アクセル・ワールド ベストマッチな加速能力者   作:ナツ・ドラグニル

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チユリ「いじめられっこの有田春雪は、1年上の先輩『黒雪姫』に呼び出され不思議なアプリをインストールした後、荒谷に殴られ、探していたコウモリ男にさらわれるてしまう。しかし、仮面ライダービルドによって救出されるのでありました!!」


兎美「ちょっと!!なんでチユリがあらすじ紹介してんのよ!!てゆうか私の紹介は⁉」


チユリ「良いじゃん別に」


黒雪姫「そうだぞ、我々が出てきても問題ないはずだ」


兎美「しれっとあんたまで出てきてんじゃないわよ!!あんたまだ私達と接点ないでしょうが!!」


黒雪姫「細かい事はきにするな、さて一体ハルユキ君の身に何が起きているのか!!どうなる第5話!!」


兎美「ちょっとそれ私の台詞!!」


第5話

東都政府の会議室。

 

 

「多くの犠牲者を生んだあの悲劇から10年か、北都の様子はどうかね?」

 

 

東都政府の首相にして幻の父『氷室泰山(たいざん)』が、北都の首相『多治見(たじみ)喜子(よしこ)』に質問する。

 

 

「ようやく、子育て支援と農業政策に成果が出てきました。西都さんには、内向き志向だと揶揄されそうですけど」

 

「そんなことはない。だがうちは、若者をバンバン世界に派遣。日本の技術力で経済を立て直すつもりだがね」

 

 

西都の首相『御堂(みどう)正邦(まさくに)』は、冗談交じりに言う多治見に対して西都の目標を告げる。

 

 

「もう、国として纏まる気はないか...」

 

「当面は難しいだろう、あらゆるライフライン供給がスカイウォールによって冴えぎられてしまった今は...」

 

「確かに...あの壁を何とかしない限りわね...」

 

「そうだな」

 

 

御堂の言葉に泰山と多治見が賛同し、3人は席を立ち真ん中に集まる。

 

 

「では、また来月の定例会議で」

 

 

泰山がそう言うと、多治見と御堂の姿が青く光り、姿が消えてしまった。

 

 

同じ部屋に3人集まっているように見えたが、実体は泰山のみで他の2人は立体映像だったようだ。

 

 

今の現状に、泰山はため息をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北都も、西都に引けを取らない軍隊を備えているといいます。我々も早急に軍事開発を...」

 

「必要ない、自衛できる力だけあればいい」

 

 

幻が言い切る前に、泰山が幻の提案を否定する。

 

 

「しかし父さん...」

 

「ここでは首相と呼べと言ったはずだ。それより、スマッシュと呼ばれる怪物について何か分かったのか?」

 

「いや...」

 

「一刻も早く、犯人を見つけ出して東都の不安を取り除け」

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

早朝の公園で、1人の男の子がスマッシュ、『フライングスマッシュ』に襲われていた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

スマッシュは空を飛び、男の子に攻撃を仕掛けようとしたが、横から攻撃を受けて墜落する。

 

 

そこに、バイクに乗った兎美が現れる。

 

 

「さぁ、実験を始めようか」

 

 

兎美はバイクを操縦しながら、ビルドドライバーに装填する。

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

 

レバーを回し、バイクを運転する兎美の前後に、ハーフボディが現れる。

 

 

『Are you Ready?』

 

「変身!」

 

 

前後のハーフボディが結合し、兎美は仮面ライダービルドへと変身する。

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

 

「はあ!」

 

 

ビルドは、バイクから飛び降りた勢いをそのままに、スマッシュにパンチを繰り出す。

 

 

ビルドが戦っている間、自転車で追いかけてきた紗羽が子供を安全な場所に移動させる。

 

 

「今!!ビルドの頭の中には、どんな法則が描かれているのか!!」

 

 

そう紗羽が実況する中、ビルドはボトルを取り換える。

 

 

『ゴリラ!掃除機!』

 

 

レバーを回して前にゴリラ、後に掃除機のハーフボディを出現させる。

 

 

『Are you Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

 

ハーフボディが結合され、ゴリラ掃除機にフォームチェンジする。

 

 

「ゴリラ掃除機!!意外な組み合わせだ!!さぁ、いつもの決め台詞が出るか?出るか?」

 

「勝利の法則は...」

 

「決まったー!!」

 

 

ビルドが言い切る前に、紗羽が決め台詞を言ってしまった。

 

 

言われてしまった事に、ビルドはがくっと肩を落とす。

 

 

「あぁ、もう!!」

 

 

ヤケクソ気味に、飛んでいたスマッシュを掃除機で引き寄せる。

 

 

スマッシュも吸い込まれまいと、反対方向へ縦横無尽に飛ぶ。

 

 

「あぁ、浮いた!!掃除機の機能をフル回転して、スマッシュを飛ばさせる!!」

 

 

「はぁ!!」

 

 

ビルドの気合を入れる掛け声と共に、一気に吸引力が上がった。

 

 

今まであがいていたスマッシュだったが、流石に耐え切れず掃除機へと引き寄せられていく。

 

 

「はあ!!」

 

 

掃除機で充分引き付けたスマッシュを、ゴリラの腕で殴り飛ばす。

 

 

「バーニングのパンチが炸裂!!怒涛の攻撃だ!!迷わず行けよ!!行けばわかるさ!!い〇きもビックリだ!!」

 

「うるさいわよ!!黙って見てなさいよ!!」

 

 

我慢できなくなったビルドが、紗羽に怒鳴った。

 

 

そんなビルドに、紗羽は口元を押さえ、ん-!!んんー!!と叫ぶ。

 

 

「え?」

 

 

意味が分からなかったビルドだったが、倒れていたスマッシュが起き上がる。

 

 

「はぁ!!」

 

「マジかよッ!!」

 

 

スマッシュに殴られたことによって、ビルドは地面を転がってしまう。

 

 

「ごめーん...」

 

 

自分のせいで攻撃を受けた事に、紗羽は両手を合わせて謝罪する。

 

 

「最悪ね...」

 

 

そう言いながら、ビルドはダイヤモンドフルボトルを、シャカシャカと振った。

 

 

「もーう!!」

 

『ダイヤモンド!!ベストマッチ!!』

 

 

レバーを回すと、後ろにダイヤモンドのハーフボディが出現する。

 

 

『Are you Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

『輝きのデストロイヤ!ゴリラモンド!イエーイ!』

 

 

スマッシュが向かってくる中、ビルドは更にレバーを回す。

 

 

『Ready Go!!』

 

「はぁ!!」

 

 

走ってくるスマッシュが飛ばすレザーの着弾地を予測し、キューブ状のエネルギー体が出現する。

 

 

いくつものレザーが放たれるが、そのキューブが全てを防ぐ。

 

 

『ボルテック・フィニッシュ!』

 

 

無数のキューブが、1つの巨大なダイヤモンドへと変わる。

 

 

『イェーイ!!』

 

「はぁ!!」

 

 

巨大なダイヤモンドを殴ることで、砕けた破片がスマッシュに向かって飛び散る。

 

 

ドッガァァァァァン!!

 

 

必殺技が決まり、スマッシュが爆発し倒される。

 

 

「やったー!!こっち向いて!!つうか分析のポーズで!!きゃー!!目線頂戴!!目線!!」

 

 

「はぁ...うざ...入学式のおかんかよ」

 

 

騒ぐ紗羽に呆れながら、ビルドはスマッシュの成分を抜く。

 

 

成分を抜いたスマッシュがいた場所には、1人の女性が倒れていた。

 

 

「おかあさん!!」

 

 

すると、先ほど襲われていた子供が、女性に駆け寄った。

 

 

「おかあさん!!」

 

「こうた...」

 

 

駆け寄ってきた子供を抱きしめた母親は、自身が何をしていたのか思い出せず困惑する。

 

 

「ここは?」

 

「仮面ライダーが、お母さんを助けてくれたんだよ...」

 

 

余程怖かったのか、子供は母親を強く抱きしめた。

 

 

「良かった...良かったよぉ...」

 

「ごめんねぇ」

 

 

子供を安心させる為、母親は背中を摩った。

 

 

その様子を見ていた兎美は、マスクの下でふふっと笑った。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「・・・!・・・ル!・・・ハル!」

 

 

はっ、とハルユキは目を開けた。

 

 

ハルユキの目の前には、心配そうに覗き込んでいる兎美がいた。

 

 

「大丈夫?凄くうなされていたけど?」

 

「兎美?」

 

 

スマッシュとの戦いを終えた兎美は、ハルユキの部屋から聞こえてきたうなされる声を聴いて、兎美は心配して部屋に入ってきたのだ。

 

 

「どうしたの?なにかあったの?」

 

 

その時、ハルユキは自分が泣いていることに気付き格好悪いと思い、直ぐに涙を拭った。

 

 

「いやなんでもない、ちょっと怖い夢を見ただけだから...」

 

 

ハルユキはこんな姿を兎美に見せたくないと思い部屋を出て行こうとしたが、行動を移す前に兎美に前から抱きしめられた。

 

 

「大丈夫よ。ハルあなたを傷つける人はここにはいないわ、ハルは私が守るから安心して」

 

 

「なんで...なんで、こんな俺にそこまでしてくれるんだよ...」

 

 

不思議に思ったハルユキは、思わず質問してしまった。

 

 

「ハル...なんでそんなに自分を卑下するの?」

 

「だって...俺はこんな見た目だし...兎美や美空みたいに凄い力とかないし...スマッシュとの戦いだって俺に出来ることないし...」

 

 

自分の容姿に自信がなく、マイナスな考えしか出てこないハルユキを、兎美は更に強く抱き閉まる。

 

 

「私は知ってる、ハルが誰よりも優しいことを...自分が傷つけられる事と同じぐらい誰かを傷つけることを嫌うことも...それにハルは行く宛ても無かった私達に居場所をくれた...力なんて関係ない...ハルが居てくれるから私は戦えるし美空だって安心して暮らせる...私達にはハルが必要なんだよ」

 

 

「うわぁぁぁぁぁっっっ!」

 

 

ハルユキは兎美の優しさとぬくもりに触れ、今まで溜め込んでいたものが涙としてあふれ出てしまった。

 

 

しばらくハルユキは泣き、落ち着いた為かハルユキはすぐ兎美から離れる。

 

 

「ごめん...かっこ悪いところ見せて...」

 

「ううん気にしないで...それよりお腹空いたでしょ?朝ごはんにしよ」

 

 

先程の大胆な行動で、恥ずかしくり赤くなった顔を隠すために、そそくさと部屋を出た。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

リビングに行くと既に美空と紗羽がおり、朝食を食べていた。

 

 

「おはよう、ハル」

 

「おはよう、ハル君」

 

 

「お、おはよう」

 

 

紗羽の名前の呼び方と、何故一緒に朝食を食べているのかと突っ込みたかったが、無駄だと悟って普通に挨拶を返した。

 

 

「ハル、昨日あの後攫われたんでしょ?大丈夫なの?」

 

「あぁ、兎美が助けてくれたから何ともな...」

 

 

あれ?と不思議に思ったハルユキは、改めてテーブルに座ってる人物を見る。

 

 

すると、美空と紗羽と一緒にチユリが朝食を食べていた。

 

 

「チユ!?なんでここにいるんだよ!」

 

「気づくのが遅いのよ、ハルがあの後攫われたって聞いたから様子見に来たの」

 

「様子見に来たって、お前朝練は!」

 

「何言ってんの?今何時だと思ってんのよ」

 

 

チユに言われて時計を見ると、AM:6時と表示されていた。

 

 

「あぁ...なるほど...」

 

 

てっきりいつもと同じ時間に起きていると思っていた為、ハルユキは納得した。

 

 

「そうだ、ハルに見せたいものがあったのよ」

 

「見せたいものって何だよ」

 

「もしかして!!新しい発明品!⁉」

 

 

新しい発明品かもと、はしゃぎだす紗羽。

 

 

朝食を食べ終えたハルユキ達は、アジトでもある兎美達の部屋に向かった。

 

 

「%*#$%*#$」

 

 

部屋を入ったハルユキ達を出迎えたのは、空を飛ぶ1体の青いドラゴンだった。

 

 

「うおっ!!なんだこいつ!!」

 

 

独特な機械音を上げて近づくドラゴンに、ハルユキは驚く。

 

 

「その子はクローズドラゴンと言って、ハルの護身用に私が発明したのよ」

 

 

ドラゴンは、ハルユキの周りを旋回する。

 

 

「うおー!!かっこいい!!」

 

 

ドラゴンという見た目と、自分専用の物だと聞いてハルユキは喜んだ。

 

 

そんなはしゃぐハルユキを、チユリは呆れる。

 

 

「ほんと、ハルってそうゆうの好きよね」

 

「当たり前だろ!!こんなの出てきたら、興奮するだろ!!」

 

 

そんなハルユキを見て、兎美はふふふと笑う。

 

 

「はしゃぐのはまだ早いわよ」

 

 

そういうと、兎美はビルドドライバーをハルユキに投げ渡す。

 

 

「あんたがそのドラゴンとシンクロ出来れば、そのビルドドライバーが使えるようになるわ」

 

 

その言葉の意味が理解できず、ぽかーんとするハルユキだったが、理解できた美空達は驚愕の声を上げる。

 

 

『えぇ!!!?』

 

「ハルが変身できるって事⁉」

 

「まじかよっ!!!」

 

 

そこでようやく言葉の意味を理解して、ハルユキも驚愕の声を上げる。

 

 

「ただし、今のハルにビルドドライバーが使えるとは...」

 

「ねぇ!!早速変身してみてよ!!ハル!!」

 

 

兎美の言葉を遮るように、チユリがハルユキに変身するように促す。

 

 

「さっきも言ったけど、理論上は変身できるけど...今のハルじゃ」

 

 

すると今度は、紗羽が話を妨げる。

 

 

「ねぇ!!早く見せてよ!!ハル君!!」

 

 

2度に渡って話を遮られた事で、兎美はため息をついて説明を諦める。

 

 

「じゃあ説明するわね。まずは私が変身する時と同じように、腰にベルトを装着する」

 

 

兎美の説明通りに、ハルユキは腰にビルドドライバーを当てる。

 

 

すると、ハルユキの体に合わせてベルトが装着される。

 

 

『%*#$%*#$』

 

「クローズドラゴンの頭と尻尾を上に上げて、ガジェット形態へと変形させる」

 

 

旋回していたクローズドラゴンがハルユキの手のひらに収まると、言われた通りに変形させる。

 

 

「次にこのボトル、『ドラゴンフルボトル』を装填する」

 

 

兎美に投げ渡されたボトルをキャッチし、シャカシャカと数回振ってドラゴンに装填する。

 

 

『ウェイクアップ!!』

 

 

「ドラゴンをベルトに装填し、レバーを回したら変身完了よ」

 

 

ハルユキは言われた通りに、ドライバーにドラゴンを装填する。

 

 

『クローズドラゴン!!』

 

 

ハルユキがレバーを回すことでドライバーからスナップライドビルダーが展開された後、前後にドラゴンハーフボディが生成される。

 

 

『Are you Ready?』

 

 

「変身!」

 

 

気合の入った掛け声と共に、ハルユキを挟み込むように結合され、追加ボディアーマー・ドラゴライブレイザー・フレイムエヴォリューガーが上半身と頭部を覆うことで変身が完了する。

 

 

はずだった。

 

 

「痛い痛い痛い!!!肉が挟まった!!」

 

 

変身時にお腹のお肉が挟まり、ハルユキは悲惨な事になっていた。

 

 

「は、早くドラゴンを抜いて!!」

 

 

痛みに耐えながら、ハルユキは何とかドライバーからドラゴンを引き抜く。

 

 

ハルユキは変身が解除され、お腹を押さえながら床に倒れる。

 

 

「だ、大丈夫?ハル」

 

「だ...大丈夫に見えるのかこれが...」

 

 

痛そうにお腹を押さえるハルユキを、美空達がハルユキに駆け寄った。

 

 

「私、氷を持ってくるわ」

 

 

紗羽は挟んだ所を冷やす為に、台所に氷を取りに行った。

 

 

そんな中、兎美はハルユキの事を心配しつつも、別の事を考えていた。

 

 

それは、今のハルユキでは変身できないはずなのに、なぜ変身できたのかだ。

 

 

本来なら、ハルユキがレバーを回した瞬間、ハーフボディが生成されるのではなく、電撃が発生しハルユキを傷つける。

 

 

しかし実際は、肉を挟んだとはいえハルユキは変身できた。

 

 

戻ってきた紗羽は、赤くなっている患部に氷を当てる。

 

 

「うぅぅ...酷い目にあった...」

 

 

ハルユキを椅子に座らせた兎美達は、取り敢えず一安心した。

 

 

「あれ?」

 

 

そこでハルユキはようやく、机の上に並べられているボトルの中に、見覚え名のないオレンジ色のボトルが混ざっている事に気づいた。

 

 

「新しいボトル手に入ったのか?」

 

「そう、さっき現れたスマッシュの戦利品よ」

 

 

そう言って、兎美は新しいボトル『タカフルボトル』を持って、部屋の隅にある壁に埋め込まれたパネルの前に移動する。

 

 

兎美は左側にタカのボトルを、右側にタンクのボトルを入れるが何も起こらない。

 

 

「ねぇ、前から気になってたんだけど何それ?」

 

「ベストマッチだ」

 

 

チユリの疑問に、ハルユキが答えた。

 

 

「ボトルには相性があるんだ。たとえばラビットとタンク」

 

 

ハルユキは椅子から立ち上がると、机の上のラビットと兎美から受け取ったタンクをパネルにはめる。

 

 

「この2本をいれると」

 

 

ボトルをはめた途端、真ん中に光の線が走ってR/Tというマークが現れる。

 

 

「相性が良い組み合わせが見つかると、このように光るんだ。全組のベストマッチが見つかると、とんでもない事が起こるらしい。だけどこれがなかなか見つからないんだ」

 

「だからこれが必要なのよ」

 

 

兎美はビルドドライバーを、チユリに見せる。

 

 

「これは元々ビルドの変身機能しかなかったのを、私がベストマッチを探せる検査機にもなるよう改良したのよ」

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

「どうよ私の発!明!品!」

 

 

兎美はビルドドライバーを、チユリの顔に突きつけて自慢する。

 

 

「へー、まあ私なら一発で探せるけどね!」

 

 

チユリはそう言うと、ドライバーを奪ってボトルが並べてある机に向かう。

 

 

「ふん!言ってくれるわね!だったら探して貰おうかしら」

 

 

兎美は机の上にある、開発途中である銃のような物を手に取る。

 

 

「これはガトリングボトルを使って開発した最強の武器!....何とかガトリンガーよ」

 

 

兎美は最初は自信満々で言っていたが、名前がまだ決まっていない所為か自身無く言った。

 

 

「だけどベストマッチになるボトルが見つかってな...『タカ!ガトリング!ベストマッチ!』うそぉぉぉぉぉ!!」

 

 

『えぇぇぇぇぇ!!』

 

 

話の途中でチユリが言葉通り一発で見つけた事に、全員が驚きの声を上げる。

 

 

「どうよ!私の第!六!感!」

 

 

今度はチユリが、自慢するようにドライバーを突きつける。

 

 

「タカガトリンガー...ホークガトリンガー...あっホークガトリンガーが良いわねそうしよう」

 

 

兎美は現実が受け入れられないのか、現実逃避をしていた。

 

 

「なんでベストマッチが分かったんだよ!」

 

「しいて言うなら、生き物と機械!」

 

「お前凄いな...」

 

 

チユリは朝練の為、学校に向かい兎美は先程のホークガトリンガーの開発に、美空は限界だったのか眠ってしまった。

 

 

ハルユキはお腹を氷で冷やした後、兎美が作ったお弁当を持って学校へ向かう。

 

 

母親にお金をチャージして貰おうと思ったが、昨日は荒谷達の昼を買わなかったのと、今日も兎美のお弁当があるため貰わないで声だけ掛けてそのまま家を出た。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

『どうやら約束通り、外ではグローバルネットを切っていたようだな』

 

 

昼休み。

 

 

昨日と同じように、ラウンジでハルユキと直結した黒雪姫は、前髪の下に治癒促進パッチの覗く頭を揺らしながら思念でそう告げた。

 

 

怪我の方は、出血こそ派手だったが単なる裂傷に留まったらしい。

 

 

ありったけの語彙を連ねて用意してきたお礼と謝罪の言葉は、右手の一振りで留められてしまった。

 

 

『はあ...あの昨日入れたアプリとグローバルネットの切断は、何か関係しているんですか?』

 

『無論だ、では説明しよう。君がインストールしたブレインバーストの正体はただの対戦格闘ゲームだ。それも現実を舞台にした遭遇戦のな』

 

 

『じゃ、じゃあもしうっかりグローバルネットを接続していたら...』

 

『他のバーストリンカーに狩られていただろうな』

 

『思考の<加速>なんていう物凄いテクノロジーを使って、一体何をするのかと思ったらカクゲーっすか!もう30年も前にすたれきったジャンルじゃないですか!』

 

 

すると、黒雪姫は少し考えるように小首を傾げ、どこか皮肉そうな笑みを滲ませた。

 

 

『うーん、その言い方はちょっと違うかな。ハルユキ君、我々バーストリンカーは格闘ゲームで遊ぶために<加速>しているのではない。その逆、<加速>し続けるために戦っているのだ。そうせざるを得ないのだよ。それがこのプログラムの嫌らしいところさ』

 

『それは......どういう意味ですか?』

 

『ん......この先は、実地に説明したほうがいいかな。ちょっと<加速>してみたまえ』

 

『は、はあ...』

 

 

ハルユキは兎美の弁当への未練を断ち切り、言われるままに椅子の上で姿勢を正すと、加速コマンドを口の中で叫んだ。

 

 

バースト・リンク!

 

 

ばしっ、というあの音が体と意識が叩き、周囲の生徒達の動きと色を奪った。

 

 

「で...どうするんです?」

 

「視界の左側に、新しいアイコンが増えていないか?」

 

 

言われるまま視線を動かすと、確かにいくつか並んだアプリ起動アイコンの中に、燃え上がるBのマークが新規登録されていることに気づいた。

 

 

左手を持ち上げてそれをクリックする。

 

 

「それが、対戦格闘ゲームソフト<ブレイン・バースト>のメニュー画面だ。自分のステータスや戦績の閲覧、さらに周囲のバーストリンカーを検索して対戦を挑むことができる。マッチメイキングのボタンを押してみろ」

 

 

頷き、ハルユキはメニュー最下のボタンをクリックした。即座に新たなウインドウが開き、一瞬のサーチング表示に続いてネームリストが現れる。

 

 

と言っても、そこにある名前はたった2つだ。

 

 

一つは《シルバー・クロウ》と――そしてもうひとつ。

 

 

《ブラック・ロータス》。

 

 

順番からしてシルバー・クロウが自分の名前だとハルユキは考えていた。

 

 

「今、我々はグローバルネットからは切断され、学内ローカルネットにのみ接続しているゆえ、リストにはキミと私しかいない――はずだ」

 

「はい...ブラック・ロータスさん」

 

 

綺麗な名前だ、とか、あなたにぴったりです、とか言いたかったが勿論そんな台詞をするりと発音できる訳もなく、ハルユキのブタ鼻がふがふが動いただけだった。

 

 

「よし。それでは、私の名前をクリックし、対戦を申し込んでみろ」

 

「え...ええ!?」

 

「何も本当に戦おうって訳じゃない。タイムアップでドローにするだけだ」

 

 

軽く苦笑し、黒雪姫はさあ、とハルユキを促した。

 

 

同一フィードに数万人が接続する大規模戦闘ゲームを珍しくないこの時代に、いまどき1対1か、と思いながらリストの名前をそっとクリックし、現れたポップアップメニューから【DUEL】を選ぶ。

 

 

さらに浮かんだYES/NOダイアログから――【YES】。

 

 

瞬間、ふたたび世界の様相が変化した。

 

 

青く停止したラウンジから、全ての生徒達が一斉に消える。

 

 

柱やテーブルが、色を取り戻しながらまるで風化するように朽ちていき、ガラスにも厚く埃がこびりつく。

 

 

そして空が、さあっと深いオレンジ色に染まった。

 

 

どこからか乾いた風が吹いてきて、床のあちこちから伸びた名も知れぬ草を揺らした。

 

 

1800の数字が、ばしっと視界上部に刻まれた。

 

 

左右に青いバーが伸び、最後に――【FIGHT】の炎文字。

 

 

「ほう...<黄昏>ステージか。レアなのを引いたな」

 

 

きょろきょろと周囲を見回していたハルユキの傍らで、黒雪姫の声が響いた。

 

 

「ステージ属性は、よく燃える、すぐ壊れる、意外に暗いだ」

 

「は、はあ...」

 

 

頷きながらも、ハルユキは自分の体を確認した。

 

 

するといつの間にかピンクブタの体ではなく視界に入ったのは、脚も、胴も、両腕も、針金のように細く、磨かれたように銀色の体だった。

 

 

まるでロボット――しかし、ゲームやアニメのような戦闘的イメージはかけらもない。

 

 

慌てて顔に手をやってみると、鼻や口の感触はなく、ヘルメットのようになめらかな曲線だけが硬い指先に滑った。

 

 

咄嗟に近くにあった窓ガラスで確認する。

 

 

大きなガラスに映った姿は、まさしく全身これ金属のロボットだった。

 

 

体はとことん細く、小さく、流線型の頭ばかりが不格好に大きい。一言でいえば――とても、雑魚っぽい。

 

 

となれば黒雪姫はどのような姿になっているのかと思いながら視線を向けたが、目の前に立っていたのは、これまでと一切変わらない黒ドレスのアバターだった。

 

 

「それが君のデュエルアバターだな。<シルバー・クロウ>、いい名前じゃないか。色もいい。フォルムも好きだな、私は」

 

 

黒雪姫の手が伸ばされ、銀色のつるつる頭をなでなでした。

 

 

その確かな接触感覚は、ハルユキに改めてここが<接触禁止>というお子様な倫理保護コードなど存在しない、本物の仮想現実であることを意識させた。

 

 

「ど、どうも...なんか雑魚っぽいですけど。造り直しは、できない...ですよね。これ、デザインやネーミングは誰がしたんです?そもそもデュエルアバターって何なんですか?」

 

「その名の通り、対戦専用のアバターさ。デザインしたのはブレイン・バースト・プログラムであり、キミ自身でもある。――君は夕べ、とても長く、怖い夢を見ただろう?」

 

「...はい」

 

 

内容は思い出せないが、それが物凄い悪夢だったことだけは感覚的に覚えている。

 

 

思わず、ロボットの細っこい二の腕を硬い掌で擦る。

 

 

「プログラムが、君の深層イメージにアクセスした所為だ。ブレイン・バーストは、所持者の欲望や恐怖や強迫観念を切り刻み、濾し取って、デュエルアバターを造り上げるのだ」

 

「僕の...イメージ。恐怖と...欲望」

 

 

呟き、ハルユキは改めて自分の体を見下ろした。

 

 

「これが...この小さくてひ弱でツルツルの体を、僕が望んだってことですか?そりゃ確かに、もっと痩せてたらなーとは常々思ってますけど...それにしたって、もうちょっとこうヒーローっぽく...」

 

 

それこそ兎美が作ってくれた仮面ライダーのような、カッコいい姿を思い描いた。

 

 

「ははは、そう単純なものじゃないさ。プログラムが読み取るのは、理想像ではなく劣等感なのだ。君の場合、あのピンクのブタくんがそのままデュエルアバターにならなかっただけでも幸運と思うべきかもしれないぞ。もっとも、私はあれも好きだがね」

 

「や...やめてください。僕は嫌いです」

 

 

とっとと学内ネット用に新しい黒騎士アバターを組もう、と思いながらハルユキは尋ねた。

 

 

「でも、ということは、先輩のその学内アバターもブレイン・バーストが作ったものだったんですか?それが、先輩の劣等感の象徴?そんなに綺麗なのに...」

 

「いや...」

 

 

かすかに瞳を翳らせ、黒雪姫は顔を伏せた。

 

 

「これは、私自身がエディタで組んだものだ。私は...訳あっていま、本来のデュエルアバターを封印しているのだ。理由はいずれ話す。時がくればな」

 

 

「封印...?」

 

「残念ながら、私のデュエルアバターは醜いよ。醜悪の極みだ。それが封印の理由ではないがね...ま、私のことはいい」

 

 

肩をすくめ、黒雪姫はすぐにいつもの謎めいた表情に戻ってしまった。

 

 

再び白い手で、ハルユキのヘルメット頭をすりっと撫でる。

 

 

「さて、そろそろブレイン・バーストについて説明しよう。君は加速した時、画面をよく見ておいただろうな」

 

 

「たしか...変な数字が出ました。バースト...ポイント、だったかな。それが99から98に減ったんです」

 

「よし、よく覚えていたな。バーストポイント!それだ、それこそが我々をこの無慈悲な戦場へと駆り立てるのだ」

 

 

叫ぶようにそう言うと、黒雪姫は窓ガラスの方に数歩進み、くるりと振り向いた。

 

 

両手で持った傘がカツッ!と床に突き立てられ、ひび割れた敷石が小さな破片を飛ばした。

 

 

「バーストポイントは、すなわち、我々が<加速>できる回数だよ。一度加速するとポイントが1減少する。インストール直後の初期値は100ポイントだが、君は昨日ラウンジで一度加速したため、1ポイントを消費していた。そしてさっき、さらに1ポイントを使ったことになる」

 

「げっ...。そ、それどうやってチャージするんですか。まさかリアルマネー課金ですか」

 

「違う」

 

 

黒雪姫はばっさり否定した。

 

 

「バーストポイントを増やす方法はただ1つ、<対戦>で勝つことだ。勝てばポイントが、同レベル対戦ならば10増える。しかし負ければ10減る。」

 

 

すっ、と顔を窓の外の夕焼け空に向けて、黒雪姫は呟くように続けた。

 

 

「<加速>はとてつもなく強い力だ。喧嘩に勝つことは勿論、試験で満点を取ったり、ある種のギャンブルやスポーツで大勝することも容易い。このあいだの夏の甲子園で、本塁打の大会新記録を打ち立てた1年生選手はハイレベルのバーストリンカーだ」

 

「...な...」

 

 

唖然とするハルユキに、どこか悲しげな視線がちらりと投げられる。

 

 

「ゆえに、1度この禁断の蜜を味わった我々は、永遠に<加速>し続けるしかない。そのためのバーストポイントを得るべく、永遠に戦い続けるしかないんだよ」

 

「...ちょ...ちょっと待ってください」

 

 

ええー、あの天才強打者がバーストリンカーだって。

 

 

いやそうではなく――黒雪姫の話に、少し可笑しい所がなかったか。

 

 

ハルユキは懸命に考え、口を開いた。

 

 

「あ...あの、さっき対戦に勝てば10アップ負ければ10ダウンって言いましたよね。てことは...その他に、<加速>で消費されるポイントもあるんだから、全バーストリンカーの持つ総ポイントは減る一方じゃないですか。つまり、対戦が弱い人は当然ポイントが0になることも...。なったら、どうなるんです...?」

 

「さすが、理解が早いな。簡単なことだ。<ブレイン・バースト>を失う」

 

 

黒雪姫は、闇色の瞳に燃えるような色を浮かべてまっすぐにハルユキを見た。

 

 

「プログラムが自動的にアンインストールされ、2度と再インストールすることはできない。ニューロリンカーを機種変更しても無駄だ、固有脳波で識別されるからな。ポイントを全て奪われた者は、2度と<加速>することはできないのだ」

 

 

寒々とした声音でそう告げてから、もっとも、と言い添えた。

 

 

「君のように、新人として参戦してくれる者もいるから、パイは減少一方というわけでもないがな。それでも現在は、傾向としては微減だが」

 

 

しかしハルユキには、付け加えられた言葉は殆ど聞こえなかった。

 

 

「ブレイン・バーストを...失う」

 

 

たった2、3度<加速>の力を味わっただけなのに、想像しただけで背中がぞうっと凍った。

 

 

加速できなくなる、というだけではない。

 

 

ハルユキにとっては、もともと別世界の住人である黒雪姫とのたった一つの接点が失われるということでもあるのだ。

 

 

「さて...どうする、ハルユキ君」

 

「どうする...って...?」

 

「今ならまだ戻れるぞ。<加速>も<対戦>もない、普通の世界に。君をいじめる馬鹿者ももう現れない。それは生徒会役員として保証しよう」

 

「...ぼ...僕は...」

 

 

この時、ハルユキは兎美達との今までの戦いを思い出していた。

 

 

スマッシュに襲われ怪我をした時の事、スマッシュから守るために襲われた人を庇った事、無茶をして兎美と美空に説教された事。

 

 

なぜ、自分が危ない事をしているのか。

 

 

「...僕は、まだやらないといけない事がありますから」

 

「ほう?」

 

「あなたは、僕にブレイン・バーストくれた。それが、僕の初期100ポイントを奪うためじゃない、ってことくらいは分かります。そうなら、いくらでもうまい言い方はありますもんね。...なら、あなたには何か、僕にさせたい事があるはずです。スカッシュゲームのハイスコアをチェックしたり、加速について1からレクチャーしたりするほどの手間をかけるだけの目的が、そうでしょう?」

 

「...ふむ。的確な推論だ」

 

 

かすかに微笑む美しいアバターを、ハルユキは銀面越しにまっすぐ見つめた。

 

 

「僕はかっこ悪いし、ぶよぶよだし、泣き虫です。だけどあなたは他の誰でもない、僕に助けを求めた、だったら僕はあなたを助けたいと思っています!」

 

「それはいじめっ子から救ってくれた恩返しとしてか?」

 

 

「それもありますが、僕は誰かが困っているのなら手を差し伸べます。あなたが今困っているのなら、その為に僕の出来るあらゆることをしたい。だから僕は...ブレイン・バーストをアンインストールしません。戦います...バーストリンカーとして」

 

 

ハルユキはすでに決意していた、なぜ自分がスマッシュの戦いに参加しているのか...それは襲われている人やスマッシュにされた人を助けたいのは勿論、それ以上に兎美の助けになりたいと思ったから参加している。

 

 

誰かを助けたいという気持ちが、怖がりなハルユキを動かしているのだ。

 

 

言葉を吐き出し終えたハルユキは、羞恥のあまり細いアバターを縮め、俯いた。

 

 

「ふふっ、やはり君を選んだのは正解だったようだな。君の志はありがたく受け取ろう。確かに私は、現在少しばかり厄介な問題を抱えている。その解決に、君の手を借りたい」

 

 

ハルユキは小さく息をつきながら、こくりと首を動かした。

 

 

「ええ、僕に出来ることなら、なんでも。何をすればいいんですか?」

 

「まずは、<対戦>の仕方を学んでもらう。体力ゲージの下に表示された自分の名前をクリックしてみたまえ<インスト>が開き、君のデュエルアバターに設定された通常技及び必殺技の全身コマンドを確認できる」

 

「ひ...必殺技?」

 

 

ハルユキはオウム返しに訊いた。

 

 

「うん。プログラムは、デュエルアバターを創造するときに、その属性に従って規定量のポテンシャルを各パラメータに割り振る。攻撃力に秀でたタイプ、防御が堅いタイプ、そして必殺技で一発逆転を狙うピーキーなタイプもある。だが大原則として同じレベルのデュエルアバター同士ならばその総ポテンシャルはまったく等価だ。」

 

 

ハルユキはどきどきしながら銀の指を伸ばし、自分の名前を押した。

 

 

効果音とともに、半透明の窓が開く。

 

 

シンプルな人型のアニメーションで体の動きが表示され、その右に技名が表記されている。

 

 

まず1つ、腰溜めに右拳を構え、突き出すモーション。通常技<パンチ>。

 

 

そして2つ目。

 

 

右脚を引き、前に蹴り出すモーション、通常技<キック>。

 

 

そして必殺技――両腕をクロスさせ、大きく左右に開き、よいしょと頭を突き出す、その名も<ヘッドバット>。

 

 

必殺技の項目には、他にも表示されていたが技名が???になっており見ることが出来なかった。

 

 

「...あの」

 

 

ハルユキは呆然と呟いた。

 

 

「通常技の、パンチと、キック...それと必殺技が、ただの頭突きと文字化けしてるのしかないんですけど」

 

「ほう?」

 

 

それを聞いた黒雪姫は、右手の指先を(おとがい)に添え、首をかしげた。

 

 

「ふむ。恐らく文字化けしているのは、使用するのになにか条件が必要なのだろう。問題はその条件が何かだな」

 

「条件...ですか?」

 

「そうだ、それはこれから探していけばいい」

 

「わ、分かりました」

 

 

ハルユキは他のゲームとかでも隠された要素等が用意されていたりした為、深く考えていなかった。

 

 

「ん、そろそろ時間か」

 

 

見れば、1800秒もあったタイムカウントは、僅かに20秒を残すのみとなっていた。

 

 

「では、次のレクチャーは体験授業といくか」

 

「は...え...?どういう...?」

 

 

きょとんとするハルユキに、黒雪姫は不敵に笑みを浮かべてみせた。

 

 

「無論、君に体験して貰うのさ。<対戦>をな」

 

 

直後、ドローのリザルト画面を経て<対戦>が終了し、同時に<加速>も解けた。

 

 

現実のラウンジに復帰した途端、黒雪姫はハルユキに発言の機会を与えぬままぶちっと直結ケーブルを引き抜いてしまった。

 

 

「さて!食事にしよう有田君。冷めてしまうぞ」

 

 

にっこり笑って、テーブルから小さなスプーンを取り上げる。

 

 

やむなくハルユキも、自分の前に置かれたお弁当に手を伸ばした。

 

 

周囲のテーブルからは、昨日と同じ非難の視線がハルユキに集中照射されていて、どうせなら学食のスミッコに持っていってから食べたいと思ったが空腹には勝てなかった。

 

 

はぐはぐと三口ばかりかき込んだところで、同じテーブルに座る上級生が黒雪姫に話しかける声が聞こえ、ハルユキはむぐっと喉を詰まらせた。

 

 

「姫、そろそろ教えてくれないかしら?私達はもう好奇心で死んでしまいそうだわ。こちらの殿方は、あなたとどういう関係であると理解すればいいのかしら」

 

 

さっ、と視線だけ上げると、発言の主は昨日も見た、ふわふわした髪型の生徒会役員だった。

 

 

確か2年生の書記だ。

 

 

「ふむ」

 

 

黒雪姫は、グラタン皿の脇にスプーンを置くと、優雅な手つきでティーカップを待ち上げ、少し考える様子を見せた。

 

 

周囲の生徒達が一斉に静まり返った。

 

 

「端的に言えば、私が告白し、彼がフッたのだ」

 

 

悲鳴と驚愕の叫びが世界に満ちた。

 

 

箸を咥え、弁当を抱えて、ハルユキは走って逃げた。

 

 




はい!如何だったでしょうか?


本来なら、ハピネスチャージを投稿する予定でしたが、間に合わずアクセルワールドを投稿しました。


誠に申し訳ございません!!


ここ一か月、棚卸期間でリアルが忙しく平日にパソコンをいじることが出来ず、毎日がへとへとでそのまま寝ることが多かった為に遅くなってしまいました。


さて、言い訳はここまでにして、今回ようやく第5話を投稿することが出来ました。


前の作品、アクセル・ビルドとの違いはクローズドラゴンの鳴き方を変えた所でしょうか


機械音ぽく、記号のみで表してみたのですがどうだったでしょうか?


もっと、良い表現の仕方があれば教えて頂けると幸いです。


それでは次回、第6話もしくはLOVE TAIL 第8話でお会いしましょう!!
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