アクセル・ワールド ベストマッチな加速能力者   作:ナツ・ドラグニル

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兎美「いじめられっ子でバーストリンカーとなったハルユキは、黒雪姫によって加速世界について説明を受けた。そんな中、ハルユキは黒雪姫に《シアン・パイル》というバーストリンカーに襲われており、その正体が自身の幼馴染チユリであることを知った」


チユリ「その事実が信じられなかったハルユキは、店を飛び出しチユリの家へと向かうのだった」


兎美「で?実際どうなの?」


チユリ「え?ここで言っちゃだめなんじゃないの⁉」


兎美「まぁいいや、真相は第8話の中で確認しましょう」


第8話

——なんで。

 

 

どうして。

 

 

悄然と肩を落とし、夕暮れの歩道をとぼとぼ自宅に向かいながら、ハルユキはその2言を何度も脳内でリピートしていた。

 

 

なんであんな展開になってしまったんだ。

 

 

僕は、どうしてあんな口喧嘩みたいな応酬をした挙句、店を飛び出すように帰ったりしてしまったんだろう。

 

 

頼むから30分だけ時間を巻き戻してくれ!!とハルユキは痛切に願ったが、現実時間をほぼ停止できるブレイン・バーストにもそれだけは不可能だ。

 

 

もっとも、たとえADV(アドベンチャー)ゲームのごとくあの場面をロードできたとしても、今度はチユリ=《シアン・パイル》説に素直に同意できるかというとやはり難しい気がするのだった。

 

 

ハルユキにはどうしても、チユリがバーストリンカーでありしかもそれを長い間隠していたのだ、などということがあり得るとは思えない。

 

 

いや——思えないのではなく、信じたくない、のだろうか。

 

 

正直なところ、客観的な確証などというものはない。

 

 

過負荷で焦げ臭い煙を上げる思考を持て余しながら、ハルユキは重い足取りで自宅マンションのエントランスをくぐった。

 

 

ちらり、と視界の端の時刻表示を眺める。

 

 

午後五時半。

 

 

エレベータの箱の中で、ハルユキは警告音が鳴るまでたっぷり懊悩した。

 

 

そして、チユリの家がある21階のボタンを押した。

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「あらぁーハルちゃん、久しぶりじゃないの!!」

 

 

ドアを開けた途端、満開の笑顔でそう叫んだチユリの母親に、ハルユキはドウモゴブサタシテマス、ともぐもぐ挨拶した。

 

 

「まあー随分大きくなって、幾つなるんだっけ、って13よねチユと同じなんだから。中学に上がってからぜんぜん遊びにきてくれないんだから、おばさん寂しかったわぁー、今日はゆっくりしていけるんでしょ?晩御飯食べていきなさいよ、うちの子は最近ちょびーっとしか食べないもんだから作り甲斐がなくって。そうだ、今日はちょうどハルちゃんの好きなカレーにしようと思ってたのよ、たくさん作るからいっぱいお代わりしてね」

 

「いや...あの...」

 

 

無限に続きそうなチユリ母のおしゃべりを止めようとするが、そこでチユリ母が何かを思い出したかのように話を進める。

 

 

「そうだった、今日はハルちゃんちで集まるんでしょ?ここ最近ハルちゃんの家で遊べるってチユもご機嫌なのよ!!」

 

「え...」

 

 

ハルユキは驚いた、なぜなら今日は家にくるとは言ってないからだ。

 

 

「迎えに来てくれて申し訳ないのだけど、ついさっき入れ違いでもう出て行っちゃったのよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

 

先程から、チユリ母に圧倒されてハルユキは苦笑いしかできなかった。

 

 

「最近、怪物騒ぎで物騒でしょ?ハルちゃんも気を付けてね」

 

 

チユリ母の言葉に、自分を心配してくれる人が要るんだと分かり嬉しくなるのと、そんな危険な事にチユリを巻き込んでしまった事の申し訳なさで板挟みになり、ハルユキは言葉を失った。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

場所は変わり、ハルユキは自分の部屋の玄関の前で動けないでいた。

 

 

なぜチユリが家に来ているのかと考えていた時、ハルユキは思い出してしまったのだ。

 

 

チユリがシアン・パイルかもしれないと考えていた為に忘れていた。

 

 

校門前で黒雪姫が行った事を。

 

 

それと同時に、ハルユキは理解してしまう。

 

 

間違いなく、3人は扉の前で自分の事を待ち構えていると。

 

 

ハルユキは頭をフル回転させ、言い訳を考えていた。

 

 

下手に刺激すると、何が起こるか分からないからだ。

 

 

考えたハルユキに、1つのアイデアが思い浮かんだ。

 

 

——そうだ、別にやましい事をしてる訳じゃないんだから。普通に帰ればいいんだ。

 

 

ハルユキはそう考え、普通にドアを開けてしまった。

 

 

「ただいま」

 

 

だが、すぐにこの考えが間違っていた事を理解する事になる。

 

 

なぜなら。

 

 

「あら?随分遅い帰りなのね?デートは楽しかったのかしら?」

 

 

目の前に、ハルユキを凄く怖い眼で睨んでいる兎美達がいたからだ。

 

 

兎美の問いに、ハルユキは次の言葉しか出てこなかった。

 

 

「ちゃ...ちゃうんです...」

 

 

 

 

その後、兎美達に連行されハルユキはリビングで正座させられ尋問されていた。

 

 

気分はまるで、罪人そのものである。

 

 

ハルユキは今日あった事と、これまでの事を全て話した。

 

 

「なによそれ、ようするに自分がやった事にハルを巻き込んだだけじゃない」

 

「それにそんな不十分な証拠で、チユリや私達を疑うなんて」

 

 

ハルユキの話を聞き、兎美と美空が黒雪姫に対し、文句を言う。

 

 

「それで?ハル君はどうするの?」

 

「取り敢えず、先輩の勘違いを解こうと思っている」

 

 

紗羽の質問に、ハルユキがそう答えた。

 

 

「じゃあアプリがあるかどうか、確認する為に直結するのね?」

 

「ああ、兎美達がそんな事しないって分かりきっているけど念の為にな」

 

 

ハルユキ達は直結する為にXSBケーブルを用意し、3人と順番で直結した。

 

 

ハルユキは最初に兎美の、その次に美空のファイル内を覗いたがアプリは見つからなかった。

 

 

しかし、兎美と美空にも凄く厳重にロックがかけられたファイルを見つけたのだが、兎美達は頑なに教えてくれなかった。

 

 

最後にチユリのファイル内を覗く。

 

 

『やっぱりどこにもアプリは入ってないな』

 

『当たり前でしょ』

 

 

実際、アプリケーションフォルダにあの燃え上がるBの文字をかたどったアイコンが存在しないことは一目で判った。

 

 

念のため、インストールされているプログラムを一つずつ確認していくが、どれも市販のメーラーやメディアプレイヤー、簡単なゲームなどで出自のあやしいものは見当たらない。

 

 

やっぱりチユリは《シアン・パイル》なんかじゃなかったんだ。

 

 

そう自分に言い聞かせながら、幾つめかのアプリのプロパティを開いたとき、ハルユキはふと違和感を覚えた。

 

 

プログラムが問題なのではない。

 

 

そうではなく——先程から、操作に対する反応が微妙に重い。

 

 

廉価なホームサーバーを介した無線通信ならまだしも、今はチユリのニューロリンカーと高品位ケーブルで直結しているのだ。

 

 

レスポンスに体感できるラグなど発生する理由がない。

 

 

もしラグるとするならば、その原因は、チユリのリンカーの通信帯域が他の回線に大部分占有されているから、しか有り得ないのだが。

 

 

いっそう訝しく思いながら、ハルユキはネットワークステータス窓も開いてみた。

 

 

チユリのニューロリンカーは現在、グローバルネットと、有田家のホームネット、そしてハルユキとの直結回線の三経路に接続している。

 

 

そのうち、まさにこの瞬間パケットのやりとりがあるのはハルユキとの間だけであるはずだ。

 

 

しかし、経路を確認したハルユキは危うく声を上げかけた。

 

 

大量のパケットが、グローバルネットに送信されている。

 

 

ローカルの送り手は、フォルダの凄まじく深い階層にインストールされた正体不明のプログラム。

 

 

グローバル側の受け手は不明。

 

 

ということは、こいつは——。

 

 

バックドアだ!!

 

 

チユリのニューロリンカーは何者かにハックされ、ひそかに外部から接続されているのだ。

 

 

そしてその何者かは、今まさにこの瞬間、チユリの視聴覚情報を盗んでいる。

 

 

この野郎!!

 

 

思わず叫びそうになりながら、ハルユキは問題のアプリを消去してやろうと指先を動かしかけた。

 

 

しかし、ドラッグしたアイコンをゴミ箱に叩き込む寸前で思いとどまった。

 

 

今接続している何者かこそが《シアン・パイル》だ。

 

 

こいつは、ブレイン・バーストの改変に成功したわけでなく、チユリのニューロリンカーを踏み台にすることでマッチングリストへの自在な消滅を可能にしているに違いない。

 

 

つまり、パケットの行き先を特定すれば《シアン・パイル》の正体も割れるという事になる。

 

 

ハルユキはチユリのプログラムをいじっている振りをして、兎美にメッセージを送る。

 

 

「?」

 

 

メッセージを送られた兎美は、なぜ近くにいるのにメッセージを送ってきたのか分からず、首をかしげる。

 

 

「⁉」

 

 

しかし、メッセージの内容を見てハルユキとチユリを交互に見る。

 

 

『チユリにバックドアが仕込まれている』

 

 

そのメッセージを見た兎美は早速行動に移してくれた。

 

 

「ちょっとチユリ、手伝って欲しい事があるんだけど」

 

「へ?別に私はいいけど...」

 

 

そう言って、ケーブルを抜いたチユリは兎美の後を追って別の部屋に向かった。

 

 

「さっきから難しい顔してるけど、どうしたのよ」

 

 

ハルユキの様子がおかしい事に気づいたのか、美空が質問する。

 

 

「チユリにバックドアが仕掛けられている」

 

「バックドア?」

 

「バックドア!!?」

 

 

バックドアの意味が解らず首をかしげる美空と、バックドアという言葉に驚愕する紗羽。

 

 

「なにそれ?」

 

「簡単に言うと、誰かがチユのニューロリンカーにアプリを仕込んで、チユのニューロリンカー越しに俺達を覗いてたんだよ」

 

「えぇ!!」

 

 

ハルユキの説明で、ようやく事の重大さに気づいた美空。

 

 

「一体誰がそんな事を...」

 

「それを今、兎美に調べてもらっている」

 

「だったら、私も協力してあげる」

 

 

そう言って、紗羽も手伝いをする為、兎美達の後を追った。

 




はい!如何だったでしょうか?


ようやく8話まで投稿出来ました。


さて、前回の違う場所ですが、ハルユキがチユリママと会う事、バックドアを見つけた時にチユリに告げなかった事、紗羽が居た事で調べるのが兎美だけじゃない事ですかね。


今回、思い切って高いデスクトップパソコンを買ったので、思いの他小説を書くのが捗っています。


今までメモ帳で書いていましたが、ワードで作っていますが滅茶苦茶確認もしやすいし、誤字ってたり、文章が可笑しかったら警告してくれるので凄く作りやすいですね。


逆に、今までよくメモ帳で作ってたなと思います。


それでは次回、第9話もしくはLOVE TAIL第9話でお会いしましょう!!
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