「よりちゃん、お手当おわったよ」
すりむいた傷口は、ポケットティッシュで血を拭いたけれどちょっと痛そうです。そこにわたしは、そっと絆創膏を貼りつけました。
「悪いわね、かの」
そう言って、立ち上がるよりちゃんを見るたびに、わたしは安心感を覚えるのです。
みんなに頼られるような大人になろうとして、いつも頑張ってるよりちゃん。おっちょこちょいでつまづくときもあるけど、大丈夫って笑って起きあがる。わたしはそんなよりちゃんが大好きで、一緒にいるだけで心がぽかぽかしてくるのです。
「あーあ、けっきょく今日も転んじゃったわ」
今日こそはドジもふまずに行けると思ったのに、とほんのちょっぴり落ち込んでいるよりちゃん。でも、少しすればまた元気になって歩き出すのです。七転び八起きであきらめない、そんなよりちゃんを隣で支えてあげたいと、わたしはいつも思っています。
でも、実はわたしが、よりちゃんに支えてもらっているのです――昔から。
誰かが近くにいないと泣いてしまう、小さなころのわたし。お昼寝のときも一人だとさびしくて耐えられませんでした。今は涙を流すことは少なくなったけど、やっぱりわたしは泣き虫さんのままなのです。
そんな泣き虫さんなわたしを知っているのは、よりちゃんただ一人だけ。物心がついたときから一緒にいてくれる、わたしだけのよりちゃん。
「そういえば、小さい頃は私が転んだかのを起こしたりしてたわね」
ふと昔のことを思い出したのか、よりちゃんはちょっと懐かしそうにつぶやきました。
実際、小さな頃のわたしは、さみしさ以外にも転んで泣いていることも多かったのです。いたくて歩けないとぐずっているわたしを、いつだってよりちゃんが来てくれて、助けてくれました。
「よりちゃん、わたしをよくおんぶしてくれてたね」
「そうでもしないと、かのはてこでも動かなかったでしょ」
おひさまみたいにぽかぽかして、安心できるわたしだけの場所。よりちゃんの背中にくっつくと、うれしくて自然と涙も止まっちゃう。そんなあったかさが欲しくて、寂しがりなわたしはだだをこねていました。
「まあ、私はかのより少しだけ大人だからね。……今のかのなら、自分でもなんとかできるかもだけど」
よりちゃんはそう言ってくれるけど、わたし一人じゃなんにもできないと思います。怖がりで、さみしがり屋。昔から、わたしは泣き虫さんのままなんです。よりちゃんが一緒にいてくれるから、わたしは泣かないで頑張れるのです。
このままよりちゃんが遠くに離れていっちゃうんじゃないか、突拍子もない不安がお胸の中でモヤモヤとしてきます。ぬくもりをつなぎとめたくて、わたしはよりちゃんのおててを、そっと握りました。
「わたし、よりちゃんがいてくれないと困っちゃうな」
少しだけ、納得できてないのかな。よりちゃんはジトっとした目で確かめるように見つめてきます。
「……ホント?」
「ホントだよ? よりちゃんならわたしのウソはお見通しでしょ」
わたしは、ウソをつくのが苦手だから。よりちゃんには隠し事があってもすぐにバレてしまうのです。
ウソをついてないと分かったからなのか、よりちゃんはわたしのおててを強く握り返してくれました。
「……まったく、かのは私がいないとダメなんだから」
よりちゃんの手はとてもあったかい。困っているとき、怖いときにわたしを引っ張ってくれます。
よりちゃん、わたしはいつも助けられてるんだよ。泣きそうなときに手を引いてくれるよりちゃんが、誰よりも頼もしく思えるの。
「そんな不安そうにしなくても、私はかのの隣りにいるわ」
「……顔に出ちゃってたかな?」
「わかるわよ、かのの事だもの」
微笑んでるよりちゃんの顔が見える。手を伸ばせば握り返してくれる。それだけで、わたしは木漏れ日のようにあったかい気持ちでいっぱいになるのです。
そろそろ帰りましょうか。そう言って、よりちゃんはわたしをエスコートし始めました。絆創膏が努力の勲章の、頼れる赤色リトルリーダー。わたしにとっての『イチバン』なんです。
だから、よりちゃんが転んじゃっても、わたしがお手当をしてあげるね。
ずっと、あなたのそばにいさせてね。
つないだ手にぽかぽかとしたあったかさを感じながら、わたしたちは帰り道を歩きました。
わたてんSSが増えれば世界平和が訪れる