歩いて着いた建物はとても大きかった。
ここは雄英高校。
今日はここで一般入試がある。
試験は実技と筆記があり、
どちらかにだけ偏っても合格は出来ない。
その上、日本屈指の教育機関なだけあり
狭き門と言える。
私は最も倍率の高い、ヒーロー科を受験する。
ここならば«勇者»への近道だからだ。
そのために、私は今日まで勉強も鍛錬も続けてきた。
中学までずっと成績は学年1位。
技の幅を広げるために柔道や空手、ボクシングなど
続けて来て、全国大会やインターハイ、
世界大会にも出て優勝してきた。
もちろん、どの大会も個性禁止の旧式のものだ。
こう言う大会は個性が発現したことにより
軒並み衰退はしていたが、
ゼロになるってことも無いので
競技人口も意外といたりする。
敷地に入ると私は注目を浴びた。
「めっちゃ、可愛くね?」
「ばか、お前。あの人は光撃の女神だぞ」
「スタイルいい」
「テレビで見た事ある、スゴく強い人だ」
それもそのはず、数多くの格闘技を優勝すれば、
テレビが食い付く。そのせいで私は顔が売れているのだ。
その上、«光撃の女神»なんて大層な二つ名が付いた。
なにせ、試合開始してから1秒も掛からず
勝負をつけているからだ。
もちろん、個性は使わずに。
そんなことは置いといて、
歩いてる内に試験会場に着いた。
筆記に関しては問題なかった。
難易度は高いなとは思ったが
名門の入試なら当たり前とも思った。
次に実技試験。
説明会場に場所を移した。
そこにはラジオMCもこなす、
プレゼント・マイクが説明をしていた。
高すぎるテンションで受験生との温度差が大きい。
人選ミスではないか、と一瞬思ったが文句は言えない。
説明後、更衣室で着替えてから試験会場に移動する。
そこは巨大なビルの並んだ、
都会の一角を大きく切り取ったような場所だった。
なんか、無性に緊張してきた。
しかし、緊張を押し殺して、周囲に意識を向ける。
プレゼント・マイクの間の抜けた声が響き渡る。
『ハイ、スタート__』
その声を聴いた瞬間、私は個性を発動する。
全身を、光が包む。
光が消えた瞬間、さっきまで着ていたジャージが
ピンク色の勇者装束に変わり、髪色髪型も変わる。
そして、地面を蹴りあげ、飛び上がる。
『どうした? 実戦にカウントなんざねえんだよ! 走れ走れ! 賽は投げられてんぞ!』
スタートしてなかったのか、と、笑いを堪えながら
ビルの壁に、着地し壁を走る。
ある程度走ったら、壁を足場に近くのビルの屋上に
飛び乗る。
辺りを見渡すと100メートル位先に
ロボットがひしめき合っている場所があった。
「1ポイントが4体、2ポイントが3体。
手始めは10ポイント貰うよ」
私は屋上から飛び上がり、仮想ヴィラン目掛けて、
落ちてゆく。
仮想ヴィランは私に気づいたが、もう遅い。
「勇者パーンチ!」
仮想ヴィラン1体に拳が直撃し、大破する。
周りに居た仮想ヴィランも衝撃波で大破した。
「呆気ないなー。さて次は……」
私はスマホを取り出し、画面を見た。
「この近くにロボットと逃げてる受験生。
行くしかないよね!」
私は壁に着地して、壁走をしながらその場所に向う。
このスマホに表示されてるアプリは«NARUKO»
昨日突然スマホにインストールされていた。
近くにいる人物の位置・名前が表示されている。
これを見た瞬間は恐怖だったが、
毎日見る夢の中に時々出てたものだったので、
すぐに受け入れることが出来た。
夢というのは、個性が発現してから毎日見てる
勇者たちの記憶である。
夢の中には仲間の死など悪夢の様なものも多くあった。
でも、亡くなった勇者側から見た記憶は
死んだ悔しさや悲しさよりも、
他の仲間が生きていることへの安堵や満足感などがあり、
目が覚めた時には枕が涙でびしょ濡れに
なってる事も良くあった。
悲しさより悔しさより、喜びが感じられて
より«勇者»を目指す気持ちが高まったほどだ。
私は逃げている受験生の元にたどり着いた。
受験生の後ろを見ると10体以上引き連れていた。
私は地面を蹴り飛び上がり、そのままの勢いで
回し蹴りを放つ
「勇者キーック!!!」
1体直撃した蹴りが周りのロボットを
巻き込んで大破する。
それでも半分ほどしか倒せていない。
私は追いかけられていた受験生に声をかける。
「今すぐここから離れて!」
「お、おう……」
私は地面を蹴って、大きく跳躍する。
最高到達点になった瞬間身体の向きを変えて、
頭から落ちていく。
そして、拳を突き出す。
「勇者パーンチ!!!!!」
残ったロボットが全て破壊された。
次の瞬間大きな音と振動が響く。
目線を上げるとそこには巨大な仮想ヴィランが
そびえだっていた。
説明にあった0ポイント仮想敵である。
私はふと、周りを見た。
周りには先程の受験生以外に複数名の受験生がいた。
その中にはポイント付きの仮想ヴィランとの戦闘で
負傷した受験生や巨大仮想ヴィランの登場に
腰を抜かしている受験生もいた。
「おいおい、なんだよ……あれ」
「あんなの、無理だよ」
私は声を上げる。
「皆、早く逃げて!私が相手するから。
動ける人はケガしてる人を連れてって!」
(これ以上は被害が出そう……
あまり、個性をひけらかしたくないし。
でも、出し惜しみしたらそれこそ……)
意を決して能力を使う。
「樹海化!!!」
その言葉と同時にカラフルな木の根や蔦が出現した。
その木の根や蔦は私と受験生との間に壁を作り、
私と巨大な仮想ヴィランを囲むように円形に展開した。
私はビルとビルの間を足場に飛び上がり、屋上に立つ。
「行くよ、容赦はしない」
屋上を蹴り、巨大な仮想ヴィランに詰める。
そして、通常攻撃での最大威力の拳を突き出す。
「全力、勇者パァーンチ!!!!!」
巨大な仮想ヴィランの胴体は大きく凹み、
次の瞬間、バラバラになった。
そして、
『終了~!!』
丁度、試験が終了したようだった。
しかし、私には一つ懸念があった。
「個性の偽装バレるかな?」
私は個性を『超パワー』で登録していた。
役所に出すような書類も、
入試するにあたって出した書類にも
『超パワー』で出していた。
しかし、今回«樹海化»を使ったことにより、
明らかに『超パワー』では無いことが明らかになった。
突然私の頭にぷにっとしたものが乗った。
「……勝手に出ちゃダメだよぉ、牛鬼!
一応、牛鬼達も隠してるんだから。
これ見られたらさすがにまずいよ!
お願いだから、早く戻って!」
牛鬼は渋々、戻って行った。
「あっ、忘れるとこだった。樹海化解除!」
さっき出した樹海が消えた。
「帰ろ。今日はちょっと疲れた。」
私はそそくさと試験場を出て、更衣室まで行き
さっさと着替えて、荷物をまとめて帰った。
行きと同じく帰りも同じルートで帰った。
施設に着くと、所長と子供たちが出迎えた。
「おかえり、美友ちゃん。入試はどうだった?」
「ただいま、先生。それなりに自信あるよ!」
「美友姉、おかえり」
「みゆねぇ!」
「うん!皆、ただいま!」
(合格したら……皆とは離れないと行けないのか)
この施設と雄英高校とはかなりの距離があり、
入試に関しては問題はないが通学となると話は別になる。
つまりはここを出て、一人暮らしとなる。
幸い、この施設は公営なこともあり、援助が受けられる。
そして、家賃補助も付いて物件を借りることが出来る。
そして、入試から1週間後。
「美友ちゃん、雄英から来てたよ」
「ありがとう、先生!」
私は所長から封筒を受け取る。
すると、周りに子供たちが寄って来る。
「けっか、どうだった?」
「まだ開けてないよ」
すると、頭にぷにっとした感覚がした。
「ちょっと、牛鬼!勝手に出ちゃダメだよぉ!」
「牛鬼も気になってるんじゃないの?」
「ねえねえ、ぎゅうちゃんもきになる?」
牛鬼が頷いた。
施設の皆が牛鬼のことを知っているのは
ここだけの話である。
本当は隠すべきなんだけど、勝手に出てくるから
しょうがないって事で、施設の皆のアイドルみたい
になってる。
封筒を開けると中には数枚の資料と
掌大の機械が入っていた。
この機械は映像照射装置である。
「無駄に最先端だね」
私がその機械をテーブルに置くと、
映像が空中に浮かんだ。
『私が投影された!!』
筋骨隆々な逞しい身体、力強く跳ね上がった二つの前髪、
威風堂々とした佇まい、アメコミヒーローのような画風。
もちろん誰もが知っているNo.1ヒーロー。
「「「「オ、オールマイトだぁ!!?」」」」
「ちょっと、皆静かにしなさい!」
予想外の出来事に騒ぐ子供たちを慌てて所長が
落ち着かせる。聞き逃しが無いように皆が静まり、
耳を澄ます。
『初めまして結城美友くん!私はオールマイトだ!
何故、私が投影されたのかって?
ハハハ!それは私がこの春から雄英に教師として勤めるからさ!
さあ早速、君の合否を発表しよう!』
画面が暗くなり、オールマイトの立つステージのみが
ライトアップされ、ドラムロールが鳴り響く。
流石はオールマイト、
エンターテイナーとしても一流のようだ。
皆、固唾を呑んでオールマイトを見つめている。
ドラムロールが止まった瞬間オールマイトが口を開く。
『おめでとう!合格だ!筆記試験は九割五分以上と言う高得点、
実技は53ポイント!紛うことなき合格だ!』
(自信あったし良かった〜)
『先の実技入試!受験生に与えられるポイントは、
説明にあった仮想敵ポイントだけにあらず!
実は審査制の救助活動ポイントも存在していた!
結城美友くん!敵ヴィランポイント53点、
救助レスキューポイント48点、合計101点!
文句なしの首席合格だよ。
結城少女!改めておめでとう!雄英で待っているぞ!』
メッセージはそこで終わり、映像は切れた。
今度は皆、放心したように映像が消えた空中を見続けている。
「……良かったね、美友ちゃん!」
「皆のお陰だよ!支えてくれありがとう!」
「おめでとう、みゆねぇ!」
時は少々遡る。
入学試験後の事である。
雄英高校ヒーロー科の会議室では、
雄英の校長や教師陣が出席する重要会議が行われていた。
「実技総合成績が出ました」
前方の大画面に受験生の名前と成績が上位からズラリと並ぶ。それを見た教師陣から感嘆の声が複数上がった。目立つのは爆豪勝己、緑谷出久そして、結城美友である。
「救助ポイント0点で2位とはなあ!」
「後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」
「対照的に敵ポイント0点で8位」
「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど…
ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね
それも今年は2回も見れるなんて」
「思わず、YEAH!って言っちゃったからなー」
ワイワイと騒ぎながら講評を行う教師陣。そして話題は次の注目者に移った。
「そして……圧倒的な1位、結城美友。
敵ポイント53点、救助ポイント48点とは
バランスの良い上に最高得点だな」
「試験前半は手近の高所に移動して最寄りの
仮想敵を纏めて倒している。中盤はピンチの者や
救護者を守りながらの仮想敵の撃破している。
位置を的確に察知しているのもあって、
効率的な動きになっている。」
美友の試験の様子がいくつかの画面に映し出される。教師陣は時に頷きながら、時に感心しながらその姿を見る。
「ですが、注目すべきはこの101ポイントという
高得点を前半と中盤だけでほぼ稼いでいたという点です。
後半は0ポイント仮想敵ヴィランが出てきた際、
迎撃・撃破しています。」
「YEAH!何度見ても良いパンチだ!
もしかしたら、レスキューポイントだけのやつ
以上じゃねぇか?」
「その上、0ポイント仮想敵ヴィランを迎撃する際、
他の受験生に避難指示を出し、
防護壁の様なものを展開して他の受験生を保護した上で
撃破しています。」
「被害を最小限に抑えることはヒーローにとって
必要不可欠なモノだ。それはこれからも大事に
してもらいたいモンだぜ。クケケ」
「……しかし、彼女の個性は『超パワー』じゃなかった
かい?明らかに『超パワー』じゃ有り得ない
能力が備わってるよ。
まさか、個性の複数持ちってことかい?」
「それに関してですが……こちらのVTRをご覧下さい。
試験終了後の彼女を捉えた映像です。
頭の上を注目して下さい。」
「人形?」
「いえ、動いているので恐らくは生物だと思われますが
明らかにおかしい点がいくつかありまして……」
「見た目としてはデフォルメされた牛って感じだね。
あれは……羽根、なのかな?
これじゃ、妖怪の牛鬼みたいだね。」
「個性による生成物の可能性が高いですが
今はなんとも……」
雄英の教師陣は大きな謎を抱える事となった。
1人の教師が場の空気を変えるように言った。
「体育祭の選手宣誓は彼女で決定だね」
その場にいた教師陣は揃って頷いた。
設定に関しては後ほど出したいと思っていますが、
なんかチートっぽい感じです。
タグ見れば分かるかもしれませんが、
もしかしたらレベル5の能力者とか出るかもしれないです。
まあ、そこまで書けるかは分からないですけど。