幻想郷……?賢者……?なんの話をしてるんだこの人。とりあえず今のところ敵意は無いみたいだが……。
突如出てきた聞き馴染みのない単語に困惑していると、彼女が不敵な笑みを浮かべながら喋り出す。
「ふふっ……それにしても驚いたわ。いつから私の存在に気付いてたの?」
「最初からだよ。オレが鬼とやり合い始めたあたりからずっと見ていただろ。」
「へぇ……完璧に気配を隠していたつもりだったのだけれどね。」
「…どれだけ上手く隠密しようが意味ないよ。オレは生物の気配を"感じ取る力"
を持ってるからな。」
そう、オレは物心がついた頃から生物の気配を異常なまでに感知してしまう体質だった。街を歩けばすれ違う人々の気配を自分の意思とは関係なしに感知してしまい、情報の過剰摂取で幼少の頃はよく熱をひいて寝込んだものだ。
今では訓練の成果で、ある程度の制御が出来るようになった。それに加え、 生物の感情までも感じ取りその者の行動を少しだけ先読み出来るようになるまでに成長した。ある種のテレパシーだな。そのお陰で先程の対鬼戦も命からがら生き延びることが出来たわけだ。
「それで、だ。紫さん、アンタは何故あの鬼を利用してオレのことを襲わせた?オレが何かアンタの気に障るようなことをしたか?」
「いいえ何もしてないわ。と、いうより私は貴方を殺そうとなんて微塵も思ってないから警戒を解いてくれて大丈夫よ。ずっと気を張り続けて疲れたでしょう?三ツ谷 界人くん?」
オレの名前まで知ってるのかよ……もしかしてストーカー的なアレなのか?面倒な人に目をつけられたな……。
だが、殺す気がないのは多分本当だろう。いきなり襲われても対処できるよう先程からずっと警戒をしていたが攻撃してくるような素振りは見られなかった。
オレは警戒心を解き、ほっと肩をなでおろしながら近くのベンチに腰をかけた。紫さんがふわりと宙を浮遊して裂け目の中から出てきた。そのままゆっくりと降下し「失礼」と言いながらオレの隣に座り込んだ。そしてオレの目を見ながら話の続きをする。
「簡単に言えば貴方を試したのよ。現状の貴方の力で鬼とどれくらい戦えるのかを見たくてね。」
「試すって……危うくぶち殺されるとこだったんだが??」
「あら、本当はもっと早く中断させるつもりだったのよ?ただその……思ってた以上に貴方が優秀だったからもうちょっと見てみようかなって思っちゃって……ごめんね?」
紫さんは舌をペロッと出してウインクをしながらあざと可愛く謝ってきた。絶対反省してないな……。
この人とは初対面だがもう既にどういう人物なのか大体わかった気がする……。
「まぁ結果的に生きてたから別に良いけどさ……。で、オレが優秀だったっていうのはどういう基準で判断したんだ?」
「そうね、まずはシンプルに戦闘センスが高いってとこかしら。鬼の攻撃を華麗に躱してみせたあの身のこなし……護身術の心得がある様に見えたわ。それと冷静な状況判断力ね。普通の人間は鬼と対面してあんなに落ち着いていられないわ。そして、鬼の攻撃を受けてボロボロになりながらも決して諦めなかった強靭な精神力。とてもカッコよかったわよ♪───とまぁこんな感じかしらね。」
スラスラと分析したことを並べた紫さん。どうやら随分としっかり観察されてしまったいたようだ……最後の一言は別に無くても良かった気がするが。
「界人くん、貴方の腕を見込んで頼みがあるわ。私と一緒に幻想郷へ来てくれないかしら?」
その言葉発したと同時に紫さんの雰囲気が変わった。どうやらここからは真面目な話になるらしい、そのことを悟ったオレは姿勢を整え改めてきちんと座り直した。
「幻想郷……さっきも聞いたなそれ。どこのことだ?」
「簡単に言えば今私たちがいるこの世界とは別の異世界のことよ。空を飛んで魔法を使って、神様や妖怪なんかもいたりもするわ。貴方たちにとっての非現実が現実にある世界、それが幻想郷よ。」
……魔法…神様……普段の生活ではあまり聞き馴染みの無い単語が次々と出てきて少し頭が痛くなってきた。にわかには信じ難い話ではあるが、つい先程鬼と戦ったばかりだからな。信じざるを得ないか……。
頭を悩ませるオレを見て紫さんは一瞬クスッと笑みを零し、すぐに話の続きに戻る。
「……ここ最近その幻想郷を襲撃して壊滅させようって企んでる輩たちがいるのが確認できてね。私はその輩たちから幻想郷を守るために共に戦ってくれる有志を探していたの。その結果たどり着いたのが貴方よ。」
「あーひとつ質問。紫さんって綺麗な容姿してるけど実は相当強いよな?それこそさっきの鬼がまるで赤子のように思えるくらいに……。そんな人が助けを求めざるを得なくなるほどの一大事にオレなんかが介入したところで何かが変わるとは思えないんだが…。」
「心配することはないわ、貴方は貴方が思ってる以上に高い潜在能力を秘めてるのよ。なんせこの私が見込んだ男なのだからね。」
……何故この人は知り合ったばかりのオレのことをここまで評価してくれているのだろうか?一瞬はオレを調子に乗らせるために都合のいい言葉を並べているだけかと疑ったが、この人は出会ってからずっと本心でしか喋っていない。"感じ取る力"で常に紫さんの感情を読み取っていたからわかる。
「──まだ聞きたいことはいくつかあるが今はまぁそんくらいで充分だ。紫さん、アンタの言葉を信じるよ。だからちょっと着いてきてくれ。」
オレはベンチから立ち上がって歩き始める。
「え?いいけど……どこへ行くの?」
「オレん家。オレが幻想郷に行くかどうかはちゃんと家族と話し合って決めることにするよ。」
紫さんはクスリと笑みを浮かべ、ふわりと宙を飛びながらオレの後をついてきた。
それにしてもかつてないほど破天荒なバイト帰りだった。オレは溜め息を吐きながらやっとの思いで帰路に着いた。
「あ、そうそう。貴方を選んだ理由ね、戦闘面の才能だけを見たわけじゃないのよ。他にも理由があったんだけどなんだと思う?」
「……さぁ?」
「正解はね、貴方が私の好きな異性のタイプにどストライクだったから♪しかも見た目と性格両方♪さっきしれっと私のこと『綺麗』って言ってて少し照れちゃったもの♡どう?嬉しい?───って界人くん?どうして無言で歩くスピード上げるの?照れちゃった?照れちゃったの??…………それともただ呆れちゃっただけ??」
第3話を閲覧頂きありがとうございました。
日本語力が無さすぎてつらい…
次話の閲覧も是非ともよろしくお願い致します。