アクセル・ワールド ベストマッチな加速能力者   作:ナツ・ドラグニル

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兎美「いじめっこの有田春雪は、全損を避けるためにサンド・ダクトとニッケル・ドールのチームに対戦を挑んだ」


美空「ニッケル・ドールに翻弄されたり、2人の合体技でピンチに陥るハルユキだったがアクア・カレントのお陰で危機を脱したのでありました」


千百合「それにしても、あんな見え透いた色仕掛けに引っ掛かるなんて...なにしてんのよハルの奴」


美空「本当よね、私達とどんだけ一緒にいると思ってるのよ」


兎美「こうなったら、耐性が着くまで私達で色仕掛けするしかないわね」


千百合・美空「そうね」


兎美「さて、ハルユキは無事に復帰することが出来るのか?どうなる第16話」


第16話

《乱入》すること二回、されること二回。

 

 

合計の四回のタッグ対戦全てに勝利したハルユキのバーストポイントは、充分に安全圏と言える70台にまで回復した。

 

 

「...これで、依頼完了なの」

 

 

現実世界に復帰したハルユキの意識に、思考音声がぽつりと響いた。

 

 

テーブルの向かい側に座る赤い眼鏡の女の子の指が、白い半透明外装のニューロリンカーに伸びる。

 

 

ハルユキもそれに倣い、同時にグローバルネットを遮断。

 

 

仮想デスクトップ右側から、地球の形のアイコンが消える。

 

 

これで、二人の名前はこの千代田エリアのマッチングリストから消滅したわけだ。

 

 

「......ふぅ......」

 

「はあ、やっと終わったのね」

 

 

ハルユキと兎美は、一緒に息を吐いた。

 

 

『これでハルは、全損の危機は免れたって事ね』

 

『ええ』

 

『なんとかな』

 

 

時刻表示は、最初の対戦を始めた時点からわずか30秒しか経過していない。

 

 

しかしこの30秒は、ハルユキがバーストリンカーとして戦ってきたこの二週間でも何度と無いほど濃密な時間だった。

 

 

全身に、さんざん殴り殴られた衝撃の余韻がまだ反響しているのかのようだ。

 

 

そのまま五秒以上も虚脱してしまってから、ハルユキはハッと顔を上げ、自分を救ってくれた《用心棒》アクア・カレントの本体たる少女を見た。

 

 

眼鏡の奥の瞳は相変わらず謎めいた光を湛え、唇には明確な表情を見出せない。

 

 

彼女に訊きたい事は、対戦の開始前よりむしろ増えてしまった気がする。

 

 

しかし、今は何よりも先にしなくてはいけない事がある。

 

 

ハルユキは、珍しく相手の瞳を正面から1秒以上見つめたまま、ありったけの思念を直結ケーブル越しに伝えた。

 

 

『...ありがとう、ございました。本当に...ありがとう...ございました』

 

 

思わず滲みそうになった涙を、何度も瞬きして堪える。

 

 

カレンは、そんなハルユキを見て、ごくごく仄かな笑みを浮かべながら囁いた。

 

 

『私も楽しかったの。それに、あなたが頑張ってくれたお陰で、色々なバーストリンカーの奥の手も見れたし』

 

『は、はぁ...』

 

 

確かに、初戦のニッケル・ドール&サンド・ダクト戦では、アクア・カレントは彼らの言わば《超必殺技》まで出させた上でそれを破り、その後真正面からの接近戦に持ち込んで両者を流水の刃によって仕留めた。

 

 

続く3対戦も展開は似たようなもので、必ず1度はピンチな場面があった気がする。

 

 

もちろん、用心棒として、いざという時はハルユキを守り通せるという自信あっての戦略ではあったのだろうが。

 

 

スリル溢れる戦いを回想したハルユキは、思わず呟いていた。

 

 

『...僕はどっちかって言うと、奥の手を出される前に決めるのが好きなんですが...』

 

『そんなのつまらないの』

 

 

そう言って、少し年上の少女はいっそうミステリアスに微笑む。

 

 

『確かに、奥の手が出てピンチに陥るならすぐに倒すけど...、余裕があるなら少し遊んでもいいわよね』

 

『兎美まで...』

 

 

先程の台詞や、事前にシルバー・クロウの能力を熟知していた事、そして何より依頼の報酬として《リアル情報》を要求する事を考え合わせると、彼女が全バーストリンカーの情報を広範に収集しているには明らかだ。

 

 

しかしその目的は、今なおまるで想像もできない。

 

 

ニアデス状態を脱した安堵感と、アクア・カレントの数々の謎への興味が胸中でミックスされ、ハルユキはもう一度はあっと息をついた。

 

 

何か話さないと核心的疑問を次々ぶつけてしまいそうなので、当たり障りのなさそうな問いを投げかけてみる。

 

 

『あの、そういえば僕、友達からこの千代田エリアはいつも過疎ってるって聞いた事あるんですけど...。すごく広い上に、真ん中にでっかい進入不可地帯があって戦いにくいから、って...』

 

『基本的にはその通りなの』

 

 

カレンは、内巻きにカールしたショートヘアを揺らして頷くと、まだ湯気を上げたままのダージリンティーを一口含んだ。

 

 

『でも、お茶ノ水から神保町にかけては学校が沢山あるし、必然的にここがホームのバーストリンカーも多い。ホームで戦いたい気持ちは皆同じだから、土曜の午後だけはこの付近に集まって《対戦》する習わしになってるの』

 

『へぇぇ』

 

 

ハルユキと兎美は、カレンが教えてくれた情報に、思わず同時に感心してしまう。

 

 

『てことは、カレンさんのホームもこの辺なんです...?』

 

 

ハルユキがつい発してしまった質問に、答えたのはカレンではなく、兎美の方だった。

 

 

『何よハル、妻を目の前にしてナンパでもするつもり?』

 

『な!べ!別に俺はそんなつもりじゃ!それに俺達まだそんな関係じゃないだろ!』

 

『あら?それは失礼』

 

 

ふふふと笑いながら、兎美は自分が注文した紅茶を飲む。

 

 

『私が今日ここを選んだのは、万が一の時にはあなたに進入禁止ゾーンの向こうまで逃げてもらえるから』

 

 

慌てふためくハルユキを他所に、カレンは淡々と答える。

 

 

『は、は――っ...ナルホド...』

 

 

大いに感心し、再び長く息を吐く。

 

 

カレンのような熟練のバーストリンカーにとっては、エリアの選定から既に戦いが始まっているという事だ。

 

 

――ピンチを脱したからって、喜んでばっかりじゃダメなんだ。

 

 

そこからもたくさん学ばないといけない。

 

 

僕のバーストリンカー道は、まだまだ始まったばかりなんだ...まずは、相棒――タクムの待つレベル4まで、1日でも早く辿り着かなきゃ...。

 

 

そう考えた時、ハルユキはようやく、自分がハンバーガー屋にそのタクムを待たせている事を思い出した。

 

 

交差点の向こうで別れてからは、もう20分以上も経っている。

 

 

ハルユキが無事ポイントを回復できたか、それとも全損してしまったのかとさぞヤキモキしているに違いない。

 

 

カレンについて本当に知りたい事は何一つ訊けていないが、でも今はまずタクムに報告しなければ。

 

 

カレントは、きっとまた会えるはずだ。

 

 

次は、依頼人と用心棒ではなく、単純にバーストリンカー同士として。

 

 

そう考え、ハルユキは大きく息を吸うと、再び頭を下げた。

 

 

『あの、僕、近くに友達を待たせてるんです』

 

『そうね...心配してるだろうし、そろそろ行かないと』

 

『カレンさん、今日は本当にありがとうございました』

 

『どういてしまして、なの』

 

 

そう言って、アクア・カレントは、トイレ前で正面衝突して以来最大の笑みをにっこりと浮かべた。

 

 

つられて笑おうとしたハルユキの耳に――続く、声。

 

 

『でも、あともう1つだけ、あなたから貰うものがあるの』

 

『え...は、はい、何でしょう...?』

 

 

浮かせかけた腰を戻し、ハルユキはきょとんと瞬きした。

 

 

アクア・カレントは、赤い眼鏡の奥で、両眼を細めて囁いた。

 

 

後払い分の報酬(・・・・・・・)

 

 

『後払い?』

 

 

兎美の言葉の後、カレンの唇が微かに動き、無音の加速コマンドを唱える。

 

 

バシイイイイイッ!という衝撃音がハルユキの意識を叩く。

 

 

暗転した視界に赤々と燃え上がる、見慣れたフォントの羅列。

 

 

 

 

【HERE COMES A NEW CHALLENGER!】

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

今日5度目の対戦フィールドは、青白い光がしんしんと降り注ぐ《月光》ステージだった。

 

 

骨を思わせる色に染まった宮殿状のビルの屋上で、ハルユキはただ立ち尽くした。

 

 

周囲にギャラリーの姿はない。

 

 

なぜならここは、対戦者以外の何ぴとたりとも立ち入る事の許されない、閉ざされた《直結対戦フィールド》だからだ。

 

 

少し離れた場所には、月光を受けて淡い金色に染まる水の化身がひっそりと直立している。

 

 

両手両足から零れ落ち、まるで翼のような弧を描いて頭部に戻る4本の水流だけが、さらさらとかすかな音を立てる。

 

 

1800から開始されたタイムカウントの数字が1770になった所で、ハルユキはようやく口を開き、おずおずと言葉を発した。

 

 

「あ...あの...?後払いの報酬ってなんですか...?どうして、わざわざ対戦を...?」

 

 

流れ落ちる水の奥で、青く光る眼がゆっくりと一度瞬いた。

 

 

「報酬として、いまあなたが持つポイントの全てを奪うため...とは考えないの?」

 

 

その声は、これまでの4戦では常に掛かっていた強いフィルダがほぼ失せ、現実世界のカレンの肉声によく似ていた。

 

 

そんなことを意識しながら、ハルユキはゆっくり首を傾げた。

 

 

「僕の...ポイント?でもそれは、あなたが回復させてくれたんですよ...?」

 

「回復させると同時に情報を収集し、戦力を分析し尽くした所で根こそぎ奪う。そうすれば、ソロで戦うよりも倍以上効率的にポイントを稼げるの」

 

 

とぷん。

 

 

軽やかな水音を立て、アバターが一歩近づく。

 

 

しかしハルユキは棒立ちになったまま、次の問いを口にすることしかできなかった。

 

 

「...根こそぎって言っても...1回の対戦じゃ、70ポイントは奪えないでしょう...?」

 

「直結対戦の怖さは、ケーブルをすぐには抜けない事なの。対戦が終わって現実に復帰して、生身の腕を動かしてニューロリンカーからケーブルを抜くよりもずっと早く、相手がもう一度加速してしまうの」

 

 

とぷん。更に一歩。

 

 

「で、でも...あなたが護衛を失敗して、全損したバーストリンカーはいままで1人も居ないって...」

 

「正確には、《ギャラリーのいる通常対戦中に全損した人はいない》なの。その後、直結対戦で人知れず消えていったバーストリンカーがいないって、どうして言い切れるの?」

 

 

戦慄すべき台詞を口にしたアクア・カレントは、全身を巡る水流をわずかに早めながら、ハルユキに囁きかけた。

 

 

「さあ、構えて。私にあなたを全部見せて」

 

 

直後、細身のアバターから凄まじいプレッシャーが押し寄せ、ハルユキの呼吸を止めた。

 

 

これほどの圧力を、ハルユキはたった一度しか感じた事はなかった。

 

 

師にして親たる黒雪姫のアバター《ブラック・ロータス》を初めて眼にした、その一度しか。

 

 

気圧されるままに持ち上げ、前後に構えようとした両の手を――。

 

 

しかし、ハルユキはすぐにだらりと下ろした。

 

 

「...諦めた、の?」

 

 

プレッシャーを消さぬまま、そう問うてくるアクア・カレントに、ハルユキは小さくかぶりを振って答えた。

 

 

「ええと...、ちょっと、違います」

 

 

この状況でも、意識はなぜか静かだった。

 

 

諦めたのではないし、アクア・カレントの言葉を全面的に偽りだと決め付けたわけでもない。

 

 

ただ、自分の中の、ささやかだけれど大切なものの為にハルユキは手を下ろしたのだ。

 

 

「あの...僕、カレンさんと最初にタッグで戦った時から...いえ、その前に、トイレの前でぶつかった時から、あなたのこと、何て言うか...信じちゃったんです。この人は良い人だし、この人ならきっと僕を救ってくれるって」

 

 

水流の向こうで、青い眼が再び瞬かれる。

 

 

その光を正面から見詰め、ハルユキは話し続ける。

 

 

「だから...たとえそれを裏切られても、僕は、あなたと憎しみで戦いたくないんです。」

 

 

カレンは、少しずつハルユキに近づく。

 

 

「――僕、ちょっと前に、いま下で待っててくれる友達と本気で戦いました。お互いに長年抱えてきた気持ちを...怒りや憎しみも全部ぶつけて戦った。でも、その戦いの最後に僕はあいつを信じ、あいつは僕を信じた。」

 

 

カレンは、ハルユキの前に立つと腕を剣に変え、ハルユキの喉元に突きつける。

 

 

「その時...僕は決めたんです。一度信じたら、ずっと信じるって。だってそれは...自分自身を信じるって事だから」

 

「だから戦わないの?」

 

「信じた人を、裏切りたくないですから...」

 

 

ハルユキの言葉を聞き、カレンは黙っていたが、しばらくすると喉元に突きつけていた剣を元に戻し、腕を下ろす。

 

 

「ごめんなさい。さっきのは嘘。あなたがあんまり無防備に直結するから、ちょっと脅かしたくなったの。でもあんまり効果は無かった」

 

「いえ、ありましたよ......。超びびった!!」

 

 

ハルユキは冷汗を浮かばせ、頭に手を置く。

 

 

「フフッ」

 

 

呟いたハルユキを見て、カレンは水流の向こうで優しく微笑んだ。

 

 

水音を立てながら歩み寄ると、ハルユキの隣で体の向きを変え、夜空に浮かぶ巨大な満月を見上げる。

 

 

つられて空を見たハルユキの耳に、小さな声が届いた。

 

 

「その友達、大切にして欲しいの」

 

「...ええ、そのつもりです」

 

「それと奥さんも...」

 

 

カレンが発した言葉に、ハルユキは顔を赤くする。

 

 

「奥さんって!確かに告白はされましたが!僕たちはまだそんな関係じゃ!」

 

 

いきなり言われたせいか、余計な情報まで喋ってしまい、ハルユキは慌てふためく。

 

 

「そう...なら私にもまだ...」

 

 

最後に零した言葉は、ハルユキには聞こえていなかった。

 

 

「......ずっとずっと昔は...私にも、沢山の仲間...友達がいたの。それと、誰よりも信じ、愛する《(マスター)》も」

 

 

密やかな声が、優しい水音に乗ってさらさらと流れる。

 

 

その音はハルユキに、長い長い時間の流れを感じさせる。

 

 

「でも、あることがあって、仲間はばらばらになってしまったの」

 

「そうだったんですか」

 

「主は加速世界から姿を消し、友達もひとり、またひとりと遠くへ行ってしまった...。だけど、私は信じてるの。もう一度、みんなが集まって...また、こんな綺麗な夜空を見上げながら、一緒に歩ける時が来るって...」

 

 

不意に――。

 

 

ハルユキは、幻を見た気がした。

 

 

美しい星空の下を行進する沢山のアバターたち。

 

 

賑やかに語り、笑い合いながら、いずこかを目指してどこまでも歩いていく。

 

 

「ええ...。きっと...そんな時が来ますよ」

 

 

呟いたハルユキの肩に、カレンの右手がそっと置かれた。

 

 

左横から正面に移動し、左手も肩に掛ける。

 

 

至近距離から視線を合わせてくる水のアバターの素顔を、ハルユキは一瞬見た気がした。

 

 

アクア・カレントは、じっとハルユキの眼を覗き込みながら、微笑み混じりに言った。

 

 

「さっき言ったのは殆ど嘘だけど、1つだけ本当があるの」

 

「え...な、何ですか?」

 

「あなただけからは、後払いの報酬を貰わなくちゃいけないこと」

 

 

きょとんと見返すハルユキにいっそう顔を近づけ、カレンは囁いた。

 

 

「それは、あなたの中のわたし。私の記憶」

 

「え...き、きお...く?」

 

「そう。あなたが私と出会うのは、まだ少しだけ早すぎるの。あなたはこれから、あなたの《主》を支え、手を取りながら、長い長い道のりを一歩ずつ歩いていかなくちゃいけない。そこにはまだ、私たち《エレメンツ》が介入するべきではない」

 

 

アクア・カレントの言葉の意味を、ハルユキはほとんど理解できなかった。

 

 

呆然と見開く視界の殆どが、透明な水の流れと青い眼の輝きに満たされる。

 

 

「いつか彼女がもういちど信念の剣を抜き、自分の足で歩き始めたその先で――私たちは、きっと再び出会える。だから今は、あなたの中の私を消していく」

 

 

「......で、でも...記憶を消すなんてこと...どうやって...?」

 

 

アクア・カレントが口にしているのは、途轍もないことだ。

 

 

頭のどこかではそう理解しているのに、さらさらというせせらぎと揺れる光が意識を覆い、思考を洗い流していく。

 

 

「私には...私にだけは、それが出来るの。《人は水を満たす回路であり、あらゆる知識や記憶は流れ去っていく水そのもの》...それが、私のシンイだから」

 

「しん...い......」

 

 

ぼんやりと呟いたハルユキの額に、カレンは自分の額をそっと押し当てた。

 

 

世界全てが、水の流れに包まれた。

 

 

どこか遠くで、声が聞こえた。

 

 

「さあ...今は、いったんお別れなの。また出会いましょう、シルバー・クロウ。あなたの翼が導く道の果てで、また、いつか...」

 

 

さらさら。

 

 

さらさら。

 

 

水はいつしかハルユキの中を流れている。

 

 

意識を、思考を、記憶を満たし、過ぎ去っていく...。

 

 

「――《記憶滴下(メモリ・リーク)》」

 

 

ずっとずっと遠くで、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

白く輝くせせらぎが全てを洗い流し――何もかもが遠ざかって...。

 

 

最後に、誰かの声が、優しく響いた。

 

 

 

 

 

50数えて、眼を開けるの。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

後払いの話をした後、兎美が質問したがその言葉の後に、少女の口が動いていく事に気付いた。

 

 

「!」

 

 

兎美が今の現状に気付くが、その時には既に手遅れだった。

 

 

しばらくすると、ハルユキより先に少女が目を覚ます。

 

 

「あなた...いったい何のつもり?」

 

 

兎美は少女を警戒をする。

 

 

「大丈夫なの...。彼から私に関する記憶を消しただけ...」

 

「記憶?」

 

 

彼女の言葉を、兎美は理解出来なかった。

 

 

「彼にも言ったけど、彼と私が会うにはまだ早すぎるの」

 

「それで記憶を消したって事?」

 

「そう。しばらくしたら目を覚ますけど、私の事は忘れている。だからあなたも私の事は内緒にしてほしいの」

 

 

そう言って、彼女は頭を下げる。

 

 

「事情は分からないけど分かったわ。その代わり、再会した時に事情を聞かせてもらうわよ」

 

 

兎美は彼女の誠意を見て、頼みを了承した。

 

 

「ありがとう。お詫びにここの料金は私が払っておくの。彼にはあなたが払った事にしておいてほしいの」

 

「分かったわ」

 

 

そう言って彼女は会計を済ませ、お店を出て行った。

 

 

「ああ...あれ?」

 

 

彼女を見送っていると、ハルユキが目を覚ました。

 

 

「大丈夫?ハル」

 

 

ぼーっとしながらも、ハルユキは兎美を視界に捉える。

 

 

「兎美?あれ?俺、何して」

 

 

彼女の言う通り、ハルユキは記憶を失くしていた。

 

 

「しっかりしなさいよ、ポイントを回復する為に用心棒を雇って、対戦をしに来たんでしょ」

 

 

私の言葉を聞き、ハルユキは意識をはっきりさせる。

 

 

「そうだ...俺、対戦に勝って...70台まで戻ったんだ」

 

 

「だったら、もうここには用がないわね。あいつを連れて早く帰るわよ」

 

 

私はハルに帰るよう促す。

 

 

「え?あ...ああ、そうだな」

 

 

私達はお店を出て、あいつを回収して帰路に着く。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

カレンは近くでハルユキ達が出てくるのを確認し、その場を離れる。

 

 

歩きながら、カレンはクロウとドールが戦っていた時の事を思い出す。

 

 

(あの時...彼が攻撃した時に見えたのは)

 

 

思い出しているのは、クロウがドールに技を仕掛けた際に見えた龍の幻影の事だ。

 

 

その龍は自分をレベル1にした元凶であり、ある場所に閉じ込めている元凶でもあるからだ。

 

 

深く考えていたカレンだったが、すぐに見間違いと思い気にする事を止めた。

 

 

カレンはもう一度、ハルユキの方を見る。

 

 

「次に会える時が楽しみなの」

 

 

カレンは自分の顔が熱くなるのを感じた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

翌日。

 

 

ハルユキはぼけっとしながらも、通学路を歩いていた。

 

 

正門を通り抜けた所で、ハルユキは後ろから声を掛けられた。

 

 

「あっおはよう」

 

「あっお...おはよう」

 

「何いつまで気にしてんの」

 

「えっ?」

 

「もう終わった事でしょう。それとも、またアイス奢りたいの?」

 

「チユ」

 

「そうだよハル」

 

「あっ」

 

 

チユと話していると、ここに居ないはずの人物の声が聞こえた。

 

 

『あっ』

 

 

2人して声の方を向くと、そこには梅里中の制服を着て、眼鏡を掛けたタクムがいた。

 

 

「おはよう」

 

 

そう言って、タクムはそのまま校舎に歩いていった。

 

 

「今の制服って...」

 

「うちの学校の...」

 

 

ハルユキとチユリは、しばらく呆けていたが。

 

 

『ええーっ!』

 

 

状況を理解すると2人して、驚きの声を上げた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「失礼しました」

 

 

タクムは職員室で最後の手続きをすませると、職員室から退室する。

 

 

「今時眼鏡とはな」

 

 

声の方を向くと、そこには黒雪姫が立っていた。

 

 

「ニューロリンカーの視力補正があれば、必要ないだろう」

 

「これからは、自分の目で見ていこうと思ったんです。本物のちーちゃんやハルを、そして自分を」

 

「フッ、似合っているぞ。それにしても、大会に出なかった理由が転校しようとしていたからとは、最初に聞いた時は驚いたぞ」

 

 

黒雪姫には、呼び出された時の対戦で転校の話はしていた。

 

 

「言ったじゃないですか、近くで支えたいって」

 

「なるほどな」

 

 

黒雪姫はそう呟くと、そのまま歩いていった。

 

 

「宜しく、マイマスター」

 

「おーい!タクー!」

 

 

その場を去る黒雪姫の背中を見詰めていると、後ろからタクムを呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「あっ」

 

 

後ろを振り返ると、笑いながら自分の幼馴染である2人が駆け寄ってきていた

 

 




どうも!!ナツ・ドラグニルです。


今まで通り投稿すると言っておきながら、半月も遅れてしまい申し訳ございません!!


9月から色々あった為に、鬱になっていました。


何に対してもやる気が起きず、小説を投稿することが出来ませんでした。


解決はしていませんが、鬱になった原因に対してある決断をしたので少しは楽になりました。


さて、今回の話は特に修正せず、そのままになっております。


次回からは第2章に入り、ある程度はビルドの話を入れて行こうと思っています。


それでは次回、第2章第1話もしくはLOVE TAIL第23話でお会いしましょう!!
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