第4.5次聖杯戦争   作:慶天

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13話 サンタマリア・ドロップアンカー

 冬木ドリームランドの戦いは多くの関係者の耳目をひきつけていた。

 今回の聖杯戦争で初めての大規模戦闘であり、まだマスターや呼び出されたサーヴァントの実力が未知数であるため、偵察を行っていたものが何人かいたのである。

 

 戦いはキャスターの工房と化した遊園地が舞台であり、様々な仕掛けが施されていた。実際数多くのトラップを掻い潜りマスターであるクガイに大魔術を仕掛け、最終的にはキャスターの宝具まで使用させたジンとユェは十分に健闘したといえるだろう。

 

 しかし、傍観していたものの度肝を抜いたのはまさにキャスターが解放した宝具であった。サーヴァントは過去の英雄であり、英霊によっては神話の時代に生きた者もいる。そういった英霊程人知を超越した力に対し耐性があるものなのだ。

 

 しかし近世に近い英霊程超常現象にしか思えない存在に対しての理解は低い。例えば沖田総司の「無明三段突き」は1の突きが貫いた場所を2の突き、3の突きが既に貫いているという事象崩壊を起こすことで実質防御不可能な技となっているし、ジャック・ザ・リッパーの「マリア・ザ・リッパー」は対象の死亡の前に解体された死体が出来上がっているという回避不能の強力な呪いであるが、共にあくまで個人を対象とした戦闘技術である。

 

 ところがキャスターの見せた宝具はそのような対人の戦闘技術ではとても説明のできない明らかな超常現象だと言えた。むしろ現代人の方が正しくその正体に近づくことができたであろう。

 

「UFOを見た」

 そんな市井の噂話が事の本質を一番正確に表しているなどと誰が想像しただろう。

 

 覗き見をしていた英霊やマスターはあの「サナト・クマラ」の常識外れな存在感に驚嘆し、狼狽せずにはいられなかった。

 もっとも中にはその特殊な魔術体系に大いに魅せられた、まさに「魔術バカ」ともいうべきマスターもいたのだが。

 

 

 

 そんな戦いを覗いていたサーヴァントの一人がライダーである。

 元々は魔術協会から派遣されたゲゲイーという男のサーヴァントとして召喚されたのだが、ゲゲイーはすでに言峰綺礼の言うところの「不幸な事故」でこの世を去っている。

 

 言峰綺礼は聖堂教会により指定された今回の聖杯戦争の監督役である。監督役の役割はサーヴァントを失ったマスターの保護や令呪の管理であるはずなのだが、この言峰綺礼という男は本来のマスターであるゲゲイーを亡き者とし、その令呪とサーヴァントを奪い取ってしまったのだ。

 

 もちろん絶対に許されることではないし、聖杯戦争というルールを根本からひっくり返す暴挙である。

 この男が何を考え何を求めているのか、それを知る者は誰もいない。もちろん新しいマスターとして仕えることになったライダーにとっても油断のならない危険な男として認識されていた。

 

「やれやれ、聖杯戦争ってのはルールのある戦争だって聞いてたんだがな。うちのマスターもたいがいヤバい男だが、あの宝具も反則だろ」

 

「もっとも、そんなもんは頭使えばなんとでもできるってもんだ。ヤバい相手とは直接闘わなければいいって話だぜ」

 ライダーは最初のターゲットを今回の戦いで疲弊したと思われるアーチャー陣営に定めた。

 それに合わせて言峰綺礼より聖堂教会出身のマスターを始末するように言われていたこともあり、どのように「うまく戦う」かを考えていた。

 

「戦いってモンは直接やり合うだけが方法じゃないんだぜ。俺様みたいに腕っぷしだけじゃなく頭も切れる奴もいるってことを教えてやるぜ」

 ライダーはニヤリと嗤うと立派な顎髭をしごいて夜の街に消えていった。

 

 

 

 クガイとジン、ユェが戦った次の日の夜、舞台となった冬木ドリームランドで原因不明の大爆発が起こった。(ちょうど桐生空がアサシンによる襲撃を受けていた時間と一致する)

 その爆発の規模は大きく冬木市のどこにいてもその轟音は聞き取ることができただろう。一帯は騒然とし数多くの緊急車両が殺到し巻き添えを食った人々の救出作業が行われることになった。

 幸いなことに先日の騒ぎで付近には侵入規制が敷かれていたため犠牲となった人はほとんどなかったが、すわテロ事件かと警察や消防の動きは慌ただしくなっていた。

 

 そんな騒ぎの中、同様に駆け付けていたものがいた。先日の戦いの一方の主役、アーチャーである。

 冬木ドリームランドはキャスターの工房と化していた。そんな場所での爆発事件に再びクガイとキャスターが関わっているのではないかとアーチャーが考えるのは当然であった。そして今回、マスターを拠点に残し単独で調査に踏み切ったのだ。

 

 アーチャーがマスターを残して調査を行うことにしたのは先日の戦いの後のジンの様子が明らかにおかしかったことからジンの魔術回路を調査したことに起因する。

 あの時、普段は自信に満ち溢れ常に前向きなジンの様子は普通ではなかった。ユェにしてもそんなジンの様子は初めてであり、あの地獄のような訓練期間であってもそのような姿を見た事がなかったのだ。

 

 拠点に戻ってからも放心したように焦点を合わせることがない目をしたジンをアーチャーは千里眼を駆使して魔術回路と外科的な手術痕を調べ上げた。

 その結果、ユェにはない手術痕が発見され、それと共に彼自身の魔術回路とは別の魔術装置も発見されるに至った。

 

 しかしその魔術装置は回路に括り付けられる形で埋め込まれていたため専門の知識がないものに解除することはできない代物であった。

 そして更にもう一つの外科手術痕がユェの右手に刻まれてる令呪と同じ位置に施されたイレズミの下にあった。そしてそれもまた取り外すことができない非常に厄介な「しかけ」であった。

 

 それらは放置するには危険なものではあったが、取り外す手段が無い以上対応策を考える程度しか今は方法が無かった。ただ、普通に生活をする分には全く支障がなさそうということが唯一の救いと言えた。

 

 もう一つ、アーチャーはジンとユェには言わなかったが、どうしてもこの場所をもう一度調べる必要を感じていた。今朝がた拠点としている洋館のポストに紙片が一枚入れられていた。その紙片には以下の事が書かれていた。

 

「遊園地の地下には霊脈がある。お前たちが気付いていない秘密が隠されている」

 

 それを見たアーチャーはこの手紙を入れたものの意図が計りかねると同時にもう一度あの場所を調べる必要に駆られたのだ。

 

「随分派手な爆発があったようだが、特に戦闘が行われたような形跡は見当たらないな。クガイたちが別の陣営と戦ったのかとも思ったが、冷静に考えると奴らがここに留まり続けるとは考えにくい。例の手紙にあった秘密とやらが関係しているのだろうか……確かにこの場所意識を集中すると霊脈の気配が感じられるが……」

 遊園地には既にキャスターの魔力を感じることができなかった。しかしそのかわりに誰か別のサーヴァントの気配が残っていたのと地下に確かに霊脈を感じることができた。

 

「しかし、あのジアンユーという男……許せんっ! あれが人のやることなのかっ!」

 爆発の起きた遊園地を見て回りながらアーチャーはジアンユーの非道ぶりに激しく憤りを覚えていた。

 

 

 

 その頃、拠点で休んでいるジンとユェの元に来客が訪れていた。

 ジンもようやく落ち着きを取り戻し、今はユェとアーチャーの帰りを待ちながらジャスミンティーを飲んでいた。

 ちなみにアーチャーの発見した「魔術装置」と手術痕はジンには知らされていない。ユェはアーチャーからその危険性を知らされてはいたが、それが発動しないで済ます方法をすでに相談済みであった。

 

 ジンとユェを訪ねてきたのは初老の紳士であった。

「私はゲゲイー・ベントーンと申します。あなた方と同じく今回の聖杯戦争に参加しているマスターといえばよろしいでしょうか」

 ジンとユェは即座に戦闘態勢に入る。懐から釵を取り出しいつでも飛び掛かれる体勢をとる。

 

「まあまあ落ち着いてください。私はあなた方と争うつもりはありません。実のところ私は聖杯に用はないのですよ。ただ、そうですね『敵』というべき男が今回の聖杯戦争に参加していましてね」

 そこまで話して紳士はジンとユェの反応を見る。

 ジンとユェ自身にしてもすでに聖杯に用はなくなっており、クガイを倒すことだけがこの戦いの目標となっているため、この紳士の言う事も理解できる話であった。

 

 目配せをしてからジンとユェは釵を下ろす。そんな二人を見て安心したように紳士は話を続けた。

「その男実は聖堂教会の関係者でその中でも『代行者』という非常に強力な戦闘員でもあり、名をジャンマリオといいます。聖堂教会は御存じかと思いますが、かの教会に恨みを持つ魔術師は多くおります。かくいう私も友人を連中に殺されましてね。しかもその直接の下手人ジャンマリオが今回の聖杯戦争に参加しているというではありませんか。なんとしても敵を討ち友の無念を晴らしたいのです」

 

 聖堂教会の代行者とは世界中の怪異や魔術師を敵として排除する直接攻撃部隊である。

「当然私も無策ではありません。対抗策はいくつも用意してあります。しかし代行者という存在はなかなかに侮りがたく、完璧を期すためにこうしてお願いに上がったという訳です」

 

 ジンとユェはこの紳士の話を果たしてどこまで信じていいのか懐疑的であった。

「ああ、それと言い忘れましたが私のサーヴァントはライダーです。信頼を得るために真名を明かしましょう。サーヴァントの真名はかの冒険家クリストファー・コロンブスです」

 

 クリストファー・コロンブス、アメリカ大陸に初めて到達した白人として知られる冒険家である。コロンブスの卵といった有名な逸話も残されている。

「かつては偉大な冒険家、また船長として多くの手下を従えた人物ではありますが、サーヴァントである以上令呪の支配から逃れることはできません。英霊と考えると優秀な男ですよ」

 ゲゲイーと名乗った男はジンとユェに更なる提案をする。

 

「実は今夜は、非常に都合がよいのです。先ほど昨晩に続いて遊園地の方で大きな戦闘があったようでサーヴァントやマスターの注目はそちらに集まっています。私はこの機を衝いて今からサーヴァントと共に怨敵ジャンマリオに襲撃を仕掛けます。あなた方にはその際に少しだけお手伝いをしてもらいたいのです」

 それならアーチャーが戻ってからの方が良いのではないかとジンとユェは思ったが、次のゲゲイーのセリフにその言葉を飲み込んだ。

 

「私は怨敵ジャンマリオが拠点としているビジネスホテルをサーヴァントに監視させていたのですが、つい先ほどジャンマリオのサーヴァントであるランサーが飛び出していったという知らせを受けました。つまり、ランサーが戻るまでのこの僅かな時間が最大の勝機なのです」

 

 そしてゲゲイーは二人に見返りを提案した。

「実を申しますと私は昨日の遊園地でのあなた方の戦いを拝見しておりました。どうやらあなた方はあのキャスターのマスターに何か因縁がおありとお見受けしました。違いますか?」

 このゲゲイーという男はどこまで知っているのか。ジンとユェは訝しくは思いながらゲゲイーの「わたしたちの目的は同じようなもの」という言葉に納得もしてしまった。

 

「先ほども言いましたが、私の目的はあくまで怨敵ジャンマリオを亡き者にすることです。その目的が達成されたなら今回の聖杯戦争は棄権するつもりです。ですが、あなた方が今回手伝っていただけるのであれば、同じような目的を持つあなた方をお手伝いすることも吝かではありません」

 そこまで話してからゲゲイーはにっこりと微笑みさらに話し続けた。

 

「あの戦いではキャスターの宝具が非常に厄介であると思われました。しかし私にはあの宝具の弱点と対処法が分かりました。私、というより我がサーヴァント、コロンブスが知っていたのですが。どうでしょうこれは取引材料になりませんか?」

 

「おい、それは間違いないのか? 本当にあの宝具を何とか出来るのか?」

 それまでこのような交渉事はユェに任せることが多かったジンが乗り出し気味にゲゲイーに聞いた。

「ちょ、ちょっとジン!」

「どうなんだ、ゲゲイーさんよ?」

 ユェの制止を聞かずにジンはゲゲイーに詰め寄る。

 

「ええ、間違いないですとも。かの宝具は使用するにあたって……、おっとここから先は私に協力していただいた後、とさせていただきたいのですが」

「ああ、わかった。協力してやる。俺達に何をさせるつもりだ」

 ジンがあまりにも性急に事を進めていく事にユェは不安を覚えたが、ジンの身体を調べたアーチャーの言葉がユェを黙らせてしまった。

 

 ―ジンには自爆装置が組み込まれている―

 

 ユェはジアンユーの悪辣さに今さらながら猛烈な殺意を覚えていた。

 アーチャーの説明によると、ジンには戦闘対象に対して敵わないという恐怖を感じると自分の意志とは関係なく、その対象に対して自爆攻撃を仕掛けるように強要する暗示装置が組み込まれているという。恐らくマスターになれなかったジンをユェの捨て駒にするためにジアンユーが仕掛けさせたものだろう。

 

 ジンは先日の戦闘でキャスターの宝具に恐怖を感じたため、装置が発動しかけたと思われる。次にクガイと戦う時はキャスターにあの宝具を絶対に使わせてはならないとのことだった。

 あの宝具を使わせない方法があるのならば……。ユェは藁にもすがりたい気持ちだった。

 

 

 

 ゲゲイーの手伝ってほしい内容とはそれほど困難な依頼ではなかった。彼は遊園地の戦いでジンとユェの招雷の魔術を見ていたため、その魔術でジャンマリオの泊まっているホテルの屋上に雷を落としてほしいというのだ。

「それだけでいいのか?」

 ジンの質問にゲゲイーはにっこりと笑い髭をしごきながら答える。

「ええ、奴はホテルの屋上に展開した魔法陣で建物全体に結界を張っているのですが、それさえ破壊してもらえれば、後は私と私のサーヴァントが始末をつけますとも。万が一奴を取り逃がした時には奴の逃亡した方角だけ確認していただければ結構です。戦う必要はありません。彼を倒すのは私の仕事ですので」

 

「さて時間がありません。今すぐ行きますよ」

 ジャンマリオが泊まっているというホテルにタクシーで急行するとゲゲイーは雷が落ちたタイミングで突入する旨を二人に告げ、ホテルの入り口から少し離れた場所に身を潜めた。

 

「ジン、本当にやるの? あの人どうにも胡散臭いんだけど?」

 ゲゲイーから指定された目標のビジネスホテルから道を挟んで前にあるビルの屋上でジンとユェは準備を行う。

 ユェは紳士的な態度ではあったがあのゲゲイーという男はどこか信用しきれないと感じていた。

「いいじゃねーか。どっちにしろ俺達にデメリットはねーだろ? あいつが手伝ってくれなかったとしてもそれは最初から変わらないことだし、うまくいけばラッキーくらいでいいんじゃねーか?」

 

 ジンらしいお気楽さだとはユェは思ったが、何かとてつもなく危険な陰謀に巻き込まれている気がしないでもなかったのだ。アーチャーに相談してからの方がよかったんじゃないかな。

 ユェはそう思って令呪の使用も視野に入れていた。しかしアーチャーから私たちの願いをかなえるためには最低でも1つ令呪を残しておいてほしいと言われていることもあり、出来るならこんなところで使用することは避けたかった。

 

 

 

「時間だユェ、やるぞ」

 ジンに急かされ招雷の魔術を二人は行った。

 突然起こった落雷がビジネスホテルの屋上を穿つ、ここからはよく見えないが屋上全体に魔法陣が展開しているのでその一部を破壊するだけで良いという話だった。

「こんなもんだろ。後はもしそのジャンマリオとかいうイタリア人が逃げ出したのを確認すれば、その方角に向けてこの信号弾を上げる簡単なお仕事だ……」

 ジンのその言葉が終わらないうちに事態はとんでもない方向に動いていく。

 

 突然地面の中からホテルの真横に巨大な帆船が現れたのだ。

「な、なにあれ!? 帆船?」

 ユェが呆気にとられたようにつぶやく。

 

 そしてその帆船はホテルに向かって本来錨を繋ぎとめるためのものであろう巨大な鎖を無数に発射した。

 

 正に想像を絶するとしか言いようがない光景だった。昨日のサナト・クマラに比べるとまだ見た事のある物体であっただけ理解がしやすかったが、それでも突然地中から帆船が現れるなど誰が想像できただろう。

 

 その攻撃もまたすさまじいものであった。撃ちだされた巨大な鎖は建物の壁をさながら発砲スチロールの様にぶち抜き、恐ろしい破壊力をもってホテルをみるみる瓦礫に変えていった。

 

「ちょっ! これホテルの中にいた人たちはどうなるの? 無茶苦茶だわ!」

 ユェが悲鳴を上げる。あまりにも非人道的な行いと言わざるを得ない。

「くっそ! やっぱあのじいさん悪人か!」

 ジンもまさかの無差別攻撃にゲゲイーを悪人だと断じた。

 

 

 

 崩壊していくホテルを前に唖然とする二人。

「貴様たちがあの悪鬼ライダーの同盟者か! 非道な行い! 許さんぞ!」

 そう叫びながら羽の生えた女性に抱えられた男が降り立った。

「如何に聖杯戦争とはいえ、無関係の一般人をこのように巻き込みあまつさえ無差別に攻撃するなど許されるものではない! 貴様らを断罪する!」

 

 おそらく例のジャンマリオというマスターなのであろう男性とそのサーヴァントらしき羽の生えた女性がジン、ユェに襲い掛かる。

「ちょ、ちょっと待て! 俺たちは無関係だ!」

「今さら言い逃れなど見苦しいにも程がある!」

 男は懐から黒鍵を取り出しジンに向かって投擲した。

 

「まずい! ユェ! 逃げるぞ!」

 ジンとユェは突然の攻撃により廃墟と化したホテルの隣のビルの屋上にいた。彼らは猛然と襲い掛かるランサーのマスターから逃げるためビルの中に走り込む。

「ちっ! ランサー! 俺は奴らを地上まで追い込む。お前の戦い方では狭いところはやりにくいだろう。奴らのサーヴァントであるアーチャーと例のライダーに注意しつつ奴らが出てきたところを仕留めるんだ」

「はい、マスター」

 

 ビルの中を走り回りながらのジャンマリオの攻撃は苛烈を極めた。鋭く投擲される黒鍵は時にジンの腕を掠め、ユェの髪を一筋斬り飛ばした。

「ジン、私たちやっぱりあのゲゲイーとかいう男にはめられたのよね?」

「ああ、間違いねぇ。あの野郎とんでもない食わせ物だぜ。アーチャーは呼べるか?」

「令呪を使えばすぐやってくるけど……。でもここの事態にアーチャーも気が付いているはず。しばらく逃げ切ればやってくるわ」

「そうか。サーヴァントは追ってきていないようだから何とかなるか」

 二人は魔術と体術を駆使し男からの攻撃を何とかかわしていた。

 

「というかあいつもマスターなら俺たちが倒しちまってもいいんじゃないのか?」

 ジンが思いついたようにユェに言う。

「それはそうなんだけど、危険が伴うわ。ましてや今はアーチャーがいないんだから撤退すべきよ」

「まあ、そうだな……。ちっ」

 ジンは戦いたいようなそぶりを見せつつもユェを危険に巻き込みたくないという気持ちから素直に撤退に同意した。

 

 そして二人が瓦礫と化した地上に降り立った時、駆け付けたアーチャーとランサーが高所で戦いを繰り広げていることに気が付いたのだった。

 

 




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