アクセル・ワールド ベストマッチな加速能力者 作:ナツ・ドラグニル
チユリ「ハルもそうだけど、兎美も負けず劣らずのおっちょこちょいよね」
兎美「ちょっと!!いくらなんでも、私はあそこまでおっちょこちょいじゃないわよ!!」
チユリ「でも扉閉め忘れたんでしょ?」
兎美「う....、さて!!黒雪姫から加速という力を授かったハルユキ!!そんなハルユキに荒谷の拳が迫る!!どうなる第4話!!」
チユリ「ごまかしたわね...」
きぃぃぃん、というジェット機のような音が、遠くから近づいてきて周囲の静寂を破る。
青い世界が、徐々に本来の色を取り戻していく。
視界の左側で、停止していた荒谷の拳が少しずつ動き出す。
カタツムリのようにのろのろした動きから、じわじわと増速し、ハルユキの頬に迫る。
ハルユキは、言われたとおり両脚で右後ろ方向へと飛ぼうとしながら、懸命に首を右に回した。
ぐうううっと接近してきたパンチが、皮膚に触れ、わずかにめり込み――。
そして、世界が、戻った。
わっ、と周囲の騒音が押し寄せてくる中、ハルユキは左頬をがつぶよんと拳が抉るのを感じた。
頬の内側に歯が食い込み、唇が引き攣れる感覚。
多少は血が出そうだが、しかしこれまで何度も食らった空手パンチに比べれば確かに半分くらいの痛みだ。
だが、同時にハルユキの巨体は映画のように派手に宙に飛んでいた。
上手く避けてくれ!と念じながら、背中から後ろの椅子に激突する。
ガターンと椅子が倒れる音、そして直後に、がつん!!という不吉な音がした。
背中から床に落ちたハルユキは一瞬息が詰まり、空気を求めて喘ぎながらも、必死に首を廻らして、衝突を回避したはずの黒雪姫の様子を確認した。
見開いた両眼が捉えたのは、頭をラウンジの採光ガラスに凭れさせ、壊れた人形のように手足を投げ出して瞼を閉じる華奢な姿だった。
乱れた前髪の下、透き通るほどの白い額に、つう、と一筋の血が流れた。
「あ....あっ」
悲鳴を呑み込みながら、ハルユキは立ち上がろうとした。
だが、その寸前―。
『動くな!!』
直結されたままのリンカーを通して、黒雪姫の思考発声がハルユキの意識を打った。
反射的に、仰向けに倒れた格好のまま体を凍りつかせてハルユキは言葉を返した。
『で、でも...血が!!』
『心配ない、少し切っただけだ。言ったろう、最大の効果を狙うと。これでもう、荒谷は君の前には現れない。二度とな』
言われるまま、ハルユキは視線だけを左から右へと動かした。
右拳をまっすぐ振りぬいたままの荒谷が、ぽかんとした表情でハルユキ達を見下ろしていた。
その顔から、徐々に血の気が引いていき、薄い唇が2度、3度と痙攣するように震えた。
しん、とした静寂に包まれたラウンジに―。
「...きゃああああ!!」
周りのテーブルの女子生徒達の凄まじい悲鳴が響き渡った。
荒谷と手下ABは、生徒会役員の男子によって取り押さえられる間もまるで抵抗しなかった。
真っ青な顔でがくがく脚を震わせる三人を、血相を変えて駆けつけてきた教師達が引き擦りながら連行していき、黒雪姫もまた生徒会の女子に抱えられるようにして病院に直行した。
ハルユキ自身は保健室で軽い手当てを受けただけだが、校医の手で消毒されパッチを貼られる間も、直結ケーブルが抜かれる直前に黒雪姫が発した言葉が、残響となって耳奥に漂っていた。
『―おっと、言い忘れた。明日登校するまで、絶対にニューロリンカーを外すな。しかし、グローバル接続は1秒たりともしてはいけない。いいか、絶対だ。約束だぞ』
指示の真意を推測することなどまったくできなかった。
保健室で午後の2時間を過ごす間もずっと、奇妙な乖離感覚が全身を包んでいた。
昨日と今日のたった二日間で自分に起きた多くの出来事を、どう整理して呑み込んでいいのか解らない。
しかし少なくとも、もう下駄箱から靴がなくなったり、靴に異物が入っていたりということを心配する必要はなさそうだった。
機械的に上履きかをスニーカーに履き替え、校舎から出たところで、ハルユキは言われた通りニューロリンカーをネットから切断した。
これにどんな意味があるんだろう、と再び考えながら校門を目指して歩き出したとき。
「ハル」
小さな声が耳に届き、声の方へ振り向くとそこにはチユリが立っていた。
「チユ...お前なんでここに?」
難しい顔をしたチユリがざしざしと校庭の舗装を踏みながら近づいてきた。
「ハル、昼休みの事聞いたよ」
「え?昼...あ、ああ」
「あいつらに殴られて、物凄い吹っ飛んだって...それ、その怪我?大丈夫?」
太い眉をしかめてチユリは顔を近づけたので、ハルユキは思わず左手で口元のパッチを覆った。
まさか、派手に飛んだのは自分でしたことだ、とも言えない。
「う...うん、大丈夫。ちょっと切っただけだって。他に怪我もないし」
「...そう、良かった」
まだやけに強張った顔に、かすかに笑みを浮かべてから、チユリはちらりと周りを見た。
昼休みの一件で、ハルユキはたちまち校内の話題のタネになってしまったらしく、下校する生徒達は皆じろじろと遠慮ない視線を浴びせていく。
「じゃあ、たまには一緒に帰ろ」
硬い声でチユリはそう言い、答えを持たずに歩きはじめた。
背丈に似合わぬ大きな歩調ですたすた歩くチユリに小走りで追いつくと、微妙な距離を取って横に並んだ。
そのまま校門をくぐり、乗車用のインホイールモーターの音だけが静かに響く大通りの歩道を進む。
いつもなら、学校を出た途端、自動的に周囲を移動する人・自転車・自動車が視界にカラーシンボルで表示されるので眼を瞑っても歩けるのだが、グローバルネット切断中の今はナビは使えない。
一体何故黒雪姫はあんな指示をしたのか、とまたも考えた瞬間、右横のチユリがまさにその名前を口に出したのでハルユキはあやうく飛び上がりかけた。
「2年の黒雪姫さんと、直結してたって、ホント?」
「えっ!?な、なん――」
なんで知ってるのか、と言い掛けて、そりゃそうだと思いなおす。
荒谷のパンチよりも、その一件のほうが、生徒たちに与えたインパクトは大きいだろう。
「......うん、まあ......」
頷いたハルユキを見ようともせず、チユリは小さく唇を突き出すとさらに歩調を速めた。
その様子が、最大級の不機嫌を示していることを長い付き合いのハルユキはよく知っていて、なんでだともう一度思ったが、いくら考えてもハルユキには分からなかった。
「で、でも、別に変な意味じゃないって。その、ちょっとアプリをコピーしてもらっただけで」
十月なのに、背中に嫌な汗がどーっと掻きながらハルユキは弁解した。
しかしチユリの表情は和らぐ事はなかった。
「そ、それより、昨日言ってた事って...」
チユリに昨日の事について話をしようとした時、良く通る声が前方から響いてハルユキは続きを呑み込んだ
「おーい、ハル、チーちゃん!偶然だな、今帰り?」
ぴた、とチユリが脚を止め、ハルユキも顔を上げた。
環状7号線にかかるエスカレーターの袂に、にこやかな笑顔で手を上げる同年代の少年が見えた。
制服は、梅里中のものとは異なるブルーグレーの詰襟。
右手には古式ゆかしい黒革の学生カバンを提げ、肩には剣道用の竹刀ケースを掛けている。
少し長めの髪は清潔感のある真ん中分けで、その下の顔がまた、爽やかという形容がこれ以上似合う奴もいるまいというスッキリした美男子だ。
「タク!」
ハルユキとチユリの幼馴染である
「おっす、ハル!久しぶり」
「ッス、タク。久しぶり...だっけ?」
自分より10センチ高い所にあるタクムの顔を見上げながら、ハルユキは言った。
「そうだよ、リアルじゃもう2週間会ってないぞ。お前、マンションの行事出てこないから」
「出るかよ、運動会なんて」
顔をしかめてそう言い返すと、タクムは相変わらずだなあと笑う。
3人は、北高円寺に建つ複合高層マンションで同じ年に生まれた。
しかし、それだけの理由では、ハルユキにはない全てを持っているこの少年とはとても仲良くはなれなかったろう。
皮肉にも、タクムはあまりにも勉強が出来すぎて新宿区にある小中高一貫の名門校に入った為、逆にハルユキは彼と屈託無く付き合えるようになった。
タクムに、地元の公立小学校でたちまちイジメの標的となった自分の惨めな姿を見られずに済んだからだ。
同じ小学校に進んだチユリには、イジメの件は絶対にタクムには言うなと口止め(あるいは懇願)した。
もし知れば、タクムはハルユキを救おうと、悪餓鬼連中を呼び出して竹刀でしばき倒すくらいの事はしただろう。
しかしそれでイジメがなくなっても、やはりハルユキはもうタクムとは友達でいられなくなる気がしたのだ。
「そう言えば...」
三人で並んで歩きながら、ハルユキは自分から口を開いた。
学校では殆どしないことだ。
「こないだの都大会の動画。ネットで見たぞ。悪かったな誘ってくれたのに見に行けなくて」
「本当だよ、せっかく誘ったのに」
タクムは半眼でハルユキを見てきた。
「悪い悪い、でもすげーなタク、1年でもう優勝かよ」
「まぐれ、どまぐれだよ」
頭を掻きながら、タクムはくすぐったそうに笑う。
「苦手なやつが準決勝で消えてくれたからさ。それよりハルのそのパッチどうしたの?」
「え?あ、これは今日ちょっとあって」
「そうなんだ、近頃物騒だから2人とも気をつけなよ」
「あ、ああ、そうだな」
まさか自分が、その物騒な事に自分から関わってるなんて、ハルユキには言えなかった。
他の話題を見つけよと、ハルユキが頭を巡らせようとしたその時。
「ちょっといいかしら」
後ろから女性の声が聞こえ、振り返るとそこには幻がいた。
「あなたが有田春雪君?」
「え?あ!はい!」
ハルユキは思わず声を荒げてしまった。
「風紀委員の人がハルに何の用ですか?」
なぜかチユリが幻に対して、冷たく対応する。
「急にごめんなさいね。昼の件で有田君に確認したい事があるから、私と一緒に来て欲しいの」
「それは今聞くことですか?別に明日でもいいですよね?」
「ごめんなさいね、できれば今日中に話を聞きたいの」
「だったら、事前に放課後なりに時間取るのが普通じゃないんですか?今は下校中ですよ」
「お、おいチユ何そんなに突っかかってんだよ。相手は風紀委員の会長だぞ!」
相手は風紀委員ってだけでなく、東都政府首相補佐官なのだ。
ハルユキは、慌ててチユリを止める。
「すみません先輩!僕は全然構わないので何処か別の場所に移動しましょう!」
このままここにいたら、また悪目立ちしかねないと思ったハルユキは場所を変えるように提案する。
「えぇ、分かったわ」
「そう言う訳だから俺はここで分かれるよ。またなタク、チユ」
ハルユキは、タクムとチユに向き直り挨拶をする。
「う、うん。じゃあねハル」
タクムは少し動揺していたがすぐに挨拶を返してくれた。
だが、チユリは幻を睨んだままだった。
「お待たせしてすみません」
「いいえ、別に構わないわ。では行きましょうか」
幻が歩き出したので、ハルユキはその後を追った。
ハルユキは思いもしなかった。
この後、自身にとんでもない事が起こるという事を。
☆★☆★☆★
「いつもはハルの事を迎えに行くのに、今日は行かないの?」
「ええ、ちょっと開発したものがあるから」
兎美はニューロリンカーを操作しながら、美空の質問に答える。
「それより、何でか知らないけどハルの視覚に直結できないのよね」
「グローバル接続切ってんじゃないの?」
「何の為に?」
切断する理由が分からず、首を傾げる兎美に着信が入った。
相手が非通知な事に、兎美は訝しげながら通話に出た。
『もしもし?』
聞こえてきたのは、変声機で変えたような機械的な声だった。
『フフフ、始めましてだな有田兎美。それとも、仮面ライダービルドと言った方が良かったかな?』
自分の正体がバレてる事に、兎美は驚いて通話の相手を問いただす。
『あんた、何で私の正体を知ってるの?』
『そんな事はどうでもいい。今からいう場所に1人で来てもらうぞ』
『こんな明らかに怪しい電話で、私が素直に行くわけ無いでしょ』
『ほう?良いのか?来なかったらお前の大切な人がどうなるか分からないぞ?』
『大切な人?』
すると、電話先から叫び声が聞こえた。
『やめろ!!離せ!!』
よく聞くと、それは未だに帰ってこないハルユキの声だった。
『ハル!?』
『早く来ないと手遅れになるぞ...仮面ライダービルド』
一方的に通信が切られ、直ぐに一通のメールが届いた。
「え?ちょ!兎美!!こんな時間に何処に行くのよ!!」
美空の静止も聞かず、兎美は急いで家を飛び出した。
☆★☆★☆★
ビルドに変身した兎美は、指定された場所に到着した。
「ハル...」
ハルユキを心配し、探そうとするビルド。
しかし、銃の発砲音と共に、ビルドの前にガーディアンが現れる。
「こんな時に!」
ビルドはドリルクラッシャーを取り出し、ドリル刃『ドリスパイラルブレード』を取り外し、先端部分を別のコネクターに接続する。
それにより、ドリルクラッシャーは本来の『ブレードモード』から『ガンモード』へと変形する。
ビルドは更に、ドリルクラッシャーに『ハリネズミフルボトル』を装填する。
『Ready Go!!』
『ボルテックブレイク!!』
弾と一緒に針が発砲され、ガーディアンの頭に刺さって機能を停止する。
ビルドはラビットとタンクのフルボトルを抜き取り、『ゴリラフルボトル』と『ダイヤモンドフルボトル』を装填する。
『ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!』
「ベストマッチ!これがあれば!」
ビルドはドライバーについているレバーを回すとフレームがビルドの周りに構成され、ゴリラとダイヤモンドのハーフボディが前後に生成される。
『Are You Ready?』
「ビルドアップ!」
ゴリラとダイヤモンドのハーフボディが、ビルドを挟み込むように結合する。
『輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イエーイ!』
ビルドは『仮面ライダービルド ゴリラモンド』へと変身する。
「勝利の法則は決まった!」
一気に決めるべく、ビルドは再度レバーを回す。
『Ready Go!』
ビルドの前に、ダイヤモンドが発生する。
『ボルティックフィニッシュ!』
発生させた無数のダイヤモンドを、右腕で弾き飛ばしガーディアンにぶつける。
無数のダイヤモンドがぶつかった事により、ガーディアンの装甲が剥がれ破壊される。
「急がないと...」
ビルドは、ハルユキを助けるべく奥に向かった。
しばらく廃工場の中を走っていると、ビルドは床に横たわった状態のハルユキを見つめる。
「ハル!」
ビルドはすぐさまハルユキに近づき、抱きかかえる。
直ぐにハルユキの、脈があるかを確認するビルド。
「脈はあるわね...」
ハルユキが無事だった事を安堵したビルドは、ぺちぺちとハルユキの頬を叩く。
「ハル、起きなさい」
しかし、ハルユキが起きる事は無かった。
「ふふふ、遅かったな仮面ライダービルド」
突如ビルドの後ろから、声が聞こえた。
声のした方を向くと、そこには霧が発生していた。
「霧?」
「ふふふ」
声が聞こえた次の瞬間、霧が集結しコウモリをモチーフにした装甲を持った何かがいた。
「コウモリ男...」
「ナイトローグだ。以後お見知りおきを」
「どっちでもいい!」
ビルドはナイトローグに向かって、攻撃を仕掛ける。
「私に何をしたの!?人体実験したんでしょ!!」
「さあな、一々モルモットの事を覚えてないから忘れてしまったよ」
「なんですって!!」
ビルドは、ナイトローグに攻撃を仕掛けるが全ていなされてしまう。
ナイトローグの手元に新たな霧が発生し、集結すると1つの剣に変わった。
「はあ!」
ナイトローグは下から斬り上げて攻撃し、ビルドはダイヤモンドを発生させて攻撃を防ぐ。
「ぐう!」
「はあ!」
ナイトローグは腕を引き、そのまま剣を前に突き出す。
「きゃあ!」
攻撃を防ぐが、今度はダイヤモンドが砕けてしまい攻撃を受けてしまう。
「フッ!こんなものか」
「黙れ!」
「まあいい、当初の目的は達成した。俺はこれで引かせて貰おう」
「ま、待て!」
ビルドが引き留めようとしたが、ナイトローグの姿を霧が覆う。
霧が晴れる頃には、ナイトローグの姿はなかった。
「くそぉぉぉぉぉ!!!」
ビルドは悔しさのあまり、地面を殴りつける。
「! ハル!」
ナイトローグのせいで頭に血が上っていたビルドだったが、当初の目的を思い出してハルユキの元に向かう。
ハルユキは先程と変わらず、未だに気絶したままだった。
「ハル!しっかりしてハル!」
「う、ううん」
ハルユキの呻き声に、ビルドは直ぐに反応する。
「!?」
「あれ...兎美...?」
「ハル!!」
ハルユキが目を覚ました事にホッとし、ビルドは思わずハルユキを抱きしめた。
「ちょっ!痛ったたたた」
「あっ...ごめん...」
ビルドのパワーで抱き着いたせいで、ハルユキの体をきつく締めてしまった。
「てててっ、所でここは?」
「何も覚えてないの?コウモリ男に何かされたのよ」
「全然覚えてない...」
これ以上ここに居ても意味がないと思ったビルドは、ハルユキを連れて帰ることにした。
☆★☆★☆★
帰宅した兎美達を待ち構えていたのは、玄関に仁王立ちして立っていた美空だった。
「兎美!いきなり飛び出して何処行ってたのよ!」
「ちょっと美空、落ち着きなさいよ」
騒ぐ美空を落ち着かせようとする兎美だったが、今度はハルユキに標的を変える。
「ハルも今まで何してたの!」
「いや...俺にも何が何だか...」
兎美達はご立腹の美空を何とか落ち着かせて、今まで何があったか説明する。
「コウモリ男に拐われたって、ハルあんた何かされたの?」
「それがよく分からないんだよな、体も特に以上はないし」
「なによそれ、何か覚えてないの?」
「放課後、チユと一緒に帰った所までは覚えてるんだけど、その後の事が思い出せないんだ」
思い出そうとするハルユキだったが、全然覚えていなかった。
「取り敢えず、ハルの事は様子を見るしかないわね」
「そうだな」
「あんた、何か異変を感じたらちゃんと報告しなさいよ」
「分かった」
☆★☆★☆★
その夜、ハルユキは今までの人生の中で最大の悪夢を見た。
小学校の頃の悪餓鬼連中や、荒谷と手下AB、それに名も知らぬアウトローな学生達が、入れ替わり立ち替わり現れてはハルユキを痛みつけた。
少し離れた所から、チユリとタクムが眺めていた。
全身の痛みより、二人の顔に浮かぶ憐れみの表情のほうがハルユキには耐え難かった。
夢が進行するにつれ、見物人は増えていった。
2人の隣に母親が現れ、ずいぶん昔に家を出ていった父親も登場し、さらに兎美と美空までも現れた。
マンションの住民達やクラスメイトまでも、ぐるりと人垣を作って地を這うハルユキを見下ろした。
もう、彼らの顔にあるのは憐れみではなく嘲笑だった。
憐れみの視線を向けていた兎美と美空も、興味がなくなったかのようにハルユキから離れていく。
嫌だ、お前達までいなくならないでくれ。
醜く惨めなハルユキを、無数の人間達が指を指して嘲笑った。
もうここは嫌だ。
そう思って、遥かに暗い空を見上げると、そこに何者かの影があった。
夜より黒い翼を広げ、軽やかに飛翔する一羽の鳥。
僕もそこに行きたい。
もっと高く。
遠く。
飛びたい。
彼方まで。
『ーそれが、君の望みか?』
☆★☆★☆★
『そう、分かったわ。ありがとう』
兎美はチユリに連絡し、今日あったことを聞いた。
「まさか...私が寝てる間にそんなことがあったなんて」
「私も...発明に集中してたから確認してなかったし」
「そもそも、その黒雪姫って女の目的はなんなの?そいつの所為でハルは殴られたそうだし。それに風紀委員の会長も気になるわ。話からしてその女に連れていかれる前からの記憶が無くなってるし、その女が怪しいんじゃないの?」
「分からないけど、取り敢えずその女に会う為に明日の放課後にハルの学校に乗り込むわよ」
「分かった」
そう言って、兎美は発明を再開した。
「早くこれを完成させないと」
兎美の前にあったのは、ビルドと同じドライバーと、中身がむき出しになった青い小さなドラゴンが置かれていた。
はい!!如何だったでしょうか?
ボーナスでパソコンを新しく買い、メモ帳からワードにデータを移し替えたり、他にも色々やっていたら時間が掛かってしまいました。
また、この話が1日に投稿されているので、気づいている人もいるかもしれませんが、ハピネスチャージの投稿は間に合いませんでした...
申し訳ございません。
9月までには仕上げますので、ご了承ください。
さて今回、もう一人の幼馴染、黛拓武が登場しました。
アクセル・ビルドをご存じない人は分からないと思いますが、原作では拓武とチユリは付き合っていますが、この作品では付き合っていません。
なぜなら、チユリが可哀そうだと思ったからです。
それでは次回、第5話もしくはLOVE TAIL第7話でお会いしましょう!!