ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~ 作:岬 実
「大変です、警視!」
タンが、慌てた様子でテントの中に飛び込んで来た。
「今の声だな!?」
「はい! 空が、空が歪んでいます!」
「証言は本当だったのか……!」
ラインは、小走りでテントの外へ出て行った。
「セイラン、俺達も行くぞ!」
「ああ!」
セイラン達は各々の武器を手に構え、ラインの後に続く。
外に出て見ると、警察職員や医療従事者の何人かまでがおり、一様に空を見上げていた。
「あれは……?」
セイランは、驚きの声を上げた。
青空が、まるで水面の様に波打っている。
波打った箇所の中心が、ドラゴンの両手の形に引き伸ばされた直後、手が空間を突き破って現れた。
その手は空間を上下左右に大きく引き裂くと、続いて体全体が出現した。
その姿は……。
「家?」
ガーデンがやや抜けた声で呟く。
まさしく、そのドラゴンは豪邸と呼ぶに相応しい姿であった。
寸法は、人間用の家屋を4倍強に拡大した程度。
3階建ての本館、左右に別館、の構造であり、蛇腹に似たシャッターが閉じたガレージも備えている。
本館最上階の屋根がドラゴンの頭、別館の屋根が翼、土台に2対ずつの前足と後ろ足、アンテナ型の角、と言った威容である。
加えて、羽ばたくでもなく空に浮かんでいる。
「バルコニーに誰か居る!」
グィネヴィアが、本館最上階のバルコニーを指差した。
そこには、椅子に腰掛けた人影。
翼も尻尾も持たない、骨格が人間にかなり近いドラゴン。ジャケットスタイルのファッションをしている。
椅子すらも四足歩行型のドラゴンであり、背中が座面と肘置き、尻尾が背もたれ、羽がサイドテーブル、と言う出で立ちである。
人型ドラゴンは、サイドテーブル上のグラスに赤ワインを手酌すると、一気飲みして深く息を吐いた。
「俺もちょっと敵情視察に来てみれば……、確かに、昔と比べて弱くなってるじゃないか、お前等」
人型ドラゴンは、その場に居る人物達を見渡すが、セイランを見付けると目を止めた。
「……? ……。お前みたいな奴は初めて見るな……。何だお前は」
セイランを指差すが、そのセイランは周囲を見回す。
「お前だお前! そこの銀バエみたいな奴!」
「え? 俺?」
セイランは自分の顔を指差した。
「そう、お前だ。昔はお前の様な人種は居なかった」
「俺は『
人型ドラゴンは若干眉間にシワを寄せて目を細めた。
「俺達ドラゴンに名前を訊くとは、相も変わらず生意気な奴等だ。生物的にも底辺の分際で。
人型ドラゴンは、目線を逸らして首の回りを掻く。
「良いから答えろよ」
セイランに急かされ、人型ドラゴンはセイランに目を向ける。一拍置いて、咳払い。
「俺は優しいから……、元々、大体の事を喋るつもりでいたんだ。俺の名前が『リッヂ=ゼーレー』、ボスの名前が『ドランノージェ』、目的は『世界の管理』だと。そして、『俺もお前達の力試しに来たんだ』と」
そこで、リッヂは指を鳴らす。すると、背後の部屋からアタッシュケース型のドラゴンが飛来し、サイドテーブルに止まる。その形態は、腹側から翼が生え、下顎が取っ手型になっていると言う物。
アタッシュケース型ドラゴンは、背中側を開いた。
「俺達の力試しをするだと……?」
「警視、危険です」
タンがラインを下がらせ、ガーデンが剣を抜いて構えると、リッヂはアタッシュケース型ドラゴンの中から、リッヂに見合ったサイズの札束を一つ取り出した。
「そうだ。まずはコイツ等で小手調べだ」
札束の帯封を破き、お札を紙吹雪の様に振り撒いた。
舞い散る紙幣の内の一枚がセイランの手元に来て、セイランは何気無くそれを手にする。
緑色掛かった紙幣のそれは、額面が「10000G」と書かれており、肖像画には普遍的な姿のドラゴンが描かれている。
「何だこれ……?」
とセイランが呟くが早いか、肖像画が大口を開けた。
「んっ!?」
セイランは反射的に紙幣を放し、ブリッジの姿勢になる。
直後、吐き出された炎がセイランの居た位置を炙った。
「おいおい、油断するなよ? セイラン」
ガーデンが紙幣達に切っ先を向けつつ、セイランを助け起こす。
「ああ、悪い!」
セイランは大鎌を構え、刃先でリッヂを指し示す。
「ガーデン、グィネヴィア、戦闘開始だ! 平穏を乱す奴等を排除しろ!」
「応!」
「了解!」
スピーカーからも、ラインの声が響く。
「非戦職員は下がれ! 残りの者は敵性生物の対応に当たれ! 深追いはするな!」
リッヂは、軽く息を吸う。
「お前達の名は?」
リッヂは紙幣達に問う。
『私達は、「
「その体とチカラは?」
『俗人共を翻弄する為でございます!』
「その通り! 今こそ俺に能力を見せろ!」
リッヂがセイラン達を指差すと、浮遊している
「防御しろ!」
セイランの指示に、ガーデンとグィネヴィアは従い、ガードする姿勢を取る。
次の瞬間、
「イッテテテ、二人とも、首とか斬られてないか?」
セイランは、ひとりでに治っていく切り傷をさすりながら、周囲を見回す。
「護衛係には自動回復があるから大丈夫! それ、ベホマラー!」
グィネヴィアは返事をしながら、ガードがてら光を纏わせていた両手を天に向ける。
すると、3人以外の16人に光が降り注ぎ、見る見る内に傷が塞がって行く。
「良いぞグィネヴィア! 回復を主軸に動いてくれ!」
「俺の外殻にはこんなモンは効かん。スクルト!」
無傷のガーデンが放った八つの赤い光は、セイランとグィネヴィアの他、怪我の少ない者6人の表面を覆った。
スクルトの連打で全員に効果が行き渡った所で、
破られた個体は形を失い、赤いスライム状になった。
ここで、ラインの声がスピーカーから流れた。
「ズッシードを使える者は、札マンダーに掛けろ!」
警官達は命令通り、数人がズッシードを唱えた。
しかし、重さが増して地面に落下した
「そう来ると思って、多少の耐魔性能は与えてある」
リッヂはまたワインを注ぐと、一口飲む。
警官達は
逆に、四方八方から炎を吐かれて、セイラン達は逃げの一手を強いられてしまった。
「並のスピードでも当たらないぜ?」
リッヂは「ハハハ」と笑うが、ガーデンは鼻で笑った。
「だったら、尋常じゃない速さで動くだけだ」
ガーデンはスタンディングスタート気味の姿勢を取り、「ピオラ……!」と唱えた。
「行くぞ!」
光に包まれたガーデンは、瞬時に
砂煙を上げてブレーキを掛け、光も消えたガーデン。
「爆裂斬……!」
ガーデンの攻撃の隙を補う形でセイランが、
「バギマ!」
例えるなら、二重フィラメントに似た竜巻。竜巻で出来た竜巻が三つ発生し、光線の様に伸びて行く。
周囲の
バギマがリッヂに迫るが、リッヂは足で椅子型ドラゴンを小突く。
「マジックバリア」
椅子型ドラゴンが唱えると、椅子型ドラゴンとリッヂの体が淡い光で覆われ、触れた端からバギマが掻き消されてしまった。
「おいおい……、マジックバリアで完全に消滅させるなんて……」
セイランが下顎を拭っている所で、リッヂが答える。
「マホカンタやマホステでも良かったんだが、ちょっと大人気無いと思ったんでな」
「人の事言える程、お前もトシ食ってる様に見えないぞ?」
ガーデンの指摘を無視し、リッヂは続ける。
「まあ……、俺も少しナメ過ぎていたな。
リッヂの命令で、
「じゃあ次は、コイツに相手をさせようか」
リッヂはまたしても指を鳴らす。すると、家型ドラゴンの玄関が開き、姿を現した何かが、セイラン達に向かって跳躍した。
設定集
味方陣営のコンセプトは、「居て欲しい」と思える能力の持ち主である事。