ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~   作:岬 実

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ヴァイアの姿は、当初ドランノージェに使う予定でした。そして、以前出した姿はボツだったのを修正し忘れたと言う失態。
後、段落字下げの方法がやっと分かりました。


教えるゲングイト先生

 自分の研究所兼アジトに、異空間から進入したゲングイト。

 薄暗い部屋の内装は大きなデスクセットが一つ。壁一面、机の高さから天井までが、刑務所の様に独房で埋め尽くされている。但し通常の牢屋と違って、エアコンや調理器具、テレビに冷蔵庫も揃っている。

 リッヂとジヌバーンが、捕まえた熟睡中の人々をタイプCから取り出し、一部屋につき一人、その部屋に収容して行く。

 ヴァイアは、触手で部屋の設備の動作チェックをしている。

 

「おーう皆。やっとるかね?」

 

 ゲングイトが挨拶をし、女だけを運ぶリッヂが苦笑し、男だけを運ぶジヌバーンは不平を漏らした。

 

「入口から入って来いよ、別に『ドラゴン専用世界』からじゃなくて」

「あー……、女を殺したい……」

 

 それ等の意見をほぼ無視し、ゲングイトは言う。

 

「汚ならしいこの世界の、それも下等生物達と同じ空気を吸ったんだ。少し肺を掃除しないと。この世界を見たから目の保養も兼ねてな」

「潔癖なのが欠点なんだよな、ギャオホホ……」

「ゴッフッフ……。汚ないとは言ったが、『ドラゴン専用世界と違って、統一感が無い』って意味でもあるのさ……。まあ確かに潔癖症の気は有るな」

 

 ゲングイトが、机の上に個別に用意された独房の、水洗トイレや冷暖房の動作チェックをしている生首ドラゴンに話し掛ける。

 

「ヴァイア、手間掛けさせたな。彼等、彼女等は文明の利器が無ければ生きられないのでな。しまいにゃこの建物や本まで」

「良いって事よ」

「あっと、ネツヤナヤ親子は机の上の部屋に入れておけ」

 

 ゲングイトは、収容されている人々を青い目で一通り眺め、折り返して赤い目で観る。そこへ話し掛けるジヌバーン。

 

「で? どんな事が分かった?」

「結論から言えばこんな平民でも、誰もが鍛えれば1万年前の戦闘員半分位の戦力は身に付けられる」

「半分……? やっぱり弱くなってんな。あのオーガの女も現代ではかなりの達人っぽいが、メラガイアーをあの大きさに縮めるのが精一杯の様だったし」

 

 ジヌバーンが苦言を呈した。それにゲングイトがフォローする。

 

「居ないよりマシさ。それにイザとなれば多少改造すれば良い」

 

 リッヂが話に割り込んだ。

 

「改造するならロボット作った方が早いじゃん。それより歴史だよ。あの銀バエは一体何なんだ? 何で1万年も前の言葉が通じる?」

「まあ待て。順を追って説明するから」

 

 ゲングイトが円椅子を用意し、リッヂ、ジヌバーン、ヴァイアがそれに座る。ゲングイトも机の椅子に腰掛けた。

 

「で、俺達が敗戦したのは、今から1万と186年前の12月25日。宙人(そらびと)の起源は9986年前の12月25日だ」

「ふーん、丁度200周年なんだ。何か作為的な物を感じるが」

 

 リッヂが関心を示した。

 

宙人(そらびと)は初め、隕石に付着していた細菌だったが、急速に進化したらしく、細菌の一つ一つが七日後に現在の姿になり、当時の人類と戦争を始めた……」

「最初は虫ケラ以下だったのかよ。それに正月から付いてねーな」

 

 ジヌバーンの突っ込みにゲングイトは「ゴフフ」と笑って、続ける。

 

「開戦時の人口は概数で113億人。対して宙人(そらびと)は4500人。この戦争は『明けの大戦』と呼ばれ、宙人(そらびと)によって、人類も文明も壊滅寸前にまで追い込まれたんだそうだ。因みに隕石が落ちて来たのは『流れ災厄事件』だと」

「名前はいい。それだけ圧倒しといて何故負けそうになる? ホント弱々しい奴等だな」

 

 ジヌバーンが先を急がせた。

 

「それはだな。かつてオーガが火に、ウエディが冷気にそれぞれ強かった様に、宙人(そらびと)もとある能力を持っていた。それは、『仲間の地力を何倍にも増し、技や知識は共有出来る』と言うものだ。100倍単位で強化する個体も居たと言う」

「銀バエと愉快な仲間達が着けてる腕輪が、それ絡みか」

 

 リッヂが冗談めかして見解を述べた。

 

「うん、そうだ。現在では交雑が進んだせいでか、強化能力は腕輪が無くては発現出来ない程弱まり、強くなれても3割増し前後だ。それと、強化能力は一人一人が宙人(そらびと)全員からの強化を受ける。しかし強化能力を強化する事は、当時でも出来なかったらしいな」

「肝心な所で使えない……」

 

 ヴァイアの苦言に、ゲングイトも頷いた。

 

「……で、年末にその大戦が終わりはしたが、文明は中世レベルに後退して、混乱に乗じて世界各国が覇権を巡って、9744年前まで争った。勇者賢者・粗製濫造時代と言うらしい」

 

 ゲングイトは咳払いをして喉を整え、軽く息を吸った。

 

「それ以降は8216年前、ロボットの反乱で絶滅寸前。7532年前、核戦争で絶滅寸前。6972年前、強力なウイルスで絶滅寸前。6666年前、男女間の戦争で絶滅寸前。5249年前、食糧難で絶滅寸前……」

「しぶてえ奴等だ」

「実は間引きだったんだろ」

「ドラゴンに生まれなかった罪悪だな」

 

 ゲングイトの講義に、リッヂ、ジヌバーン、ヴァイアの順にそれぞれ感想を言った。

 

「それからは目立った争いは無い。大昔の言葉が今でも通じるのは、文化保持を繰り返したからでもある。……と言うのが、この老若男女が習った事を総じての歴史だ。何か質問は?」

 

 ゲングイトが質問を求めるが、挙手をする者は居なかった。

 

「良し。後は今の事をドランノージェ様に報告し、ついでに詳しい歴史をレポートに纏めるばかり……、と。ヴァイアは怪我人の手当てと食事の準備をしてやれ。死んだら死んだで構わん。リッヂとジヌバーンは好きにしろ」

「おう」

 

 ゲングイトは、仕事に取り掛かるヴァイアを尻目に机に向かい、紙にペンを走らせる。ペンを握った手を一振りする毎に、達筆な文字の羅列が一行ずつ紙に記入された。

 

「俺はドラゴンの世界に戻る」

「俺は暫くここに居るぜ。銀バエの奴等が来るだろうしな」

 

 ジヌバーンは異空間に帰り、リッヂは椅子から動かなかった。




設定集

宙人(そらびと)
9986年前に飛来した隕石に付いていた、細菌が進化した新人類。現在の人口は全種族の中で最も少ない。
大抵は宙人(そらびと)の姿で生まれた者が、強化能力を持ってい易い。

宙人(そらびと)の腕輪
宙人(そらびと)の強化能力を宿す者が送信側を着けると、受信側のステータスがアップする。何割増しになるかはお互いの素質に左右される。
但し送信者が才能豊かでも、昔の様に技や知識は与えられない。
強化能力を持つ者が複数人居る場合、重ね掛けも可能。
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