ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~   作:岬 実

17 / 17
ゲングイトの拠点が雪山なのは、衛生と防衛と監禁にそれぞれ向いているだろうと考えての次第です


寒々しい室内

 セイラン達の前に建っていたのは、ログハウスのそこそこ大きな建物だった。しかし、全ての窓はカーテンが閉まっており、玄関も鍵が掛かっている。

 

「変だな……」

 

 セイランは小首を傾げながらインターホンを押す。するとすぐに、訛った女性の声で応答が有った。

 

「どぢら様スか……? 救助のかだスか……?」

「何だこの喋り方……。あの、我々は王室護衛係の者ですが? 生憎、救助ではなく敵にバシルーラされて来たのですが。無論、吹雪が止んだら助けを呼びに行くので、ちょっと入れて欲しいのですが」

 

 インターホンの向こうから「はあああああ……」と深い溜め息が幾つも聞こえた。

 

「何か凄く残念がってるぞ?」

「ま、気持ちは分かるよ。大方、ゲングイトの手下に身の危険に晒されてるんだろ」

 

 インターホンを指差し嫌な顔をするセイランに、ガーデンは肩をポンポンしながら宥めた。

 そんな会話をしていると、「ドーゾ……」の声と共に玄関から鍵が開く音が聞こえた。

 

「メッチャ嫌そうな言い方だな……」

「この場は下手(したて)に出ろ……」

 

 二人は風除室に入るとすかさず鍵を掛け直し、服や靴の雪を落とすと、靴を脱いで室内に入る。しかし、山小屋の中は明かりが一つも点いていなかった。

 

「何だ? 真っ暗じゃないか?」

 

 セイランは辺りを見回すと、突如下からの光に照らされた、吊り上がった目と口が闇に浮かび上がった。

 

「どぉぅぁっ!」

 

 驚いたセイランは顔芸をしながら背後に飛び退いて、ガーデンが彼をキャッチした。

 

「思いっ切り驚くな、吹雪の魔女の人じゃないか」

「急に出て来るもんだから、つい……」

 

 下顎を手の甲で拭きながら弁解するセイラン。

 顔を照らしていた懐中電灯をセイラン達に向け、吹雪の魔女は尋ねる。

 

「アンダ()、よぐモンスタに襲われねがったね?」

「え……? いや、居ませんでしたが……」

 

 セイランが答えると、奥から数人のスタッフが現れ、口々に喋り始める。

 

「周りは氷属性の、物質系、エレメント系のモンスターだらけだ。ブリザードにアイスチャイムまで居る」

「電話も電気も止まってるよ」

「食料も燃料も限られてるし、吹雪も止みそうにない。何とかしてくれよ……!」

 

 オーガの男に、イエティ、ホークブリザードの順に訴え、詰め寄られ、セイランは後退りする。

 

「ちょ、ちょっと」

 

 たじろぐセイランの前に、ガーデンが立って話し始めた。

 

「皆さん、落ち着いて。必ず助けます。その前に……、私等、ここがどこだか分からないんですが。ここは山小屋?」

「いんえ、正確にゃ『タッチトゥースカイ(ざん)』頂上に在る測候所への、9合目中継地でごぜーやす」

 

 吹雪の魔女の答えに、ガーデンは目を丸くした。

 

「タッチトゥースカイ(ざん)? この星で一番高い山の!?」

「は。仰るとーり……。ああそうそう、ワーは責任者の『フブキ』ス」

 

 フブキの自己紹介に、他のスタッフが倣う。

 

「厨房担当、『ハンブルグ』」

「私は案内人の『エータ』よ」

「捜索・救助係『リザード』だ」

 

 オーガの男、イエティ、ホークブリザードの順で名乗った。

 セイラン達も応えて、身分証を見せる。

 

「セイラン=ブルーウェア。一応、班長です」

「ガーデン=バッシュです。ところで……、いつからこの状況に?」

「まあ、立ぢ話もなんスから、こっつぁ座って。おぢゃぐらい出しますから」

 

 フブキは照明として蝋燭に火を点け、セイランとガーデンを広間のテーブルに案内し、一旦厨房に向かうと、ティーセットを持って戻って来た。

 

「えっと? いづがらこうなった、だって? 大体……、今日の明け方ら辺かな。モンスタが出るだけじゃねくて、今は春で晴れでだのに天気も悪ぐなってぇ」

 

 フブキが紅茶を淹れ、二人に勧める。

 セイランがお茶を一啜りして、訊いた。それに返事したのはリザード。

 

「停電って、発電機を壊されたんですか?」

「いやメインなのは、近くの風力兼、ソーラー兼、『降雨雪』発電所だ。そこの様子は、吹雪いてて見に行けないし。今は薪ストーブと自家発電で何とかしてるが、節約しても限りが有る。人の気配が有れば、モンスターも寄って来るだろうしね……」

「何でわざわざ離して作ってあるんです?」

「そこは崖っ縁の広い平地で、測候所のコンピューターに大電力が必要だからって……。ここには電気の一部を回して貰っててね」

 

 次は、エータが質問した。それにはガーデンが答える。

 

「アンタ達さっき、ゲン何とかって言ってたけど、何か知ってんの?」

「1万年前の『竜族侵略戦』の生き残りが現れた事は聞いてると思いますが、その幹部の一人で。頂上の上空に陣取ってるらしいが……」

「ううん、天気が悪過ぎて頂上が見えない」

「そうですか……」

 

 ガーデンは少し考えてから、続けた。

 

「こうした所に住み込みで働くなら、定時連絡はしてるんでしょう? 最後にしたのはいつ?」

「連絡は0時。3合目の事務所宛てに」

「0時か……。モンスターが山のどこまで居るのか分からないが、ここの異変に気付いてないのか?」

「恐らくは」

「朝になったら、すぐに発電所の安否を確かめに行こう。もしかしたら電波障害の原因もそこに有るかも」

 

 セイランが出した案に、ガーデンが付け加える。

 

「そうしたいが、多分もう一人、保護しないといけない人が居る」

「ん? 誰の事だ?」

「今から夜だからどこかで休んでるだろうが、人の出入りが有る高山となると、歩荷(ぼっか)と呼ばれる荷物運び屋が居る筈だ」

「そうだ忘れてた、キースドラゴンの『ゴンドラ』さん! 昨日から仕事を再開してる筈!」

 

 リザードが慌てた声を上げた。しかし、ハンブルグは落ち着いている。

 

「いや、あの人なら大丈夫かも知れねぇ……。昔は陸軍で戦ってたって聞いた事が有る」

「退役軍人か……。場合によっては少し協力して貰う事になるかもな……」

 

 セイランが呟いたが、ガーデンがそれを制した。

 

「今はあくまで民間人だ。戦わせる事は出来ない。協力と言っても、危険が無い事に関してだけだ」

「分かってる……」

「なら良い。既に方針も少し考え付いた。セイラン……、班長のお前を差し置いて悪いが、ここは俺の意見を採用して欲しい」

「お前の作戦だ。間違い無いだろう」

「助かる。で、詳しい作戦内容だが……」

 

 ガーデンは、他のスタッフも手招きして呼び寄せ、明日の予定を話し始めた。




降雨雪発電は実在のシステムではありません。折角の未来の世界なので、有り得そうな範囲で無い知恵を絞った次第。但し、雨の摩擦での発電、『雨滴発電』が研究されてるのは本当です

設定集

降雨雪発電機
豪雪地帯の崖等に設置し、水力発電の要領で発電機を回すと共に、摩擦で発生した電気を回収する方式
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。