白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。北海道へ上陸。農業しがいのある広大な大地の中で歌野は何を想う。


前回のあらすじ

四勇が一堂に介した。

歌野「みーちゃんたいへん! 前回私たちの出番ゼロだった!」
水都「乃木さんたちのお話だったからね」
歌野「私、主人公なのに……」
水都「いくら主人公でも毎話出番があるわけじゃないんだよ」
歌野「そんなぁ〜」
水都「そのかわり、また今回からうたのんメインだから」
???「ふふふ。それはどうかな?」


第十話 ビバッ 北海道!

 彼女たちの落ち度はなんだったのだろう?

 行き先はウェストジャパンである、と説明しなかったことだろうか。

 しかし、大社関係の人へ、四国へ行くためにウェストジャパンまで連れて行ってくれ、など言えるはずもない。

 水都はもちろんのこと、歌野も大社は全員、四国へ向かう人を阻んでいる、と認識していたため、本当のことを言えなかったのだ。

 

 ……その結果、二人は行き先の情報を知らないまま乗ってしまった……。

 

 フライトのスケジュールはウェストジャパンの西端にある中国地方(マリンフォード)の岡山から、千葉→北海道→千葉→岡山→沖縄→岡山……と月毎に移動していることなど知る由もなく……。

 水都も諏訪の大社支部と関わりがあったが、それに関しては完全にノーマークだった。

 

「うっ……、うっ……。ごめん、うたのん……」

 

 目から涙をポロポロと流しながら謝り続ける水都。

 

「ノンノン、気にしてないわ。私もその辺り、抜けてたから」

「で、でもぉ、私がもっとしっかりしていたら……」

「だからいいって。……それに私はある意味嬉しいのよ?」

「えっ?」

 

 歌野は窓から見えてきたこの飛行機の目的地を見て微笑む。

 

「……だってここ、北海道は農業が盛んな土地なんだから! 一番の目的地を四国に定めていただけで、ここもいつかは来たいと思ってたのよ!」

「……ありがと、うたのん」

 

 涙を拭いながら水都はお礼を告げた。

 

 

 

 

 ーーそして、二人は北海道へ上陸した。

 

「えっ、コレ……」

「すごい……」

 

 目の前に広がる光景に二人は感嘆した。

 なぜならここ、北海道の旭川市はバーテックスが存在しているこの時代ではありえないほどの『街』そのものだったからだ。

 

「これが北海道……?」

「ここ、バーテックスがいる時代とは思えないね……」

「ーーこれでも結構やられた方なんですよ。襲撃前は千歳市、苫小牧市辺りに空港があったんですけどね。そこはもう壊滅状態でして……」

 

 パイロットの人も降りてきて二人に説明する。

 広大な大地の北海道も、人が住んでいる場所は旭川市だけである。

 ここだけは何故かバーテックスの侵攻がほとんどなく、大社支部と防人の力で平穏を保っていた。

 北海道のおおよそ中央に位置する旭川市は、さながら陸の孤島と呼べるだろう。

 

「それでも、このビッグさは大したもの……」

「諏訪もここも、一体何がバーテックスを拒ませているんだろう?」

 

 水都は諏訪と旭川との関連性に頭を悩ますが、いまいち思い浮かばない。

 

「考えるのは後々! ほら、みーちゃん! 観光しようっ。レッツゴーゴー‼︎」

「わっ、ああっ。うたのんっ」

 

 水都の手を引いて、歌野は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 ーー旭川市の商店街を二人は練り歩く。

 

「見て見てみーちゃん! 八百屋さんっ」

「うん」

「ほあ〜。瑞々しいキャベツやニンジン。それにおおきなジャガイモ! 買っていこうかなぁ」

「うたのん、お金足りるの?」

「ある程度は持ってるからっ。……と言いたいところだけど、この調子じゃすぐに無くなっちゃうかも」

 

 野菜とその価格を眺めながら呟いた。

 

「ほら見て。このもやし、320円! 高いッ」

「価格が異常なほど高騰してるのはやっぱりこの時代だからかな」

 

 諏訪では基本、食べ物の売り買いはしない。ほぼ全て、歌野たちが自分で種を植えて育て上げ、そして収穫して食べる。

 完全なる自給自足というか、地産地消の生活だったので驚きの連続であった。

 

「……これなら進化体バーテックスを倒した時の懸賞金。少しでも分けてもらった方が良かったんじゃない?」

「ウッ……。い、いえ! それはあの人たちに申し訳ないし、それに格好悪いでしょ。いりませんって大見得切っておいて……」

「でも、それで今困ってるんじゃあ……」

「あ、あああーー! もうそんなの気にしないっ!」

 

 歌野は耳に手を当てて走り出す。

 

「ま、まってよぉぉ!」

 

 水都も後を追いかけ走り出した。

 

 後を追いかけると、歌野はピタリと立ち止まっている。

 

「……? どうしたの、うたのん」

「みーちゃんみーちゃん」

 

 チョイチョイっと手招きして水都を呼ぶ。

 

「見てっ店の入り口に、キュウリが置いてあるの! それに隣にはトマト、ナスも!」

「これ試食コーナーだよ。久しぶりに見たなぁ。諏訪には店すらなかったもんね」

「やっぱり試食コーナーだよね! ってことは食べて良いのよね⁉︎」

 

 目をキラキラさせながら歌野はキュウリを凝視する。

 

 ……水都は思った。キラキラしている歌野の両目はまるで椎茸のようだと……。

 

「いっただっきまあーす!」

 

 ケースからキュウリの輪切りを取り出し、爪楊枝を使って食べる。

 

「う〜〜! デリシャス!」

 

 続いて隣のケースの中にあった半切りのトマトとナスに爪楊枝を突き刺して頬張る。

 さらに、歌野はあたりの試食コーナーの品を一巡した後、またキュウリからリスタートして食べ始めた。

 

「ああっ! こらうたのんっ。試食コーナーを食べ尽くしちゃダメぇ!」

 

 ガシッと体を掴んで引き離そうとする。

 

「やだやだあ! まだ足りないのお‼︎」

「もう駄々をこねないのっ。それに結局買わないんでしょ? だったらお店の人にも失礼だよ」

「……ふわあ〜い」

 

 返事と言えないようなダラけた返事をして歌野は店を後にした。

 

 ……が。

 

「……みーちゃん。一回だけならセーフだよね?」

「えっ?」

 

 歌野の指差す方向には別のお店があり、そこにも試食コーナーが置いてあった。

 

(この街の人たちはよっぽど試食をさせたがるんだね……) 

 

 やや呆れ気味に水都は歌野の方へ駆けていく。

 

「な、ん、と‼︎」

「……!」

 

 そのお店は肉類を扱っているようだ。

 台の上にはソーセージが乗っている。隣にはハム、ベーコン。おまけにジンギスカンまでもが一口サイズになっていた。

 

「きゃあ〜〜! ジンギスカン‼︎ みーちゃんっジンギスカンよ‼︎」

「いたいいたい、うたのん。わかってるから」

 

 興奮している歌野はビシビシと水都の肩を叩いている。

 

「でもやっぱり高いわぁ」

 

 商品としてのジンギスカンの価格は1キロ=3万円である。

 

「これを買う人がいることが驚きだよね」

「もしかしてここの人たちはビップ?」

「そうでもないと思うよ」

 

 商店街の客と思われる人たちの数は少なく閑散としている店が多数である。

 

「買う人がいない商品はこの後どうなるんだろうね……。まぁそれより」

 

 歌野はケースの中にあるジンギスカンに爪楊枝を刺す。

 

「北海道産ジンギスカン、いっただっきまあ〜〜す」

「もう、うたのんったら……」

 

 あーん、と口を開けてジンギスカンを口に入れる歌野。

 

 

 ーーその瞬間ーー

 

 バタンッ!!!

 

「ーーッ‼︎ うたのん⁉︎」

 

 突然、歌野は地面に倒れたのだ。

 

「う、あっあ……。ああぐぅ」

 

 地面に倒れている歌野は目を見開き、瞳孔が開いて呻き声を上げていた。

 

「ねぇ⁉︎ うたのん‼︎ どうしたの⁉︎ うたのん‼︎」

 

 水都もパニックに陥り、歌野の体を揺する。

 

「あ……、がっ……」

 

うたのん!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー同時刻、旭川市内の商店街でひとりの少女は服飾系のショップで商品を眺めていた。

 

「ふんふんふ〜ん。……ん! これなかなかいいコーデじゃない⁉︎」

 

 白のカチューシャをつけた下縁メガネの少女は等身大マネキンが着ている服に注目する。

 

「ふむふむ。インナーの黒に上着は明るい色を使い、それが差し色となって……。あっ、ならこの白のジーンズも……」

 

 ブツブツと呟きながら、ひととおり眺めた後。

 

「うん。いつか作りたいお洋服候補のひとつだねー」

 

 買わずに店を出た。当然彼女には即決で買える額ではないからだ。

 

 

 そのまま、食品が売られている店へ行く。

 

(今日も試食コーナーで軽めの腹ごしらえをーー)

 

「ーーねぇ⁉︎ うたのん‼︎ どうしたの⁉︎ うたのん‼︎」

 

(ん?)

 

 なにか騒々しい。声のする方向を見ると店の前で二人の少女がいる。

 うち一人は地面に倒れ、もう一人が必死に呼びかけていた。

 

(あれは……?)

 

 気が付けば二人の元へ駆けていた。見知らぬ人など助ける義理などないのだが、身体が勝手に動き出したのだ。

 

「うたーー」

「ねぇ!」

 

 下縁メガネの少女は水都に声をかけた。

 

「どうしたの? もしかして食中毒?」

 

 見たところ、試食コーナーの食べ物を口にしたのだろう。そのどれかにあたったのではないだろうか。

 

「わ、わかりません……。その、ジンギスカンを口に入れた瞬間に、うたのんが……」

 

 涙ぐみながら水都は説明した。

 

(口に入れた瞬間……?)

 

 彼女は倒れている歌野を見た。

 

「……うっ」

 

 苦しそうではあるが意識はあるようだ。お腹を押さえているわけではないから腹痛の様子ではない……。

 

 一見、原因不明かと思われたが、彼女にはそれが何の症状なのか予想できていた。

 

「そのジンギスカンは飲み込んだ?」

「い、いえ、そこに落ちてます」

 

 水都が指差す方を見るとジンギスカンがひとつ落ちていた。

 

「……とにかく、どこかで休ませよう。大丈夫、一時的なもののはずだから」

 

 二人は歌野を担いで近くの木陰のベンチへ寝かせた……。

 

 

 

 

 ーーそれから数分後。

 

「うう……。なんかストレンジな違和感が」

 

 休息を取った歌野は青い顔をして起き上がっていた。

 

「もう大丈夫? どこか痛まない? お腹は?」

「いや、そういうのはないよ。食べ過ぎとか、食中毒ってわけじゃないみたい。ただ、何か精神的にモヤモヤする……」

「そっか……。食中毒じゃあないんだね」

 

 ふぅー、と水都胸を撫で下ろす。

 

「はいこれ、水。気は休まると思うから」

「ご親切にありがとうございますっ」

 

 歌野はお礼を言う。水都も頭を下げた。

 

「私からも、ありがとうございましたっ。……あっ。私、藤森水都って言います。……えっと、あの……」

「……? ああ!」

 

 下縁メガネの少女はニッコリ笑って二人に名前を告げたーー

 

「私の名前は、秋原雪花。通りすがりの道産子だよっ」

 




 新キャラ 秋原雪花登場!
彼女は勇者の野菜を食べた能力者なのか?(すっとぼけ)
だとしたらどんな能力なのか……。


次回 勇者の弱点!?
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