アニメとか漫画見たんですけど、レオナルドは俺と僕の両方を使っていましたし、クラウスはレオナルドのことを、レオかレオナルドの両方でよんでいました
使い分けがまだ下手ですのでご了承ください
神々の義眼はありとあらゆる現実を写す
それは所持している僕が一番に知っていることだった
魔術も、幻術も、科学も、粒子ですらも…
この目を植え付けられて以来、ありとあらゆる物質の本質をこの目に視せられてきた。
非常な現実
神々の義眼であるがゆえ、目を反らすことも無視することも出来ず、塞いだところでそんなものは意味をなさなかった
僕は最初、こんな力、ひたすらに嫌っていた
向き合うことしか出来なかったが、感情が、本能が、この力を嫌っていた
だが、ヘルサレムズ・ロッドに来てから、その認識も変わった
尊敬するクラウスさんに、向き合うことを諦めてはならないのだ教えてもらった
信用できるザップさんに、結局は道具なのだから折れなければいいと知らされた
この街からこの目の使い方を習わされた
この街に来てようやく、俺は現実に打ち勝つことが出来たのだ
だからこそ、分かる
今見ているこの光景は夢だ
真っ白でなにもない空間、人ではない何かを抱き止める一人の少女が涙を流しながら声にならない嗚咽を吐いていた
お……れお……
それを見た僕は咄嗟にその少女の元へと走り出す
泣いて蹲る少女を見過ごせなかったから
おい……レオ……
でもそれは、一人の少年によって防がれた
ここから先にはいかせないと、彼が両手を広げで立ち塞がることで、僕の行く手は阻まれた
おい…お……レオ……っ
彼もまた泣いていた
噛んだ唇から血が出るくらいに、なにかに悔いて泣いていた
僕は気になった
彼らに何があったのか
だから聞こうとした
『どうした「おい!起きやがれ!陰毛頭!!!」はいっ!?」
視界は一転、目の前には瓦礫の山
僕はザップさんに抱えられ、赤黒い液体で形成された狼のような獣から逃げていた
「え?えっ?えっ!?今どういう状況すかっ!?」
「やっとかこの馬鹿っ!さっさと現状把握しやがれ陰毛!!斗流血法カグツチ!刃身の壱 焔丸!」
「どぐへっ!?」
でかい瓦礫の上に蹴り飛ばされる僕
咄嗟に周囲を見ると、辺り一帯ら赤黒い何かによって埋め尽くされていた
そして僕たちの背後には手足が拘束された星詠みの子
「っ!起きたかっ!ブレングリード流血闘術11式!旋回式連突!」
我らがリーダーのクラウスさんが回る巨大な血の十字架を使い敵を一掃する
そのお陰で少しだけで来た余裕、その隙にクラウスさんは僕へと指示を出してくれた
「現在、増殖し続ける呪詛の混じった正体不明の生物と交戦中!
レオナルド!君は本体の索敵と、いち早く報告を頼む!」
どうであれ危機的状況なのは間違いないのだから、現状を理解する必要はない
僕のやることは変わらないのだから、僕は僕の職務を全うしろ
「は、はい!」
リーダーの分かりやすいその指示に神々の義眼を発動する
「総員!レオナルドが発見するまでなんとか持ちこたえるぞ!」
辿るのは赤黒い何かから出る操っているであろう人へ僕にしか見えない線のようなその繋がり
「三人とも!動きを止める!飛べ!エスメラルダ式血凍術!アヴィオンデルセロアブソルート!」
副長であるスティーブンさんの辺り一帯の凍結
それに連動したザップさんとツェッドさんが、合技を発動させ小回りの効く敵全員を掃討した
「「斗流血法!七獄天羽鞴!!!」」
燃え広がる台風、獣や人となったそれらは燃やされ切断され砕けていった
しかしそれだけでも足らず、5メートル以上ある巨大な熊のような自分で氷を砕きながら再生を始めた
だがその隙をクラウスさんは見逃さない
「ブレングリード流血闘術111式!十字型殲滅槍!」
星詠みの子を中心に数メートル、赤黒い何かは消え瓦礫のみへと戻すことが出来た
視界が晴れる
雑多が多かった視界が一気にクリアになった
「本体見つけました!九時の方向!距離200!あれは血界の眷属です!っというかまたぞろぞろ来てるぅっ!?」
お陰で見つけられた最奥の方いる、唯一真っ白の歯を有した赤黒いスライム人間
そいつが見えるなかで最も赤いオーラを醸し出していたおりなんなら見た瞬間こっちに不気味な顔で笑いかけて来たことから本体であるのは間違いないだろう
しかし、何かが気になる。
あいつが本体なのは間違いないのに、何かを見逃しているような気がする
だが考える暇はない
また大量の赤黒い液体がこちらにまで侵食しようとしていた
「どうするクラウス!居場所が分かったのはいいが、このままじゃジリ貧だぞ!エスメラルダ式血凍術!ランサデルソルアブソルート!」
「くそっ!また大量に湧いてきやがる!
おら魚類!時間稼ぐぞ!合わせやがれ!
斗流血法カグツチ!刃身ノ壱 焔丸!」
「そんな無茶な!?斗流血法シナトベ突龍槍!」
「「合技!龍搦め、天羽鞴!改!!」」
風により火力が上がった炎、それが赤黒い何かに向けて放たれる
それどころか、二人は引火の継続を技により行うことで増え続ける敵を押さえ込んでいた
まるで人間火炎放射機
顔には苦悶の表情を浮かべているが、そのお陰でクラウスさんとスティーブンさんに判断する余裕が出来た
「クラウス!君がなぜ星詠みの子を守ろうと思ったのかはこの際気にしない!
僕も同じ状況なら同じようにしただろうからな!
だが、現状、相手が武器に持つのは触れたら終わりの呪詛と呪物存在の圧倒的物量!守りながらではこちらが圧倒的に不利だぞ!
撤退するか、徹底的に抗戦するか、どうする気だ!」
どうやら背中で星詠みの子である彼女を守るように動いていたのは、クラウスさんが指示したかららしい
確かに状況的に血界の眷属が攻めてくる理由は彼女で、記憶にあるお爺さんの台詞から接触された時点で何が起こるかは分からない
だが今において、その指示は僕たちの足かせとなっており、だからスティーブンさんは一時撤退することによる態勢の建て直しも検討していた
「レオナルド、血界の眷属の真名看破の準備を」
とは言え、我らがリーダーに妥協の二文字は存在しない
クラウスさんの闘志は燃えたぎっており、その様子にザップさんは楽しそうに笑い、スティーブンさんは目を大きく見開いて驚愕した
「正気かっ!?」
「勿論だともスティーブン、奴を野放しにしておけばこの先どんな被害が巻き起こるかわからない。
我々は我々の職務"世界の均衡の守護"を全うし、奴をこの場で封印する」
広がっていく赤黒い何かの上
斗流血法の大技を喰らい続けていたからだろう、火炎に対応するべく、人体を真似て盾を作った巨大な赤黒い生命体のほか、物量に任せ多数の獣型を盾にして前に進む魔獣に似た生命体が間近まで進行してきた
進化か適応か学習か、どんな形であれ戦闘中の今ではそれは状況の悪化を意味する
その事実が僕達の目の前へと迫って来た
「それと圧倒的不利と言ったがそれは違う」
『954ブラッドバレットアーツ!STRAFINGVOLT 2000!』
「我々には頼れる仲間がいる!」
しかし、それらは電撃が走ったかと思えば、全ての頭が霧散した
『ハロー、スティーブン先生♪絶好のタイミングじゃないかしら~?』
「K・Kっ!?」
『そこで突っ立ってる五人とも!頭下げなさい!』
電撃を纏った高威力の鋭い銃弾と共に通信機器から聞こえてくる女性の声
その持ち主は我がライブラの構成員の一人、既婚者でありながら狙撃などの銃撃戦を専門とする通称『K・K』
彼女の遠距離射撃で赤黒い液体により作られた生命体のほとんどは死滅した
「うぉー!流石っすね!姐さん!」
「助かりました、ありがとうございます」
『どういたしまして。で、どうするの?スティーブン先生~?撤退するの?』
出来た余裕、変わる状況、見えてくる勝ち筋
クラウスさんの頑固さを知るスティーブンさんは素早く認識を切り替えた
「ザップ、ツェッド、クラウスが血界の眷属の元まで辿り着けるよう道を切り開くぞ!」
「「了解!」」
「K・Kは主観でいい、危険度の高い奴から殲滅していってくれ!」
スティーブンさんの足元から広がる氷結
物理的な寒気と精神的な寒気は僕を意識を切り替えさせ、神々の義眼は発動する
笑う人並み以上に開く口、鋭く赤く光るその目
「全員!奴はここで仕留めるぞ!」
やってることはいつもと同じ
僕達ライブラは目の前の化け物へ、血界の眷属へと挑み始めた
☆☆☆
「ブレングリード流血闘術111式!十字型殲滅槍!」
「AGYARIIIIIIIIIII!!!」
笑う吸血鬼の全身から流れ落ち続ける赤黒い何か
それは獣や人型の他、魔獣にも似た正体不明の生命体を産む源であり、KKさんのカバーがありながらも斗流血法の二人を押さえ込めるほどの数を産み続けていたが、なんと吸血鬼の近くでは生命体を生み出す以前にそのまま武器として扱えるらしい
刀のように形取れば刃に、先を尖らせては巨大な針に、その勢い、物量、圧力に任せ、クラウスさんの十字架の槍を相殺していた
「エスメラルダ式血凍術!ランサデルソルアブソルート!」
しかもその自在さから壁を作ることでスティーブンさんの攻撃を通さない
それどころか6つの巨大な針となって飛ばしてきた
「エスメラルダ式血凍術!エスクードデルセロアブソルート!」
氷の盾はスティーブンさんの命を救うが...
「AGRI!」
それは狼のような生命体となり、クラウスさんとスティーブンさんの二人へ飛びついた
必ず仕留めるという意思のもと二人を圧し潰すためか、上から巨大な腕を模した赤黒い何かを添えて
『954ブラッドバレットアーツ!STRAFINGVOLT 2000!』
「ブレングリード流血闘術117式!絶対不破血十字盾!」
とは言え、こちらはこと化け物相手ならプロ中のプロ
狼はK・Kさんの銃撃で、巨大な腕はクラウスさんの十字架の盾で何とか防ぐことが出来た
「スティーブン、K・K!今だ!」
そして出来るは反撃の一瞬
「エスメラルダ式血凍術!エスパーダデルセロアブソルート!」
『954ブラッドバレットアーツ!Electrigger 1.25GW!』
全てを凍らせる氷の刃と鋭く放たれる強力な電撃の銃弾
とても避けきれる速度ではない攻撃
だが危機を察した血界の眷属は赤黒い何かを触手のように展開することで、ただそれが粉々になるだけで済ませた
本体にダメージは与えられない
しかし、攻撃手段を失った血界の眷属との間合いはクリアとなった
「ブレングリード流血闘術111式!」
その隙を逃さず、クラウスさんが一気に距離を詰めた
「十字型殲滅槍!」
出せる量は無限でも操れる量は有限
攻撃手段の殆どが生命体の生成だったのは、それには制限がなく自動的に出来たからだろう
効率的な攻撃ならそれに全力を
だがそれは逆に、赤黒い何かをそのまま操るには、距離の他集中力などのいくつかの条件が必要であることを示す
あからさまに生命体なんか産み出さず、そのまま広がせ自由自在に操った方がいいのは誰の目にも明らかだった
クラウスさんはその事を分かってか、敵の今ある赤黒い何かの殆どが壊れた瞬間を狙い、十字架の槍をその身に叩き込んだ
しかし、敵とて一枚岩じゃない
「UGIAAAaaaaaaa!!!」
狂喜的に笑いながら、右腕を犠牲にすることで直撃を回避する
それどころか左腕から赤黒い何かを出し、即座に蜘蛛の糸のようにして飛ばしてきた
「...っ!?」
クラウスさんは瓦礫を大きく踏み込むことで宙に上げ、さらにはそれを殴り飛ばし絡めとられそうになるのを回避する
「エスメラルダ式血凍術!アヴィオンデルセロアブソルート!」
加えてその攻撃の瞬間に召喚された生命体を全て凍結
僕達は一度、態勢を取り直した
生命体の退治に尽力していた斗流の二人も、その凍結にあわせて血界の眷属と距離をとる
「やはり腕の欠損ぐらいは簡単に直して見せるか」
血界の眷属はその間で赤黒い何かから1本の腕を形成した
しかもクラウスさんに対抗するためか、その腕はゴツく厳つく生成され、本体へと繋がれる
血界の眷属に備わる無限の再生、ライブラにとって分かりきったことだが、分析と消耗のためとはいえ改めその理不尽を知らされると来るものがあった
「戦って分かりましたけど、あの野郎から出てくる奴は全部同じ耐久度っすね」
「それに種類は様々ですが、どの個体も強くなる様子はありません」
しかし、我々とて無謀を犯したわけではない
分析のための戦闘で斗流の二人から有利な情報がえられた
だが、スティーブンさんの冷静さは常に状況を細かく分析し、最悪を想定する
「だが変態はある。形態が自由な分、対策はし放題だ」
僕らの視界に映るシンプルそうな見た目だが防具をつけた新たな生命体
好転した状況は徐々に悪化しているのが見てわからされた
絶望そのものだが一方で、それを見たクラウスさんがどこか訝しむ様子を持っていた
「レオ、あの赤黒い液体が何で出来ているか見えるかね?」
「け、血液が混じっているのは分かります。
何かしらの魔術と呪術が施されていることも分かるんですが、それ以外は何も...」
「見えないって言うのか!?」
「ち、違いますっ!見えてはいるんです!でもそれ以外が何なのかは僕には分からないんです!
あ、でも!武器が触れたら終わりの呪詛を混ぜたあの赤黒い奴だけなのは間違いないはずです!
僕の目に他の特殊な隠し玉は見えません!」
見たままの事実、未熟ゆえ詳細なことは分からずとも、一つでも多く情報を伝える
怒られると思っていたが流石のスティーブンさんもこれでは仕方ないと納得してくれたようだ
「となると...読めないなあの血界の眷属、次元はそう高くないはずだが初めてみるタイプだ」
「喰種じゃない駒は始めてですよね、
強さでいえば喰種の方が強いですが、量が文字通り無限のこっちの方が充分厄介っすよ」
「奴の好みか?近くで倒れている警官の血を吸う様子もないぞ?
あれだけの力があるなら喰種化させた方が強いの兵隊を作れるだろうに」
ライブラの戦闘における経験上、吸血鬼の特性はもっと厄介なものだと知られている
再生力、破壊力、対応力、戦闘能力、特殊能力然り、耐久性、順応性、成長性 etc...
勿論、今相対しているのも厄介なことこの上ないが、どうも吸血鬼対策のプロであるスティーブンさんとクラウスさんにとっては、腑に落ちない点があるらしい
「工夫のない戦闘、楽しむような様子、悪意のない純粋な好奇心混じりの殺意...クラウス」
「あぁ、分かっているともスティーブン。
まるで幼児のような行動原理、恐らく奴は長老級など足元にも及ばない新生児クラス
まだ作り出されて間もない血界の眷属だ」
直接渡り合った最も信頼できる二人の考察
それは良くも悪くも僕達の心境を大きく左右した
まだ経験が足らず通常よりも弱いと言う安心に対して、ここまでの強さを持っていてまだ成長する余地を大きく残している面倒臭さ
「よし!となればここでデバガメド変態眼球の出番だ!」
ザップさんは後者だったらしい
「おら!さっさとあの野郎の真名を見抜いてやれ!」
戦闘が面倒臭くなるなら出来るだけ早く家に帰りたいようだったが、僕はそんなザップさんの命令に無言で返す
「ん?どうした少年?」
視界に映るのは笑う血界の眷属
見つめても、見抜こうとしても、見通しても、浮かび上がることのない言霊
僕の額に流れる滝のような冷や汗
これ以上黙ったままではいられない
「さ、さっきから、み、見えません...っ、奴の真名っ、文字一つとして浮かび上がりませんっ」
僕は見たことをありのまま上司へと伝えた
「なんだとっ!?」
「まさかっ!?そんなわけがない!?」
この場にいる全員がその事実に驚愕する
鋼の精神を持つクラウスさんですら目を見開くほどだが、よく考えてみればそれもそうだろう
そもそもライブラが血界の眷属用にとその全霊を賭けて用意できた最大戦力が、クラウスさんと奥義である封印技のみ
そんな技ですら条件として、存在を確定させる名が必要となる
「原因はわからないのか!?もう一度ちゃんと見てみろ!見逃しているはずだ!」
「そうだぞ陰毛頭!真面目にやれや!冗談言ってる場合じゃねぇんだぞ!」
つまり現状、目の前にいる血界の眷属との戦闘で勝利する手段は存在しないのだ
「冗談なんかじゃ...だ、駄目です!やっぱり、一文字も見えませんっ」
文字通りの絶体絶命
「どういう...っ!」
原因究明する暇なく、斧に似せた武器を持った何体かの巨体の人型が飛び込んできた
「二人とも危ない!ブレングリード流血闘術117式!絶対不破血十字盾!」
「斗流血法カグツチ刃身の四!紅蓮骨喰!」
ふるい落とされる巨大な斧にぶつかる無数の十字架の盾と大剣
「斗流血法シナトベ身刃の伍!突龍槍!」
振り回される槍から出る風の刃に、巨体故の遅さから咄嗟の退治が間に合うが…
『クラウス!前方多数!今度は本体も飛び込んでくるわよ!』
KKさんから伝えられるのは最悪の現状
「ありえないっ、そんなはずは...っ!?」
正規の攻略法が使えると言う前提だったからこその見えていた終わり
「いや、仮にそうだとしたら...っ!」
しかし、それがないのであれば、今あるのは終わりのない戦闘と死なない敵に増える敵
消耗させることはできるだろう、市街地に影響がないように押さえることはできるだろう
ただ、それをし続けることは100%不可能
それを一番に理解するスティーブンさんは戦慄した
こちらに飛び込んでくる無数の巨大な敵を前にとれる策の無意味さに絶望しようとした
「ブレングリード流血闘術111式!十字型殲滅槍!」
だが、地面に突き刺さった十字架の槍が、突如として前方一体を吹き飛ばした
その風圧に圧倒されるのは混乱する僕達の思考
「レオ、スティーブン、認識を改めたまえ、我々の戦いはまだ何一つとして終わっていないぞ」
僕達は獣のごとく燃え盛る闘志を目の辺りにした
「確かに現状、我々に奴を封じる手段はない」
困難に対して屈しないその強い心
「加えて、やつの武器は無限そのもの。消耗戦となれば敗北するのは我々であり、このままではそうなることは必然だろう、となれば状況は最悪と言っていい」
折れることのないその精神力
「だが我々はまだ...死力を尽くして、前へと進んでいる!」
眩しいほどに純粋で歪みのないその意志
「例え可能性が極僅かであろうとも、例えこの歩みが些細なものであろうとも!我々は歩みを止めずにここにいる!」
僕らは今日も例外なく、クラウスさんに勇気付けられた
「であるならば誰が諦めると言えようか」
僕達は言われた通りに認識を改める、諦めかけていた意識を切り替える
「光に向かって一歩でも進もうとしている限り、人間の魂が真に敗北することなど...断じてない!」
その言葉は僕の憧れであり、僕の魂に根付いた一つの勇気
「それに、ヒントはあった」
闘争心に火をつけたかと思えば、クラウスさんはさらに攻略の第一歩を踏み出してくれた
「レオ、確か奴の武器であるあの液体には魔術と呪術が混じっていると言ったね?」
「は、はい!」
「あれは正確には色で分けると魔術は血の赤、呪術は呪詛の黒と分けられるのではないか?」
「…っ!?」
クラウスさんの指摘に僕は戦慄する
実際に見分けてみると言った通りに黒色は呪詛の塊だったことが分かった
「ちょっと待てっ...そうだ、そもそもなぜ血界の眷属が呪術なんてものを使っている?」
僕がその疑問に頷き肯定で返すことで、スティーブンさんが持ち合わせる情報から不審な事実を抽出する
呪術という人間が感情から生んだ人間の魔術について
だが、クラウスさんにとってそれは真実の解明に至るものではないと思っていたようだった
「その疑問も最もだがスティーブン、それ以前にまだ気になることが一つある
なぜ奴は牙狩りである我々ではなく、固執に星詠の子を狙うのだ?」
クラウスさんの中でもっとも引っ掛かっていた根本の疑問
それは後ろでただ立ち尽くすだけの女性についてのことだった
「星詠みの子だからと言う理由もわかるが、どうも私には彼女だからこそ狙っているように見える」
星詠みの子は血界の眷属にとって最大の食材、次元を越える糧の一つだ
ライブラ全員は正確な理由までは分からずとも心のうちでそれが原因だと思っていたが、クラウスさんにとってそれは腑に落ちないようだった
そしてその思考は次の確認で全員に伝達される
「それにレオ、君はモニターで最初に彼女を見た際にこう言ったはずだ『呪詛の塊』と。」
僕の頭に殴られたかのような衝撃が走る
そうだ、なぜ忘れていたっ!?
あの黒は…!
「クラウスさんっ...あ血界の眷属から出る黒はっ!星詠みの子の体に染み付いた呪詛と全く同じ色ですっ!」
「「「...っ!?」」」
そうだ、忘れていた、奴と彼女の間には大きな繋がりがあったのだ
元々、血界の眷属は個として完成された存在
他種族との関係なんてあるはずもない、仮にあったとしても、完成に不完全が引っ付くことは強力ではなく、弱化を意味するのだから
しかし、完成した個だからこそ、神々の義眼は血界の眷属の真名を見抜く
つまり、真名が見えないと言うことは、個として不完全に陥っているから
となれば、その理由のなかで尤も有力となる候補は…
「ライブラ各員に伝達!我々は今から星詠みの子こと『ティアマト』の守護、並びに、レオナルドによる真名看破のための時間稼ぎを行う!」
クラウスさんは血の十字架を作り出して回転させた
「ブレングリード流血闘術11式!旋回式連突!」
回転しながら飛んでいく十字架に蹂躙されていくのは赤黒い無数の生命体
「行けレオナルド!彼女を読み解き、手始めに世界を救うのだ!」
僕は星詠みの子の元へと走り出した
はずだった
「その必要はない」
突如、僕らの間を患者衣を着た僕と同い年ぐらいの青年が通り過ぎた
あまりに自然で認識できなかった人の気配、
視界を疑った僕は視線を彼に向けようとしたが、いつの間にか血の杭で靴を地面に繋げられていた
「確かに彼女を見解けたなら、あいつの名前は見れただろう」
さらには誰よりも早いその身軽さで、クラウスさん以外の全員を地面に血の杭で固定した
「彼女を知ったのなら...全てにかたがついたはずだ」
敵意を欠片も感じない、全員が動けなかった
気配の穏やかさも相まって驚愕すら遅れてやってきた
「でも、それは俺が許さない」
クラウスさんですらその速度を前に、攻撃の手を地面へと押さえつけられる
しかし、感じられない悪意に僕達は敵意を抱けない
無慈悲な好奇心も、醜悪な殺意も、死の予感も覚えられない
それどころかその異様な雰囲気に、彼からはクラウスさんとは違う暖かな安心を感じていた
「これは彼女が背負ったものだ」
彼の目的はなんなのか、分からずとも彼の狙いは分かる
腰まで延びた透き通る白髪を揺らしながら彼は血界の眷属の元へと進みだした
「これは彼女が願ったことだ」
一歩踏み出すごとに彼の体に血のように赤いヒビが入る
そして、元々ライブラ幹部ほどあった彼の速度がさらに増す
血で作られた小手により気付けば周囲の赤黒い生命体が全て弾けて死んでいた
「これが彼女の呪いの結果なんだっ!」
いつの間にか笑みの消えた血界の眷属
その表情は予想外にも怒りに満ちており、彼が接近した直後、背から赤黒いなにかを展開して彼に襲いかかった
「だからこそ...俺が全てを終わらせるっ!」
しかし、目にも追えぬ速度で飛び出した彼に当たるはずもなく、逆に血界の眷属は首を掴まれ地面へと叩きつけられた
「...彼女は生まれた、彼女は孕んだ、そしてお前はこの世に生まれ落ちた」
彼は唄う、どうやってか血界の眷属を無力化し、苦しめながら平然と唄う
「そこで与えられたものこそ彼女の権能。保護の為、保全の為、お前の為、彼女はお前に己が力を譲渡した」
突如、血界の眷属の心臓部が黄金に輝き始めた
「それは呪いにあらず、慈愛に満ちた庇護の証そのもの、だが返却の時が来た」
この光が他の人に見えているのかいないのか、わからないが圧倒的な光量に僕は見逃してはいけないと悟る
「憎むだろう、怨むだろう、蔑むだろう、わが蛮行は正義にあらず」
彼が振り上げるは空いている右手
「だがこれは全て、庇護からの脱却を願った己のせいであると知れ」
その手先は光る心臓部へと向けられ...
「カリスシュバリエ呪血法、呪能強制手奪」
案の定、彼は血界の眷属の光る心臓をその手で貫いた
赤く染まる彼の手に掴まれたのは心臓ではなく、見たことのない黄金に輝く一つの破片
「金の杯...?」
煙のように彼の体内の中へと消えてったその断片から、全てを見抜く神々の義眼は杯を透写した
それはもう、美しい杯を
UGAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!
しかし、突如として赤子のような悲鳴が僕達の耳をつんざく
その声明には怒りに満ちており、肌を撫でる殺意にライブラ全員の意識は厳戒態勢へと移った
「「「「っ!?」」」」
だが、変異する状況に彼を除く全員が戦慄する
血界の眷属に施された"呪詛の塊"言わば"呪術"が、貫かれた心臓から全身へと駆け巡り解けていったのだ
AAA...Aa...a...a...っ!
展開されていた赤黒い何かから黒が蒸発していく
a...アぁ...あァあ...っ!
残る生命体も例外なく弾け消えていく
「ふ、ふ、、ふざっ、ふざけっ、けけ、るな、るなっ!」
場に残るのは赤色の血を体に纏う一人の少年
理性的に、理知的に、利己的に、血界の眷属から狂気が消え去った
さらには…
「え?名前?」
「?」
「クラウスさん...真名、写らなかった真名がっ!見えるようになりました!」
「っ!?」
何をしても見えなかった名前を捕らえることが出来たのだ
「コロシテヤルっ!!」
原因はなんなのか、究明している暇はなかった
血界の眷属が荒れ狂う怒りを元に患者服の彼を襲いかかった
「カリスシュバリエ呪血法、極の番、第一クラス、狂戦士」
全身に赤いヒビの入った彼は、高まった身体能力と血で作った小手を武器に血界の眷属へと立ち向かう
相手は無限の再生力と強大な力を持つ血界の眷属
実力差は人間と比べてははっきりしていたが、その動きがまるで喧嘩したての子供のようで、彼はすれ違い様に血界の眷属の左手をもぎ取った
「「「「...っ!?」」」」
鮮やかな手口、一般人の僕でもわかる
いくら相手の動きが悪かったとしても、あの動きはそれ相応の技術を積んだ者の動きだ
「レオナルド!すぐに真名看破をっ!チャンスだっ、隙をついて封印をする!」
続け様に拳を振り落とす先は右ひざ裏
叩き切り落としたことで血界の眷属は転け、そしてその瞬間をクラウスさんは見逃さなかった
命令を聞いた僕は直ぐ様、携帯で真名を綴った文字を送る
ガアアアアアァァァァァっ!!!
しかし、血界の眷属の殺気に満ちた苦痛まみれる叫びが響いた
「...っ!喚くなっ!これを望んだのはお前だろうにっ!」
何故か傷を治さない血界の眷属を前に、叱るように彼は怒鳴る
その表情は今にでも泣きだしそうなほどに歪みきっていた
「ゴロ、ころすっ、すす、ころす、コロスっ!」
這いつくばりながらも睨む姿に、彼は両手を広げ叫ぶ
「憎いか...俺が憎いかっ!そうだろうなっ...お前からしたらこんなに理不尽なことはない!」
まるで受け入れているようだった、血界の眷属の殺意をひたすらに
「でもこれは!お前が望んだことだ!お前がっ!願ったことだっ!」
血界の眷属は集中する、言葉から声からその表情から、殺意を彼に集中させる
「来いよ!俺が俺の正しさに従うようにっ、お前もお前の願いのためにっ!俺を無惨に、殺して見せろ!」
「ゴロズっ!!!」
ついに欠損した体で、獣のように彼の元へと飛び込んだ
「その願い、その成就っ、我々が許しはしない」
自然界において生物が最も油断する瞬間はいつの時代も変わらない、
肉食獣のように捕食者が獲物を捕らえる瞬間にこそ、攻撃を喰らわす瞬間
血界の眷属の手先が彼の肉体へと触れる直前、クラウスさんの拳が横腹に打ち込まれた
「アッカドエヌマ・ラハムエリシュ、貴公を密封する!」
クラウスさんの血が血界の眷属の体内へと流し込まれた
「憎み給え、許し給え、諦め給え、人界を護るために行う我が蛮行を」
逆さ十字に縛り上げられる肉体
「ブレングリード流血闘術999式!久遠棺封縛獄!」
血界の眷属は患者服の彼の目の前で、ようやく小さな十字架に密封された
「...ふぃ~、なんとか終わったな」
脅威は去った、となれば後に残るのは本来の目的である星詠みの子と誰かも不明な目の前の血法使い
何か異常があった場合、僕が一番見逃してはいけないため、ザップさんが気を抜いても僕だけは彼を見続ける
「…」
彼は泣いていた
一筋の涙を流しながら血界の眷属が封印されいる十字架を拾い上げ握りしめていた
「ティア...終わったよ」
ポツリと呟いたかと思えば、突然振り返り僕達のいる方向へと歩きだす
いや、実際には星詠みの子の元へと進みだした
「...やっぱり、変わらなかったね」
見た目からして年齢は僕とそんなに大差はないだろう
だがそんな彼は今、全身傷だらけの重傷
本来ならばそんなボロボロの彼を僕達はすぐにでも保護しに向かわなければならないが、今は何処と無く話しかけてはいけないような感覚に陥っていた
「分かってはいたけど...やっぱり苦しいな」
悲壮感に満ちたその歩み
まるで墓参りにでも行くように見えて、僕達は厳戒態勢を取りながら彼の行動を見守った
「あぁ、悲しいね...君はただ、愛したかっただけなのに...」
ずっと立ったままの星詠みの子
その元へと辿り着いた彼は、手の平に持っていた十字架を乗せ、彼女へそれを差し出した
A...Aa....
すると、目の前でどんなドンパチがあろうとピクリともしなかった星詠みの子が動き始める
十字架を受け取ると彼女は小さく哭き、膝を地面について踞まった
差し出された十字架を大切そうに胸に抱き止めたのだ
「...大丈夫、約束は絶対に守るから」
彼はそんな彼女を上から抱き締める、安心させるように抱き締める
そのお陰か、気絶した脱力した彼女を彼は優しく抱き上げた
「…」
彼は通ってきた道を戻る
一歩づつ力強く踏み締めながら、彼女を大切そうに抱え、クラウスさんの元へと向かった
その光景を見たスティーブンさんが何かあっては困ると、あからさまに厳戒態勢を取ろうとしたがクラウスさんがそれを止めた
相対するクラウスさんと彼
「...貴方を、信じます」
彼はあれ程までに大切そうに抱えていた星詠みの子をクラウスさんへ預けた
「貴方はティアを守ろうとしてくれた、他とは違う...貴方は大丈夫だと信用します」
感情を読み取らせないその瞳
彼らがどんな人生を辿ったのかは知らないが、彼から出る気迫とその台詞から僕らの想像よりもひどい目に遭っていたであろうことは容易に想像できた
「だから...後は...よろしくお願いします」
それを想像できてしまったら最後、我らがリーダーに響かないはずもない
「勿論だとも、任せたまえ」
クラウスさんの決意にかれは嬉しそうに笑い、そしてその場に崩れ落ちた
クラウスさんはこれ以上怪我しないように彼も抱き止める
「...なんだったんだ一体...」
スティーブンさんの疑問を最後に、今日の仕事は終わりを向かえた