起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
この先が少し書き上がったので、ストック放出しますよ。
皆さんお待ちかね、アレの時間です。(軽め)
通路を上がってジャージ姿を見せたリズちゃんだったが、どういう訳かそこから一歩も動かなくなってしまった。じーっと俺の方を凝視したまま固まっている。
どうしたのかなと思いつつ歩み寄っていくと、その視線は俺の頭の方に向いていることが分かった。
「ドーロちゃん……、そのお耳……どうしたの?」
おそるおそるといった感じで尋ねてくるリズちゃん。そこではたと気づいた俺が成り行きを説明する。
「……ゲートの音が気になりすぎたから耳カバーを付けることになったって。そうなんだね」
「急にこんなの付けてたらびっくりしますよね、すみません」
ざっくりと説明しただけだったが彼女はすぐに理解してくれて、最初の驚いた表情はすぐ
「ずっと耳カバー着けて生活するのかなぁ?」
「普通の生活では困りませんから、普段は外しますよ」
「そうなんだ。それは安心したかな」
そこでようやくリズちゃんの表情が和らいだ。
「やっぱり耳カバーは変ですか?」
リズちゃんの表情の変化が気になったので話を向けてみる。
「ううん。見慣れなかったから少し驚いただけだよ。でも、せっかくきれいな黄金色で揃ってる髪と耳だから、違う色が入ってくるのはちょっともったいないなぁって思って」
「そうですか。……明日の選抜レースは仕方がありませんけど、なんとか外してレースへ出られるようにしないといけませんね。正直なところ、やっぱり付け慣れなくて」
そうやって話しつつ、自分の寮室の前に立つ。鍵を開けて入るとルジェさんはいなかった。
「あれ、ルジェさん?」
ポツリと零した言葉にリズちゃんが答えてくれる。
「先輩は寮食のキッチンに行ってるよ。明日はドーロちゃんの選抜レース本番だから、今夜はしっかり食べて欲しいからって。
それで先輩からの言付けなんだけど、晩御飯の前にお風呂へ行ってきてくださいねえ、だって。
だから、今から二人でお風呂だよ!」
とびきり明朗に響いたその声と、今まで見たことのないほど嬉しそうな表情を俺はしばらく忘れることができそうになかった。
§
「ぅ……、くぅぅ……、は……ぁ……」
毎日お風呂にきっちり入るのが競走ウマ娘の身だしなみ。そんな事は言われなくても砂まみれになる日々だから、自然と気をつけるようになる。
そして来る日も来る日もリズちゃんにしっぽ洗いをされていて、今日もそれは変わらずいつものようにお風呂タイムな訳だが。これだけは未だに全く慣れていなかった。
俺のしっぽは他の娘よりもかなり敏感で、しっぽ洗いをされているとどうにも身動きが取れなくなってしまう。だから普通のウマ娘は入浴する時お互いしっぽの洗い合いになるところ、俺の場合は脳天を突いて体の自由を奪いにかかる感覚を、ひたすら耐えるだけになってしまう。
そんな訳だから今日の入浴もリズちゃんにいいように、されている、の、だが……ぅぁ。
あと少しで意識が飛ぶんじゃないかという寸前で、リズちゃんの手がしっぽから離れた。まだ下腹部にジンジンとした感覚は続いているが、たっぷりのシャワーで洗い流されていくうちに、ひとまずは徐々に落ち着きを取り戻していく。
「毎回……毎回、これでは持ちませんよ……ふぅ……」
「リズは普通に洗ってるだけなんだけどなぁ」
悪いのはリズちゃんじゃなくて、どうしようもない俺の体の方。そんなふうに会話を続けつつ、広い湯船に2人並んで浮かんだ。
「あ~~~、やっぱりこのお風呂はいいですねえ。広くて湯あたりが良くて、疲れが溶けていきます」
「ドーロちゃんはお風呂大好きだよね。最初は嫌がってたのにね」
少し昔の話をリズちゃんに持ち出されて、反論するやら照れるやらしていたら。背後から聞き覚えのある声が聞こえる。
「あっ、トドちゃんとリズちゃんここにいた」
振り返ると2班で一緒に走った赤毛のサンガリアスと、その少し後ろには芦毛のアウトスタンドギグが立っていた。
そのままザバザバと湯船に踏み込んできたサンガリアスだったが、俺のすぐ隣でしゃがみ込むと一言。
「お二人さん仲が良いのはいいんだけどさ、トドちゃんの声、結構響いてたよ?」
「えっ?……」
考えもしていなかった指摘を受けてあっけに取られたが、一呼吸置いてその意味するところに気づくと同時に恥ずかしさのあまり頭から噴火しそうになった。
「こらこらリアちゃんや、そういう事はもう少し場所を選んで伝えるものでしょうに」
「えー? でもこういうのは早い方がいいでしょ」
「いやいやそれにしたってでしょうに。ほらートドちゃん沈んでいくし」
もう恥ずかしさも頂点に達してしまって、俺は耳だけ残して湯の中に隠れる。もちろん湯船は熱いし息が続かないから、すぐさま浮上する事になるのだが。
§
「ほうほうなるほど。トドちゃんはしっぽが弱い……と」
「そうだよ。だからドーロちゃんはお風呂の時、毎回大変そうなの」
お風呂から上がって、ここは脱衣所。頭まで湯に浸かってしまった俺は少々のぼせ気味で、髪やしっぽを乾かすのもそこそこに、スポブラとショーツというあられもない姿のまま扇風機のそばに陣取ってクールダウン中。リズちゃんは俺の出していた声について、リアちゃんを相手に話し合い中で、トスたんは洗面台の鏡に向かってマイペースにボディケアを勤しみ中といったところ。
話にそっと聞き耳を立てていると、リズちゃんは俺のしっぽがとにかく弱いことを強調しているが、リズちゃんのテクニックが異様に上手い点も俺としては強調しておきたいところではある。今はこちらも疲れているので言わないが。
良い塩梅にのぼせも取れてきたところで身繕いを済ませてしまおうと洗面台の前に立つと、隣り合ったトスたんが鏡越しに不意に尋ねてきた。
「トドちゃんや、ゲートの首尾はどうでしょうね?」
ここで尋ねられるとは思っていなかったので瞬間言い淀むと、彼女は少し寂しそうな声で続けてきた。
「その様子だとダメだったのでしょうね……」
鏡に映る彼女の耳がしょんぼりと垂れていくタイミングで、どうにか俺の返事が間に合った。
「いえ、とりあえずスタート切れるようになりましたよ。あとはタイミングさえ合えば」
「おぉ……」
ピコンと芦毛の耳が立って、表情も一気に明るくなる。
「それを聞いたらプリ子も喜ぶでしょうに」
「そうですね」
「えっ、なになに? トドちゃんゲートスタートできるようになった?」
リアちゃんが割って入るように飛び込んできた。
「はい、なんとか」
「やったあ。さすがはトドちゃん、決める時は決める女だねぇ。良かった良かった」
「そんな大層な存在じゃないですよ、私は」
「いやいやそんな事もあるって。まぁこれで明日の選抜レース、面白くなってきた。お互い本気出していくよ」
その一言が気になって聞き返した。
「リアちゃん、お互い本気って、どういうことです?」
「あれ、出走表まだ見てなかったんだ? 選抜レースのサイトに出てるよ。
アタシとトドちゃんは午後の第10レース、芝2000で一緒だね」
リズちゃんが持っていたスマホで出走表を見せてくれる。リアちゃんの言う通り、第10レースには俺の名前とリアちゃんの名前が並んでいる。
もう1つ俺がエントリーした1600の方は午前の第2レースに割り当てられていて、そちらにはプリ子の名前が並んでいた。
次回 落ち着こう