ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~ 作:岬 実
ガーデン、ドロップと対峙する、ゲビガとゴヅガ。ガーデンがドロップに小声で提案する。
「ゴヅガだかは見た通りスピード自慢だ。俺が相手するべきだが……、先に動きが鈍そうなゲビガだか擬竜1号だかを押さえよう。俺が1対2で時間を稼ぐから、パルプンテで魔人を呼ぶ準備をしろ」
「ああ。30秒我慢しろ」
言い終わると、ガーデンはボクサーの様にステップを踏み始め、ドロップはやや離れて魔力を溜め始めた。
「ふーん、鈍そうなガーディアンが俺の相手なんだ」
ゴヅガが喋ると同時に、ゴヅガはクチバシによる疾風突きで瞬時に距離を詰めて来た。しかしガーデンも柄打ちでそれを弾き、足払いでゴヅガを宙に舞わせると、立ち上がる勢いを乗せた跳び膝蹴りを食らわした。
ゴヅガが飛んで行くのも待たず、一足飛びでゲビガの方に斬り掛かる。そこでようやく、蹴り飛ばされたゴヅガが地面に倒れた。
「首を挙げてやる!」
だが、斬撃が当たる直前、ガーデンの剣の動作が止まった。一瞬で追い付いたゴヅガが剣の峰を咥えて妨害したのだ。
「誰も考える事は同じだな」
軽口を叩きつつゴヅガが剣を離す事に合わせ、「皆俺を狙うんだ」とゲビガがガーデンの胴に噛み付き、外殻を噛み砕きつつ地面に投げ付ける。
「うぐおおっ……!」
バウンドしながら地面を転がり、ガーデンが苦悶の声をあげた所に、ゴヅガとゲビガは口内に炎を宿らせる。
その時、「おい、ケダモノ!」と声が掛かった。
声の主はドロップである。つられて、ゲビガとゴヅガは炎を中断してドロップの方を見る。
「パルプンテ! 魔人が現れる!」
魔力を宿らせた手を地面に突くドロップ。すると周囲の土地が輝き始め、一対の巨大な手が突き出て来た。
地面に手を掛け、崖をよじ登る様な動作で頭、上半身、下半身の順に出現。全身像は、ボーアンに匹敵する筋骨隆々な男である。
「サソリみたいなヤツと象みたいなヤツを倒してくれ!」
ドロップの訴えに魔人は頷き、ゲビガを鷲掴みにすると街の外までオーバスローで投げ、続いてボーアンを挑発しながらゲビガの元に向かう。
「ふん……。相手をしてやる」
ボーアンも挑発に乗り、魔人の後に続いた。
「さあ形勢逆転だな、ゴヅガ」
自動回復で傷を癒した事も相まって、ガーデンはゴヅガに切っ先を向ける。
「そうかな? さっきと言い今と言い、そのプクリポはパルプンテの効果が切れるまで、次のパルプンテを使えない様だ。なら1対1の様なもの」
「考えるスピードまで速いって訳か」
「それなりにな……!」
ガーデンはドロップを下がらせ、ゴヅガと文字通り目にも止まらぬ応酬を始めた。
────―
「早くも盛り上がって来たか、あっちは」
ジヌバーンは、グィネヴィア達を相手取ってはいるが彼女達には目もくれず、ガーデン達の戦いを眺めていた。
「ちょっと! こっちを見なさい、こっちを! 舐めてんの!?」
ルハルが抗議の声をあげると、ジヌバーンはギロッと視線を投げ掛けた。そして、「あ~あ、見ちまった……!」と憎々しげな表情を浮かべた。
ジヌバーンは続ける。
「サービスで見ない様にしていたがよォ……、俺は何の種類だろうがメスを見ると腹が立って腹が立ってェェ! 気に入らねえ奴は殺すに限るッ!」
ジヌバーンは片手を振り上げると、掌に赤黒い光を纏わせた。
「! ヤバい! 散って!」
ルハルが号令を出すと、グィネヴィアと馬達は透かさず従い、その場から離れる。
と同時に、ジヌバーンはその手を突き出し、叫んだ。
「ザラキーマ!!」
ジヌバーンが呪文を唱えるが早いか、赤黒い光線の様な物が6本発射され、ルハル達が居た地点に大きなクレーターを形作った。
「皆、無事!?」
ルハルは馬達やグィネヴィア以外にも、被害を受けた者が居ないか周囲を見渡す。
「大丈夫! でも、ザキ系に物理的な威力を持たせるなんて……!」
ルハルに返事をしながら、口元を押さえて驚くグィネヴィア。ジヌバーンは続ける。
「そう。ついでに付けた物理ダメージだが、当たれば即死効果が効くまいが深手は必至」
「だったら尚更、この子達の出番……!」
ルハルは馬達に魔力を照射する。すると馬達の姿が見る見る内に人間の少女の姿に変わり、それぞれに異なった武装が装備されていく。
ミョウコウはスティックを持った僧侶、ナチは杖を持つ魔法使い、アシガラは斧を手にした戦士、ハグロは吹き矢を得物とした盗賊と言う姿で、衣服や鎧や武器に馬の装飾が施されている。
「ほ~。面白い芸当だ。技名は?」
「今のは『
ルハルに指示され、二人は魔法を唱えた。
『マホカンタ!』
二人が複数回マホカンタを唱え、グィネヴィア、ルハル、馬の面々にマホカンタが行き渡り、光の壁に包まれた。
「これでザキなんか使えないね!」
グィネヴィアは意気込むが、ジヌバーンは鼻で笑った。
「なら。凍て付く波動ではイタチごっこだから……。この技でどうだ?」
言うとジヌバーンはおもむろに両手で自分の首を押さえ、吐きそうな表情で体を左右にねじりながら徐々にしゃがむ。
『? …………』
一同が疑問符を浮かべる中、ジヌバーンは宙返りして仰向けに倒れると体を波打たせる、と言った動作を始めた。
ここでルハルが、ジヌバーンが何をしているか気が付いた。
「……!! あれは死の踊りだ! 見ちゃ駄目!」
ルハルに言われて、誰もが顔を背けるか目を瞑る。そこを狙って、のたうち回る動作をしていたジヌバーンは踊りを中止し、息を吸い込み、大口を開けた。
「そこを攻撃するのさ! 猛毒の霧を食らえ!」
ジヌバーンは牙から紫色の液体を勢い良く噴射した。それは地面に広がり、間も無く気化し、霧となる。
ルハルはハグロとアシガラを指差す。
「ハグロ! アシガラ!」
『分かってる!』
反射的にルハルの意図を理解し、アシガラは斧を横に構え、ハグロは吹き矢を咥えて斧の柄に飛び乗る。
次の瞬間、バレーのレシーブの要領で、ハグロは本人の脚力も乗せて、ジヌバーンに向かって高く打ち上げられた。
その飛行中、ハグロは吹き矢越しに大きく息を吸い込む。すると猛毒の霧はハグロの肺に全て収まり、ハグロはほっぺを膨らませてジヌバーンの顔に着地。
「! 何で効かない!?」
ジヌバーンはハグロを払い落とそうとするが、ハグロがジヌバーンの口に吹き矢を突っ込む方が早かった。
「返すぜ!」
ハグロは、ジヌバーンの口内に猛毒の霧を一気に流し込んだ。
「ん! うっぐ! ゲホ……! ゴホッゴホッ! ゲーッホ! ゲホ!」
涙目になってへたり込み、激しく咳き込むジヌバーン。それを横目で見るガーデン。
「ミョウコウ! ナチ! ここは良いからガーデンとドロップに加勢して! 呪文が来たら自分達が受けるの! ギネは遠距離攻撃を重点的に! こっちの回復はあたしがやる!」
「任せて!」
「はいっ!」
「オッケー!」
ルハルが3人に指示を下し、二人はその場から去る。グィネヴィアは両手にバスケットボール大の火球を出現させる。
「メラガイアー!」
銃弾並みの速度で放たれたメラガイアー。だがジヌバーンは苦しみつつも「おせーよ!」と即座に反応し、その二つの火球をグィネヴィアに指で弾き返した。
「嘘!?」
グィネヴィアは咄嗟に頭を抱えてしゃがみ、メラガイアーの2連発を回避。野に放たれた火の玉は暫く飛んで、消えた。
「くそっ……」
ルハル達はジヌバーンの強さにたじろぎ、改めて身構えた。
────―
公民館の敷地内ではセイランが、滞空する椅子型ドラゴンが首を伸ばしての噛み付きを、ガーデン達の戦況を気にしながら回避に徹していた。
「よう銀バエ! 逃げ回ってばかりで良いのか? あっちのドワーフのオバちゃんが副官らしいが、大方お前はコネか何かでリーダーやってるって所か!? 若いし!」
「その空飛ぶマッサージチェアーみたいなドラゴンには、マホカンタもマホステも有るらしい。俺達は飛び道具が主に魔法だから、俺に懐いてるお前は俺が引き付ける」
「あーそうかい。じゃ、俺が直々に相手をしてやろう」
リッヂは椅子型ドラゴンの座面に立つと、軽くジャンプして地面に降り立った。
「加えて。俺の武器はこれだ」
続けてリッヂは小さな空間の歪みに手を入れ、赤い宝箱を取り出した。
「さてと、もう少しだけ遊ぶか」
リッヂは宝箱を開けてヘラヘラ笑った。
設定集
ルハル=マモユザー
種族:ドワーフ
職業:魔物使い
呪文:ホイミ系、バイキルト、スカラ
特技:各種鞭技、魔化し技
追記:2回行動
魔化し技
ルハルのオリジナル技。動物に魔力を撃ち込み、身体能力と自我はそのまま、一時的に姿と知性を人間の物に変える。加勢するか否かは本人の好意による。変身中にしか魔法も特技も使えないが、覚えた事の全ては元の姿でも引き継がれる
ミョウコウ、ナチ、アシガラ、ハグロ
ルハルの輸送、護衛任務をサポートする4姉妹の馬。
名前の元ネタは日本海軍の重巡洋艦。ネーミングの元ネタは『6』のズイカクとショウカク