ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~ 作:岬 実
「使い所も無いかと思っていたが、集めた甲斐が有った」
リッヂが手にしている宝箱の中には、メタルキングのマークが刻まれた、銀色に輝く様々な武器が収められていた。
それを鷲掴みにすると、大きく振りかぶる。
「ほーれ、人類が好きな貴重品だぞー」
投げ付けられたメタルキング武器は、散弾の役割を果たしてセイランに降り注ぐ。
「うおお!?」
セイランは頭をガードしつつ、咄嗟にリッヂの方に向かって駆ける。それが上手く行ってメタルキング武器はセイランの頭上を素通りした。
そしてそれ等の武器は、刃物は建物や地面にほぼ抵抗無く深々と突き刺さり、鈍器は命中箇所を文字通り粉にする程の威力を発現した。
それを見てボーアンは魔人の攻撃をいなしつつ、「また必要もねーのに武器使ってるぜ。グラウナードの奴に怒られんだ」と呟いた。
「あぶねーな、全く!」
「武器なんだからあたりめーだ。あ、そうだ」
セイランの抗議を受け流しつつ、リッヂは手を叩いて、待機中の椅子型ドラゴンに目を向けた。
「お前の名は?」
「俺は、『ヴィーヴライニング・チェアー』です。リッヂ様」
「その体とチカラは?」
「座った者に安らぎを与える為」
「その通り! 言っとくけど手ぇ出すなよ?」
「承知しました」
「待たせたな銀バエ! どんどん行くぞ!」
再びリッヂはメタルキング武器を手にする。
「一発だって食らって堪るか!」
武器が投げられるのと、セイランの腰の小鎌の玉が光り、念じボールで上空に回避するのは同時だった。
「お前は空を飛べないだろ!」
「飛ぶ必要無いからな」
セイランの挑発をかわし、リッヂは宝箱に魔力を込める。すると投げられたメタルキング武器達がひとりでに宝箱の中に収まって行く。
「じゃ、代わりにこれ使うか」
リッヂは宝箱を異空間に放ると、代わりに黒い宝箱を取り出した。
中には、道具使用で魔法の効果を発揮する武器が多数、乱雑に入っていた。
「『全属性・範囲攻撃』と名付けよう」
リッヂは無作為にそれ等を握ると、セイランに向けて、武器に魔力を込めた。
その瞬間、炎、竜巻、稲妻、吹雪、砂嵐に濃霧等が発射され、セイランを襲う。
「な!?」
慌ててセイランはそれを回避。
リッヂは手で制する仕草をした。
「おっと、良いのか? 俺が避ければ街に被害が──」
「フェイクだ!」
セイランはサイズを横に構え直して鉄棒の様に座り、小鎌とスケッチブックを持つ。
ネツヤナヤ作の地図上、リッヂが居る地点を、輝き出した小鎌で指した。
「バギムーチョ!! 足を止めるのを待ってたんだよ!」
セイランが呪文を唱えると、リッヂの足元から竜巻で出来た竜巻で出来た竜巻で出来た竜巻が二つ発生。
天をも突く大木の様に太く長く伸びたそれは、周囲の瓦礫やリリグ・ヴヴエの死骸をも吸い込み、リッヂを切り刻みつつ打撃を与える。
「ブベベベベ! いだだだだ! や、やめろぉ!」
リッヂは堪らず、その場に両膝を突く。
バギムーチョが止んだ後のリッヂは、皮膚や服がズタズタのみならず、指や耳と言った細い部分を削り取られていた。
「ギャオオオオオオオ……。あー、いってぇ……!」
「あんなダメージにしかならないのか……?」
苦虫を噛み潰した表情のセイラン。その隙をリッヂは見逃さなかった。
「マヌーサ!」
ピンク色掛かったスプレーの様な物がリッヂの掌から放たれ、セイランを包み込む。
「しま……! って何だ? 誰も彼もが増えて見える?」
キョロキョロするセイランに、リッヂはホイミの一発で怪我を全快させつつ続ける。
「寧ろ、今まで誰もそうしなかったのが不思議に思う位だ」
「しかぁし!」
セイランは目を閉じ、超越の義眼を起動。
「このカメラに幻惑やモシャスは通用しない!」
「機械のお陰なのに威張るな。ならマホトーンだ! 俺の奴は特技も封じるぜ!」
「……!」
リッヂは掌から、今度は3点リーダの様な魔力を放った。これはセイランは避け続けるしか無く、空で逃げの一手となってしまった。
────―
「セイラン、押され出したか……」
ゴヅガとラッシュの応酬を演じていたガーデンが、一旦間合いを離してセイランの方を気にする。
「どこを見ている!」
ゴヅガが突進しながら、クチバシでの五月雨突きを繰り出す。
「お前だ!」
ガーデンはゴヅガを跳び越えて、攻撃を回避する。だが振り返った時にはゴヅガの姿が消えていた。
「消えた? ドロップ! 見てたか!?」
「ああ! 急に透明になった! きっとレムオルを使ったんだ! 」
「戦法を変えたな……!」
物陰からドロップが顔を出して答える。そこへ、ミョウコウとナチが到着した。
「ガーデンさん……!」
「お前達、来たのか! ミョウコウは回復を! ナチは俺のサポートをしろ!」
『はいっ!』
元気良く返事をした所で、どこからかゴヅガの嘲笑が響いた。
「何人来ようが的が増えるだけだ。何しろ俺のレムオルは煙やレーダーでも見えないし、灼熱の炎さえ透明になるのだからなあ。こんな風に!」
言い終わるが早いか、横の建物が不意に燃え上がった。
「よけろ!」
ガーデンの合図で、壁を何枚も貫通して来た見えない炎をガーデン達は無事にかわしたが、建物の中から炎に巻かれた市民達が苦しみながら現れた。
「ああ! 何て事!」
ミョウコウは急いで市民達に駆け寄り、回復魔法の準備をする。
「隙有り!」
不意に、ミョウコウの体が宙に舞って地面に転がる。ミョウコウは腹部を押さえて悶え苦しみ出した。
「うぐぐぐぐ、おえ……! 蹴られたみたい……!」
「え、今。気配が無かった?」
介抱するナチが周囲を見渡す。ゴヅガが解説した。
「言い忘れたが、俺は忍び走りも使える。どんなにスピードを出しても、空気の流れや土埃とかも発生しない、な」
「…………」
ガーデンは静かに考え、ミョウコウとナチ、ドロップに指示をする。
「ミョウコウ、ナチ、ドロップ! 俺の近くに居ろ! 怪我人もだ! 急げ!」
3人がそれに従い、いそいそと被害者達を抱えてガーデンに寄る。加えて、ガーデンはセイランに通信を入れた。
「セイラン! フバーハをくれっ!」
『ん! ああ分かった!』
回避に腐心しているセイランは先程同様、地図を小鎌で指し示してフバーハを唱えた。すると、ガーデン達が個別に淡い光で包まれた。
ガーデンがナチに耳打ちしナチが頷くのと同時進行で、ミョウコウは涙目で「こんなの酷いよ……!」と黒焦げになった人達に回復呪文を与える。
「フバーハでブレスを軽減して、接近戦をさせようってんだろ! だが見えていてもスピードに着いて来れまい!」
ゴヅガが喋った一拍後、ガーデンの腹部に見えない何かが貫通する。
「ぐ……!」
負けじと、刺さった何かを掴もうとするガーデンだが、その手は空を切るばかり。慌ててミョウコウは彼にベホイムを掛け、ナチはガーデンを小突いた。
ガーデンは頷き、大きく息を吸い込んで隼の大剣の片方を納め、一刀を両手で構えた。
「カウンターで当てようってんだろ? そんな手は食らうか!」
突然、周囲の上階の窓が割れ、ガラスや家具が降り注いだ。
「ん! スクルト!」
ガーデンは咄嗟に自分以外の者にスクルトを掛けて防御する。その瓦礫の雨の中、ナチは叫んだ。
「ガーデンさん、右上!」
「良し!」
ガーデンは合図に合わせて瞬間的に刀身に竜のオーラを纏わせ、指示された方向を十文字に斬り付けた。
一呼吸置いて血のシャワーが降り、四分割されたゴヅガが姿を現して地面に落下。若干の痙攣の後、動かなくなった。
「な!? ……」
「ゴヅガの奴が殺られたのか!」
リッヂとボーアンは驚き、気を取られる。その隙にリッヂは念じボールの一撃を目に、ボーアンは魔人が投げ付けたゲビガを頭に受け、それぞれ怯む。
ルハル達と格闘戦をしていたジヌバーンは上空に飛び、問う。
「何で分かった?」
「声が聞こえるから、延いては息遣いまでは消せてなかったんだよ。ナチ達は人間に変身しても身体能力は馬のままだからな。聴覚もが」
ガーデンの解説に、ナチが付け加える。
「気合い溜めをして、一刀モードにもなったガーデンさんと合わせれば、まず命中するし倒せるって事」
「ふーん……」
ジヌバーンは目を細め、鼻息を吹き出した。
リッヂとボーアンに目配せし、提案する。
「おいお前等! 一人殺られたし、そろそろ仕事しようぜ! もう充分遊んだだろ!」
「おう!」
「力加減を間違えるなよ!」
リッヂは高く跳んでヴィーヴライニングに座り、ゲビガとボーアンは飛翔する。
それを見計らって、ジヌバーンは胸一杯に息を吸い込んだ。
「焼け付く息を食らいやがれ!」
技名を叫んで吐き出されたオレンジ色のミストは、瞬く間に町を覆う。
ガーデン達や警官達は元より、市民までもが反射的に
「皆!」
飛行中のセイランは難を逃れていて、仲間の元へ向かおうとする。
「おっと、行かすか!」
そんなセイランを、ヴィーヴライニングが目にも留まらぬ速さで首を伸ばして咥えた。
「食うなよ?」
「ええ。貴重な種族ですから」
もがくセイランが叫んだ。
「放せよ!」
「良いだろう」
ヴィーヴライニングはリクエストに応え、セイランを公民館の地面に向かって投げる。
「うう! 念じボールでもブレーキが……!」
地面に到達する前に念じボールで投げのスピードは相殺したが、それはつまり停止を意味した。
「そしてマホトーン! 落ちろ!」
「しまった!」
リッヂのマホトーンの直撃を受け、魔力の使用を封じられたセイランは中空から地面に落下。その衝撃で「う……」と気絶した。
その時、公民館の窓に小さな人影が現れ、ホイミをセイランに与える。ネツヤナヤであった。
「居た……!」
リッヂは笑いの混じった声を上げた。
設定集
ゴヅガ・ボライズ
種族:ドラゴン
呪文:レムオル(レーダーでも探知されない)
特技:灼熱の炎、疾風突き、五月雨突き、忍び走り(動いた痕跡が発生しない)
追記:ダチョウ的形態
一刀モードと二刀モード
ガーデンは、一刀流時は攻撃力が上がり、二刀流時は手数が上がる
セイランのサブウェポン。安全の為に手書きの地図限定だが、マップを指した地点に魔法を発生させる。地図の製作者が何を描いたか把握していれば、どんなに下手な地図でも正確に発動する