ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~   作:岬 実

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国名は今になって考えました


雪中の思考・行軍訓練

 リッヂのバシルーラにより街から飛ばされた数秒後、フバーハで守られたセイランとガーデンは吹雪く夕闇の雪山で、長い轍を作った先に横たわっていた。

 ガーデンが身を起こし、辺りを見回す。

 

「どこなんだ、ここは……?」

「さあなぁ……」

 

 ガーデンの質問に答えるべく通信機を確かめ、「圏外」と表示された画面に舌打ちしながら、セイランは立ち上がる。

 

「景色も見えない位のスピードでブッ飛ばされて来たもんな……」

 

 ガーデンも自分の通信機で繋がらない事を確認して、悪天候でぼんやりとしか見えない山脈を見る。

 

「俺の端末も駄目だ。しかし……、二人同時に故障も無いだろうから、奴等が電波障害を引き起こしてる様だな……」

「その通り……。研究成果が他所に漏れては困るからね……」

 

 いきなり二人を影が覆って、声が聞こえた。

 反射的に二人は武器を構えて見上げる。上空に居たのはゲングイト。赤い目で二人を見下ろしている。

 ガーデンは、ゲングイトのその目を特に凝視する。

 

「アイツは……?」

「話に聞いてた、ゲングイトだな……?」

 

 セイランの質問に、ゲングイトは「第二王子も、竹馬の友の躾が甘いな……」と嘲笑った。

 ガーデンの瞼が反応した。

 

「セイラン殿、初対面ならフルネームで訊いて当然。『幹部の一人、ゲングイト=ゼブガガ様ですか? 』と。ま、そんな事はともかく、この爺さんの研究所へようこそ」

「ちょっと待て。この星は『レンク王国』の物だ。何を勝手な事を──」

「だったら今から私の物だ。君達の身柄もな……」

「! そうだ、連れ去った人達はどこだ!? 帰せ、今すぐ! さもないと……!」

 

 魔力を溜めるセイランに、ゲングイトは手をヒラヒラさせた。

 

「まあ待て。この爺さんは、若いのや中年を相手に暴力を振るう程若くは無い。やるなら我慢大会で勝負だ。魔法の類いは使うなよ? ルール違反すれば、観察対象達を処分する」

「く……」

 

 セイランは渋々、溜めた魔力を引っ込めた。

 

「ひ弱な生物なりに良い判断だ。ドラゴンならこの程度、涼しいにも入らんが」

 

 腕組みするゲングイトにガーデンは顔を曇らせ、セイランの肩に手を置いた。

 

「セイラン……、ここは一旦退こう。敵地に二人だけ、まして、用意も無しに雪山に居ては危険過ぎる」

「ガーデン……?」

 

 不審がるセイランだが、ゲングイトは拍手した。

 

「ああ、益々良い判断だ。この爺さんはこの山の頂上の、更に上の研究所に居る。いつでも掛かって来い。待ってるぞ……。ゴフフ……」

 

 それを捨て台詞として、ゲングイトは羽ばたきながら飛び去って行った。

 

「何しに来たんだ、一体……?」

「その前に、どこかに山小屋とかは無いか? フバーハが掛かってても寒過ぎる」

「そうだな……」

 

 セイランは超越の義眼を起動させ、やや下方に目を止めた。

 

「あそこの岩影から熱が出ている。何かが有るんだ、あの辺に……」

「分かった。雪中訓練がてら歩いて行こう。武器をストック代わりに使え。滑るなよ?」

「念じボールで飛ばなくて良いのか? ファイアフォースとか?」

「ここは敵地と言ったろ。リッヂが近くに居て、またマホトーンで撃墜されても不思議じゃない」

「そうだった……」

「良し、行くぞ。そして、あのゲングイトのヤツに付いて説明する……!」

 

 ガーデンが勾配が緩やかな所を先行し、足元を踏み固めて、武器を滑り止めの杖として使う事で安全を確かめながら少しずつ進み、言葉を続ける。

 

「最初に確認したいが、お前、トローリが何歳か分かるか?」

「いや、見当も付かない。魔物だしな……」

「だよな。俺も魔物だ。魔物は生まれてから死ぬまでほぼ同じ姿だ。なのにアイツ、俺が中年だと見抜いていたのだ」

「言われてみれば確かに……。偶然か……?」

「いや違う。お前と第二王子が深い付き合いだと言う事も、何故かアイツは知っていた。俺達は分かり切ってるから話題に出さないし、部外者には言う必要の無い事だ」

「つまり何か? ゲングイトは他人の頭を覗けるって言うのか?」

「……そうだとしか思えない。俺はゲングイトの姿に疑問を持ってたんだ。目ん玉は沢山付いてる様だが、赤い目でしか見てなかった。大方、一つ一つに特殊能力が有る」

「すると……、俺達の情報が向こうに全部バレたのか? その事を暗に俺達に言った?」

「対してコッチは、アイツのデータは無い。だからここは戦いを避けなくてはならなかった」

 

 セイランが足を滑らせ、ガーデンがそれを支えて、再び進む。

 

「で、セイラン。俺達がこれから取るべき行動は?」

「早めに帰還し、戦力を整え、民間人奪還に移る事」

「そうだ……。だがあのサソリみたいな奴は、アストロン状態でも動いた……。幹部と言うからには、ゲングイトもジャンルは違えど同格の能力を持つ筈だ。戦闘になった時に凌ぎ切れるか……?」

「かなりキツいな。リッヂはバギムーチョ2発でも指を落とすのがやっとだったし、しかもホイミで完治しやがった。それ以上の威力では巻き添えを気にしないといけないが、アイツ等、人っ気の在る所にしか出て来てないし……」

 

 突風が吹き、二人は一旦足を止め、岩場に隠れた。ガーデンが案を出す。

 

「一応、ジヌバーンは猛毒の霧で咳込んでいた。だから目潰しとかは効くかも知れんが、それでは足止めにしかならない……」

「常識的な範疇では奴等を倒せないのか?」

 

 風が弱まったのを見計らい、進行再開する。

 

「政府も、何とか穏便に解決しようとするだろうが、或いはそれも無理だろうな」

「ん。それは何故?」

「取り引きを持ち掛けた場合、リッヂみたいなスカした奴なら『メシ奢ってくれたらな』とか言うんだろうが、ドラゴン達は食事さえ不要な可能性が高い。ケツの穴が無い様だ」

「じゃあ、どうすれば……」

「金品ではなく能力や結果を要求する筈だ。だから威力偵察をして来てるんだ」

「例の宇宙人とかが攻めて来た時、ドラゴンに頼るなって?」

「そんな所だろうな……」

 

 そこまで喋って、丁度山小屋に到着した。




設定集

魔物の年齢
魔物は外見上、成長も老化もほぼ無い

セイラン班の身長
セイラン(約175cm)
ガーデン、グィネヴィア(約2m)
ルハル(約150cm)
ドロップ(約130cm)
ダイチ(約5m)

ドラゴン達の身長
リッヂ、ジヌバーン、ゲングイト、ヴァイア(約10m)
ボーアン(頭頂高、約60m)
グラウナード(体長、約40m)
ドランノージェ(約1km)

セイラン班の年齢
セイラン(20)
ガーデン(47)
グィネヴィア(22)
ルハル(41)
ドロップ(36)
ダイチ(29)
トローリ(32)

ドラゴン達の年齢(実年齢/精神年齢のイメージ)
ジヌバーン(23457歳/30歳前後)
リッヂ(23460歳/30代)
ボーアン(24474歳/40代)
グラウナード(24523歳/50代)
ヴァイア(24597歳/50代)
ゲングイト(24665歳/70代)
ドランノージェ(27563歳/50代)
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