起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
着替えが終わってから一息つく暇もなく、今日午後からのカリキュラムを確認しようと自分(?)の勉強机を漁る。
机の引き出しから通学鞄まで、あちこち調べてみるがそれらしい紙もノートも見つからない。
「ドーロちゃん、なにか捜し物でしょうか?」
「今日これからのカリキュラムをですね。まったく覚えてないですからどこかに書いてないかなと」
「うーん、学校の授業とかトレーニングのスケジュールはウマホに専用のアプリがあるはずですよ?
ドーロちゃんのウマホはどこでしたっけ……ああ、ありました。ベッドの横ですね」
見ると俺のベッドのすぐ横の棚の上に白っぽいスマホが一台、充電コードに繋がれたまま置いてある。
手に取るとロック画面が表示された。どうやらコードロックか指紋認証のようだ。スマホの裏面に指紋センサーらしき部分があったので、俺は祈る気持ちで人差し指を押し当てる。画面が切り替わって、アイコンが整列した。
「良かった、表示された」
どうやら元々のヴェントドーロは指紋認証を使っていたようで助かった。これがコードロックだったら詰んでいただろう。
件のスケジュールアプリは探すまでもなく画面の真ん中で存在感を放っていたので、迷うことなくタップする。
今日のスケジュールが表形式で表示された。
「えーと、今の時刻が午後1時過ぎで……午後の授業は……1時半から?
あと30分もないですね……内容は……基礎体力トレ。クラス合同でジムにて筋力トレのローテーションを50分」
「基礎筋力トレなら体操服かジャージで参加ですね。あとジムシューズと……汗を拭くタオルとかくらいで良いはずですよ」
「ですか。
それから……そのあとはゲート練習とショートトラックで50分。んーと、今日のカリキュラムはそこまでですか」
タイムラインをスライドでスクロールさせるが、それ以上の予定は入っていないようだ。
ゲート練習とショートトラックはどちらもトラックの内フィールドで行うとのことで、ジャージと蹄鉄シューズを使うとルジェさんが教えてくれた。
『きゅるるる』
そしてこのタイミングで俺のお腹はまたしてもスッカラカンになってしまったらしい。今の時点で午後の授業開始まであと15分ほど。お昼を食べるにしても時間がなさ過ぎる。我慢して午後の授業に出るしかないかと思ったら、ルジェさんが予想外に強硬な態度に出た。
「ダメですよ。今ドーロちゃんお昼抜いちゃおうとか思ったでしょう?
そんなことをしたら空腹で倒れちゃいます。きちんと食べてから授業に向かって下さいね」
「でもそれじゃ、授業に遅れてしまいますよ」
「良いんです。ウマ娘、特にレースに出ようとするウマ娘にとってなにより重要なのは健康な身体。それを作るのは十分に足りた栄養なんです。
トレセン学園に入ると最初に言われることですけれど、レースと、ライブと、お食事。この三つは他の何にも増して優先しなさいと教わるんですから」
「それって」
「だからドーロちゃん、ジムの用具だけ持って下さい。今からすぐに校舎のカフェテリアに向かいますよ。お着替えはジムの更衣室を使えば良いですから。それにわたしもお昼ご飯はまだだったので……実はお腹ぺこぺこだったんですよねえ」
最後の方なにやらルジェさんの表情が少しばかり恍惚としていたような気がするが、きっと気のせいだろうと信じて俺は次の授業の支度を持って寮を出る。前を早足で進むのはもちろんルジェさんだ。その彼女から学園の中は最大でも速歩までと、ゆっくり走りながら、いやウマ娘的には急いで歩きながら説明を受ける。もちろん今朝みたいに誰かが重大なケガをしたとかいう緊急事態は別ですよと補足されたが。それでも走っていて万が一誰かとぶつかったなら、そのときはより速く走っていた方が罰を受けることが多いとも伝えられた。
ゆっくり走っている感覚だったが、意外に早くカフェテリアの入り口にたどり着く。壁の時計を見ると1時20分過ぎ、寮を出てから2分も経っていない。ルジェさんは入り口に山と積まれた大きなトレイを片手にお皿の並ぶ方へと進む。俺もトレイを手に取り彼女に続く。よく見るとそのトレイは今朝医務室で食べた朝食の時と同じ物だ。
ルジェさんは慣れた手つきでポンポンとおかずの皿を取っていく。どれもこれも大盛りで、男のヒトの大人でも、2皿にご飯とお味噌汁が付けば多分満腹になるんじゃないかという量。それを4皿ほど取っていた。対する俺は料金を気にしながら料理を見ていく。しかしどこにも料金札はなく、だんだんと心配になってきたのでルジェさんにそっと声を掛けた。
「あの、ルジェさん? メニューに料金が全然書かれてないんですけど。いったいいくらするんですか? お昼ご飯」
それを聞いた彼女はきょとんと目を丸くしてフリーズしてしまった。俺は変なことを言ったつもりがなかっただけに、その反応は完全に想定外だったのだが、軽く吹き出すのを見て杞憂だったのだと理解した。
「ドーロちゃん? さっきわたしの話したことともつながるのですけどお、トレセン学園のお食事はあ、なんと全部無料なのですよう」
そのときのルジェさんの顔は紛れもなく最上の喜色に包まれていたに違いなく。そして俺もトレー片手にガッツポーズを繰り出していた。
それはそうだ、朝食の時に自分がやたら大食いなことに気がついてから実はずっと心配していたのだ。この身体で生活して行くと毎日の食費だけでいったいいくらかかってしまうのかと。でもその心配がないと分かった今、それまで押さえつけていた俺の腹の虫は完全に解放されることになった。
次回、そのおへそを隠せ。
そろそろキャラ設定とかをきっちり作っていかないとまずい展開になってきたので、次の更新から多少不安定になるかもしれません。