起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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月曜日の更新に間に合いませんでした……。(これを出したのは水曜日)

相変わらずあっちへふらふらこっちにふらふらと寄り道ばかりしている3人です。


カフェテリア競走プレオープン特別 葉隠ステークス

 

 土曜日のカフェテリアは学園の授業がなく、午後1時を回ってお昼を完全に過ぎてしまったこともあってかガラガラだった。鼻をくすぐる食べ物の良い香りに反応して、腹の虫が野太い声を発して蠢き始める。

 ここまでの道中では腹の虫はすこぶる上機嫌で、1歩歩くたびにきゅんきゅんぴいぴいとかわいい声を出していたはずなのだが、やはり食欲は本能なのか食べ物を目の前にすると()が出るようだ。

 

 配膳係のお姉さんに声を掛けて特別トレーを受け取る。そのまま配食コーナーに進んでいつものように料理を積んでいった。最後はご飯と汁物のコーナーだが、ここでも朝食に引き続いてお櫃が出てきた。どうやらこれからずっとこういう出され方をするようだ。

 

「お姉さん、予約席を使わせてもらって良いんですよね?」

「ヴェントドーロさんね? はいそうですよ、場所は分かりますか?」

「あの円い柱の陰でしたよね、窓際の」

「そうそう。その様子なら大丈夫そうね。スタッフでも時々迷うので、あそこは」

 

 カフェテリアの真ん中なのにスタッフさんでも迷う場所というのはどうなのか。やはりなにか不思議な力でも働いているようにしか思えない。

 

「それじゃルジェさん、リズちゃん、参りましょうか。迷うといけないので私にしっかり付いてきて下さい」

 

 普段ならリズちゃんが先頭を切って進むところだが、それでは目的の席にたどり着けなさそうな予感がしたので今回は俺が先陣を切って進む。トレーに乗せた料理の山で前が見づらいが、周りに人がいないせいでなんとかぶつからずに切り抜けた。最初はやはり少ないながらも他の生徒達の注目を集めていて、噂する声も聞こえていたのだが、予約席に到着したときにはその声も聞こえなくなっていた。

 

「着きました。ここです」

 

 振り返って2人が無事に付いてきているのを確かめて声を掛ける。直後にトレーをテーブルにドカンと置いたが、頑丈なそれは(きし)む音一つなく支えきった。続いてリズちゃん、ルジェさんが席に着く。

 

「……こんな場所、カフェテリアにありましたっけ?」

「私もスタッフさんに連れられて来るまで意識したことはなかった場所なんです。でも、あるんですよね確かに」

「ここね、本当に静かだし景色も良いし、お代わりも取りに行きやすいんだよ。すごく良い場所なの」

 

 キョロキョロと辺りを窺うルジェさん。その視線の先を追いかけてみるけど、先ほどまで俺たちに注目していた生徒の姿はなく、平穏なカフェテリアの光景が広がるのみだった。

 

「潮が引くみたいに周りから人の気配が消えましたね……カフェテリアの真ん中なのに、静かな森にいるみたい。でもこれならゆっくりとお食事を楽しめそうですねえ。ここ数日は周りが騒がしすぎて落ち着きませんでしたから」

 

 このところ食事のたびに起こっていた狂騒にはルジェさんも思うところがあったらしい。確かに食事のたびに周りは大騒動で注目を浴びせてくる。食事中は没頭して周りが見えなくなる俺はともかく、普通に食事をしているだけのルジェさんやリズちゃんからすれば周りが気になって仕方のない状況だ。それでも俺と一緒に食事を楽しもうと色々努力を重ねてくれているわけで、二人には本当に頭が上がらない。

 寮にはこんな場所がないから仕方がないが、カフェテリアだけででも静かに食事できる空間と時間が得られるのは助かる。あとは一心不乱に食べ尽くすまで止まらない俺の食べ方だけがもう少しおとなしくならないものか。

 

 そんなことを思っていたら、ルジェさんが何かに気づいたのか急に立ち上がって人を呼んだ。

 

「あっ、ハクせんぱーい!」

 

 手を伸ばして振る。それは彼女にしては珍しい行動で、視線の先には連れ立って談笑しながら歩く2人のウマ娘の姿があった。1人は焦げ茶色の髪を左サイドで一つ結わえにしている少し背が高めのウマ娘。その隣にはシルバーグレイの髪を肩の上で切りそろえた、先の1人よりは背が低めのウマ娘。そのどちらかが同じチームで白埜(しろの)トレーナーに指導されているハクタイセイさんなのだろう。

 ルジェさんの声が十分届く距離だと思ったのだが、2人はそれに気づくことなくカフェテリアを去って行ってしまった。

 

 残されたのは困惑した顔を見せるルジェさん。

 この場所は目立たない場所で見つかりにくいとは俺も感じていたが、こちらから声を出しても外の相手に届かないのは想定外だった。

 テーブルになにか仕掛けでもあるのか、それとも場所柄なのか。考えてもその謎は解けそうにない。

 

「きっとお話に夢中だったんですよ」

「……そう、ですよね」

「うん、あの様子ならたぶんそうだよ」

『ぎゅぎゅぅ』

「お腹の虫さんまで慰めてくれるんですね、やっぱりあなたはドーロちゃんに似て優しい子です。

 ごめんなさい。遅くなりましたね、それじゃいただきましょうか」

 

 両手を合わせていただきます。その直後からいつものように腹の虫が暴食の限りを尽くす、もはや普段通りと言って良い食事シーンが始まった。

 いやルジェさん普通に腹の虫と会話してたけど、それやっぱり何かおかしいから。

 

 §

 

 ランチを食べ終わってデザート(別腹)タイム。良く晴れた土曜日の午後、俺とリズちゃんは予定なし、ルジェさんもなしということで、ここ数日の内では一番のんびりとした時間が過ぎていく。

 

「周りの注目を浴びずにお食事できるのはやっぱり良いですねえ」

「……すみません……うちのお腹のせいで」

「ドーロちゃんが謝ることなんてことないんですよ。こういうのは見に来て騒いでる方がダメなんですから」

 

 紅茶を傾けながらルジェさんが静かに語る。リズちゃんはルジェさんの語りにうんうんと頷き返す。

 

 既に食後のケーキ(別腹)は3人とも5皿目に突入。とっくにカロリーを気にしないといけない領域にいるのではなかろうかとも思うが、誰一人としてそんな素振りを見せてはいなかった。デビュー前の2人はともかく、ルジェさんとか本当に大丈夫だろうか。というか他人の心配する前に自分の体重かとも思う。お風呂のたびに量ってはいるものの、今のところ増える気配はない。あれだけ食べたものがどこに消えているのか本当に謎だ。

 

 その5皿目もそろそろ終わりに近づいた頃、ルジェさんがとある提案を口にした。

 

「レースを見に行ってみませんか?」

 




次回、本物を見る。
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