ありったけの夢をかき集めて、彼女たちは探し物を探しに行くのです。
第一話 冒険の夜明け
種、道具、そして肥えた土地。
かつてこの世の全てが手に入ると伝説で語られた地域。
その名は、四国。
神樹が存在すると言われるその地域では農業に関する全ての作物の種と、画期的な道具の数々と豊かな土地があるという……。
『神樹様の恵みの力だな。そのおかげで我が四国はこの御時世でも飢えることもなく皆、平穏に暮らしている』
……その四国から遠く離れた土地、長野の諏訪では二人の少女が通信に耳を傾けていた。
「……なるほどなるほど。私もそこへ行って。神樹様のお恵みを頂戴したいものですねっ!」
『神樹様の恵みが欲しい……だって?』
「ええ!」
『良いんじゃないか? 欲しいならあげよう』
「やった〜♪」
『ま、無事にここまで辿り着けたらの話だがな』
「むむむ、確かに一筋縄ではいかない事くらいわかってますよぉ」
通信相手は軽く笑っていた。
『探しに来てみろ。……この世の全てがここに置いてあるっ‼︎』
ーーその言葉は、後にとある少女を旅へと誘う言葉となったーー
「う、うたのん。ホントに行く気なの?」
「とーぜんよ、みーちゃん」
通信を終えた少女にもう一人は話しかけた。
「だってそこには、ここ諏訪には無いような野菜や果実の種があるって言うじゃない? それに、田畑を耕す鍬とか道具も豊富。コンバインだってあるのよ‼︎ 是非持ち帰って私の農業ライフを向上させたいものね」
「……あー、うん……」
みーちゃん、と呼ばれた少女は愛想笑いする。
「良質な肥料だっていっぱいあるんだって! まさに四国は私の夢が詰まった聖地。''大秘宝''が存在する場所なのよ‼︎」
「……でも、うたのん。長野から四国までは凄い距離だし、過酷だよ?」
「ノープロブレム! 大秘宝を求める私には、それを守護する乃木さんたち『四勇』や、私と同じく大秘宝を狙う『七武勇』も、日本中を管轄している『大社』も、未曾有の敵『バーテックス』も! 恐るるに足らないわ‼︎」
「足りるよぉ⁉︎ 恐ろしさ全開なんだけどぉ⁉︎」
彼女たちがいる長野の諏訪は、イーストジャパンと呼ばれている。そこから陸路を辿り西に行くとウェストジャパンがあり、その中に四国へと繋がる玄関口、
しかし、もう一人が言うように、四国を守護する四人の勇者が存在し、さらにその四国への侵入を試みるこれまた別の七人の勇者が存在し、さらにウェストジャパンの中でも
……しかし、彼女、『白鳥歌野』は臆さない。彼女の偉大なる目的のために……。親友である『藤森水都』の制止も振り切って。
彼女にとって、この世はまさに、大農業時代‼︎
「私は必ず四国へ辿り着く。……そして、この世の全てを手に入れてみせるッ‼︎」
水都はそれを眩しそうに眺めていた……。
「うう〜。わかったよぉ。どうせ止めても、うたのんは聞かないし、私もついて行くよ」
「ホントにぃ⁉︎ ありがとー、みーちゃん! 一人より二人の方が絶対楽しい旅になるし、心強いわっ!」
歌野は満面の笑みで水都の手を取る。
「……よぉーし! 行くぞぉ‼︎」
歌野は西の空を見上げ拳を掲げた。
「農業王に、私はなる‼︎」
ーーそして、二人は準備を整えて諏訪から出発した。
翌日、二人は長野と山梨の県境に来ていた。
「……ホントに徒歩で行こうとしてたの?」
「え、ええ。だって車持って無いから」
水都はため息をついた。
「ここは、乗り物を使って行った方が早いと思うよ」
「でも、こんなご時世、電車も新幹線も利用する人なんていないんじゃあ……」
歌野の言葉に水都は振り返った。
「そう。バーテックスのせいで交通機関は軒並みやられちゃった。その上、
「そうでしょそうでしょ?」
「……でもね。可能性が残ってる場所があるんだよ」
「えっ?」
水都はスマホを見せる。
「私たちは一旦四国とは真逆の方向へ向かいます。……目指す場所は千葉」
「千葉?」
日本地図でいうと東端に位置する地域のことだ。
「千葉に便利な乗り物があるの?」
「途中まで飛行機で行こうかなって」
「……みーちゃん、それリアリー? 空で移動してたらバーテックスの格好の餌食じゃない」
バーテックスには飛行能力がある。もし、フライトの途中で襲われたら逃げ場など無い。
「確かに、襲われたら危険だね。……でも例外があるの」
「例外?」
「そこにある飛行機は一機だけね、神樹様の力によって作られた飛行機が存在するの。その飛行機は特殊な結界に守られていてバーテックスが攻撃してこれないようになってる」
「そうなんだっ」
「主な所有権は大社の人たちで、彼らの移動手段となっているけれど、その飛行機で日本各地をまわっているの」
「やったわっ! それなら予定より早くウェストジャパンに行けるわねっ!」
歌野はぬか喜びしていたが、ふと疑問に思った。
「……ん? 大社の人たちのものなのよね?」
「うんそうだよ」
「私たち乗れるの? ロクなお金は持ってないけど……」
水都は少し口角を上げた。
「そこは、ほら……。忍び込んで……」
「……みーちゃんって時々過激な事言うよね」
「全部うたのんのためなんだよ〜?」
水都がじと〜と細目で見てくる。
「わかってるわかってる。私は農業王になる女だからね。……手段は選んでられないわ」
歌野もニヤニヤする。
「そうだね。私も、『未来の農業王の親友』になるんだから、これくらいで臆してはいられないっ」
なんだかんだ言って水都も結構ノリノリだったりする。
……いや、歌野が楽しそうにしているのが、水都にとって何より幸せなのだろう。
「崇高なる目的は、手段を正当化させるものよ。……ふふふっ。フーフッフッフッフ!」
「うたのんが楽しそうで何よりだよ」
……こうして彼女たちは今いる山梨から千葉へ行き、飛行機に乗るため空港を目指すのであった。
ーーが、彼女たちはまだ知らない。良くも悪くも、これから想像を絶するような出来事が濁流のように押し寄せてくることをーー
こんな感じでゆっくり〜と進んでいきます。
次回 『勇者の野菜』