鬼神憑依譚   作:五月雨@ノン

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※キャラの捏造と独自解釈、ネタバレ要素ありますのでご注意ください







遭遇

 

 

「なるほどな」

 

 

 宿儺は水面に映る()()()()()()を持っている至って普通である自分の姿をしげしげと見詰めていた

 

 

「どうやら俺がこの体になったのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()故か」

 

 

 簡単に言うと、俺の呪力に体が追いつかなかったということだ

 

 

 俺に匹敵する呪力の持ち主ならば五条悟や乙骨憂太などが上げられるだろう。

 だが、そのどちらも呪術師名家としての血筋を引いているが為に膨大な呪力の器としての体は生まれたその時から既に出来上がっている

 

 

 それに比べて俺にはそのような血は引いておらず、呪術のじゅすらも知らないような一般人から産まれたのであろう。その為、体は呪力を受け入れる肉体としては五条悟や乙骨憂太に劣っている。あるとするならば、頑丈すぎる位の身体と平凡ならざる才能である。

 俺の呪力量は並の身体では膨大すぎる呪力に耐えきれずに生まれることすら出来ずに死ぬか、生まれたとしても、その瞬間に風船のように破裂するだけだろう

 

 

 だが、宿儺の身体が異常なまでに頑丈であることが幸をなし、宿儺は無様に死ぬことは無かった。それでも呪力の器として完璧という訳にもいかず、それを持て余すことになる。

 

 

 そこで宿儺は持て余した呪力により持て余さぬようにと無意識の内に新たな器官を作った。それが四つの腕と目である

 

 

 正しくそれは変異と呼ぶに相応しく、宿儺の類稀なる才覚があったからこそ成せた技であろう

 

 

 要するに腕と目は宿儺の保有する膨大な呪力の逃げ場であり、それ故に呪力を抑えればその余分に作られた器官も無くなるのが道理であった

 

 

「本来の俺ならば呪力を抑える必要と感じてなかったが故にあの姿だったのだろう。だが、今の俺は相手に実力を、恐怖を叩き付けることは必要としていない」

 

 

俺は川辺から立ち上がり、近くにあった少し大きめの木から周辺を見回してみると五百メートル程先に小さな村があることに気が付いた

 

 

「行ってみるか。俺を見た際の客観的な反応も必要だろうしな」

 

 

俺は木から飛び降りる。高さは六メートル程であるが難なく着地し、そのまま村へと歩みを進める

 

 

 

 

その時、音が聞こえた

 

 

「ッ」

 

 微かに耳に響いた聞くことの出来る筈の無い音に、俺はその音の方向、村の方へと耳を研ぎ澄まさせる。

 だが、何時まで経っても先程の音が俺の鼓膜を揺らすことはなく、森のざわめきのみが響いていた

 

 

「気の所為か....?」

 

 

 自分にそう言い聞かせるようにそう呟くが、心の凝りはどうも取れなかった。俺の耳には未だにあの音が色濃く残っており、違和感を拭えなかった。

 俺の鼓膜に響いた音は、まるで法螺貝吹いたかのような響きに加え、車のクラクションを押した音を合わせような音だった

 

 

 その音を出せる物に俺は一つだけ心覚えがあるが、この時代には無い代物である

 

 

「気の所為だな」

 

 

 自分にそう言い聞かせ、動揺する心を押さえ付けるように落ち着かせる

 

 

 だが、どれ程落ち着かせようとも心は何かを訴えるように頭には嫌な予感が何度も過ぎっていた

 

 

(何だ、一体あの村に何があるんだ――)

 

俺は一抹の不安を覚えながらも足を進めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたが、特に変わった様子も無いな···」

 

 

 俺は村の中を悠々と闊歩しながらも、チラチラと余所者である俺に目を向けている村の者達の様子を伺い、村人達から恐怖等といった情が無いことから自分が上手く人として溶け込めていることに口角が僅かに吊り上がる。

 どうやら俺の呪力が抑えられたことによって無意識に醸し出していたバケモノとしてのオーラも鳴りを潜め、強面だが顔が整っている子供程度でしかないようだ

 

 

 本来の俺宿儺ならば凡百に間違われることに憤り、村人達を惨たらしく殺すだろうが、今の俺にとっては都合の良いことは確かであった

 

 

 いざ!情報を聞き出そうと丁度良さそうな村人がいないかと吟味していると、やぁ〜い!と元気のいい声と共に複数人の子供の嘲笑が聞こえる。

 それに、只事では無いなとその声の元へと気配を最大限に殺しながら近付いて行く

 

 

 近付く度にその音は鮮明になっていき、石を投げる音や蹴りつける音、バケモノや気持ち悪いといった言葉からどのようなことが行われているのか嫌でも察することが出来る

 

 

 建物の角から僅かに顔を出せば、十数人程の子供等が一人の女の子に対して、暴力や暴言を吐いているようだ。

 チラリと隙間から見える、理不尽を強いられている当事者の女の子は白髪であり、子供等の言葉から白髪がこの村では怪物の証であることは察せた。

 しかし、やっていることは白髪の女の子の意志を無視した度の越した嫌がらせであり、褒められることでは無い

 

 

だが、子供等からは悪意無く、寧ろ怪物を退治して両親を喜ばさんとする善意がそこにあった。

 悪意無き、その行動に俺は絶句するが、この歳の子供では善悪の区別がまだついていないことが多いかと納得する

 

 

 正直、止めに入りたいとは思うが、この村では俺はただの余所者であり、村人達の心象を悪くするような行動は情報収集の妨げになる為、避けておきたい。

 そんな俺にも反吐が出るが、今後の方針にも関わることでもある為、そこは妥協する訳にはいかない

 

 

 まぁ、あの子供等が去った後なら包帯で治療位ならしてあげた方が良いよななんて考えている内にふと、視線を感じた。  

 まるで珍しい虫を見たように、実験に耐え切ったモルモットを見るような、そんな薄気味悪い視線が俺を突き刺していた

 

 

 視線の主を辿ると、その主は今、正に子供等から酷い仕打ちを受けている白髪の少女だった。その少女は、暴言や石を投げる者達は眼中に無いと言わんばかりに俺へと目を向けていた。

 その少女は、石や蹴られているにも関わらずにも服の汚れは目立つが外傷等は一歳負っていなかった

 

 

 それに加えて、よく見ればその少女からは恐ろしい程の密度で圧縮されたような呪力が点っていた。それに俺の背筋にゾクリと悪寒が走り、息を呑んだ。

 俺が注視しなければ気付けない程の隠蔽能力に、その歳でそれを成せる才能に。

 

 

 俺は、無意識に震えた

 

 

 虐げられているの白髪の少女はまごうことなきバケモノであると

 

 

 不味い、と俺の警鐘が鳴らした

 

 

 俺がこの場から離れようとしたその瞬間に呪力の波が解き放たれた。その呪力の波動は、村人全員を気絶させ、まるで突風でも吹いたかのようにギシギシと木造の木が揺れた。

 俺は風に吹かれながらもその発生源を、睨みつけるように目を向けた

 

 

 勿論、そこにいるのは白髪の少女

 

 

 何ともないように倒れている子供等を足場のように踏み付けながら、俺へとスキップするように近付いてくる。近付く度に少女の呪力の波動が俺に叩き付けられ、尋常ではない呪力量に目を剥く。

 呪力量だけ見るならば俺の方が一応上ではあるが、少女の呪力量も充分脅威であり、何よりも“何かある”のだという凄味が彼女にはあった

 

 

「ねぇ。貴方、名前は」

 

 

 鈴の音のような可憐な声とは裏腹に、溢れ出る膨大な呪力量はなんともアンバランスであった

 

 

「···宿儺」

 

 

 俺がそう答えると、宿儺と俺の言葉を呟き、ジロジロと不躾に俺の身体を隅々まで観察する。それに俺は若干身を固まらせながらも、警戒は解かないようにする。

 俺の足の爪先から天辺まで値踏みが終わったのか、ふぅんと言葉を洩らしながら俺を見た

 

 

「貴方もコレ、持ってるのね」

 

「呪力か、俺も持っている」

 

 

 俺が呪力を纏わせるとへぇと何処か感心したような声を目の前の少女は洩らした。それと同時に、更に呪力を解き放った

 

 

「私は来栖華(くるすはな)。急だけど、戦おっか」

 

「ッ!」

 

 

 俺は反射的に術式を発動させ、空の斬撃が来栖華に向かって解き放たれる。並の術師ならば反応する暇もなく切り刻まれてしまう程の速度に刀よりも鋭い斬撃。

 俺は放ってから直ぐに不味いと直感し、斬撃同士で相殺をしようとも考える。

 だが、同じ速度ならば先に放った方が早く着くのは道理であった。このまま来栖華が何もしなければ、彼女は文字通りに真っ二つになってしまうだろう

 

 

 そう、何もしなければ

 

 

 彼女はそっと右手を差し出す。まるで取るに足らないと言わんばかりに。

 それに俺は馬鹿か!?と口走りそうになるが、彼女がそうした理由は直ぐにでも分かった

 

 

 

 

 彼女に手に斬撃が触れた瞬間、()()()()()()()()()

 

 

「は」

 

「ふぅん。こんな感じなんだ」

 

 

 初めて自らの術式を行使したにも関わらずこの大胆な行動は感服ものであるが、俺は術式を消失したという事実に既視感に似たようなものを感じていた。

 いや、見たことは無い。だが、術式の消失させるというその能力に俺は、記憶の断片を繋ぎ合わせた

 

 

(術式の消去、膨大な呪力、白髪に、来栖華....ッ!まさか、あの()()()か!?)

 

 

 示し出されたのは、生前の記憶で朧気に覚えていた呪術廻戦の登場人物である天使を自称する来栖華。

 彼女は、術式を消すという術式の持ち主であり、正に術式を行使して戦うのが大半である呪術師にとっての天敵とも言える人物である。

 死滅回遊にて登場した宿儺と同じく千年前の呪術師である

 

 

 しかし、全くの同時期且つ、ほぼ同じ年齢だとは思っていもしなかった。生前の記憶ということに加えて、あまり目立った活躍もしていなかった為に、術式を目にするまでは本人だということに気が付かなかった

 

 

 そのことに後悔しながらも起こってしまったことはしょうがないと気を取り直しつつ、このままでは村の中で戦う羽目になる為、それは俺としても不本意であるので場所を変えようと願い出る。

 それに来栖華も別にコイツらが死ぬのはどうでも良いけど家が無くなるのは困るという同意を得たので、呪力で脚力を強化し、村から外れた野原へと一瞬の内に移動をする

 

 

「改めて、始めようか」

 

「あぁ」

 

 

 俺と来栖華の拳に呪力が灯り、鳥の羽ばたく音が合図となり俺達は拳を振るった。

 ぶつかり合う拳の威力に俺達を中心に風が渦巻き、雑草は大きく揺れ、空を飛んでいた鳥は風の勢いに抵抗出来ないままに吹き飛ばされる

 

 

 来栖華の拳を膂力と呪力で勝っている俺が押し退けていくが正面から力で戦うのは分が悪いと一瞬で察したのか、体を翻すことによって場を立て直す。

 無理矢理に押し返そうとするのではなく、立て直そうとする判断をしたことにこの歳でこの選択をすることが出来る判断力に舌を巻く

 

 

 だが、今は戦いの場である為容赦はしない

 

 

 術式を発動し、四つの空の斬撃が来栖華へと一斉に放つ。それに来栖華は、いつの間にか手に持っていたトランペット?みたいな物を吹くと空の斬撃がかき消され、その音が俺の脳をぐわんぐわんと反響し、俺の中にあった何かが消えた

 

 

「ッ!まさか、音で俺の術式をッ」

 

 

 俺は思わず動揺してしまうが、それを見逃す程に来栖華は甘くはなかった

 

 

 俺の懐へと一瞬の内で入り込み、俺の顎を狙った掌底が放たれる。一瞬だけ遅れて反応した俺はその手を掴んで真上へと放り投げた。

 五メートル程上に投げられたがクルクルと空中を優雅に回っているが落ちて来るのも時間の問題だ、俺は着地点を予め予測しておき、拳に呪力と力を込める

 

 

 衝突まで残り1メートルという所まで落ちてきた来栖華に渾身の力と呪力を込めた拳が振るわれる

 

 

「ほっ」

 

「ッ!?」

 

 

 だが、来栖華はまるで猫のようにするりと俺の腕へと絡み付き、俺の拳を回避する。それと同時に、左手を俺の体へと伸ばす。

 それに言いようもない嫌な予感を感じた俺は、大きく腕を振るうことによって横へと振るい落とした

 

 

 ゴロゴロと地面を転がり、一際跳ねた瞬間に空中でバク転をして体勢を立て直した。着物は泥で汚れているが目立った外傷は一つも無いことに気が付き、舌打ちを思わず洩らした。

 それとは対称に心底楽しいと言わんばかりにニヤリと厭らしい笑みを浮かべた

 

 

 嫌な感覚が消えると同時に、俺の術式は戻ってきた

 

 

「惜しい、直接触ったらどうなるか気になったんだけどな」

 

 

 綺麗な顔をしてとんでもねぇことを言う奴だ。密かに俺が戦慄しながらも、先程のラッパの音による術式の消去に対して、どう対策を取るか考える

 

 

 音に関係する術式は、脳に作用することによってその効果を発揮することが多い。それこそ、狗巻棘の呪言などもそれに当て嵌る。

 恐らく、ラッパの音に術式の効果を乗せる?ことによって術式を一時的に消したのだろう。ならば、あの攻撃の対策方法もそれに当て嵌る筈

 

 

 俺は一度もしたことのない耳から脳にかけての呪力操作に不安を感じながらも、特に淀みなく進んでいく呪力操作に改めて宿儺の才能の高さを実感する

 

 

 来栖華は俺の呪力操作に首を傾げているが、彼女も呪術師家系に生まれた訳ではないのでこの呪力操作に意味を見いだせてないだろう。

 実際、俺もなんの記憶も無しであの術式を喰らった場合に耳から脳にかけての呪力操作による防御など思いつく筈もないだろう

 

 

 

 考えても仕方ないと思ったのか、大きく息を吸い込んでラッパを大きく吹き鳴らした。

 言葉にしょうがない音と共に呪力が俺に襲いかかってくるが、俺の考察は正しかったらしく、先程のように脳に音が反響するようなことはなく、術式も問題なく使用可能のままであった

 

 

 俺は術式を発動させ、無数の斬撃が来栖華へと向かって放つ。術式が消えていないということに確かに動揺しつつも、ラッパを吹いて無数の斬撃を消そうとする。

 

 

 だが、あくまでも防げるのは術式のみである

 

 

 俺は転がっている小石を三つ程手にして、それをプロ野球選手顔負けのスピードでそれを投擲する。

 斬撃を消したと次の呪力を纏った小石の投擲に来栖華は目を見開きながらも呪力を腕に込めて防御をする

 

 

「ッ!」

 

 だが、痛みは無くとも衝撃までも完全に受け切れることはなく大きく体勢が崩される。

 それに畳み掛けるように俺は、来栖華の両肩に向かって斬撃を放つ

 

 

 それに驚異的な速度で反応をし、ラッパを地面に落とし、両手で俺の斬撃を見事に消してみせる。だが、体勢を崩され、その状態から両手を使った術式の行使によって隙は更に生まれる

 

 

 俺は足を地面が崩れてしまう程に大きく踏み込み、足の筋繊維一つ一つに呪力を流し、普段とは比べ物にならない程のスピード、音すらも置き去りにて俺は疾走する

 

 

 来栖華へと疾走している時に、ふと頭に過ぎったのは戦う前に感じた存在感と戦った時に感じるそれに違和感を感じていた。

 戦う前に、来栖華の身からはバケモノの気配を感じていた。だが、今は強いとは感じるが、決してバケモノなどとは到底思えなかった

 

 

 小骨が喉に刺さったような違和感に、俺は来栖華へと視線を集中させ、違和感は確信へと変わった

 

 

 彼女の目は俺を明確に視界に収め、口は三日月を描いていた

 

 

 不味いと思うと同時に、彼女の左手には落とした筈のラッパが握られていた。それに俺は愕然としながらも、拳を振るう。それと同時に、彼女もラッパを鳴らした

 

 

 プォォォン!!というラッパ特有の音に術式と呪力が乗り、俺の耳から脳にかけて流していた呪力の全てをかき消しながらその音を耳と脳に大きく反響させた。

 耳からプツリと何かが擦り切れたような音と共に、ゴポリと耳から暖かいものが流れた

 

 

「ッアァァ!!」

 

 

 俺は衝撃で吹き飛びそうになりながらも拳を我武者羅に突き刺す。吹き荒れる突風と共に、来栖華は大きく吹き飛び、木へとぶつかった後にズルズルと地面へと崩れ落ちた

 

 

「やったくれたな、女狐ッ!」

 

 

 俺がそう言うと地面に崩れ落ちていた彼女は大きく飛び上がり、その端正な顔を愉悦に染めていた。その顔は正に人を弄ば悪魔のようであり、俺は舌打ちを洩らす

 

 

「手に持ち続けていたそれ、攻撃性の無い音を媒介とした術式行使も全て俺を嵌める為の罠だな!!」

 

「大正解〜」

 

 

 アハッと嬉しそうに、愉快そうに嗤う。それに俺は思わずこのバケモノがと言葉を零すとポカンと少し呆けた後に、愉快そうに目が三日月を描いて

 

 

 

()()()バケモノでしょ」

 

 

 俺からスっと感情の波が引いていくのを感じ、ズズズと背中から何かが生えて来るような感覚共に、視界が増える。

 それに来栖華はやっぱりとまた嗤う

 

 

 

 

 

「仲良くしようよ、()()さん」

 

「図に乗るなよ、女狐如きが」

 

 







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