ドラゴンクエストFUTURE~王室護衛係セイラン班~   作:岬 実

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前回、上書き保存を押したつもりが出来ておらず、書きかけ状態で投稿してしまった。反省


ドラゴン幹部集結

 リッヂ達が進入した異空間は、空は雲一つ無い青空、地面は土が見えない程、地平線まで花が咲き乱れていると言う所であった。

 そこには既に一人の先客が居た。

 姿は巨大なサソリの様。但しサソリの頭は無く、代わりに尻尾の先が屈強なドラゴンの上半身になっている。筋肉は外骨格を押し広げる程に発達しており、頭頂高も、ククル(かん)の全高に匹敵する。

 

「『ボーアン』、一番乗りか?」

「ん……、リッヂ。お前も相変わらず早いな」

「周りの奴等が、時間の守り方を知らねーだけだよ」

「俺もそう思う」

 

 二人が話していると地面がドラゴンの頭と両腕の形に盛り上がって、それを突き破って現れた者は頬杖を突く姿勢を取った。

 体格はリッヂとボーアンの中間程度。岩の様な質感の緑の鱗に覆われている。

 

「俺ならボーアンが来る前からここに居たぞ」

「おお、『グラウナード』。いつも通りかくれんぼが上手いな」

 

 リッヂが声を掛けると、グラウナードは「あんまり遅いから昼寝してたんだ」と言いつつ、リッヂの部下を見て若干嫌な顔をした。

 

「お前も未だに、人類なんぞの真似をしてるのか? 家に住んで、服を着て、道具を使って、飯を食うなんざ、オッチャンは理解出来んぜ? トドメにメスか」

「そう言うな。奴等を支配するには、奴等の生態を頭に入れねーと。それと、コイツ等は俺の子供達だし」

 

 リッヂは手で合図して、椅子型ドラゴンを残して他の部下をこの異空間から下がらせた。

 入れ代わりにまた空間が歪み、リッヂより少し体格が大きい3体のドラゴンが現れた。

 一人めはシュプリンガーに似ているが、首と肘と腰から一対ずつの翼が生えており、さながら白衣を着込んだ様。頭の上半分は地球儀を横倒しにしたものに近い、二股の軸の間に球体が有る形。そこに、それぞれ色が違う単眼が縦一列に付いていると言う物。

 二人めは腕が地面に着く程長く、下半身は逆間接の一本脚の形態。

 3人めは美女の生首に4本脚が生えた様な者。鼻の位置にドラゴンの頭が在り、サイドの髪が翼、そこ以外の髪が触手の姿である。

 

「皆さんお揃いだな? 俺達以外は」

「時間を守れと言われてるだろ? 何故早く来ないといけない」

「時間を守る為だ」

 

 一人め、二人め、3人めの順に喋る。

 

「『ジヌバーン』が早めに来るとは珍しい」

「『ヴァイア』に無理矢理な。時間ピッタリに来て何が悪い?」

 

 ボーアンからジヌバーンと呼ばれた二人めは、ヴァイアと呼んだ3人めに目を向けて舌打ちをした。

 

「相変わらず融通の利かない奴だ」

 

 一人めが困り顔をした所で、グラウナードが一人めを指差す。

 

「アホの躾は賢い奴がやるんだ、『ゲングイト』さんよ」

「ん? おう、ジイさん一本取られたな」

 

 ゲングイトは軽く笑うが、ジヌバーンはグラウナードに食って掛かった。

 

「アホだと?」

「時間キッチリに着く様に動けば、トラブった時に遅刻確定となる。それが分からんお前の事だよ」

「上等だオヤッサン……!」

 

 ジヌバーンが軽く飛び跳ね、応じてグラウナードが拳を握って指の骨を鳴らし、お互いに威嚇し合う。

 その様子についてリッヂは、「また始まった」。ボーアンは「喧嘩しないと調子が悪いんだ」。ゲングイトは赤い瞳で見て「いつも通り、本気で殺す気だぞ」と口々に言いながら、止めるでもなく二人から遠ざかる。

 その時、声が響いた。

 

「やめなさい、お前達。同族で争うなぞ、人類や動物の様でみっともない」

 

 高空、リッヂの身長と同じ位の大きさに空が割れ、そこから周囲の景色に蜃気楼を起こし、草花が見る見る内に枯れていく程の熱気が漏れだした。その穴から、片目だけが覗いている。

 

「待たせましたね……」

「ドランノージェ様に礼!」

 

 その声で、ゲングイトの指示で幹部全員が姿勢を正して頭を下げる。

 

「楽にして良い」

 

 ドランノージェの許しを得て、一同は姿勢を崩した。

 

「では早速ですが予定通り、各々の近況報告を聴こう。まずは私だが、修行は順調だ。もう少しでそちらの環境を破壊せずに済むレベルにまで力を抑えられる様になりそうだ」

「それは良う御座いました。我々が如何に努力した所で、決定打はドランノージェ様の存在を置いて他にありません故……」

 

 ゲングイトが揉み手してドランノージェを持ち上げ、そして手を挙げる。

 

「ドランノージェ様、宜しいでしょうか?」

「そうですね、まずはお前から言ってみろ」

 

 ゲングイトは「あーあー」と声を整え、話し始めた。

 

「人類の管理をすると言う目的に当たって、ボーアンとリッヂが部下をけしかけて彼等の戦闘データを取ったところ、1万年前より貧弱になっているそうで」

「成る程……。尚更我々が面倒を見ないといかんな」

「引き続き調査は行いますが、詳しい生態については、見れば分かる私にお任せ下さい。その為の機材と食料は、ヴァイアとグラウナードに準備させております」

「宜しい。観察が得意なお前にやらせれば間違いは無い。ヴァイアとグラウナードは滞り無く仕事が出来ているのか?」

 

 ドランノージェは指名した二人に目を移した。まずはヴァイアが発言する。

 

「明日、リッヂが本格的に戦いを仕掛ける予定でして。その頃には予備も充分に用意出来ます」

 

 続いて、グラウナード。

 

「食料の生産だけでなく、薬物や料理の、現代のレシピも準備出来ています」

 

 ここで、ボーアンが挙手をした。

 

「ボーアン? 何だ?」

 

 ドランノージェが話を促すと、ボーアンはリッヂに目を向けた。

 

「いや、明日のリッヂの強襲作戦について、俺も一緒に行きたく。リッヂは優しいから、どこか手心を加えようとするでしょう。心境とは相手にも伝わりがちなもの。となれば、人類も本気で戦わない可能性が高いかと」

「ふむ、確かに。ならばボーアン、そしてジヌバーンも。リッヂを手伝ってやれ。そして万が一復讐者が現れれば、その場で消す事を許可する」

「お任せを。奴等の全力を引き出してみせましょう」

 

 意気込むボーアンだが、ジヌバーンは不服そうである。

 

「俺は戦闘は本分じゃないんですがね……」

「お前はサンプルの捕獲に専念してくれれば良い。戦いは俺達がやる」

 

 ボーアンになだめられ、ジヌバーンは「応」と軽く返事をした。

 そこで、リッヂが話に割り込んだ。

 

「なあ、お前等。銀バエ連中は俺が相手して良いよなあ?」

 

 その言葉にドランノージェが食い付いた。

 

「銀バエ……? 何の事だ?」

「肌が銀色の、新しい人種です。宙人(そらびと)だったか」

 

 リッヂが答え、ゲングイトが手を一拍してそれに続く。

 

「そうそう、この爺さんも気になってた。是非生け捕りにして欲しい」

「それと、もう一つ面白そうなのを見付けたぜ。魔族の小娘、いや、ちんちくりんだ。魔法に関して素質が高い様だ。ついでにそいつも捕まえといて。名前がネツヤナヤで、確かこんな顔だったかな……」

 

 リッヂは指先に魔力を宿し、それで虚空にネツヤナヤの似顔絵を描く。デフォルメされてはいるが、特徴を捉えた絵であった。

 

「分かった……。どっちも捕まえよう」

 

 ジヌバーンが了承し、ドランノージェが話を進める。

 

「これで全員報告は終わったな? 何か意見を言いたい者は?」

 

 ドランノージェはリッヂ達を見渡すが、発言する者は居なかった。

 

「よし、明日の作戦の確認をする。リッヂ、ボーアン、ジヌバーンは人類の街に強襲し人類のサンプルと実戦データを集める。ゲングイトはそれ等の分析。グラウナードとヴァイアは自由にやって良し。以上だ。各自取り掛かれ」

『了解!』

 

 リッヂ達が威勢良く返事をすると、ドランノージェは「解散……!」と自分のゲートを閉じ、去った。




ドラゴン達のデザインに悩んでしまい、投稿に時間が掛かってしまった。反省。

設定集
この作品でのドラゴンは、ドラゴン系の魔物とは全く別種の生物である。
①寿命の概念が無い
②人類とも魔物とも交配不可能
③単位生殖可能。自分の意思一つで、子の遺伝子を変えられる
④食料も水も酸素も不必要
⑤宇宙を生身で航行する
⑥異空間を作り、自由に行き来出来る
と言う特徴が有る

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