起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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やっぱりサブタイ長いな?
そして本文は短い。


第70話 美浦寮食プレオープン競走 ホームメイド杯 その2

 

 他の娘たちが一人また一人と昼食を作り上げてキッチンを後にしていく。その一方で俺たちの方はまだまだこれからが本番だ。

 さっきまで包丁片手に野菜を刻んでいたルジェさんが、今はもう細かく刻んだ鶏肉とタマネギを中華鍋で炒め始めていた。

 

「どうせご飯を炊くところから始めなくちゃいけないので、今回のメインは炊き込みチキンライスですよう」

 

 ルジェさんの説明によるとチキンライスには2通りあって、ご飯を具材と共に炒めて味を付けるものと、今回のように具材とお米を炊きあげて作るものがあるのだそうだ。

 

「炊き込みチキンライスはお肉の旨味がご飯に移って、炒める方とはひと味もふた味も違うんです。でもお肉を先に炒めているのはお肉の旨味を引き出す為なんですよう」

 

 そんな風に説明しながら中華鍋が振るわれる。3升分のお米に見合う具材の量だけに今にも鍋から飛び出しそうだが、まったく溢れたりしないのはさすがの腕前だ。

 ちなみに中華鍋で炒めているのは具材の量が多すぎるからフライパンじゃ無理、らしい。

 ちゃんと中華鍋用のコンロまで設えてあるのは設備が整いすぎかもしれないが。

 

 手際よく進む調理。炒められていた鶏肉とタマネギは大きな炊飯器の中に、これまた細切れになったにんじんピーマンお米と共に収まって、その上からたっぷりのトマトケチャップ、そしてブイヨンとバターが乗っかって、いよいよ炊飯が始まる。

 

「それじゃあスイッチオンですう」

 

 明らかにウキウキしているルジェさんがスイッチを入れる。炊飯器は見たこともないくらい巨大で、まさに業務用といった出で立ちだ。お米と具材を全て飲み込んでも釜の7分目ぐらいにしか届いていなかったのには少々驚きを隠せなかった。

 チチチチっと火花の散る音の直後にゴッと火の点く音がする。大きい分だけ火力も強力だ。

 

「炊きあがるまで30分くらいでしょうかあ。その間にサラダとスープを作ってしまいましょうねえ」

 

 そう言って取り出してきたのはまな板サイズの大きなスライサー。その様子をじっと見ていたら、ルジェさんの右手がちょいちょいと俺を呼んだ。

 

「どうしました?」

「ドーロちゃんが何かやりたそうな目でこちらを見つめていましたのでえ」

 

 スライサーを手渡されつつ流れていくルジェさんの視線を追いかけてみると、その先には調理台の上にゴロゴロ転がるキャベツの山。どうやらあれを千切りにしましょうということらしい。そのままルジェさんがやり方を見せてくれた。

 

「一番外の葉っぱはとりあえず剥がしてしまいましょうねえ。次に水道で軽く洗ったら縦に真っ二つですよう♪」

 

 軽妙な雰囲気を醸し出しつつ、ルジェさんは大ぶりな四角い包丁でキャベツをばっさり両断してしまった。

 

「芯の付け根は少し硬いので、千切りキャベツの時は三角に切り取ってしまって……、これで準備はオーケーですよう」

 

 そこで何かを探し始めてキョロキョロと辺りを見回す。そして。

 

「ドーロちゃん、すみませんがあそこの棚の上の方にしまってあるステンレスのボールを出してもらって良いですかあ? 一番大きなので」

「これですか?」

「そうですそうですう。

 それじゃ、このボールの上にスライサーを乗せてえ、それでキャベツを――こう」

 

 ひっくり返したら俺の頭がすっぽり隠れてしまいそうなくらい大きなステンレスボール。それをルジェさんに渡すと、彼女は軽く水洗いしてからスライサーを上に乗せ、半分に割ったキャベツをカット面の方からスライスし始めた。

 右手が行き来するたびに、シャッ、シャッと軽い音を立てて削れていくキャベツ。はらはらとボウルに舞い落ちるそれは、空気を孕んでふんわりと柔らかく盛り上がっていった。

 

「手を切らないように、最後の方は気をつけて下さいねえ」

 

 最後にそれだけアドバイスをくれると、ルジェさんは次の仕事に移っていった。

 ルジェさんから教わった通りに調理を進める。思っていたよりも楽に早くキャベツの千切りはできあがっていった。

 

『ぐぎゅぎゅぎゅ』

 

 無心にスライサーを操っていたら腹の虫が何かを訴えてきた。それと同時にケチャップの香りが鼻をくすぐる。

 その香りを受けて手を止めると、さらに腹の虫が何かを叫んだ。

 

『ぎゅぎぎゅぎぎゅぎぎぎ』

「あらまぁ。お腹の虫さんが待ちきれなくなってしまいましたかあ。ごめんなさい、炊きあがるまでもう少しかかるんですよお」

 

 コンロの前で両手鍋を相手にしているルジェさんがこちらを見てすまなさそうに答えた。

 

『きゅきゅぅ……』

 

 それを聞いて納得したのか、腹の虫は小さく声を上げるとまた静かになる。

 俺は再びスライサーに向き直って、最後のキャベツを千切りにしていく。

 

 それも終わって辺りを見回すと、リズちゃんもスライサーで何かを削っていた。オレンジ色をしたそれは多分にんじんだ。

 その様子を覗き込んでいると、リズちゃんが教えてくれた。

 

「ニンジンをドレッシングで和えて、キャベツと一緒にサラダにしようと思って。

 そういえばドーロちゃんも調理してたけど、つまみ食いしなかったね」

 

 リズちゃんにそう指摘されてようやく気付く。

 昨日の晩ご飯時なんかは、ほとんど味の付いていないキャベツの千切りをもしゃもしゃバクバクと喰らっていたのだ。だから自分で作った千切りキャベツを途中で食べ始めていてもおかしくはないはずだった。

 

「言われてみれば……」

「昨日の晩ご飯の時でも落ち着いてトンカツ食べたりしていたし、おなかちゃんの様子が変わってきてるよね」

『きゅ?』

「うん、おなかちゃんがだんだん優しくなってきてるねって。そんな話だよ」

『きゅぃきゅ~』

 

 自分の意志とは無関係に腹の虫が活動しているのは相変わらずだったが、腹の虫にわずかながら変化が起こっているのは明らかなようだった。

 

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