かりちゅまより吸血鬼らしい爵銀龍の幻想入り 作:クロマ・グロ
~無名の丘~『鈴蘭畑』
「…………zzzZZZZZ …………zzzZZZZZ ………zzzZZZZZ 」
無名の丘
妖怪の山とは正反対の方向にある低い山にある草原であり、春過ぎになると鈴蘭の花が咲き誇る。
博麗大結界ができる以前、まだ名付け前の名無しの幼子を鈴蘭の毒気で安楽死させて間引きに来ていた場所であり、その鈴蘭畑には一体の竜と一匹の人形の少女がいた。
「ぴーさん!ぴーさん!起きてぇ!!」
「むにゃむにゃ………………zzzZZZZZ 」
「むーーー!!おーーきーーてーー!!ご飯の時間だよーー!!」
捨てられた人形が鈴蘭の毒を取り込んで動くようになった人形の少女、メディスン・メランコリーは最近鈴蘭畑に一緒に住み着くようになった竜、棘竜エスピナス辿異種と呼ばれる劇毒の竜だ。
メディスンはエスピナスと一緒に住み着くようになってからはエスピナスのことをぴーさんと呼んでおり、エスピナスもメディスンとは家族のように接していた。
だがメディスンにはエスピナスにちょっとだけ不満が少しだけあった。
それは…………
「起きてよぉぉぉぉおおおおお!!!」
「ぐぉ…………zzzZZZZZ 」
「なんで寝るの!?今一瞬起きたでしょ!?寝ないでぇぇぇぇぇぇええええ!?!?」
とてつもなく寝坊助なのだ。
エスピナスという竜は種族的な特徴として兎に角寝るのが好きな種族であり、ここまで良く昼寝するのにも理由がある。
エスピナスという竜はその圧倒的なまでの堅さを誇る強靭な甲殻と麻痺毒と神経毒の二種類の毒により天敵らしい天敵がハンターくらいしか居ないので自然界に住むエスピナスはどんな環境でも安心して昼寝出来てしまうのだ。
エスピナス自体も寝るのが好きな個体も多く、食事の時や喉が乾いた時くらいでしか基本的に起きないのだ。
「ぐぁぁぁぁぁぁあああはふ…………クルルル………」
「もぉーーー!やっと起きた~!!
お弁当沢山貰ったから一緒に食べよ!」
エスピナスは基本的に適当な時間に起きて妖怪の山方面で虫系の妖怪を探して食べている事が多くあまりメディスンと一緒に食事をすることはそんなに無かったのだが、今日はメディスンがたまたま毒を提供しに行った永遠亭で永琳がエスピナスがどのような食事をするか正確に調べてみたいということで一緒に食事出来るように大量の弁当を作って渡してくれたのだ。
ただし運ばされたのは全部うどんげであるが。
「はい、ぴーさんあ~んして!」
「ぐぉああああむぐむぐむぐ………」
エスピナスは昆虫中心の肉食なのだがこの世界には主食として食べられそうなのが妖怪くらいしか無いために最近は山菜や木の実など食べられそうな物はだいたい食べるようになっていた。
「美味しい?」
「ぐぉ」
エスピナスはお礼とばかりにメディスンにすり寄る、その際に身体のトゲがメディスンに刺さらないように気を付けてはいるのでメディスン自体に傷がつくことはない。
「ありがと!はむ………むぐむぐ……んんん、確かに美味しいねこれ!もっと一緒に食べよ!」
「ぐぉ」
エスピナスは物を掴んで食べるといった事を出来る身体の構造をしていない為基本的にはメディスンが口に放り込む形にはなるのだがエスピナス自身は喜んで食べており、最終的に食べ終わると鈴蘭畑の周りをぐるぐると回るようにゆっくりと歩き始める。
「どうしたのぴーさん?」
「ぐぉおおお!」
エスピナスは鈴蘭の花を尻尾と頭で囲んで守るように丸くなる。
「鈴蘭畑を守るってこと?」
「ぐぉ」
「何か来ているの?」
「ぐぉお!」
エスピナスは食事を終えた後に何か奇妙な気配を感じており、友人であり家族でもあるメディスンが大事に育てている鈴蘭畑を守る為に警戒をしていた。
本来エスピナスは単独で行動するモンスターなのだがこのエスピナスはメディスンとずっと住んでいた影響でメディスンを同じ場所に住む仲間と認識するようになってきていたのだ。
だがエスピナス自身は寝てるところを起こしに来るのは少しだけ困ってはいたがそんなに気にしては居なかったりする。
すると上空にマスゴミの姿が見える。
「ぐへへへへ………モンスターにお弁当をあげる少女ですかぁ………これはなかなか面白い記事が書けそうですよぉ………ぐへへへへ……ぐへへへへ………」
「あ、射命丸だ、またなんか変なことしてる。」
「グォアアアアア!!!」
するとエスピナスの全身の血管が浮き出始めて全身に赤い線が浮かび始める。
「あ、やば!?見つかった!?」
「グォア!!グォア!!グォア!!」
「ぎゃぁぁぁ!?毒痺火炎ブレスはらめぇぇぇぇえええ!?ってあっぶねぇ!?あっ!?」
エスピナスの三連毒痺火炎ブレスの三発目に直撃してしまい麻痺によって地面へと落下する。
「あべし!?が………ががが……がが………」
「グォアアアアア!!!!!!」
エスピナスはトドメとばかりに地面に己の角を突き立てて大地を削りながらマスゴミへと超高速で突進する。
「あっちょっまっ!?その方向は!?その方向はダメですよ!?あ、あ、あ、あ、ンァーーーーッ!?」
激突するタイミングで振り上げられた頭部の角はマスゴミの尻にピッタリ突き刺さってから妖怪の山方面へととんでもない速さで吹き飛ばす。
「じゃーねー!!」
メディスンは大きく手を振りながらその様子を平然と見ていたのだった。