ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~ 作:岬 実
また、呪文の描写や敵の姿が独特なので、イメージしづらいかも知れません、
見渡す限りの森林地帯、その中にポツンと建つ、ユニット式建造物の簡素な発着場に、王室のマークを持つ一機の宇宙船がゆっくりと降り立った。
船内の座席には、乗客が二人。揃って深紅のスーツを着ている。
「なあ『ガーデン』、ドラゴンなんて居ると思うか? ドラゴン系の魔物じゃなくて」
黒髪が生えてはいるが、銀色の肌を持つ、宇宙人の様な姿の青年が問いかける。
質問の相手は、大柄なピンク色の騎士の姿の魔物、ガーディアンである。但し、角の代わりにアンテナが付いている。
「『絶滅した筈』と言いたいのは分かる。しかし現に被害もあるから、何かしらの怪物が居るのは確かだ」
ガーデンは席を立ち、背伸びをし、数回の屈伸をする。
「そんな事より『セイラン』、早いとこ装備を身に付けろ。もう任務は始まってるんだぞ」
「ああ、そうだな」
セイランと呼ばれた青年は、クーラーボックス程度の大きさの箱を開け、中から大鎌と鎌、二振りの大剣、目の様な機械、二つずつのウェアラブル端末と腕輪を取り出した。
二人は腕輪と端末を装着する。
セイランは大鎌を背負い、鎌を腰に固定する。そのデザインは、大鎌は親指と人差し指を開いた右手型、鎌は直下を指差す左手型の刃を持ち、それぞれの柄尻に玉を付けている。眼球型メカは額に張り付けた。
対してガーデンは大剣を腰に差す。鍔の装飾は隼を象ったものである。
身支度を整え、宇宙船から降り、空港の建物の中へ入る。
「あっ、二人とも! こっちこっち! 待ってたよ!」
待合室のベンチに腰掛けていた、同じ赤いスーツの、色白な、若いオーガの女性。その装備は、両刃の巨大な和バサミ型の刃物を背負い、『ぐるぐる眼鏡』を掛けている。
最大の特徴は、両肩の突起の代わりに、台座付きの透明なケースが装着されている事。中は、水色のジェルで満たされている。
「お久し振りです、『グィネヴィア』さん。これからお世話になります」
セイランは軽く頭を下げるが、グィネヴィアはパタパタ手を振って否定した。
「良いよ、リーダーなんだから畏まらなくても。それにしてもガーデン、外殻のあるヤツは相変わらず服が似合わないね」
「ほっとけ……」
ガーデンは顔を背けた。
「早速だけどグィネヴィアさん。これ、俺の班のメンバーに支給される腕輪」
セイランは、ガーデンに渡した物と同じ腕輪を手渡した。
グィネヴィアはそれを受け取って、身に付ける。
「うん、ありがと。これが無くても、アテにしてるからね」
「初めての任務だから、至らない事もあると思うけど、何とか頑張るから」
「その意気、その意気」
ガーデンは、ここで咳払いをした。
「ところで、グィネヴィア。被害に遭った集落には、ルーラで行けるのか?」
「うん、大丈夫。この近くだったから、ついでに寄って来ておいた。あっ、そうだ。長旅で疲れたでしょ? あたしの魔力要る? 丁度満タンだし。ソーダ味。二人して好きだったでしょ?」
グィネヴィアは、両肩のタンクを空の物と付け替えつつ、満タンの方をセイランとガーデンに差し出す。
「じゃあ、後の備えとして頂きます」
「俺も。カクテルの材料にもなるしな」
セイランは、受け取った魔力のタンクをボックスにしまい込む。
「じゃあ、そろそろ出発するけど、忘れ物とか無い?」
「これだけしかない」
グィネヴィアの質問に、セイランはボックスを抱えて見せた。
「あはは。それ失くしたら大変だよね」
「まあ、上も資金不足って事だ。まして、俺達の様な下っ端には……」
「大丈夫。あたし達は元々低コストだから。じゃ、そろそろ行くよ? ルーラ!」
グィネヴィアがルーラを唱えると、3人の体は一瞬浮遊し、光を纏い、高速で飛行して行った。
────―
着いた集落は、簡素な木造建築が多数、ユニット式建築が少数の、開拓途中の地であった。
だが、それ等の建物は、ある物は焼け焦げ、ある物は半壊する等しており、急拵えの墓地まであると言う有り様であった。
「うーん、ここまで酷いとは思わなかった」
現場に着いてのセイランの第一声に、ガーデンはセイランの肩に手を置いた。
「そう思うのは、それはそれで良い。とは言え、口に出すのは控えておけ。特に現地人にはな……」
そして、「なっ」と肩を叩く。
「それは、そうだな……」
「二人共、お巡りさん達はこっちこっち!」
既に若干離れた所に居るグィネヴィアが、セイランとガーデンを手招きする。彼女の傍らには、大型のテントが幾つか設営されており、何人かの警官が立番をしていた。
3人は手近に居た人間の警官に、王室護衛係の身分証を見せつつ、自己紹介をする。
「失礼。私は、王室護衛係の班長の、『セイラン=ブルーウェア』と言います。今回は応援に参りました」
「『ガーデン=バッシュ』です」
「『グィネヴィア=エーズィー』です」
するとその警官は手を合わせて軽く会釈し、警察手帳を見せた。
「これはどうもお疲れ様です。本官は『ダン=タン』と申します」
そして、どちらからともなく3人とは握手を交わす。
「当方の責任者はこちらです」
タンは手で指して3人をテントの中へ招き入れ、奥へと案内した。
テントの最奥には長机が並べられており、宙に画面を映し出すパソコンが幾つか設置されている。
そのパソコンとにらめっこしつつ、パイプ椅子に座っている者が一人。魔物、リカントであった。
「警視、王室護衛係の方々が参られましたが」
リカントは「ん?」と顔を上げると立ち上がり、3人に敬礼をした。
「お待ちしておりました。私、ここを任されている、『ライン』と申します」
3人は先程と同様に自己紹介すると、応接用のソファーへ座る様に促され、ラインはパソコンを持って対面に腰掛けた。直後、職員の一人がお茶を汲む。
「さて、こんな所まで王室護衛係の方々が来て下さるとはありがたい限りです。早速ですが、先日現れた未知の怪物の映像を見て頂きたいのですが……、見るに堪えなくなりましたらすぐに止めますので」
「大丈夫です。始めて下さい」
セイランが3人を代表して答えた。
「では……」
ラインは、パソコンを起動させ、動画を再生させた。
宙に投影された映像はピントが合っておらず、手ブレや走りで上下左右に揺さぶられている。四方八方からの悲鳴や断末魔、生物や建物の圧壊音。
息を荒くして走っていた撮影者は振り向き、惨状を引き起こした物をカメラに捉えた。それは……。
「? ……。ゾウ……?」
セイランは、顔をビデオに近付ける。
「いや違う。よく見ろ」
ガーデンがそれを否定した。
「ゾウの姿をしたドラゴンだ!?」
グィネヴィアが、その正体を語った。
怪物は、シルエットはゾウにそっくりではあるが、細部が違う。全身が鱗に覆われ、頭には顔が無い。代わりに、ドラゴンの頭が鼻の先端に付いており、ゾウの耳にあたる部位はドラゴンの翼である。
ゾウ型ドラゴンは息を吸い込むとカメラに向かって炎を吐き、映像はここで終わっている。
「と……、こう言った事が起こってしまった次第でして……。恥ずかしながら、あのドラゴンらしき物もデータには無く。お三方は何か御存知でしょうか?」
ラインは拳で口許を隠しつつ尋ねる。
「いえ……。私もこの職に就いて長いですが、見た事も聞いた事も」
「あたしも」
ガーデンが先に答えて、グィネヴィアが続いた。
「そうですか……。我々はこのドラゴンを、『擬竜1号』と名付けて呼んでいます。貴方方にはまたこれが現れた際は、住民を守る事を優先して動いて欲しいのです。ここまでで何か質問は……」
「ドラゴンが、実は絶滅していなかった可能性は?」
セイランが口を開いた。
「確かに、1万年前の記録では、『世界を支配しようとして負けたドラゴン族は、多少の生き残り達が本星から逃げ出した』との記録がありますが……。いかにドラゴンでも、未だ生き延びて居るとは……」
「では、この星をテラフォーミングする前から今まで、この1号の存在に気付かなかったのは?」
「それは……、生存者が全員、まともに喋れない位の深手を負っていて証言もままならず……。あ、唯一の無傷の者も、まだ5歳で信憑性があるのかどうか……」
「構いません。何と言ってましたか?」
「『空間が歪んで、そこから出入りした』と言う風な事を」
セイランは腕組をして、「うーん……」と唸って背もたれに寄り掛かった。
「記憶読取装置があれば、話が早いのに」
グィネヴィアは言うが、ラインは首を横に振った。
「何しろ、こんな開拓して間もない星でしょう? 現地作成が奨励されていますが、作れる程工業が育っていないのです」
「それなら、あたしが怪我人を治しますよ。あたし、ベホマズンもできますから。一度に16人ずつ」
グィネヴィアが手を挙げて提案した。
「あっ、それは助か──」
ラインが手を叩いた瞬間、声が響いた。
『あの程度で死にかける奴等は、生きるだけ無駄だ』
何番煎じか分からないものの、現代より遥か未来が舞台のドラゴンクエストが見たかったから書きました