起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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だから不定期更新だって言ってるじゃないですか。

ついにオルフェーヴルがウマ娘世界に降臨されましたね、とりあえずカードガチャ頑張るぞ。
オルフェが降りてくるまでにドーロちゃん話もっと進めておきたかった……(もう遅い


第72話 美浦寮食プレオープン競走 ホームメイド杯 その4

「うぇっ! 冷たっ!?」

 

 顔に被った冷たさが俺の意識を呼び覚ます。ルジェさんを正面に、リズちゃんと、それからイソノルーブル寮長までもが俺の顔を間近から覗き込んでいた。と認識できた途端。

 

「うわあぁぁぁん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! リズのせいだ、リズのせいでドーロちゃんがケガしちゃった!」

 

 がっちりと抱きついて来て、リズちゃんが泣き声を張り上げた。

 身動きが取れないままルジェさんの方に視線を移すと、こちらはいつもと変わらない落ち着いた様子で静かに頷き返す。リズちゃんが落ち着くまでこのままでいましょうと伝えたいようだ。

 

 初めこそわんわんと泣いていたリズちゃんだったが、そのうちにすんすんと啜り上げる程度に落ち着いてきた。

 頃合いと見たルジェさんが彼女の両肩に手をかけて、俺からゆっくりと引きはがす。すると波が引くようにするすると、ホールドしていた腕が離れていく。

 

 リズちゃんは床に座り込んだまま俯いていたが、俺は静かにお礼を述べた。

 

「リズちゃん、ありがとうございます」

 

 ぴくりと彼女の長い耳が反応する。

 

「もう少しで熱々のご飯に両手を突っ込むところだったんですよ。

 私の身体はあのとき腹の虫に自由を奪われていたので。寸前で止めてくれたリズちゃんは私を助けてくれた英雄なんです。

 だから、もう泣かないで下さい」

 

 リズちゃんが顔を上げる。泣き腫らした目じりにはまだ涙が溜まり、興奮の残る頬は紅潮していた。

 

「で、でもっ。ドーロちゃんのおでこをケガさせちゃったのはリズのおしゃもじのせいで――」

「そのしゃもじが私を止めてくれたんです。だからリズちゃんが手に持っていたそれはさしずめ……、英雄の聖剣?」

 

 俺は彼女の気を静めようと、努めて温和な表情を作る。

 交わす言葉一言ごとに、リズちゃんの様子は普段通りへと回復を見せた。

 

「それは、さすがに大げさじゃないかな……」

「そうでしょうか?

 

 ……そうだ、銘でも書いておきましょうか。“聖剣 リズのしゃもじ”」

「それは恥ずかしすぎるから止めてー! もう、ドーロちゃんのいじわるっ」

 

 怒ったような困ったような笑ったような複雑な表情。そんなリズちゃんの両眼には普段通りの強さが戻っていた。

 

「ふふ、冗談です。でもやっと笑ってくれましたね」

「あ、えっ? あれれ……え、えへへへ……」

 

 俺の指摘に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに視線を外してはにかんだ。

 

「私はもう大丈夫です。ルジェさん、遅くなりましたけどお昼にしましょう」

「そうですねえ。それじゃすぐ用意しますねえ」

「それから、チキンライスを寮の皆さんにも少し分けてあげたいんですが……良いですか?」

 

 おずおずと尋ねると、ルジェさんはすぐこちらの意図を酌んでにっこりと微笑みを返してくれた。

 

 その場にいた寮生の数だけご飯茶碗を出してきて、チキンライスを取り分ける。皆食べたがっていたし、なにより騒ぎを起こしてしまったお詫びも兼ねてだ。

 茶碗を用意する俺の隣でリズちゃんがよそっていく。それを寮長さんがお盆に載せて配膳していった。そして最後に大きなお盆みたいなお皿山盛りに俺の分が盛り付けられて、いよいよお昼ご飯の始まりが告げられた。

 

「「「「「「「いただきま~す」」」」」」」

 

 寮長さんの音頭で唱和する。と、同時に俺はいつも通り猛然と食べ始める。

 腹の虫が欲しているのはあるが、俺自身も食べたいという衝動を強く感じながらチキンライスを、サラダを、スープをと食べ進む。

 

 このチキンライスはルジェさんが言っていた通り旨味が濃い。チキンの風味もさることながら、そこにたっぷりと加えられたバターのコクとトマトの旨味が合わさった上に、米粒一つ一つにまんべんなくそれらが染み込んでいて一口ごとに脳を揺さぶる。その米粒はまだ少しばかりの歯ごたえが残っていて、噛みしめるごとにトマトとはまた違う米ならではの秘やかな甘味が後追いで口の中に広がった。

 今度機会があったらまたルジェさんに作ってもらおう。そんな事を考えているうちにお皿が空になってしまった。

 

 カランと乾いた音を立ててスプーンが大皿の上を踊る。一口二口残ったスープを手に持ったカップからゆっくりと啜って、今日のランチは終わった。

 

「満足できましたかあ?」

 

 向かいに座っていたルジェさんがニコニコ顔で問いかける。

 

「ええ。今までで一番美味しいごはんだったかも知れません」

「それは嬉しいですう」

「また作って戴けますか」

「ドーロちゃんが欲しいのなら、いくらでも」

 

 ルジェさんが満足げな笑顔を見せた。その隣に座っているリズちゃんも、もうすっかりいつもの調子に戻ったようでニコニコと穏やかに微笑んでいた。

 




進行が遅くて各方面をすごくヤキモキさせております。次回からようやくゲート特訓始まりますよー。
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