白鳥歌野は農業王になる   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。アニメには出てないネタバレあり。でもまあすぐやるからいいよね。名前だけは出たし。


前回のあらすじではない
わっ、CP.2色っぽい! こんな秘書がいたら正直嬉しいっ! ――っておっさんか、私は‼︎


第百十三話 沖縄支部に眠る神典

 棗の振るわれた拳は、直接的に命中したわけではないが、空中を伝わる衝撃波は確かにCP.2の顔を歪ませながら突き進んだ。

 吹っ飛ばされたCP.2は壁に激突してその場に倒れ込む。金色の髪はボサボサに乱れ、眼鏡は破損し、彼女が立ち上がることはなかった。

 

「……すご」

 

 雪花と歌野は開いた口か塞がらずその様子を見ていた。一撃で倒したこともそうだが『アワアワの野菜』の攻撃を受けた筈が何もなかったかのように行動していることも驚きの理由のひとつだ。

 

「棗さんはどうして動けたの?」

「泡だからな。水で洗い流せばそれで終わりだ」

 

 棗は手のひらから水を出現させた。その手のひらに溜めた水で雪花の手に触れる。すると手の感触が元に戻り槍を手にしても滑ることなく持つことができた。

 

「そっか。泡だから洗い流せば……。単純だけど失念してた」

 

 棗は自分の手のひらに発生させた水を雪花と歌野に浴びせて元の姿に戻した。

 

「オー、サンクス♪」

「それが棗さんの能力? 名前は?」

「名前?」

「私は『ユメユメの野菜』。歌野は『ムチムチの野菜』とか能力に沿った名前があるんだけど」

 

 自分の能力についてあまり関心がなかったのか、棗は顎に手を添えて考え込む。

 

「なら私は"海"がいい」

「がいい……って。それじゃあ『ウミウミの野菜』ってこと?」

「傷みそうな名前だわ。ベジタブルが可哀想よ」

「考えたことがなかった……。ペロは何だろうな」

 

 犬であるペロが人間の言葉を話し、人間に似た姿にもなれる。

 その情報からまず間違いなく『ヒトヒトの野菜』だということを伝える。

 

「じゃあ私は……『ウオウオの野菜』にしよう」

 

 その名前を聞いて棗はペロに倣って自分の能力を得た"野菜"に名前を付けた。

 

「ん〜。そのフィーリング! そっちの方が素敵だわっ」

「まぁ、名前を決める人がいるわけじゃないし。本人が決めたんなら何だっていいか。『ウミウミ』でも『ウオウオ』でも……」

 

 魚になれる能力ではないのは確かなのだが、そういえば七武勇の園子も『トリトリの野菜』と言っていたが能力に鳥っぽさは全く無かった。

 "勇者の野菜"は特異な能力が豊富なので()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ペロを連れてこよう」

 

 会場にはもう敵はいない。戦いはもう起こらないことを確認して棗はペロを連れてくる為に、ステージの奥へ戻った。

 

「雪花、見て! 血が止まったわ!」

「流石歌野だにゃぁ」

 

 もうこれくらいでは驚かなくなったのか、あるいは驚く気力もないのか。雪花はそれだけ言って棗とペロが戻ってくるのを待った。

 

 棗はペロを抱えてすぐに戻ってきた。

 

「ペロ。私は『ウオウオの野菜』に決めた」

「……何の話だ?」

 

 話の全容が見えないペロはそう聞き返す他なかった。

 

 

 

 ――歌野は友奈を背負い、全員でオークション会場の外に出た。友奈とペロの治療を最優先に行う為に棗が定期的に通っている療養所へ向かう。

 そこの医師は獣医も兼ねているようでたまにペロの状態を診てもらっている。

 

「あらっ……! 向こうに見えるのみーちゃんじゃないっ!」

 

 歌野は療養所の窓から水都たちが歩いてくるのを見て即座に外へ飛び出した。

 

「うたのん‼︎」

「みーちゃん‼︎ よくここにいるって分かったわね!」

 

 治療が一旦落ち着いたら水都たちに会いに行こうとしていたが、先に彼女たちが合流してくれた。

 療養所の場所を赤嶺が知っていたので芽吹と蓮華を置いたのちに、オークション会場へ向かおうと考えていたようだ。

 

「蓮華さんが……戦闘の後でちょっと休ませようって話になって……」

 

 水都に言われて蓮華を見ると、赤嶺に支えられて歩いていた。少し青い顔をしている。

 

「戦闘……? みーちゃんたちのところにも誰か行ったのね?」

 

 水都は頷いてCP.4が襲撃に来たことを歌野たちに話した。敵は倒すことができたが、その戦闘後に蓮華が体調を崩した。

 

「貧血だ」

 

 棗が外へ出てきた。続いて雪花も外へ出てきた。

 

「襲撃されていたとは知らなかった。今の蓮華は、戦闘という激しい運動で貧血を起こしている」

 

 棗が施した治療は、蓮華の枯渇した水分を補給させて枯れていた腕を復活させただけ。その後、十分な休息を与えてから輸血させる。その手筈だった。

 しかしオークションの開始で棗は蓮華の元を離れ、そこで戦闘を開始した。さらに蓮華たちのいる場所へも敵が来て戦闘を行った。

 

「棗さんたちが使ってたあの場所、バレてたんだねぇ」

「蓮華や赤嶺さんでも苦戦するような相手だったのね」

「いえ、友奈は早々にリタイアしたわ」

「木の枝に引っかかっちゃって〜」

 

 頭を掻きながら笑う赤嶺。遠くまで飛ばされた彼女は防風林に突っ込み、枝が手足に絡まって身動きが取れなかった。

 駆け付けた水都と芽吹が助けなければずっとそのままだっただろう。

 

「でも勇者なら力で枝とか折れるんじゃあ?」

「それが絶妙な絡み方で力入らなかったんだよ。腕とか太ももとか服の中まで入ってたから」

「私が枝を斬ったのよ」

「なーるほどにゃぁ」

 

 そして蓮華が合流したが体調が悪そうなので療養所を目指し、今に至る。

 

「お医者さん。一名の輸血を頼みたい」

 

 全員は療養所内に入り、棗がここの医師に頼み込む。

 医師は別室にてペロの治療を一段落させたあと、神妙な面持ちで棗に話す。

 

「棗ちゃん。輸血の貯蔵はないんだ。今すぐは難しい」

 

 血であるが故に保存しておける期間は短い。最近は献血に協力してくれる人もいない。また、輸血を要する人も以前より格段に減ったため、現在は貯蔵していなかった。

 

「えっと……君かい? 血液型は?」

 

 少しでも安静にと蓮華はソファに横になる。

 医師に血液型を尋ねられて答えた。

 

「O型よ」

「O型か……。すぐに一帯の人たちに声をかけよう」

 

 助力を求める為に受話器を取ろうとする医師。しかし歌野が声を発した。

 

「その必要はないわ!」

 

 医師は驚いて手を止めた。

 歌野は胸を手で叩いて大きく意思表示をする。

 

「私も蓮華と同じO型よ! 私の血を使って!」

「歌野……」

「でもさっきあんなに血を出してたじゃん」

 

 雪花は歌野の額の傷を見る。血は止まっているがそれでも頭からの出血は予想以上に血を失う。

 

「怪我人から採るわけにはいかないよ。それに君は棗ちゃんとそう歳の離れていない。中学生だろう?」

「未成年でも200ぐらいは採れるって昔ダディから聞いたわ!」

「200ミリリットル採っていいのはね……」

「ヘイ、ドクター!」

 

 ビシッと人差し指を向ける歌野。その瞳には決して引かない強い意志が汲み取れた。

 その意志に気押されたのか、医師の言葉は詰まり、深く溜息をついた。

 

「私たちはオークション会場で派手に暴れたわっ。そして今、ドクターにも苦労をかけてしまっている。これ以上、迷惑はかけられないわっ‼︎」

「それに、大社本部から追手が迫っているはずだ。思っている以上に私たちは急いでここから離れる必要があるんだ」

 

 棗もまた頭を下げた。自分たちの行動で安静にさせていた蓮華たちにまで飛び火させてしまった。その責任を彼女なりに感じてのことだろう。

 

「……分かったよ。大人としては心苦しいけどね」

 

 渋々、医師は歌野たちに頷いて承諾してくれた。しかしひとつだけ条件を残して。

 

「だが一人で200ミリリットルは駄目だよ。さっきも言ったが君は怪我人で未成年。もう一人二人は必要だ。……これが最大限の譲歩だよ」

「それなら問題ない。……私も、O型だ」

 

 棗は自分の左腕を医師に差し出した。棗の血液型がO型だという奇跡に蓮華も含めてみんなが良い意味で驚く。

 

「これでいいか。よろしく頼む。……頼みます」

 

 蓮華に血をあげられるO型は歌野と棗だけ。他はいない。

 

「分かった。二人ならギリギリ大丈夫だ。すぐに準備をしよう」

 

 医師は迅速に手際良く準備をしていく。注射針や輸血パックやチューブの準備に滞りが見られない。

 歌野たちが準備を手伝おうとする気も起きないくらいだ。逆に指示を貰って動くその時間がもったいないだろう。

 

「さて……と。私たちはどうしよっかねー」

 

 蓮華の輸血に直接関係の無い雪花は手持ち無沙汰で両手を後頭部に回して天井を見る。

 

「棗さんがいてくれて本当に良かった……。私じゃあ役に立たないから」

 

 水都はそう呟いて落ち込む。血液型という生まれた時から定められたものは個人の力ではどうにもならない。

 分かっているが何もできない自分が悔しい。

 

「雪花、水都。あなたたちは芽吹を連れて沖縄支部に行きなさい」

「えっ……? 沖縄支部……?」

 

 すると、蓮華から大社支部に行くように提案された。

 

「ん? それはどういう……」

「この蓮華の個人的な興味で悪いのだけれど、そこにもあるのでしょう? ……勇者御記(ポーネグリフ)

 

 その単語を聞いて三人はそれぞれお互いの顔を見た。

 確かに大社支部には勇者御記(ポーネグリフ)が置かれている。今までもそうだった。内容は読めないのだが、それがこの世界の秘密を記したものなのは烏丸久美子を主な例として明白だ。

 そして、水都も芽吹もその謎を知りたい側の人間だ。歌野や友奈は特に気にしていない側だが。

 

「私も勇者御記(ポーネグリフ)は気になるわ。だから沖縄支部に同行する」

 

 大社に関する施設ならばこの三人の中では芽吹が詳しい。実際、どこにあるか分かっているし、内装や間取りも当時のままなら十分対応できる。

 

 こうして赤嶺を万が一の護衛の為に療養所に置いて三人は沖縄支部へ向かった。

 

「三人とも行ってらっしゃ〜い」

「友奈。敵が来たら今度こそ頼むわよ?」

「うぐっ……。やだな〜レンち。もうあんなドジはしないよぉ。……多分」

 

 そんな冗談を交わしていると、準備が整ったのか医師が三人をベッドへ誘導する。

 蓮華は用意されたベッドへ改めて横になる。隣に座る歌野に目をやりながら。

 

(歌野……。この蓮華が回復して、みんなが揃ったとき。あなたたちに伝えなきゃいけないことがあるわ)

 

 戦いの最中、CP.4から聞いた結城友奈の顛末と、これから起こる大規模な戦いのことを――。

 

 

 

 

 

 

 ――沖縄支部へやって来た、水都、雪花、芽吹。

 三人は勇者御記(ポーネグリフ)が保管されていそうな部屋を予想して効率よく探そうとする。

 芽吹はだいぶ回復したのか、駆け足程度の速度なら一人で動けるようになった。

 

 …………そして三十分後。三人には勇者御記(ポーネグリフ)を見つけた。

 それはガラスケースの中に入れられており、ケース内をなぜか()()()()()()()()()()()

 

「あった……。でも誰もいなかったね、ここ」

「神官も。防人も」

「棗さんから奴隷の人がいるかもって鍵渡されたんだけど。……誰もいなかったねー」

 

 水都、芽吹の言葉に続いて、雪花はポケットから鍵を取り出してそう言った。

 この鍵は棗がCP.1から貰った鍵だ。沖縄支部に行くと言ったら渡された。

 この鍵が本物かどうかは分からないが、そもそも解放する奴隷が見当たらない。

 

「んで、なぜかケースの中に水入ってるし。……沖縄だから?」

「沖縄……。うーん」

「ならこの水は海水?」

 

 芽吹は言いながら刀でケースを躊躇無く割った。

 当然ケースの中を満たしていた水は周囲に溢れて流れ出していく。

 

「芽吹やったね〜。ま、じゃないと持ち出せないし、文字見えにくかったから良いんだけど」

 

 雪花は勇者御記(ポーネグリフ)を手にした。透明なビニール袋で覆われていたので濡れていない。

 予想はしていたが、紙なので水に濡れてしまっていては保管どころではない。

 

「え……っと……。あれ……?」

「どうしたの……?」

 

 固まった雪花。それを不思議そうに水都は雪花の手元を覗き込んだ。

 

「雪花ちゃん。何か変なものが書いて……」

 

 雪花の視線は手にした勇者御記(ポーネグリフ)へ向けられてはいない。割られたケースの中だ。

 

「もう何枚かある。しかも読めるやつが……」

「「……え?」」

 

 雪花はケース中に手を入れて()()()()()()を取り出した。それらもまた透明なビニール袋に入れられていた。しかもケースを割らないと見つからないようにしていたようだった。

 

「読める? 雪花、何て描いてあるの?」

「えっとね……」

 

 紙は四枚。文章が描かれた三枚と、絵が描かれた一枚。

 雪花は上から順に読んでいく。雪花にはその三枚の紙に描かれた文章の読む順番が分かっていた。

 数字があったから。

 

「――『神典』。第一世界。……地に炎あり。人は…………」

 

 ゆっくりと丁寧に雪花は声に出して読んでいく――。

 

 

 

『神典』

 

 

 

――第一世界――

 

地に炎あり。人は欲望に負け禁断の太陽に触れた。隷人は願い"太陽の神"は現れた。地の神は怒り業炎の蛇と共に世界を死と闇で包んだ。彼らはもう会えないのだ。

 

 

 

――第二世界――

 

虚無に息吹あり。森の神は魔を遣わせた。太陽は戦火を広げるばかりだ。半月の人は夢を見た。月の人は夢を見た。人は太陽を殺し神となり海の神は荒ぶった。彼らはもう会えないのだ。

 

 

 

――第三世界――

 

混沌に空白あり。不都合な残影は約束の日を思い出し片割れ月の声を聞く。"太陽の神"は踊り、笑い世界を終末へ導く。太陽は回帰し新しい朝が来る。彼らはきっと会えるだろう。

 

 

 





 ――この世界の真実。今、その一端に触れる――
 

次回 神典に描かれた世界











































 ドントットット♪ ドントットット♫
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