白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

11 / 112
拙稿ですがよろしくお願いします。勉強がてら(取材ともいう)FILM RED観てきました。映像ならではの演出!
ネタバレにならない程度にひとつだけ。

これから観る人はエンディングまでじっくり観てね。
(あれ?)って思うかもだから


前回のあらすじ
 白鳥さんがジンギスカン食べたらぶっ倒れた!美味しすぎて倒れたわけじゃないから水都は大慌て。
しかしそこをメガネをかけた秋原雪花が駆けつける(メガネをかけていない秋原雪花とは……?)
実は勇者の野菜を食べた能力者。つまり勇者にはとんでもない弱点があったようで⁉︎


第十一話 勇者の弱点!?

 少女は二人に秋原雪花と名乗った。

 

「秋原雪花、さん……」

「道産子……?」

「もしかして、と思ってたけどやっぱり県外からきた人だったんだねー。雰囲気的にも、ここの人じゃない気がしてたし。……あ! ちなみに道産子っていうのはね、簡単に言うと北海道産ってことだよ。私は北海道生まれの北海道育ちだからねー」

 

 雪花は歌野をジッと見つめる。

 

「そ、れ、よ、り。貴女、勇者でしょ?」

 

 一瞬、ポカンとしていた歌野だが、すぐに我にかえる。

 

「そう言えば名前言ってなかったわっ。……改めてサンキューベリーマッチっ。私は、白鳥歌野。農業王になる勇者よ!」

 

 予想していたのとは違う返しに雪花は目を丸くした。

 

「え? ノーギョー、オー?」

「ええ! 四国にある神樹様の恵みを手に入れ農業界を発展させ、その頂点に立つの!」

「うたのん⁉︎ そんなこと言ったら……」

 

 歌野がすんなり目的を話したのを見て水都は驚く。

 

「みーちゃん。大丈夫だよ。彼女は大社とは関係ないと思うし、第一、私の崇高なる夢を隠し続けるのは性に合わないのよね」

「……はぁ」

 

 水都はため息をついた。歌野はこういう人間だ。良くも悪くも真っ直ぐな人間で嘘をつくのが苦手……。()()()()()()()()

 

「えーっと、その農業王(?)になるために北海道に来たの? ん? いやさっき四国って言ってたっけ?」

 

 雪花は少々、頭がこんがらがっている。

 

「ええ。私の目的地は四国。……でも、どうせならここ、北海道で色々観光していきたいなぁって。ほら、農業がさかんな土地って聞いたことあるから」

「農業っていうか、一次産業全般かな。大社が管理してる牧場には牛や鶏とかの家畜がいるから畜産もさかんだよ」

「ワーオ! 畜産っ。いいわねぇ。農業っていうとほとんどは野菜ってイメージだけど、動物を飼育するのも、畜産農業って言って立派な農業だから、もう興味津々ッ。つまりはインタレスティング!」

 

 歌野は目をキラキラさせて話に食いつく。と、同時にさっきのことを雪花に聞く。

 

「あっ! そうだ。私さっき、ジンギスカン食べて倒れちゃったでしよ? あれ、何か知ってることあったりしない?」

「あー。あれね……」

 

 うーん、と雪花は考える素振りを見せる。

 

「単刀直入に言うと……。勇者の野菜を食べた人、つまり、勇者になるとね、お肉が食べられなくなるんだよ」

「「?」」

 

 歌野と水都の頭にハテナが浮かんだ。

 

「勇者となって能力を得た代償、って言うのかな。お肉を口にすると、一時的に全身が麻痺したように痺れて動けなくなる。そして、口に入れた時からきっかり24時間。能力が使えない状態になるんだよ」

「……!」

 

 歌野は手を広げて握ったり開いたりするが、特に何も起きない。

 

「ホントだわ。武器が出てこない……」

「……へー。歌野ちゃん装備(チャーム)型の能力なんだ」

「そう。ムチムチの野菜を食べたの」

「聞いたことのない勇者の野菜だね。……まぁ聞いたことのあるものの方が少ないけど」

「あ、あの。雪花、さんは」

「さん、なんて付けなくてもいいよー。仲良くいこう。雪花ちゃんでも、せっちゃんでもどんとこいっ」

「え、えー、なら雪花ちゃん……」

 

 水都は気になっていることがあった。それは、やけに勇者に詳しい雪花のことだ。

 

「雪花ちゃんは、勇者、なの? お肉の事といい、私たちより随分と詳しいし。いや、私たちが知らなさすぎるってもあるけど」

「……」

 

 それを聞いた雪花は少し間を開けて口を開いた。

 

「ううん。私は違うよ。知り合いから噂をちょろっと聞いただけ」

「うわさ……」

「そそ。大社に属している防人って部隊があるでしょ?」

「うん」

「そこの一人が勇者の野菜を食べたらしくてね。No.4って人」

「No.4……」

「変わった名前でしょ。個人を識別するための番号だと思うんだけどね」

 

 空港にもNo.25と番号で呼ばれていた人がいた。防人というのは()()()()組織なのだろう。

 

「旭川市は今、そのNo.4率いる防人が付近のバーテックスと戦ってるんだ」

「じゃあその人たちのおかげで北海道は平穏な暮らしを送れているのねっ」

 

 歌野は安堵した。ここも、千葉の空港と同じく大社の人たちによって人々が暮らせているのだと。

 

 

 が、しかし……。

 

 

「平穏……。まぁ、見た目はそう見えるかな」

「え?」

 

 突如、雪花は重い表情でそう口にした。

 

「何か深みのある言い方だね」

 

 その空気を読んだのか、水都も神妙な面持ちになった。

 

「確かに防人のおかげでバーテックスから旭川市は守られている。でもね、彼女らはその褒美としてこの街を手中に収めているの。……悪い意味でね」

「どういうこと?」

 

 雪花は歌野と水都が立ち寄っていた店の方を見る。

 

「気付いたでしょ? 商品の価格が異常なほど高騰していることに。……あれね、さっき話した防人。No.4の仕業なの」

「価格が上がっているのはバーテックスのせいじゃないの?」

「元を辿ればバーテックスになるけどね。でも彼女はそれを利用してこの街を手に入れ、私腹を肥やしているの。わざと価格を高めにして、お金のない人から無理矢理巻き上げるような真似をして。多分、お金をまわしてバーテックス襲撃前の暮らしを模倣してるんだよ。……強引にね」

「ーーそんなのッ‼︎」

 

 ガタンッ、と突然歌野がベンチから立ち上がる。

 

「そんなのダメじゃないっ! こういう時代だからこそ助け合わなきゃいけないのにっ」

「う、うん。そうだ、ね……」

 

 歌野の剣幕に押され雪花はたじろいだ。

 水都はそんな歌野の様子に、まさか……と、勘ぐる。

 

「うたのん、あのさーー」

「みーちゃん! 雪花ちゃん! 私、その防人の人に言ってくるッ。独り占めしてないで分けてあげてって。そしたら、少しでも……。いいえ、みんながとてもハッピーになれるはずだからって! 場合によっては力で……」

 

(や、やっぱりこうなっちゃった〜〜!)

 

 水都の予感は的中する。というか、何やら物騒なことを企んでいる。

 

「ま、待ってうたのん」

「待てないっ」

「聞いてうたのんっ」

「聞こえないっーー」

 

 水都の呼びかけにも応じず、歌野は勢いよく走り出しーー。

 

「お、おっとっとっと……」

 

 ーー走ろうとしたが少しふらついた。

 

「あーあー。急に動いちゃダメだよ。言ったよね? 24時間は能力は使えないって。それに伴って、歌野ちゃんの体も不安定になっているんだから」

「む〜」

 

 ぷくぅ〜、と頬を膨らませる歌野。

 

「あのねうたのん。うたのんがやろうとしている事は、汚職事件の疑いがある警察官を殴りにいこうとする事とおんなじなんだよ?」

「警察官主催のお食事券? 野菜パーティーの?」

 

 歌野は水都に頬を軽くつねられた。

 

「いたいいたい。みーちゃんいたい」

「……いくら、怪しい噂があったって、苦しんでる人たちがいたって、大社直属の防人相手に掛け合ってもまともに取り合ってはくれないよ。やるなら、それこそ大社本部とかに報告してーー」

「みーちゃん、それっていつ?」

「えっ?」

 

 少し低くなった歌野の声のトーンに水都の言葉は遮られた。

 

「本部に訴えて、裁判みたいな事になって、そこでウィナーになって、ここの人が捕まって、新しい人が配属されて、ここの人たちが幸せになる。そしてハッピーエンド。……それっていつ頃になっちゃうの?」

「……」

 

 雪花も真面目な顔で耳を傾けていた。

 

「私たちが北海道から、また飛行機に乗って千葉に戻って、それからまた飛行機に乗ってウェストジャパンに行く。そして、本部がある岡山……だっけ? そこでここの状況を報告する……。それだけで一体、何日かかるの?」

 

 フライトは月に一回。今日、千葉から北海道にやってきたので歌野たちがまた飛行機に乗るには、来月まで待たなければならない。

 そして、千葉から岡山へ行くのもその一ヶ月後。報告して戻ってくることを考えると何ヶ月も先の話となる。

 それに当然、飛行機に乗るにはお金がかかる。今の二人にそんなお金はない。

 

「私はね、みーちゃん。いつか、いつか、って言うけど、できればその"いつか"を、"今"にしたいの。今回は、それができると思うから」

「うたのん……」

 

 水都は不安げな目で見つめていたが、やがて軽くため息を吐いた。

 

「……わかったよ。うたのんは、こうと決めたらとことん突っ走るタイプだから。……昔から、そうなんだよね」

「コートを着たらとっとこ走る?」

「……」

 

 歌野のボケに水都はじと〜、と無言で返す。

 

「ジョークジョーク。……ありがとねみーちゃん」

「……う、うん」

 

 笑いかけてくる歌野に、照れながら応えた。

 

「よしっ。じゃあ、私なりに、その防人さんにビシッと喝入れてくるから!」

 

 歌野はそう言って黙って聞いていた雪花に手を伸ばす。

 

「……へ?」

「雪花ちゃんっ。その人ってどこにいるのかしら? 案内してくれない?」

「い、いや、話は聞いていたけどね。歌野ちゃんの計画通りにいけば私も、ここの人たちも良いとは思うんだけど……」

「だけど?」

「実は、そのー。単純な話ではなくてー。……ゴメンネ、話の腰を折りたくなかったから黙って聞いていたんだけどーー」

 

 ……と、その時。雪花の目が横にスライドしていくのがわかった。

 

「はぇ⁉︎」

「ハエ?」

 

 腑抜けた声を漏らした雪花は見るからに動揺している。

 

 ……歌野と水都は雪花の視線の方を見ると……

 

 

 

「ーーな〜んか、シケたところになってくね。店もロクに客がいないし、貧乏な奴が多いんだなぁ」

 

 道のど真ん中を悠々に歩いている少女は両隣にいる二人に話しかける。

 

「え、ええ。そうですね〜」

「これもそれも、あなたの統治がままならないーー」

 

 ドカッ、と突然、真ん中の人が左隣の人を蹴飛ばした。

 

「何? アタシに文句垂れてんの? 北海道で一番偉いアタシに?」

「うっ、く……」

 

 蹴りが横腹にヒットしたのだろう。倒れている人は横腹を抑えている。

 

 

 

 

「ーーあれ」

 

 水都がその三人を指差す。

 

「うわぁ。噂をすればなんとやら、だねぇ。タイミング良過ぎるよ……」

 

 雪花もその光景に目を逸らしながら呟いた。

 

「……」

 

 歌野の目に映る三人は、見たことのある服装だった。服装と言っても、一般的な服ではなく、戦闘に赴くかのような装備。白と黄緑を基調とする鎧のようなスーツ。

 そしてなにより、倒れた少女の首についているプレートには『29』という文字がある。そして、立っている二人のうち、一人は『12』、蹴り飛ばした真ん中の少女の首には……。

 

「4……ってことは」

「あの人がNo.4。この北海道を担当している大社防人で、悪政を敷いている元凶」

 

 雪花の説明は要らずとも、歌野は確信していた。

 No.4(彼女)をなんとかしなくてはこの土地を救うことはできない。場合によっては、文字通り倒してでも、と。

 

 

「ーー大丈夫?」

 

 歌野は倒れた少女の体を抱え起こそうとする。

 

「えっ、あのっ、ありが、とう……」

 

 No.29の少女は困惑している。いや、彼女だけではない。もうひとりも、蹴った本人も。

 

「あ? 誰よアンタ。急に出てきて」

 

 威圧感を漂わせNo.4は歌野を睨む。

 

「私は、白鳥歌野……」

 

 No.29を立たせて歌野はNo.4の威圧に動じることもなく彼女へ向いて言い放つ。

 

 

「農業王になる勇者よ‼︎」

 




肉が食べられない。それは麦わらにとっては死活問題だよ⁉︎

勇者に悪影響が及ぶのは肉を食べた時だけ。なので魚や卵、乳製品などは食べてもOK。
実際、ベジタリアンでも、国や宗教ごとで、肉や魚はダメで乳製品はOKとか、本当に動物関連のものはNGとか(ヴィーガンともいう)色々あるらしい。

次回 秋原雪花
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。