起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
好評価いっぱいいただきました、ありがとうございます。しばらくなかったので嬉しいですね。あと誤字訂正も。反映できる分は反映しています。ご指摘、ありがとうございました。
「どうでした? ドーロちゃん」
まだ背中に重さが残る中、ルジェさんが問いかける。
俺はすぐには答えられずに言葉を探す。だが上手い言葉も見つからず、出たのは月並みな一言だけ。
「……凄かった、ですね……」
ルジェさんはそれには続かず、ただにこやかな笑みをこちらに向けるだけだった。そこにリズちゃんが割り込んだ。
「1着の
「そうですねえ。どの娘もこのレースに賭ける想いは強かったと思いますけれど、1着の娘はとりわけ強かったように感じますねえ」
「……あのですね、12人がゴールに突っ込んでくるとき背中がぞわりと震えました。お二人もそんな悪寒というか、感じたりしましたか?」
俺の要領を得ない質問にリズちゃんが悩む。対するルジェさんは思い当たる節があるのかすぐに答えが返ってきた。
「悪寒ではないですけれど、感じるものはありました。10番の娘が特に強かったように感じられましたねえ。私の場合は尻尾を掴まれるような感覚なのですけれど」
「そういうことならリズも感じたよ。頭を押さえつけられるみたいな感じ」
やはり大なり小なり、何か感じるところはあるようだ。
「レースに出走すると、よりはっきり感じられると思いますよ。それは他のウマ娘の闘気というか、殺気というべきものかと思いますねえ。G1レースともなるとお互いが凄い気を発していますから。だから自分も出していかないと押し負けますよねえ。むしろそれくらい闘気を出せるようにならないと、G1では勝てないのかも知れません」
ルジェさんは既にクラシック級として桜花賞、オークスと2つのG1レースを戦ってきた。ジュニア級でも阪神ジュベナイルフィリーズを走っていると聞いたので、延べて3回ものG1出走経験者だ。そんな彼女が伝えてくれる心得は説得力が違う。
だが、今の俺から闘気など出せるのだろうか。
「ドーロちゃんのお顔が難しくなってる……」
「おそらく闘気とか出せるのか心配になっているんじゃないでしょうかあ」
「うぇっ!? そ、そうですか?」
全くルジェさんの言う通りなので図星を指されて挙動不審になる。すっかり
「あんまり特別なことではないんですよう? ウマ娘の闘気なんて単純なものです。『先頭を走りたい』とか、『勝ちたい』といった類のものですからねえ。
でも、そんな単純な想いをとにかく限界まで強くして強くして、そして突き抜けさせることなんですよ。大事なのはそういう限界を突破する気概の部分ですねえ」
なるほど分からないが?
なおも難しい顔をしていたのか、再びリズちゃんから「まだ難しい顔してる」とツッコミを受けた。
「走り続けて他のウマ娘と競り合い続けていればそのうち分かりますよ。それに一昨日の練習レースの時、確かにドーロちゃんの気迫を感じることはできましたし」
一昨日といえばプリ子と競い合ったときのことだ。俺自身としてはとにかくプリ子に追いつき追い越せと焦るばかりだった記憶しかないのだが、ルジェさんの感じ方では少々違っていたらしい。
「それじゃ、今度はパドックの方に行ってみましょうかあ。もう次に出走する娘が出てきているはずですよ」
ルジェさんによれば、1つレースが終わるとすぐに次のレースのパドックが始まって、それが終わると本馬場入場そしてスタート。こうやって大体30分くらいのサイクルでレース開催日は過ぎていくのだそうだ。
「ああもう下は人で埋まってしまっていますねえ、上から見下ろしましょう。3階へ行きますねえ」
エスカレーターに乗って3階へと上がる。エスカレーターは上りも下りも人で溢れていて、おまけにここでも下りのエスカレーターからは人目が絶えない。注目を浴びる理由は分かったが、だからといってすぐさま適応できるはずもなく居心地の悪さは相変わらずだ。
上がった3階は2階に比べて多少空いているかなという程度で混雑が続く。エスカレーターから降りてそのさらに先、大きなガラス戸から外に出るとそこは広いバルコニーで、そこそこ混雑はしていたものの前に出ることができた。フェンスまでたどり着くと眼下には角の取れた長方形をした大きな広場が見える。場内放送は相変わらずがなり立てている。辺りの喧噪も相まって耳を寝かせていると、どうやら出走するウマ娘の紹介をしているように聞こえて来た。
「この下の広場がパドックですよ。出走前にウマ娘がファンの方にお披露目する場所ですねえ」
四角い楕円形の一番奥が一段高くステージのようになっていて、放送で名前が呼ばれるたびにその奥から1人ずつウマ娘が出てきてポーズを取る。中には羽織っていたジャージの上着を豪快に投げ飛ばす者もいて、1人現れるたびに観客からは歓声が沸き起こっていた。
「次の第10レースは先ほどと同じくプレオープン戦ですけれど、こちらは2勝クラスの短距離ダート戦ですねえ」
紹介されたウマ娘の数は16人。1人呼ばれるたびにその前の娘はステージから降りて、レーストラックのように色分けされたフィールドを所定の位置までゆっくりと進む。出走する全員が出揃ってフィールドに降り立ったところで、その16人が左回りに歩き始めた。
パドックでの大きな声や物音は耳の良いウマ娘の集中を削ぐという理由で禁止されているようだが、それでもあちこちからウマ娘の名前を呼ぶ声が聞こえ、どうやらそれに応えて手を振りつつ歩いているようだ。
「ああやってファンからの応援に応えているんですねえ。トラックに出てしまうと距離が遠くなります。ファンとウマ娘が一番近くなる場所、それがこのパドックというステージなんですよう。
応援してくれるファンの方はかけがえのないものです。わたしにもたくさんのファンの方が付いて下さっていますけれど、いつも力をもらってばっかりで。……ちゃんとお返しできていれば良いのですけれど……あんまり自信は、いつまでたってもありませんねえ……」
「先輩はさっき、ウマ娘は想いを力に変えて走るって言ったよね? それはファンの想い?」
「それだけではもちろんありませんよ。自らの想いが中心に来て、そしてトレーナーさんの想い、親の想い、チームメイトの想い。でもファンの方々の想いは数が多い分、1つになったときはものすごく強く後押ししてくれるんです。
レース本番で挫けそうになっても、観客席から伝わってくる想いの強さが脚を支えてくれるんですよ。わたし自身レースの回数はそれほど多くないですけれど、それでも最終直線でいつもどれほどの力をいただいているか……。本当にありがたいことですよ」
しみじみと語るルジェさん。まだクラシック級とはいえ大レースをいくつも戦って来た彼女の言葉は静かに、しかししっかりと俺の心に刻まれる。隣で話を聞くリズちゃんもまたルジェさんの一言一言に頷いていた。
§
11レースのリザルトが出るのを待って見学を終えた俺たちは、まだ帰る人影もまばらなレース場正門をくぐって学園への帰り道に就いた。来たときと同じようにルジェさんが先頭に立ち、3人縦に並んでウマ娘レーンを軽快に駆け上がる。すっかり晴れ上がった6月の太陽はまだまだ高く、10分ほどの駆足だったが寮の正門をくぐる頃にはしっかりと汗を掻いていた。
次回、お風呂にしようか週末すっ飛ばしてゲート特訓にしようかかなり悩んでるので未定です。
[10月27日午前10時]アンケート締めました。
スタートではお風呂とゲート直行がほぼ互角の勝負だったんですが、時を追うに連れてじわじわとお風呂が票を重ねてゲートの倍ほどの人気に。
と言うわけでお風呂回を書きますが……明日の更新にはちょっと間に合わないかも。
第60話の内容をどうしましょうか?
-
お風呂回を挿入する
-
ゲート特訓に直行