第4.5次聖杯戦争   作:慶天

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33話 ツヴァイ エピローグ

 アインツベルン城の大広間に立つ、当主ユーブスタクハイト=フォン=アインツベルン。

 今、その目の前に二体のホムンクルスにより氷の棺が運ばれてきた。

 中には先の聖杯戦争で死亡したホムンクルス「リセ」とイリアスフィールのクローン「ツヴァイ」の遺体が収められている。

 

「此度の聖杯戦争、こやつらが勝利できるとは端から思っておらなんだが、セイバーと戦ったのみで、初戦であっさり敗退し、最初の脱落者となるなど、情報収集にすらなっておらぬわ。

 あまつさえ儂の許可なくクローンの体内から小聖杯を取り出すなど、クローンのみならず、リセ自身も欠陥ホムンクルスだったということか」

 アハト翁は二人の遺体を見下ろしながら、忌々しそうに吐き捨てた。

 

「それにしても一体どうやって小聖杯を母体から切り離したというのか……、クローンの胸にある傷痕は戦闘によるものではなさそうじゃが、あのサーヴァントにそのようなスキルが備わっていたということなのか……

 そもそも、何故リセがそんな行動に出たのかが全く理解できん。クローンの育成をこやつ一人に任せたところから、何かが間違っていたのかも知れんな。

 次回に活かす情報など特になかったが、供のホムンクルスを厳選し複数とすること、監視の目を強め、報告を密とさせることとしよう。

 しかし、最終的にこやつらを倒したセイバー陣営が勝ち残ったらしいが、特に願望を成就させるでもなく、マスターは廃人同然の有様と訊く……

 間桐めが、此度の聖杯戦争は、次回聖杯戦争の前哨戦とし、正式な儀式としては扱わぬと言ってきたが、全くもって解せぬな……」

 アハト翁は瞼を閉じ、眉間に皺をよせた。

 

「まぁよいわ。さて、そやつらだが、クローンについては解剖し、分析する故、そのまま保存しておけ。せめてそれくらいの役には立ってもらわんとな。

 召喚に用いた聖遺物も同じ棺に納められていたそうだな。不可解な……聖堂教会の仕業とは思えぬな。そもそも何故こやつらは二人揃って同じ棺に納められておるのだ。

 状況からみて氷の棺はリセの為にクローンが作ったのじゃろうが、その棺にどうしてクローン自身が納まっている。誰かは知らぬが、わざわざ死亡したクローンと聖遺物を棺に運び入れたとでも言うのか。

 我々からすれば労せず検体と聖遺物を回収できたのだからありがたい話じゃが、無知とは実に恐ろしいものよな。

 早々に敗れた弱小サーヴァントではあるが、またいつか使い道があるやもしれぬ。聖遺物は保管しておけ。役立たずの欠陥ホムンクルスの亡骸は処分せよ」

 棺を運んできたホムンクルスたちは、恭しく頭を下げると、再び棺を運び出した。

 

 

 

 冬木の中心から少し外れた場所にある、誰も住む者のいない洋館。

 門の扉は片方外れたままとなっていて、敷地内は雑草がのび放題という荒れ具合である。日中ですら誰も訪れる者もないであろうこの屋敷の前に、今宵はサイドカー付きとそうでないもの、二台のバイクが停められていた。

 月明かりに照らされた建物の外壁は、本来の輪郭が分からないほど蔦が生い茂っている。館の玄関の戸が開いており、内壁を照らす複数の懐中電灯の明かりが不規則に動いていた。

 

「おい、帰ろうぜ。俺そもそもこういうの苦手なんだよ」

 ガタイの良い男性が、身体に似合わないほど小さな声で囁く。

「あれ~、ケンくんビビってんの? いつもは、俺に怖いものなんか何もないとか豪語してんのに、おっかし~」

 派手なメイクをした茶髪の女性がケラケラと笑う。

「いや、それとこれとは別だろ、大体なあ……」

 明らかに、来たくもない場所に無理矢理連れてこられた感を漂わせていた男性が、不機嫌そうに反論しようとしたそのとき。

「うわっ!」

 もう一人の背の高い男性が、突然叫び声をあげた。

「「わっ!!」」

 男性の声に驚いた二人も声を出す。

「何だよ、急に。びっくりさせんなよ」

「今、俺の首筋を何か冷たいモノが触ったんだけど……」

 叫び声をあげた男性が首筋を撫でると、

 ざらっ……

 皮膚の表面が薄く凍っている。

「うわっ、何だよ、これ!」

 

「デテイケ……」

「ねぇ……、今……何か聞こえなかった?」

 さっきまでは、笑っていた女性も流石に青ざめた表情で二人に尋ねる。

 

「デテイケ!!」

 今度ははっきりと女の子らしき声が聞こえた。

「「「ぎゃあ~~~!!!」」」

 三人は同時に悲鳴を上げ、転がるように入り口に向かって走り出す。やがてエンジン音がし、急発進したバイクのテールランプが遠ざかっていった。

 

「まったく、玄関の扉ちゃんと閉めていってよね」

 半透明の少女はそう呟くと、ふわふわと寝室に戻る。

「ママ、やっと帰ったよ、どうして人んちに勝手に入ってくるのかな」

「確かに、最近多いわね」

 ママと呼ばれた半透明の女性が肩を竦める。

「ねぇ、ママ。あたしたちここに居てもいいんだよね」

「このお屋敷は、アインツベルンの所有物だから、他の人から出て行けと言われることはないと思うわ」

「よかった。ジャックが帰ってきた時、あたしたちがここに居ないと可哀想だもんね」

 少女はそう言うと勢いよくママに抱き着いた。

「もう、ツヴァイは甘えん坊さんね」

 ママは少女の頭を撫でるとにっこりと微笑む。

 その顔を見て、ツヴァイと呼ばれた少女は満面の笑みを浮かべた。

「ママ……、これからはずっと一緒だよ……」

 

 市街地の外れの廃屋に幽霊が出るらしい、オカルト好きの若者たちの間では結構有名な心霊スポットとなっていた。

 不法侵入者は暫く後を絶ちそうにない……

 




お読みいただきありがとうございます。

ツヴァイ、ウリエ、アーラシュ、沖田総司は中の人(担当プレイヤー)が同じだったのですが、ツヴァイには一番活躍し、幸せになって欲しかった。でもあまりにも(ダイス)運が悪く早々に脱落。でも、死んでからは幸せっぽいね。

ツヴァイは見た目がイリヤとほぼ同じで、ステイナイトのイリヤよりも素直でいじらしい子でした。引いたサーヴァントがジャックという事もあり、割と優勝候補だったはずなのに残念な事でした。まあ、聖杯戦争でまともな幸せが得られるかというと・・・ですが。



次話が最終話になります。どうか最後までお付き合いくださいませ。
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