起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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昨夜に引きつづき、アップできるときにアップです。
ゲート特訓はこれで(一応)終わり、いよいよ選抜レースへ。しかしその前に。


第77話 The GATE #3

 

 織田先生の様子をそのまま見守っていたら、そばにいたスタッフさんに二言三言何かを伝えていた。伝えられたスタッフさんは大急ぎで角バ場から出て行ってしまう。どうしたのか怪訝に思っていると、先生が手招きして俺を呼んだ。

 

「やはりゲートの音がダメみたいですね。今スタッフに耳カバーを取りに行かせています。一度それを着けてみましょう」

 

 耳カバーは袋状の布で、馬耳に合わせた形をしている。それを耳に被せておくことで音が聞こえにくくなる効果がある。

 走行中、細かな周囲の音が拾いにくくなる欠点はあるが、ゲートの開放音はかなり軽減されるだろうと先生は説明してくれた。

 

 先ほど駆け出していったスタッフさんが戻ってきた。手には黒い布――耳カバーだろう――を持ってこちらに走ってくる。

 

「お待たせしましたね、早速着けてみましょう。ドーロさん、自分で着けられそうですか?」

 

 そう言って先生は黒い耳カバーを手に取り差し出してくるが、付け方の分からない俺は首を横に振る。

 それじゃ僕がやりますよと先生が続けたので、おまかせすることにして再び頭を差し出した。

 

 ガサゴソと大きな音を立てて耳カバーが被せられていく。左耳、右耳と順に周りの音がくぐもっていく。

 

 できましたと声が掛かって先生の両手が離れた。ピコピコと耳を揺らせてみるが、取れて飛んでいく気配はなさそうだ。耳の付け根がやや窮屈だが、思っていたほどの違和感はなかった。

 

「それじゃあもう一度、ゲートに入ってみましょうか」

 

 先生やスタッフさんたちを引き連れるような格好で、再びスターティングゲートへと向かう。

 ゲートの真横で解放音を聞かせてもらった。

 

『ッカン』

 

 音の出た瞬間こそ耳がぎゅんっと突っ張るが、さっきのように絞ったままにはならなかった。それに音自体がかなり軽く、マイルドだ。

 前後ともにゲートが閉じられた時の閉塞感はまだどうにも慣れないし苦しいが、数秒ならばどうにかなりそうな手応えだ。

 あとはスタートダッシュのタイミングが合うかどうかに焦点が移ってきた。

 

『ッカン』

 

 ゲート開放と同時に飛び出たつもりでも、まだ少し脚の反応が遅れているのが体感として分かる。

 ゲート脇に設置されたカメラからの映像を織田先生とともに確認すると、それはより明らかだった。

 

「ゲート開放を見てから動きが始まっているような感じですね。音の方はもう大丈夫ですか?」

「音はとりあえずなんとか。ですがゲートの中にいる間、圧迫感がすごくて気になります」

「ベストのスタートはスターターと息が合わないと難しいと言いますね……、圧迫感は慣れてもらうしかないでしょう。

 ともかくゲートスタートができるようになりましたので、タイミングを追い求めるよりもスタートダッシュに繋ぐ動きを練習した方が良いと思います」

「少々の出遅れは仕方がないと?」

「解消できればその方が良いでしょうが、今はそれよりも」

「きちんと走りきれる方が良い……と」

「そういう事ですね」

 

 スタートからダッシュへの繋ぎを練習と織田先生は言うが、この角バ場は少々手狭に感じた。ゲートから出ることはできても、ダッシュを駆けるとラチにぶつかってしまう。その事を伝えるが、先生にも良いアイディアはないようだ。

 結局そこからは予定時間いっぱいまでゲート入りからスタートに至る段取りを何度も繰り返すにとどまった。

 

 §

 

「よし、時間ですね。今日はここまでにしましょう」

 

 織田先生の号令でゲート練習が終わる。

 やっていたのはゲートへの出入りだけだったとはいえ梅雨時の蒸し暑さの中だ、俺はじんわりと肌を湿らせる汗の処理をしつつ、織田先生から最後のレクチャーを受ける。

 

「いよいよ明日は選抜レースですね。この数日でゲートへの対策はほぼできたと言って良いと思います。今のところの様子では、何かトラブルが起きない限り勝ち負けを争うことはできると見ています。ですのでドーロさん、ゲートの中で決して慌てないように」

「はい」

「あなたの脚力なら多少の出遅れがあっても、道中の展開がよほど悪くなければ上位は確実でしょう。得意距離ならおそらく優勝できるはずです。だから落ち着いて、普段通りに」

 

 出遅れと聞いて、先日2班の連中と走ったときのことを思い出す。あの時はスタートの瞬間プリ子に話しかけられて集中が切れたせいで、今やっている練習以上に出遅れた。さらに行く手を阻む壁を4人がかりで形成されてしまった。

 さすがにあそこまで露骨な壁形成はないと願いたいが、遙か前を先行していたプリ子に追いすがる事のできたあの時の走り方自体は参考になりそうだった。

 

「差しに近い走りも経験ありますし、おそらく大丈夫だと思います」

 

 俺が表情を和らげてそう答えると、先生もまた柔らかい表情を返してくれた。

 

 そのあとはここ数日の流れ通り先生が俺の脚をチェックして、何も問題ないとお墨付きをいただいて解散する。耳カバーはこのまま俺が持っておく事になった。

 

「明日の選抜レースですが、僕も医務として本部に詰めているので何かあれば。あと、耳カバーをくれぐれも忘れないようにして下さいね」

 

 最後にそう言い残して、先生はスタッフとともに医務室へと帰っていった。

 先生たちが地下通路に消えるのを見届けていると、入れ替わるようにリズちゃんの大きな耳が現れた。

 




次回 凝視されてしまう
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