起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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『カサマツどて煮杯』に向けて必死の作画作業が続いてる中、なんにもないのもアレかなと思ってストックを放出する方向。
ようやく選抜レースの朝にたどり着いたですよ。
作戦会議はだいじです。


第80話 ちょっとした作戦会議

 

 そしてとうとう選抜レースの日になった。

 

 前夜はルジェさんの勧めもあって、俺もリズちゃんも早めにそれぞれの自室で床に就いた。幸い気が張って眠れないということもなく寝付きは良かったが、やはり緊張があるのか夜明けとともに目が覚めてしまう。

 

(4時半……ですか、さすがに早すぎです。とはいえ眠気はありませんし、どうしたものでしょうね)

 

 寮玄関の解錠時刻まで1時間半。目が冴えてしまって二度寝はできず、仮に二度寝したとしても今度は中途半端に目覚めることになってコンディションが悪くなりそうだ。

 窓から見える空は曇り。梅雨ならではの低くどんよりとした雲に覆い尽くされている。スマホで今日の天気を確認してみると、曇のち雨と表示された。選抜レースは朝9時から夕方5時まで、昼休憩を挟みつつ8時間みっちりと行われる予定だ。そしてウマ娘レースは雨が降っても中止にはならない。

 

(えーと、自分の出走は午前の第2レースと午後の第10レースですね。天気、保ってくれると良いんですが)

 

 梅雨の季節は既に後半へと進んでいて、日中は蒸し暑さを感じるほどだ。レースともなればそんな重苦しさ感じる中での全力疾走。とはいえ今の俺には雨中の走行経験がない。

 

(雨の中足元に不安はありますけど、ドーロの身体に眠る走りの記憶が上手く出てくれれば)

 

 ベッドの上に座り込んだまま、壁に背中を預けて今日の選抜レースについての諸注意をスマホで追いかけていたら、向かいのベッドに眠るルジェさんがムクムクと動き始めた。

 

 右肩を下にして寝ていたところから、ゆっくりとした動きで上体が持ち上がる。そのままベッドの上で正座するような形で起き上がりきったが、こちらからは背中側が見えるだけで表情は見えない。そのうち寝ていた耳がひょこひょこ動き始めたかと思ったら、ルジェさんは腕を天高く伸ばすように大きく伸びを打った。同時に耳もしっぽも天を目指して伸び切って、それらが普段のポジションまでゆるゆると降りてきたところでようやくルジェさんのまだとろんと眠たそうな顔が振り向く。

 

「あ~、ドーロちゃんいましたあ~」

 

 振り向いた口元はそう呟きつつ、にへらと緩んだ。

 

 §

 

「選抜レースで気をつけること、ですかあ?」

「先輩なら何かこれだけはっていうワンポイントがあるんじゃないかなと思って」

 

 朝の寮食。リズちゃんとも合流して普段通りやや急ぎ気味にご飯を掻き込む。食べ終えたひとときにリズちゃんが話を振った。

 

「う~ん選抜レースだからって何か特別なことはありませんよう?

 強いて言えば平常心、でしょうかあ。もっとも選抜レースに限ったことではありませんがあ」

 

 言葉がそこで途切れる。ルジェさんは天井を見つめて何か考えている様子だったが、すぐに何かを思いついたのか俺の方に向き直る。

 

「ドーロちゃん、老婆心かもしれませんけれども、今日のレースは午前のマイルの方で全力を出し切るぐらいのほうが良いと思いますよう」

 

 思っても見なかった提案に目を白黒させていると、ルジェさんはさらにこう続ける。

 つまり、今日の天候は午後から雨、どうかすると午前の内から降るかもしれないと。

 

「記憶喪失になってからこちら、ドーロちゃんは濡れたコースで走った経験がありませんよねえ?」

 

 まさにその通りなので俺は頷きで返す。

 

「ダートならともかく、芝は少し濡れただけですごく滑るんです。スタートダッシュ、コーナー、スパート、加速を伴うあらゆる場面で、それはものすごく足元に負担をかけますし、なによりバランスを崩しやすくて危ないんですよう」

 

 リズちゃんも身を乗り出してきてルジェさんの言葉を傾聴する。

 

「だからドーロちゃんが万全に走れるのは午前中だけだと考えたほうが良いと思いますよう。午後は午前の疲れも残っているでしょうし、距離も長めですから消耗もより激しくなるでしょう。さらにはゲートの問題もありますし、集中力が最後まで持つかどうか……。

 ドーロちゃんにはあまり無理をして欲しくないんですよねえ。もちろん良バ場であればなにも心配ないわけですがあ」

 

 ルジェさんの話はさらに続く。

 

「とにかくマイルは前に出ましょう。ドーロちゃんのスペックなら粘れるはずですう。でも先頭には立たないでくださいねえ、スパートに向けてスタミナ温存ですよう。

 ……そうですねえ、残り距離から考えるとスパート開始は4コーナーからでしょうかあ。加速して外に逃げながら、コース真ん中を差し切っちゃってください。くれぐれも囲まれないようにだけ気を付けて。元から2000を走れるスタミナはあるんですから、堂々と外回りで行きましょう」

 

 話が進むうちに段々とルジェさんの鼻息が荒くなってきた。どうやら俺が勝つことを信じて疑わないようだ。そこで心配に思っていることの対策を尋ねてみることにした。

 

「あのですねルジェさん。すごく私のことを期待してくださるのは嬉しいんですけども、その、スタートですね。スタートに失敗してしまったときはどうしたら良いでしょう?」

 

 するとルジェさんははたと困った顔になって再び天井へと視線を逸らせた。そして今度はゆるゆると喋り始める。

 

「出遅れがどの程度になるかが分かりませんけれど、しぶとく前を目指すべきだと思いますねえ。確か12人建てでしたよね?」

「そうですね」

「芝の1600左回りなので、スタートは2コーナー終わりからですねえ。先ほどお伝えした4コーナー入口で中段に付けていれば、ドーロちゃんの脚なら勝てますよう」

「中段と言いますけど、具体的には」

「前から数えて6人目前後ぐらいでしょうかあ。もちろんそれより前であれば楽にはなりますう。同時に走る娘の脚質がどういう分布になっているかによりますけれど、中段前寄りにいられれば大丈夫ですよう。ただ一気にポジションを上げてしまうとスタミナがなくなりますし、周りの娘も釣られて動くでしょう。なので遅れた場合は4コーナー入口で中段に付くようにじわじわと前へ詰めるということでえ」

 

 そこでルジェさんのレクチャーも一段落する。壁の時計は8時少し前を差していた。選抜レース集合時間が迫っていた。




次回 無垢な少女たちに大人たちの欲望が食らい付く
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