ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~ 作:岬 実
セイラン達の前に建っていたのは、ログハウスのそこそこ大きな建物だった。しかし、全ての窓はカーテンが閉まっており、玄関も鍵が掛かっている。
「変だな……」
セイランは小首を傾げながらインターホンを押す。するとすぐに、訛った女性の声で応答が有った。
「どぢら様スか……? 救助のかだスか……?」
「何だこの喋り方……。あの、我々は王室護衛係の者ですが? 生憎、救助ではなく敵にバシルーラされて来たのですが。無論、吹雪が止んだら助けを呼びに行くので、ちょっと入れて欲しいのですが」
インターホンの向こうから「はあああああ……」と深い溜め息が幾つも聞こえた。
「何か凄く残念がってるぞ?」
「ま、気持ちは分かるよ。大方、ゲングイトの手下に身の危険に晒されてるんだろ」
インターホンを指差し嫌な顔をするセイランに、ガーデンは肩をポンポンしながら宥めた。
そんな会話をしていると、「ドーゾ……」の声と共に玄関から鍵が開く音が聞こえた。
「メッチャ嫌そうな言い方だな……」
「この場は
二人は風除室に入るとすかさず鍵を掛け直し、服や靴の雪を落とすと、靴を脱いで室内に入る。しかし、山小屋の中は明かりが一つも点いていなかった。
「何だ? 真っ暗じゃないか?」
セイランは辺りを見回すと、突如下からの光に照らされた、吊り上がった目と口が闇に浮かび上がった。
「どぉぅぁっ!」
驚いたセイランは顔芸をしながら背後に飛び退いて、ガーデンが彼をキャッチした。
「思いっ切り驚くな、吹雪の魔女の人じゃないか」
「急に出て来るもんだから、つい……」
下顎を手の甲で拭きながら弁解するセイラン。
顔を照らしていた懐中電灯をセイラン達に向け、吹雪の魔女は尋ねる。
「アンダ
「え……? いや、居ませんでしたが……」
セイランが答えると、奥から数人のスタッフが現れ、口々に喋り始める。
「周りは氷属性の、物質系、エレメント系のモンスターだらけだ。ブリザードにアイスチャイムまで居る」
「電話も電気も止まってるよ」
「食料も燃料も限られてるし、吹雪も止みそうにない。何とかしてくれよ……!」
オーガの男に、イエティ、ホークブリザードの順に訴え、詰め寄られ、セイランは後退りする。
「ちょ、ちょっと」
たじろぐセイランの前に、ガーデンが立って話し始めた。
「皆さん、落ち着いて。必ず助けます。その前に……、私等、ここがどこだか分からないんですが。ここは山小屋?」
「いんえ、正確にゃ『タッチトゥースカイ
吹雪の魔女の答えに、ガーデンは目を丸くした。
「タッチトゥースカイ
「は。仰るとーり……。ああそうそう、ワーは責任者の『フブキ』ス」
フブキの自己紹介に、他のスタッフが倣う。
「厨房担当、『ハンブルグ』」
「私は案内人の『エータ』よ」
「捜索・救助係『リザード』だ」
オーガの男、イエティ、ホークブリザードの順で名乗った。
セイラン達も応えて、身分証を見せる。
「セイラン=ブルーウェア。一応、班長です」
「ガーデン=バッシュです。ところで……、いつからこの状況に?」
「まあ、立ぢ話もなんスから、こっつぁ座って。おぢゃぐらい出しますから」
フブキは照明として蝋燭に火を点け、セイランとガーデンを広間のテーブルに案内し、一旦厨房に向かうと、ティーセットを持って戻って来た。
「えっと? いづがらこうなった、だって? 大体……、今日の明け方ら辺かな。モンスタが出るだけじゃねくて、今は春で晴れでだのに天気も悪ぐなってぇ」
フブキが紅茶を淹れ、二人に勧める。
セイランがお茶を一啜りして、訊いた。それに返事したのはリザード。
「停電って、発電機を壊されたんですか?」
「いやメインなのは、近くの風力兼、ソーラー兼、『降雨雪』発電所だ。そこの様子は、吹雪いてて見に行けないし。今は薪ストーブと自家発電で何とかしてるが、節約しても限りが有る。人の気配が有れば、モンスターも寄って来るだろうしね……」
「何でわざわざ離して作ってあるんです?」
「そこは崖っ縁の広い平地で、測候所のコンピューターに大電力が必要だからって……。ここには電気の一部を回して貰っててね」
次は、エータが質問した。それにはガーデンが答える。
「アンタ達さっき、ゲン何とかって言ってたけど、何か知ってんの?」
「1万年前の『竜族侵略戦』の生き残りが現れた事は聞いてると思いますが、その幹部の一人で。頂上の上空に陣取ってるらしいが……」
「ううん、天気が悪過ぎて頂上が見えない」
「そうですか……」
ガーデンは少し考えてから、続けた。
「こうした所に住み込みで働くなら、定時連絡はしてるんでしょう? 最後にしたのはいつ?」
「連絡は0時。3合目の事務所宛てに」
「0時か……。モンスターが山のどこまで居るのか分からないが、ここの異変に気付いてないのか?」
「恐らくは」
「朝になったら、すぐに発電所の安否を確かめに行こう。もしかしたら電波障害の原因もそこに有るかも」
セイランが出した案に、ガーデンが付け加える。
「そうしたいが、多分もう一人、保護しないといけない人が居る」
「ん? 誰の事だ?」
「今から夜だからどこかで休んでるだろうが、人の出入りが有る高山となると、
「そうだ忘れてた、キースドラゴンの『ゴンドラ』さん! 昨日から仕事を再開してる筈!」
リザードが慌てた声を上げた。しかし、ハンブルグは落ち着いている。
「いや、あの人なら大丈夫かも知れねぇ……。昔は陸軍で戦ってたって聞いた事が有る」
「退役軍人か……。場合によっては少し協力して貰う事になるかもな……」
セイランが呟いたが、ガーデンがそれを制した。
「今はあくまで民間人だ。戦わせる事は出来ない。協力と言っても、危険が無い事に関してだけだ」
「分かってる……」
「なら良い。既に方針も少し考え付いた。セイラン……、班長のお前を差し置いて悪いが、ここは俺の意見を採用して欲しい」
「お前の作戦だ。間違い無いだろう」
「助かる。で、詳しい作戦内容だが……」
ガーデンは、他のスタッフも手招きして呼び寄せ、明日の予定を話し始めた。
降雨雪発電は実在のシステムではありません。折角の未来の世界なので、有り得そうな範囲で無い知恵を絞った次第。但し、雨の摩擦での発電、『雨滴発電』が研究されてるのは本当です
設定集
降雨雪発電機
豪雪地帯の崖等に設置し、水力発電の要領で発電機を回すと共に、摩擦で発生した電気を回収する方式