第4.5次聖杯戦争   作:慶天

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30話 ジャンマリオ エピローグ

 カレン……ごめんな……

 ジャンマリオの意識が暗転し、カレンの姿が浮かび上がる。

「だめねぇ、ジャンマリオ。これじゃ、私の気が済まないわ。一発殴らせなさい」

 ? 何だこの台詞は。やけにリアルな走馬灯だな。

 まあ仕方ない。不甲斐ない結果を招いたのは自身の未熟さなのだから。

「済まないな。これで良いか?」

 素直に目を閉じる。

 

「そうだ。クラウディアの名を思い出させたお前をまだ許すわけにはいかんからな」

「なっ、言峰綺礼」

 目を開けると、言峰が邪悪な笑みを浮かべながらその拳をジャンマリオの顔面に叩きつけるその瞬間だった。

「うわあああああああああああああ……」

 

 

 

「……ター…………ま……ター、……マスターッ」

「はっ」

「やっと起きた。ていうか、この状況でうなされるとかどんだけだよ」

「その声はヒルドか。俺は……」

「あなたは言峰綺礼に胸を貫かれて絶命しました。ここは冥界の入り口。天に召される魂が通る場所」

「スルーズ。そうか、やはり俺は死んだのだな」

「残念ですが、そういうことです。マスター」

「オルトリンデ……。お前たち3人に同時に会うのは初めてだな。こんな状態で言うのもなんだが」

 

「ここは現界とは異なる時空。ゆえに私たちも別々の存在としてお会いできるわけです。この後、魂となったあなたは天の裁きを受けることになります」

「そうか。正直まだ死にきれない思いもあるが、こうなっては仕方がない。しかし、まだ私がジャンマリオである内に君たちに会えて良かった」

「マスター?」

「君たち三人には世話になった。こんな未熟なマスターに最後まで尽くしてくれて嬉しかった。なかなか伝える機会がなかったが、本当に感謝している。ありがとう」

 

「マスター……(泣)」

「ふ、ふ~んだ。何よ改まって。それに私たちは三人じゃなくて一人よ。そこは間違えちゃだめなとこなんだから(泣)」

「……マスター。唐突ですがご提案があります。エインヘリヤルとして偉大なる我が父のために働かれる気はおありですか」

「「! 姉さま!?」」

 

「エインヘリヤルに必要なのは武力のみではありません。その存在が精神体であるエインヘリヤルに必要な資質はむしろ心の強さです。今まであなたの近くでその資質を見ていました。確かに戦いの動機は私怨からくるものでしたが、あなたの思いの強さ、そして高潔さは本物です。私の本来の姿は戦乙女故、突然の申し出になってしまいましたが、どうかわが父にお力をお貸しください。

 エインヘリヤルとなりヴァルハラへお越しいただければ、ジャンマリオとして世界に留まりその動向を見つめ続けられることでしょう。わが父に功績を認められれば転生することも不可能ではありません」

 

 少し長い沈黙の後、

「……正直、私にそのような資格があるとは思えない。しかし、世界にこの私のまま留まり再び何らかの機会が与えられる可能性があるというのであれば、君たちに導かれてゆくのも悪くないかもしれない」

「マスター、それでは……」

「行こう。ヴァルハラへ、戦乙女たち、私を導いてくれ」

 

 

 

「お姉さま、あれで良かったの? マスター、いやジャンマリオさん、絶対ヴァルハラのこと良く知らないはずだよ」

「良いのです。いつか来る神々の黄昏(ラグナロク)に備えるため、一人でも多く戦力は必要です。あの人もヴァルハラで鍛え上げれば優れた戦士に成長するはず。それに功績を上げればヴァルハラから下界の情報を得たり、任務で現界することは実際にあり得る話ですし」

「いや、それって人の感覚で一体何千年後の話になるのかな?」

「そして、ジャンマリオさんは毎日殺し殺されながら、鍛え上げられていくわけですね。それは素晴らしいことですよね~(棒)」

「しつこいですよ。良いのです。今回の現界、アーラシュさんを導くことがかなわなかった今、誰か一人はヴァルハラにお連れしないとノルマが……げふんがふん。とにかく、次の召喚に備えて私たちも訓練です。いいですね!」

「「はぁ~い」」

 

 

 

 ヨーロッパ、聖堂教会の一拠点である教会の一室。

 サンクレイド・ファーンが部下の連絡員からの報告を受けている。

 

「なるほど。MIAデスか」

「はっ。最後の足取りは冬木教会へ向かったところで途切れております。そこからはまったく……」

「まあ、言峰綺礼に消されマシタかねぇ」

「おそらくはそうかと。死体などは確認されておりませんが、そのタイミングで召喚したランサーのサーヴァントも姿を消しておりますので」

「フぅむ。致し方アリマセンね。ご苦労でした。そうですか、ジャンマリオはいなくなりマシタか。とても残念デース」

 

 まったく残念ではなく、むしろ嬉しそうな表情でサンクレイドは続ける。

「これで魔術を使える代行者はまた私一人になってしまいましたね~ぃ。とても、……ふふふふ……と・て・も残念で~す。……おほん。さて引き続き冬木の監視を続けてください。ただし、言峰は放置デお願いしマース」

 

「言峰綺礼は粛清しなくてよろしいので?」

「言峰の謎の力は確かに危険なもので~す。しかし、何の対策もなしに粛清しようとしても返り討ちに会うだけ、というのは今回の件で明らかになりました。我々には情報が不足していま~す。監視を続けるほかありません」

「了解しました」

 

「それに、言峰の力は他の目障りな魔術師連中や死徒のような怪物を引き寄せるエサとなります。つられてきた者どもを一掃すれば我々教会の立ち位置も安泰というもの。奴にはせいぜい撒き餌役を担ってもらえばよいのですヨ」

「それより、他の報告に今回召喚されたサーヴァントの中に吸血鬼のような能力と外見を持った者が存在したとか。今後は死徒の動きにも十分目を配りなサイ。場合によっては魔術を使う死徒が出るかもしれません。発見したら、可能な限り消滅させずに捕縛し私の元に連れてくるのです。良いですネ」

「仰せのままに」

 そう言うと部下の連絡員は部屋から退出した。

 

「まだ楽しめると良いのデスがね……」

 サンクレイドは窓の外の景色を眺めながらつぶやいた。

 




お読みいただきありがとうございます。

言峰綺礼と因縁のある人物という設定から生まれたジャンマリオでしたが、こんな結末に。
 北欧の神々等については独自解釈の世界線ということで、もちろんゾンビクッキングのあの人とは全くの別人ですのでw
 
 代行者としてなかなかに面白い魔術を使うジャンマリオでしたが、いかんせん相手が悪かったとしか思えませんね。
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