起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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なんかそろそろ次投稿しといた方がいいのかなって思ったので。

そろそろ9月のイベント対策を本腰入れていかないとなー。


第79話 美浦寮食リステッド競争 ゲン担ぎ杯

 

「待ってましたよう。さあ、どんどん食べましょうねえ」

 

 寮食の入り口、満面の笑みで待ち構えていたのはエプロン姿のルジェさんだった。

 そのままいつものテーブルへと案内される俺とリズちゃんだ。

 

 待っていたのは3枚のお皿にそれぞれうず高く積み上げられたカツの山だった。もちろん千切りキャベツも2山別皿に盛られている。

 そしてテーブルの周りにはいつにも増して高く、ギャラリーの人垣がそびえていた。

 

『きゅるるるるるん♪』

 

 山盛りカツの姿が目に入った途端、腹の虫が目を覚ます。いかにも嬉しそうな鳴き声が聞こえる。

 席に着くまでの間に説明を受けた。

 

「今晩のメニューはゲンを担いでカツ三昧ですよう。

 定番のトンカツだけじゃなくてえ、チキンカツとミンチカツと、それから許可が出たのでなんとビフカツもおまけで出してますう。それからですねえ――」

 

 ルジェさんによると、カツにかけるソースも種類をたくさん用意したそうだが。

 

「でも先輩、ソースを付けながら食べるのってドーロちゃんの食べ方だと無理じゃないかな?」

 

 リズちゃんの指摘にルジェさんがハッと何かに気づいた表情を見せる。そこに割り込んだのはなんと腹の虫だった。

 

『きゅいゆぃ、ぎゅきゅんぐーっ』

「え、おなかちゃん、それは大丈夫って?」

『きゅいきゅ』

「リズちゃん、腹の虫はなんて言ってるんです?」

「おなかちゃんがね、今日は落ち着いて食べるよって」

 

 ……いや腹の虫、お前にそんな事が本当にできるのか?

 

 ともあれさっそく実食に移ることとなった。席について箸を構える。普段ならここで手が勝手に動いておかずをごはんをと掻き込み始めるのだが、腹の虫は『きゅ~きゅ~』と小さく呻くだけで動こうとしない。腹が減っているのは確かなので、一口大に切られたトンカツを1つ箸で取って俺自らの意志で食べ始めた。

 

 さくっと軽い音を立ててカツが口の中で切り取られる。と共にソースのややスパイシーな香りが鼻へと抜ける。

 火が通りやすいようにとやや薄めにスライスされた豚肉だがそれでも十分厚く、肉の旨味はたっぷり感じられる。先日のカツカレーの時もそうだったが、これだけ大量に揚げられているカツなのに油はしっかり切られていて、見た目よりも軽い食感が続く。

 腹の虫任せの時よりもずっとずっとゆっくりしたペースでの食事だが、箸が止まることはなく順調にカツの山は低くなっていった。

 

 しかしスローペースな分、満腹が早く来るのかと思っていたがそんな事はなかった。むしろ腹の膨れる感覚がまったくやってこない。

 盛られたカツに4つ種類があって、さらに味変と称して付けられたソースやタレの類も10種を超える。そのせいかまったく飽きることなく箸がどんどん進んで止まる気配がない。千切りキャベツも良い箸休めになっているようで、これまたたっぷり用意された白飯や味噌汁と共に調子良く腹の中に収まっていく。

 

 どう見ても普段食べているより1割は多いように見える今晩の食事だが、途中で箸は止まることなく最後のビフカツ一切れに到達してしまった。

 食べた感はあったが満腹感にはまだ少し遠く、当然腹は出ていない。しかし腹の虫は只の一度も不満の声を上げることはなかった。

 今まで感じたことのない食後感に俺は戸惑いを隠せなかったし、それは周りで見守るルジェさんやリズちゃんを始めギャラリーのみんなもだ。

 

 そして衆人環視の中、とうとう最後のビフカツはするりと俺の腹に収まった。

 

「……完食、してしまいましたねえ……」

 

 ルジェさんはそう呟いたきり二の句が継げなくなった。リズちゃんはただただ俺の顔色を覗うのみ。そして連なるギャラリーの面々は誰も一言も漏らさず、寮食は不気味なほどの静けさに包まれた。

 

『ぎゅっふー』

 

 ただ一人、腹の虫だけが声を上げた。

 

 §

 

「おなかちゃん、言った通り静かだったよね」

「そうですねえ、私も驚きました。でもですね、お腹が全然膨れてこないんですよ」

 

 まったりと食後のお茶タイムに突入していた。ルジェさんとリズちゃん、そしてリアちゃんとトスたんが俺を中心にテーブルを囲んで座っている。

 そんな中で俺以外の全員、その視線は俺の腹に注がれる。普段ならすぐに凹んでしまうといっても、今晩はそもそも一度たりとも膨れなかった俺の腹だ。

 

「ゆっくり食べていたせいか、膨れる前に消化されていった感じなんですよ」

「そ、そうなんだね。それでドーロちゃん、満腹感みたいなのはあるのかなぁ?」

「満足感はありますけど、もう入らないって感じではないですね」

 

 のんびり会話していると、不意に腹の虫が答えた。

 

『きゅんきゅ』

 

 その場にいた5人誰もが想定外だったせいか、静まる一同。腹の虫はそれきりまた黙ってしまったので、俺はその意図を掴んでいるであろうリズちゃんにおずおずと尋ねてみた。

 

「リズちゃん、腹の虫はなんて?」

「ちゃんと満足してるって」

「それは良かったですう。もしかしたらまだ足りていないのかと思って」

 

 やや緊張の見える面持ちだったルジェさんも、今の解説でホッと胸をなでおろした。

 しかしそれで収まらなかったのはリアちゃんだ。

 

「ねぇリズちゃん、もしかしてトドちゃんのお腹の音で言ってること分かるの?」

 

 ぐいと首を伸ばしてテーブル越しに詰め寄るリアちゃん。それに対してややたじろいだ様子を見せるリズちゃんだ。

 

「う、うん、そうだよ。おなかちゃんの言う事、なんとなく伝わってくるんだよ」

「へぇ~、なんか不思議だね。トドちゃんは分からないんだ?」

「そうですね、私にはさっぱり」

「トドちゃんのお腹のことなのに本人には分からないんだ。なんか面白いね」

「そんな事はありえないんでしょうに、なんかトドちゃんとは別の生き物みたいですなあ」

 

 トスたんの指摘はごもっとも。顔を見合わせた俺とルジェさんだったが、ルジェさんの顔には『やっぱりそうですよねえ』と書いてあるように見えた。

 




次回 保ってくれると良いんですが
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