第4.5次聖杯戦争   作:慶天

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10話 リセの願い

 暗闇とは本能的に人の心の負の部分を増殖させるものである。それが恐怖と狂気を生みだし、やがて様々な怪異を創造することになる。

 

 時代、そして洋の東西を問わず暗闇に潜む化け物の伝説は枚挙にいとまがない。例えばそれは妖獣「鵺」であり、怪人「口裂け女」であり、ベッドの下やクローゼットに潜む怪物だったりするわけだ。

 そして19世紀、ロンドンを震撼させた連続殺人鬼もまたそんな暗闇が生み出した幻想の産物かもしれなかった。

 

 

 

 冬木の外れにある怪しげな洋館。ここが、アインツベルンが用意した今回の拠点だ。朝方から降り始めた雨はやむ気配もなく、どこか陰鬱とした空気を洋館に漂わせていた。

 その一室で雨に濡れる窓の外の景色を見ながらリセが静かに呼びかけた。

「ジャック」

「なぁに? おかあさん」

 今までリセ以外誰も居なかった部屋の中に、一人の少女の姿が現れる。

 

「いよいよ聖杯戦争が始まったわ。一人目のサーヴァントが倒される前に、あなたにやってもらわなければならないことがあるのよ」

「何をすればいいの」

 リセはかつてより考えていた計画をジャックことアサシンに打ち明ける。

「薬の効果で眠っているツヴァイの体内から、あなたの外科手術で取り出して欲しい物があるの。正確な形状は分からないのだけれど。人体の構造上あり得ないものがツヴァイの身体の中にあるはずなの」

 あり得ないもの? 何のことだろう。疑問には思ったがアサシンはリセの言う事に間違いがないことを知っている。

「うん、わかった。やってみるね」

 

 体内から異物を取り出す。現代医学をもってしてもそれは簡単な事ではない。ましてや病院ですらなくこんな設備も整っていない部屋で行えることではないはずである。

 しかしアサシンは気負った様子もなく淡々と作業を行う。結果、手術は意外なほど短時間で終わった。魔力によるものなのか術後の傷は縫合したわけでもないのに自然に塞がった。残念ながら専門家ではないアサシンの手術によりツヴァイの胸には大きな傷痕が残ってしまったが、これは仕方がないと思うしかない。

 

 ツヴァイの体内からは黄金でできたリンゴのような物が取り出された。それが何なのかはリセだけが知っていた。これは今回の小聖杯に当たるものなのだと。

 前回の聖杯戦争において小聖杯は、アイリスフィールの体内に収められ、英霊が一人倒される度に彼女は人間としての機能を失っていった。

 アインツベルンの切り札であるイリヤスフィールも彼女の母親同様に小聖杯を体内に収めているが、彼女はマスターとして戦わなければならないため、英霊の脱落により身体機能を失うことが無いよう、彼女の小聖杯は改良が施されている。

 

 イリヤのクローンであるツヴァイも同様なら良いのだが、それを確かめる術がないのである。もし、アイリのように身体機能を失うようなことがあれば、ツヴァイの聖杯獲得は絶望的となる。アハト翁はその辺りに関してもツヴァイを用いた実験で確認するつもりなのだ。

 これを取り出すことはアハト翁の思惑に反することになるのでしょうけれど、私の、いえ、私たちの願望を叶えるためにはこれを放置しておく訳にはいかない。リセにとってはとっくにアハト翁よりツヴァイの命の方が大切な存在なのだ。

 

「いい、ジャック。私には願いがあるわ」

 リセはそう言うとアサシンに向き直りその胸の内を明かした。

「クローンとして急造されたツヴァイの身体は培養ケースから出した後は一年程しかもたないの。私たちは他のマスターを全員倒し、普通の人間の親子として生まれ変わるという願望を叶えるのよ。その暁には3人で一緒に暮らしましょうね」

 

「本当、おかあさん。みんなの願いが叶ったらわたしたちもちゃんと生まれてこれる?」

「もちろんよ。あなたもかけがえのない家族ですもの」

「わぁい、わたしたち頑張るよ」

 ……ただ、アハト翁が仰っていた、今回の聖杯戦争は正式な儀式たり得ないという言葉が気がかりだわ、でも、どのみち私たちの願いは聖杯に求めるしかないもの……今はこれ以上考えても仕方ないわ。

 

 ホムンクルスとして生み出されたリセの願い。そして

 

 生まれることができなかった子供たちの魂の集合体。その望むものは……

 

「ところで、ツヴァイの体力が回復するまでにはもう少し日にちがかかるわ、その間、あなたには調査をお願いできるかしら。他の勢力のマスターのことを徹底的に調べて欲しいの。私たちが狙うのは、サーヴァントじゃないわ。マスターよ」

「わかった」

 少女は再び姿を消した。

 

 

 

 ツヴァイの体から黄金のリンゴが摘出されてから6日後、または冬木ドリームランドで大規模な戦いが終わった朝。衛宮邸の道場。

 

 早朝から竹刀の打ち合う激しい音と共に気合の入った声が響いている。

「ありがとうございました!!」

 防具の面を外した二人は共に若い女性だった。

「いや~、総司さん強すぎるよ。私が今まで積み上げてきた練習や努力は何だったのかって、正直へこんじゃうレベル」

 

「いえ、マスターは基本がしっかりしていますから。研鑽を積めばどんどん高みを目指せると思います。私は何となく直感で動いてしまうところがあるので、あまり上手く教えることはできないとは思いますが、練習相手くらいなら幾らでも務めさせていただきます。それと人前では私の事はセイバーと呼んでください。誰が聞いているかわかりませんので」

 

「はぁーい。うーん、直感か~。それが天才剣士と後世に語り継がれている所以なのかな。真似できないなぁ」

「ところで、マスター。聖杯に託す望みは決まりましたか。私の望みにも大きく関係するところなので、できれば早く知っておきたいのですが」

「剣で天下をとる! とかじゃ駄目かなぁ」

「それは己の力で成し遂げるものでは。何かに頼んで達成しても空しいだけだと思いますよ」

「だよねー」

 

 衛宮邸の道場を後にした空は、歩いて10分ほどの位置にある自宅アパートに戻った。比較的新しい物件であり、二階建てで部屋数は四部屋。二階に上がる階段が真ん中にあるタイプの賃貸アパートで空の部屋は一階の左側である。ちなみに何故か他の三部屋は空き部屋のままだった。

 

 アパートの敷地に入ると「にゃ~ぉ」と小さな鳴き声と共に真っ黒な子猫が空の方に駈け寄って来た。冬木に引っ越してきて直ぐの頃、知り合いもおらず寂しい思いをしていた彼女が下校中に拾った捨て猫で、空はクロスケと名前を付け、他に住人が居ないのをいいことに階段の下に段ボールで簡易寝床とトイレをこしらえ、そのまま餌をあげたりして世話をしていた。衛宮邸に朝練に向かった時はまだ眠っていたが、目を覚ましてご飯の催促にきたようだ。

 

「おはようクロスケ。直ぐにご飯あげるからね」

 そう言いながら子猫の頭と喉を左右の手で同時に撫でる空。ゴロゴロと喉を鳴らして目を細める子猫は気持ちよさそうだ。

「マスター。私も猫は好きですし、あまりこんなことは言いたくないですが、賃貸アパートで動物を飼うのはルール違反では?」

 セイバーに正論を言われた空は口を尖らせて反論する。

 

「私、一度しか会ったことないんだけど、ここのアパートの大家さんはウチの遠い親戚なんだよね。冬木に着いた時、最初にご挨拶に伺ったんだけど、すごく立派なお屋敷に住んでて、初対面の私に今まで食べたことがない様な豪勢な夕ご飯をご馳走してくれたんだよ。おじいさんで見た目はちょっと怖かったけどね。だからここの家賃も格安にしてくれてるし、今は他に誰も住んでないんだから、これくらい許してくれるよ、きっと。流石に部屋の中で飼うのはマズイと思ったから、外で餌あげてるだけだし」

 

 そう言いながら部屋の中に餌を取りに行く空。空が居なくなったのを見て実体化したセイバーは、彼女と同じように左右の手で子猫の頭と喉を撫でてみた。綿毛のようなふわふわした感触が指先から伝わってくる。

「う~ん。いつの時代も猫は癒されますね」セイバーは小声でそう呟いた。

 

 慌ただしく朝食を終えた二人。

「本当に一緒に行かないと駄目なんですか」

「だってこの街には私の命を狙っている人が最低でも6人、いや、この前の教会の神父を入れたら7人はいるんだよ。天才剣士が身辺警護してくれたら、これ以上の安心はないよね」

「私は姿を消したままでも、一緒に行動することが可能なんですよ」

「まぁ、そこは、ほら、私ひとりっ子だからさ、昔からお姉ちゃんと並んで一緒に散歩したかったっていうのもあるにはあるかな」

 空は姉妹に強いあこがれのようなものを持っていた。いつ頃からなのかははっきり覚えていないのだが、ずっと昔からそうだったような気がする。

 

「だったらせめてこの衣装は何とかならないのでしょうか。着慣れない格好で正直落ち着かないのですが」

「セイバーさんが最初に着ていた服は目立ちすぎるし、ちょっと間違えば完全にコスプレだし、まさか剣道着で街中を歩く訳にもいかないでしょ。私の予備の制服だけど中々似合っていると思うよ。でも、セイバーさん、そんなにぎゅうぎゅうに胸にさらしを巻かなくてもいいんじゃない」

 

「胸が出ていると剣を振る時邪魔になるんです。私もマスターくらいの大きさなら良かったんですが……って、あれ? マスター? マスター??」

 がふぅ辛辣ゥ……(吐血)、言葉の切れ味も抜群だわ、嫌味とか、悪意とか全くないから、反論もできない……。白目で膝をつく空であった。

 

 その後、二人は無事学校に到着したが、凛とした制服姿のセイバーは学生たちの耳目を集めることとなり、途中出会ったクラスメイトや部活仲間からは誰なのかと尋ねられ、普段はそれほど目立たない空が大注目を浴びることとなってしまった。

 結局周りに人目が無い場所で霊体化するセイバー。

「やっぱり次からは姿を隠したままで、お供することにします」

「そうだね、残念だけど仕方ないよね」

「それでは、また放課後に」

 

 昨日の夜、遊園地で爆発騒ぎがあったらしいけど、十中八九聖杯戦争に関連するものじゃないのだろうか。私のマスターはどうにも危機感が足りてないから、夜一人にするのは危険だと判断したが、私も確認に出向くべきだったのだろうか。それどころか、逆にここ数日妙な視線を感じるのだけど、誰かに見張られているのか? セイバーは最近感じる視線がサーヴァントの偵察行為ではないかと考えていた。

 

 

 

 放課後剣道部の部活を終え帰路につく空とセイバー。

「ごめん、道具の片付けとかしてたら遅くなっちゃった」

「何も問題はありません。さぁ、帰りましょうか」

 少し薄暗くなってきた頃、公園の横を通りかかったところで、セイバーは妙な気配を感じた。

(これは……、僅かだがサーヴァントらしい気配を感じる。しかし、何だ。位置や距離感は全く掴めないな)

 

 一方、桐生空は、何か独り言を言いながら公園のブランコを揺らす少女と、誰も座っていないのに少し揺れているブランコという不思議な光景に目を奪われた。

「マスター。近くではないと思いますが、微かにサーヴァントの気配がします。注意してくださいって、あれ?」

 セイバーの警告が聞こえているのか聞こえてないのか、空は無防備に公園の中に入って行き、中にいた銀髪の少女と話を始めた。

「やれやれ、でも、サーヴァントの気配は無くなったみたいだ」

 

「こんな時間に独りでどうしたの? お母さんは? もしかしてはぐれちゃった?」

「ママがここで待ってなさいって。それに独りじゃないよ」

(どう見ても独りなんだけど……、それに誰かと話していたっぽいし、もしかしてそっち系の危ない子なのかしら)

 

「そう、何かお喋りしていたみたいだけど誰かいたのかな」

「うん、妹とお話ししてたの。お姉さんはだあれ」

(私には見えないけど妹とお話し? なんだろ……ぞわぞわする……、これちょっと私の苦手な心霊関係の子かも)

 

「あ、うん。私は桐生空。未来の大剣豪よ、って意味わからないよね」

「ううん、分かるよ。お姉さんとっても強いんだね」

「いや~照れるな~って、初対面の女の子に気を遣わせてしまった……」

「あたしはツヴァイ。あたし生まれてそんなに経ってないから、まだお友達が居ないの。空お姉さん。よかったら、あたしとお友達になってくれませんか?」

(ん? 生まれてそんなに経ってないってどういう意味??)

 

「うん、いいよ。もちろん。よろこんで。ところで、本当に迷子じゃないの?」

「あたしとお友達になってくれるの。やったあ、凄く嬉しい。初めての友達……うふふ」

 少女は本当に嬉しそうに微笑んだ。

「空お姉さん、心配してくれてありがとう。でも、もうすぐママが帰ってくるから大丈夫」

「そう、じゃあ、今日は遅いし、私もう行くね。この公園にはよく来るのかな。私も時々ランニングの途中にこの公園に寄るから、今度また会ったらゆっくりお話ししましょうね」

「ホント、楽しみにしてるね。ばいばい」

 公園の出口まで戻った空の心に怖い考えが浮かんできた。

(これ振り返ったら誰も居ないとかいうパターンじゃないよね)

 

 恐る恐る振り返る空。そこには微笑みながら未だ小さく手を振るツヴァイの姿があった。

 手を振り返しながら、

「はぁ~、私何やってんだろ……。でも何か不思議な子だったな」

 

 

 

 アサシンの視点

 

 日が傾きかけた頃にリセ、ツヴァイは冬木市民会館跡地を目指していた。姿は見えないがアサシンももちろん同行している。

 五年前の冬木大災害で、冬木市民会館を中心としたこの一帯は一面の焼け野原となった。今は概ね復興しているが、災害の中心だった市民会館跡地は未だに立ち入り禁止区域となっており、復興の手が追い付いていない状態であった。

 

「いい、ツヴァイ。私はこれからやらなくてはいけないことがあるから、少しの間居なくなるけど、ジャックと一緒にそこの公園で待っていてくれる?」

(前回の聖杯戦争で、聖杯が召喚されたこの場所に黄金の果実を納めておきましょう。未だに一般人が近寄れない状態なのは助かるわ。これで聖杯戦争の間、小聖杯のことは気にせずに思いきり戦える)

「遅くなるの?」

「すぐに戻るから、どこにも行かずに待っていてね。ジャック、ツヴァイを頼むわね」

「「うん、ママ/おかあさん」」

 

 薄暗くなりつつある公園のブランコを揺らしながら、ツヴァイは隣のブランコに腰掛けているのであろう妹のような存在の少女に問いかけた。

「ねぇ、ジャック。ジャックには何か聖杯で叶えたい望みがあるの?」

「わたしたちは生まれることができなかったから、おかあさんの中に帰りたい……、おかあさんは今度こそわたしたちを生んでくれるって約束してくれたよ……」

 

 ツヴァイの隣の誰も乗っていないブランコが小さく前後に揺れた。

「それって、ジャックは居なくなって赤ちゃんとしてもう一度生まれ変わるってことなの?」

「うん」

「そうかぁ、でも、あたしはジャックの事を覚えてるけど、生まれ変わったジャックはあたしの事覚えていてくれるのかな」

 

「忘れないよっ! おかあさんのことも、ツヴァイのこともっ! 

 わたしたち今までにも何回か呼ばれたことがあると思うんだけど、いつもいつも途中で訳がわからなくなっちゃって、最後にはぐちゃぐちゃな気持ちだけしか残らないの……

 こんなに普通に過ごせているのは今回が初めてなんだ。それにこれから先ももう二度とないかもしれない。

 おかあさんとわたしたちの願いが叶って三人でずっと一緒に暮らせるのなら、わたしたちにできることは何でもするよ。それにどんな結果になっても、おかあさんとツヴァイのことはぜったいに忘れないよっ!」

 

「ジャックはママのこと、大好きなんだね。あたしもママのことが大好き。一緒に戦ってくれる人がジャックで本当によかった」

「おかあさんだけじゃないよ、ツヴァイのことも大好きだよ」

「ありがとう……」

 

 その時、公園の入り口の方から女子高生が一人、こちらに近づいて来る。その女子高生は一人でブランコに揺られている明らかに外国人の少女を不審に思ったのか、穏やかな笑みを浮かべながらツヴァイに話しかけてきた。

 

(あれは! セイバーのマスターだ。セイバーも近くにいるみたい。しまった、気付くのが遅れちゃった)

 気配遮断スキルによって気配を完全に絶つアサシン。

 アサシンは7騎のサーヴァントの中では最も諜報活動や隠密行動に長けたクラスであり、すでに桐生空がセイバーのマスターであるという事を含め、ランサー、アーチャー、キャスターについてはマスターが誰か調査し把握していた。

 また、当然昨晩の遊園地の戦闘を監視していたサーヴァントの一人でもあり、その場に居合わせた者たちの戦闘後の行動により、不明だったバーサーカーのマスター名とライダーの拠点らしき場所を新たに突き止めていた。

(どうしよう、今ここで殺っちゃおうか。でも、条件が整ってないし、おかあさんも居ない。絶対に失敗はできないから、今はやめておいた方がいいかな)

 アサシンはすぐ近くで息を潜めて様子を伺っていたが、セイバーのマスターはツヴァイと暫く世間話をすると、特に何もせず去って行った。

 

 そして、十数分後リセが戻って来た。

「お待たせ。さあ、帰りましょうか」

「ママ、ツヴァイ初めてのお友達ができたんだよ」

「どういうこと?」

「空お姉ちゃんって言うの。今度またこの公園でお話ししましょって約束したんだ」

 ツヴァイは一所懸命に初めてできた友達を自慢するようにリセに説明した。

 

(おかあさん、そいつセイバーのマスターだよ。さっきたまたまここで出会ったの。近くにセイバーが居たようだけど、わたしたちには気付いてなかったみたいだし、条件が悪かったから攻撃はしなかったよ)

 アサシンはリセにだけ聞こえるように念話で話しかけた。

「そう、良かったわね」

 そしてツヴァイに聞こえないようにリセはアサシンにそっと伝えた。

「いい判断よ、屋敷に着いたら私の部屋に来て」

 帰り道、ツヴァイは初めて友達ができたことについての感想や、次、何時あの公園に行っても良いかといったことを終始嬉しそうに話していた。

 

 帰宅後、屋敷の一室。

「ジャック。今夜あなたの宝具を使ってセイバーのマスターを殺して。この戦いにツヴァイを連れていくことはできないわ。可哀想だけど、ツヴァイがセイバーのマスターに会うことはもうないの。あなたには手間をかけさせるけど、セイバーのマスターが殺されたことがニュースにならないよう、死体は誰の目にも触れない形で処分して頂戴。セイバーのマスターには行方不明になってもらいましょう」

 

 初めてできた友達を嬉しそうに話すツヴァイの姿を思い出し、リセは胸が苦しくなったが敵マスターである以上排除しなければならない。

 せめてツヴァイの知らないところで終わらせてしまいたい。願わくはその後もツヴァイの知るところとならないようにとリセは祈るしかなかった。

 




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