白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。前回まで白鳥さんたちは兵庫県にいました。つまり、これでやっと四国に行け……行…………けない‼︎

それでは『サウスジャパン編』始まりです! ……テコ入れじゃないよ。会わなきゃいけない人がいるので。



『――風を感じよう。みんなで風を感じるんだ。涙を乾かしてくれる風を探しにいこう。冒険の旅、誰かと出会う為に。立ち止まらないさ、目の前に大切な君が待ってる』



〜サウスジャパン編〜
第百一話 最悪の勇者


 

 "空飛ぶ木船"を強奪して姫路城から脱出することに成功した歌野たちは一緒に乗った赤嶺友奈と共に岡山県の津山市にいた。

 地に船を降ろして休息を取る。当然だが疲労はピークを達しているので、気が抜けた彼女たちは泥のように眠り、半日以上経過していた。

 

 そして今は少し前に見た気がする夕暮れ時。出発してもすぐ暗くなるのでまたここで夜を明かすつもりだ。

 

「あれが津山城……もとい鶴山城。昔は周りに咲いていた桜が綺麗だったって話」

 

 雪花が遠くを指差す。バーテックスの襲撃により城は完全に無くなり石垣も所々崩れてしまっているが、名残りは確かに感じた。

 

「夜にライトアップされた城と夜桜は一層綺麗だったみたいだね。あー、観てみたかったにゃぁ」

「せっちゃんお城好きだもんね!」

「あら。それならライトアップされた丸亀城も綺麗よ?」

 

 高嶋友奈と蓮華も雪花の話を聞いていた。ここは大社本部がある岡山県ではあるのだが、津山市はその北部。大社は広い岡山県を隅から隅まで把握している訳ではないのでここには彼女たち以外誰もいない。

 そう考えれば少しだけ気は休まるというもの。

 最も、彼女たちを襲う人間はいないだけで、化け物と交戦する可能性はあるが。

 

「ねぇうたのんちゃん。今後の方針について提案があるんだぁ。聞いてくれるかな」

 

 歌野がボロボロの服を着替えて、武器についた汚れを落としていたとき、見張り番を担っていた赤嶺がやってきた。

 

「オフコース。どうしたの?」

「チームの一員でもないのに意見しちゃってごめんね。でも私は……レンちの腕を治したいって思ってるんだよ」

「……と言うからには治すハウトゥーがあるのね」

「うん」

 

 そこで一旦言葉を区切り、二人は蓮華たちの元へ歩いていく。チームのこれからの方針を示す話し合いということで、看板に芽吹を除いたメンバーが集まった。

 

「芽吹ちゃんは……まだ休んでるんだね」

 

 友奈が辺りを見回したが彼女はいない。

 芽吹は負傷により動けずにいる。脱出の際は辛うじて動けていたが、今は船内で横になっている。自分で自由に動けるほど回復するには数日を要するだろう。

 

「芽吹には後で私から説明するわ。じゃあテルアス赤嶺さん」

 

 歌野に言われて赤嶺はこの船の行き先を提案した。

 

「まず、みんなの目的地は四国のはずだけど……変更して沖縄に行ってほしんだぁ」

「沖縄っていうとサウスジャパンの……?」

「うん、そうだよ。そこにレンちの腕を治せる人がいるから」

「友奈、もう少し説明しなさい」

 

 蓮華の右腕は未だ干涸びたままだ。安静にしていれば一週間程でもとの腕の状態まで回復すると蓮華本人は予想している。だがそれも十分な血液と水分を摂ることを前提とした考えだ。ここでは真っ当な治療は行えない。

 

「沖縄にいけばレンちの腕は完治できるよ! あそこは街と呼べるぐらい人や物があるし、なにより水のエキスパートがいるから!」

「水……?」

「名前は"古波蔵棗"っていう人。私も沖縄にいたときお世話になったんだぁ」

 

 赤嶺の口降りからその古波蔵棗という人物は大社側の人間ではないようだ。でなければ犯罪者と認知されている歌野たちに紹介しない。

 

「その人が蓮華の腕を治せる……と」

「沖縄。確かに今の四国に行くよりは安全といえば安全、なのかもね」

 

 歌野は何度も頷き、雪花もまた賛同する。

 "奉火祭"を阻止し、兵庫支部を壊滅させた歌野たちを大社側は血眼になって探すことだろう。ならば、今はあえて四国から遠ざかるのが安全策といえる。

 ……もっとも、沖縄にも大社支部はあるので"比較的"という言葉が入るのだが。

 

「友奈」

「「なに?」」

 

 蓮華の声に二人の友奈が反応した。

 

「高嶋友奈じゃなくて、赤嶺友奈ね。ここから沖縄までどのくらいかかるの?」

「この船で飛んで行けば二日か三日、かな」

「……歌野。今の話を聞いてどうするかはあなたが決めなさい。ここは岡山県。四国へは()()()()に必ず着ける。……妨害が無ければね」

 

 蓮華は歌野を見た。

 蓮華だけではない。この船の進路の決定権を持っているのはリーダーの歌野だ。

 当初の目的である四国へ向かうか。それとも赤嶺の提案を受け入れて沖縄へ行くか。

 

「沖縄へ行きましょう!」

 

 答えはもう決まっていた。考える素振りも無く歌野ははっきりとそう口にする。

 

「当初の予定とはズレるけど、でも蓮華の腕をこのままにはしておけないわっ。別に急ぐリーズンもないから」

 

 雪花も手を上げて賛成の意を述べる。

 

「歌野の言うとおりだね。それに今の四国はピリついてると思うからほとぼりが冷めるまでは近付かない方が良いと思う」

 

 大社はバスターコールにより姫路城を壊滅させたが、結果として歌野たちは仕留められなかった。そして、歌野たちの目的が四国だと分かっている以上、その通り道で待ち伏せしているのは容易に想像できる。

 ならば、ここでじっとしているよりかは少しでもメンバーの利益になるよう行動したい。

 

「私も……蓮華さんの腕は確実に治してもらいたい」

 

 水都も頷く。蓮華の腕は自分を助ける為に犠牲にしたのだ。治る手立てがあるのなら拒否する理由はない。

 

「私ももちろん! 蓮ちゃんの腕を治すことに賛成だよ!」

「友奈もサンクス! それじゃあトゥモローのサンライズと共に沖縄へゴーよ!」

「おー!!!!!」

 

 歌野の掛け声に続いて、赤嶺を含むここにいる全員も拳を高く上げた。

 

 そして、彼女たちの次なる進路は"古波蔵棗"という少女がいる沖縄へ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして場所は変わり、ここは丸亀城。四国の香川県にある、四勇の本拠地といえる城。また、大社の基盤を作った"彼らの"住まう城でもある。

 

「……さて、何のようだね」

 

 その城の中の広い一室。部屋は豪華な刺繍が映えており、誰が見ても位の高い者たちの一室であることが分かる。

 その場にいるのは五人の老齢な男たちと一人の少女。

 

「ご無沙汰しております」

 

 "五老星"が全員集まっている中、乃木若葉が深々と頭を下げる。相手への礼節をわきまえ、武装は一切していない。

 今や英雄と称えられる"四勇"乃木若葉がここまでへりくだっていることから、改めて彼らの偉大さが際立つ。

 

()()()()()も、変わりないようで」

 

 若葉は金銀の刺繍に彩られたソファに腰掛けている老人へ視線を向けた。

 彼こそが『乃木家』の当主。スキンヘッドに丸メガネをかけ、白装束に身を包む姿は老将軍がごとく。

 乃木家当主は若葉の言葉に返事をせず、黙々と愛刀である『初代鬼徹』の刃に綿を当てて手入れをしている。

 

「……要件はなんだね?」

 

 唯一、席に座っていない長い白髪と白髭をした老人が若葉へ要件を話すよう促す。

 若葉は視線をその男――『安芸家』の当主に向けて話し始める。

 

「そうですね、時間もありませんので単刀直入に。……こちらの件についてです」

 

 丸めて持っていた新聞紙を広げて見せる。そこには歌野たちのことが大々的に記載されてあった。

 

「その件ならば、我々も知っている。"奉火祭"の要といえる藤森水都を奪う為、白鳥歌野率いる反逆者が兵庫支部を攻撃した、とな」

「さらに、バスターコールまで発動させた」

 

 紙面には歌野と結城友奈の顔写真がアップで載っている。

 

「この"奉火祭"は、あなたがたの指示でしょうか?」

「いいや、我々ではない。大社本部にいる神官たちの合議の上だ」

「ではバスターコールの指示も、でしょうか?」

「ああ、そうだ。現場に居合わせた神官長の判断だ」

「第一、我々は既に上役を退いた身。大社の方針を決める権限は無い。仕事という仕事はといえば、報告をただ聞くのみだ」

 

 杖を持ち椅子に座っている『上里家』の当主も安芸家当主と同様の返答をする。

 "五老星"は大社にとって象徴(シンボル)のような存在なだけで執政権はない。そのことは若葉も前々から聞いている。

 だがそれでも、聞かずにはいられなかった。

 "奉火祭"の内容と白鳥歌野が関わっていることを知れば。

 

「その紙面に載っている女。白鳥歌野と結城友奈の結託は"七武勇"の本格的な敵対行動を意味する。乃木若葉、君たち"四勇"の御役目は大社本部と連携して彼女らの愚行を一刻も早く止めることだ。……これ以上の問答は時間の無駄だと思うが?」

「…………そうですね。では失礼します」

 

 室内だがサングラスをかけた一番若そうに見える男――『弥勒家』の当主に諭され、一礼して若葉は部屋をあとにした。

 

 僅か数秒程、重苦しい空気に包まれていた部屋の中で『鷲尾家』の当主が席を立つ。

 

「……疑っていたな。こちらが影で糸を引いているのではないか、と」

「ああ。だが嘘は言っていない。……嘘はな」

「だが、ここから世界は大いに荒れる。……我々が動く日も来ないという保証も無い」

 

 座っていた者も立ち上がり、全員は部屋から出ていく。

 

「……()()()の許可が下りればな」

 

 歩きながら、上里家当主は二枚の紙切れを懐から取り出した。その紙は、歌野たちが姫路城を襲撃した情報を受け取った大社側が即日作った新たな手配書である。

 

 一枚目に写っているのは白鳥歌野。懸賞金額は1000万ぶっタマげ。

 二枚目は結城友奈。999万ぶっタマげ。

 

 この二枚の手配書と同じ物は、若葉が持ってきていた新聞紙にも挟んであり、既に四国中に知れ渡っている。

 また、明日にでも全国の各支部へ出回るだろう。

 

 

 

 ……だがその翌日、この新聞の内容を遥かに超えるほどの重大な情報が紙面に記載され、大社本部と四国を騒がすこととなる。

 

「あら? バスターコールのこと、もう新聞になってたんですの? こういう時だけ行動が迅速ですわね」

 

 バスターコールの後処理を終えて戻ってきた夕海子もまた皮肉混じりに新聞紙の内容と、手配書に目を通した。

 

「この手配書も、()()()意味を成さないというのに。……そう思いますわよね?」

 

 夕海子は後ろにいる、何人かの神官と防人に捕縛されて俯く少女に視線を向けて質問する。

 少女の方は黙ったまま答えない。夕海子も返答は期待していなかったのかそのまま前に向き直って本部へ向かっていく。

 




・この作品での五老星のみなさんの特徴はもちろんONE PIECEのまんまです。()()()()とね。

・安芸家当主:五人の中で一番高い身長で一番長い白髪で一番長い白髭が特徴的な老人。五人の中でソファにも椅子にも座らない。立っている方が楽なタイプか。

・乃木家当主:スキンヘッドの老人。丸眼鏡をかけている。しょっちゅう刀の手入れをしているが使う機会があるのかは不明。他はスーツだけどこの人だけ白い着物を着ている。髭はない。

・上里家当主:ドレッドヘアの白髪に室内だけど帽子を被っている老人。鼻と口の間に髭。唯一杖をついている。太っている。

・鷲尾家当主:てっぺんの頭髪がない太った老人。海賊みたいな髭が特徴。額に若干肌のシミが出来ている。

・弥勒家当主:金髪+もみあげが髭と繋がっている。五人の中で一番若い。実は彼ではなく先代当主が大社の基盤を築いた。その先代はすでに逝去。だが彼は先代に成りすましている。(因みに変装している容姿は、縦方向に長い白髪と白鬚。そしてサングラスをかけている。)
 ……コイツだけなんか仲間外れっぽくて可哀想かも。



次回 たとえ、きっかけを失ったとしても
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