かりちゅまより吸血鬼らしい爵銀龍の幻想入り 作:クロマ・グロ
~断裂群島~『上空』
「ギャガガガガガガガガガガガガッ!!!!」
深淵の悪魔は元の姿を取り戻し、幻想へと対抗するため己を討った人としての形を取る。
マフラーのように背中に伸びる腕からは混沌とした力による翼が生成されており、羽ばたく度に龍風圧が発生している。
そのとてつもなく巨大な肉体を人間サイズにまで圧縮した影響によってガイアデルムの能力はさらに上昇していた。
あの巨体を支える程の力を持つ腕や翼脚の力を一対の腕に圧縮したとなるとその筋力は鬼を遥かに越えた物となり、様々所を支えねばならず力を割いていた分を全て攻撃に使えるとなるとかなりの脅威だ。
第三形態では、一番の武器であった翼脚を飛行に用いていたのもあり、物理的な攻撃がしにくかったが、今回は余計な筋力は全て腕に集中させて飛行用の翼腕への筋力は最低限となっている。
肉体が小さい分攻撃を当てるのが難しくなってしまったが、逆に相手も当てにくくなり、隙がお互いに生まれやすくなる。
ガイアデルムは片手で今の形態での全身よりも長い大太刀を引き抜いて構える。
ハンター達はその重さ故に両手で構えるのだがガイアデルムからすればこの程度であれば重いのうちに入らないようだ。
「ガァァァァァァァァァアアアアアアア!!!」
次の瞬間、ガイアデルムが全力の一撃をメル・ゼナへと叩き込む
「きゅおっ!?」
その一撃を己の尻尾を持って防ぐメル・ゼナ立ったが、メル・ゼナの尻尾から生成された禁忌『レーヴァテイン』が破壊されていた。
そう、メル・ゼナの龍属性エネルギーの塊をただ力任せによる一撃で破壊したのだ。
「ガギャッ?」
だがガイアデルムうまく思うように動けなかったのか首を傾げていた。
それもその筈だ。ガイアデルムがやっているのはその翼脚のサポート程度として使っていた腕を翼脚と同じように扱い、さらに運動性を増した肉体をいきなり扱おうとしているのだ、思ったように動けるわけがない。
だがガイアデルムは己を一度殺した人間の動きをよく覚えていた。
あの人間とは思えない動き、脆弱な肉体なのにあんな生物離れした動きが出来るのかがどうしても疑問だったのだが、ガイアデルムは逆に疑問を増やしたのだった。
メル・ゼナは肉体に慣れていない今がチャンスと思い、4体に分身して畳み掛ける。
4体の龍と絶大な力を持った龍の化身が周囲を黒い暴風で吹き飛ばしながらお互いに死力を尽くして激戦を繰り広げる。
龍風圧がお互いから発生しており、霊夢達はこの中で戦闘しようとすれば纏めて吹き飛ばされるのがオチと理解しており、自慢の弾幕も下手すればメル・ゼナの邪魔となってしまうために撃てなくなっていた。
さらに威力の弱い通常弾幕は狙いこそ付けやすいが龍風圧によって全て弾かれる。
「どうするのよ?私達の霊力とかとメル・ゼナに吸わせる?」
「止めときなさい。
今のメル・ゼナは純粋にレミィ達の力のみを吸収し続けてあの子達の血を直接吸収したことで吸血鬼としての面が強くなってるわ。
ガイアデルムは半妖となっていたからこんな馬鹿げた吸収を可能としたけど完全な妖怪となったメル・ゼナにそんな事すればキャパシティが足りなくなるわ。
これは推測になるけど力に耐えきれなくなるわね。」
ガイアデルムは半分が龍として、生物としての性質を持っている為、吸収した力を新しく生成する器官や溜め込む器官を産み出して力に耐えることが出来た。
霊力を吸収した辺りから完全な幻想生物となり、肉体による呪縛から半分解放されており、固定された姿を取る必要が無くなったのだ。
メル・ゼナは吸血鬼に近い生態を持っていた事もあり、吸血鬼の力との親和性が特に強く、少量ずつその力を取り込むことにより徐々にその力を受け入れる事に特化した肉体の器へと進化させており、龍としての力のほぼ全てを角に集約させて残りの肉体へと完全に吸血鬼の力を侵食させていた。
だからこそ肉体は他の魔力や霊力といった異物を拒む完全な妖怪としての肉体へと変貌し、孵化する際に肉体全てを黒いキュリアへと変化させたように肉体としての器をほぼ捨て去っていた。
こうなってしまうと現実世界での顕現はほぼ不可能となり、非常識を常識に、空想の物を現実にする幻想郷の結界に引っ掛かってしまうのだ。
完全な人の形を得ることが出来ればその限りではないのだがメル・ゼナは龍の力を全て角に集約させた事もあり、龍としての象徴とも言える角を消すことは出来ない。
メル・ゼナもガイアデルムも全てを捨て去る覚悟で己の肉体を捨て、戦っているのだ。
長きに渡りガイアデルムの天敵としてその地上への進出を防いだメル・ゼナ、メル・ゼナを唯一の敵として長きに渡って地上を目指して上り続けたガイアデルム。
二頭の龍は完全な決着を付けるために死力を尽くす。
メル・ゼナは己の大切な物を守る為、ガイアデルムは己から奪われた物を奪い返し、再び頂点へと君臨し大空を羽ばたく為。
分かり合えるはずなのにそれが出来ない。
龍の世界は弱肉強食、勝者にこそ自由がある。