起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
さすがにゼロから書くのは無理だと思ったので、本物の実況から文字起こししたものを参考にしつつアプリ実況風になるように加筆入れて仕上げてます。なのでウマ娘アプリ実況よりは『原作』の実況に近い感じに。
ファンファーレが鳴り響く中、モニターの中の彼女たちが徐々にゲートに向けて歩み始める。
それと時を同じく、場内には実況アナウンスが流れ始めた。観客席からはまたもや拍手が湧き起こる。
『さぁ、本日の第9レースはプレオープンの1勝クラス、八丈島特別。芝の1600メートル戦。
天候は晴れですが、未明からの大雨がまだ残っていまして芝のコンディションは重のまま。たった今ファンファーレが響いて発走時刻となりました』
『ダートの方はまだ不良ですからね。芝も相当重いんじゃないですかね』
『足元を気にすることもなく12人のウマ娘たちがスムーズな枠入りを見せていますが……少し嫌っているのは……2番ハイリアリストか。促されて今ゲートイン。
そのあとはまたスムーズな枠入りが続きます。最後に残るのは12番のソーンチップス』
12番のゼッケンを付けた焦げ茶色の髪をした背の高めなウマ娘がゲートの近くで他のゲート入りを待っていた。
インコース側2番のウマ娘はやや足元を気にする素振りだったが、それも束の間のことで結局はすんなりと収まる。それを見て12番が動き出し、全員がゲートの中へ。
『ソーンチップスが12番に収まって。ゲートインが終わりました。体勢完了』
スタートの瞬間、沸いていた観客席もこの時ばかりは一度静まりその時を待った。
モニターに映るゲートで赤ランプが灯り、その直後ゲートが開いて12人が一瞬で弾け出た。
遅れて耳に届いたその音は思っていたよりも軽く乾いた破裂音で。引き続いて伝わってくるのは24本の脚が奏でる地響きだ。
『スタートしました! 揃ったスタート』
自分がゲートに潜るのはダメでも、こうして他人が潜っているのを見ている分には大丈夫だ。その違いは一体どこにあるのだろう。
『――好スタート好ダッシュで3番テイクアナザーワンがハナを切りますが、交わして8番のアイザッキーが外側から出て行きます。早くも1馬身のリード。
2番手に9番ジャドプラーテ上がってきました。その内側7番のクラウテミスが3番手に付けて。並ぶ一番人気5番ポルカステップと位置取り争いの様相。その
マイル戦ということで駆け引きの場はあまり多そうではない。スタート直後の位置取り争いが終われば後は長い長い最終直線でのパワー比べになる予感がした。
「10番がいい位置ですねえ」
「そうなんですか?」
「外目ですけれど追い出されているわけでもありません。脚が残ればきっちり抜けられるんじゃないでしょうか。
でも東京の直線はとんでもなく長いですからねえ……」
『――4番は少し苦しい展開です。ここから巻き返せれば良いのですが』
前をふさがれた4番が逃げ道を探して左右を窺っている。だが出ることは叶わないようでそのままの位置で追走していく。
自分がこういう状況ならどうしたら良いか考える。他人のレースを見ることがとても勉強になる。
『――1200を切りました。1馬身開いて11番のサーティサンズ追走。最内から1番のフェローメイト中段の内側を行く、その集団に6番のモエザンエニシングが続きます。位置取り争いは一段落付いたか?
先頭はやや固まって、後ろはやや伸びた隊形で3コーナーカーブを回って行きます1000メートル切りました。ここまでのタイムは36秒ほど』
『やはり重いですね、後半厳しい展開になるかもしれません』
『6番から2馬身開いて12番ソーンチップスはしんがりから2番目の位置。最後方は2番ハイリアリストです。3、4コーナー中間地点にかかります』
『そろそろ仕掛けどころですね』
激しい先行争いになった序盤と打って変わって、3コーナーは坦々と過ぎていった。だがよく見るとみんな内ラチからは距離を置いて走っているように見える。
「イン側、空いてますよね?」
「こちらで見ているよりも芝の状態が相当悪いんでしょうねえ」
「ああ、なるほど。荒れた馬場に突っ込んでもスピードが下がって走りにくいだけ、と」
「そういう事ですねえ」
『――8番のアイザッキーが変わらず先頭をキープして1馬身のリード。9番ジャドプラーテ2番手につけ1馬身半差とちょっと開いたか。
4番キャンピングが集団の中3番手に上がってくる。5番ポルカステップと2人並んでいます。さらに外おっつけながら7番のクラウテミス。第4コーナー大外は10番のシャウトマイネームがじわり進出していきます。最内からは1番のフェローメイト空いた内を突いて前に迫ろうとする。
第4コーナーから直線コースへ向かいました。逃げます8番アイザッキー先頭! 内を開けて加速する態勢。その外9番ジャドプラーテ2番手で追いかける!』
『皆荒れた内を嫌ってますが1番が勝負に出ましたね。しかし今日は内も外も相当パワーが必要です』
『――さぁ最終コーナーを抜け各馬団子のまま府中の坂に挑みます! 先頭はアイザッキーこのまま逃げ切れるか!?
最内を狙って3番テイクアナザーワン坂の上りで追いついて追い比べ! 外は7番のクラウテミスだ!
っここで一番外から10番シャウトマイネームが一気に伸びた! 速いっ! 集団をまとめて交わして先頭に代わって残り200をまもなく迎えようとする! 10番のシャウトマイネームが先頭! 強い! 完全に抜けて独走態勢だ!』
集団が4コーナーを回って直線へ。地響きはいよいよ大きくなってこちらに迫ってくる。坂を駆け上がってラスト200メートル、全身泥まみれになりながらも尽きせぬ闘志をその表情に、脚に、全身に漲らせ、12人のウマ娘が突っ込んでくる。
その迫力か、それとも想いの強さか、フェンス越しにただ見ているだけな私の背中を遠慮なく逆撫でしていく何かがあった。
ぞわりとした悪寒のようなプレッシャーが目前を次々と猛スピードで横切る。
『――2番手は7番のクラウテミス! そして内から食い下がっている8番のアイザッキー粘る! さらに3番のテイクアナザーワン! これら2着争いに6番モエザンエニシングも加わってくるがもう一息か。
先頭10番のシャウトマイネーム、リードをキープしたまま今ゴールイン!
2着は7番クラウテミス、3着は3番、テイクアナザーワン! 結果の確定まで今しばらくお待ち下さい!』
スタンドの大歓声に迎えられてトップスピードでゴールを駆け抜けたウマ娘たちは、そのまま1コーナーを抜け2コーナーまでも駆けていった。
1着を獲ったのは10番のシャウトマイネーム。黒く艶のある長いしっぽを揺らす彼女の後ろ姿は、1コーナー終わりの遠くにあっても大きな存在感を感じさせていた。
次回、答え合わせ。