェさんからの一言が助け船になる。
「まあまあ、今日もお腹の虫さんは元気ですねえ。12時でちょうどトレーニングも終わりですし、お昼食べに行きましょうかあ」
もうお昼? と驚いて辺りを見回すと、確かに壁の掛け時計は真上を少し過ぎた時分に届いていた。
次回、濡れたしっぽ