前回のあらすじ
天秤座を倒した歌野と雪花は、北海道に住む人たちに悪性を敷いている大社防人No.4を倒すため、彼女のいる場所へと向かう。
歌野は雪花が用意した食事を摂った後、三人で防人たちが居を構えている場所へと向かった。
「ここだよ。防人たちが住んでいるのは」
目の前には二階建ての宿泊施設が建っていた。
すると、歌野は思いっきり空気を吸い込んでーー
「たのもおおお〜〜〜!!!」
思いっきり叫んだ。
「うわっ、びっくりしたっ」
「うたのん、どうしたの⁉︎」
すぐ横に立っていた二人はビクッと体が震えた。
「……えっと、防人の人たちに聞こえるように」
「歌野ちゃん、そこに呼び鈴があるよ?」
「あっ、ホントだ。……まぁ遊びに来たわけじゃないから、こんな感じでいいわ〜って」
……少しした後、ひとりの女性が現れた。
三人はその人物に見覚えがあった。
先のいざこざの時にいた、首元のプレートにNo.12と描かれていた防人だった。
「っるさいなー。ってあんたらっ⁉︎」
明らかにNo.12は動揺していた。
「グッモーニン♪ ちょっと要件があるんだけど、貴女たちのボス、連れてきて」
「……No.4のこと?」
「YES」
「会ってどうするの?」
「……話し合いで終わらせたいけど、多分解決しないから正直に言うわね。……そのNo.4さんを倒しにきたのっ」
「……?」
No.12の頭にはハテナが浮かんでいたが、やがて……。
「ぷっ……あーっはっはっはっはっはっ」
腹を抱えて笑いだした。
「なあにを言ってんの? No.4を倒しにきたって聞こえたんだけど!」
「そう言ってるんだよねー」
雪花の言葉にNo.12は笑いをやめ、睨みつけた。
「……ホントに何言ってんの? ……秋原雪花。あんたの場合はマジ今更」
「うん、ちょっとねー。もう貴女たちの執政じゃあ我慢できないんだよねー。欲しい服も、素材だって買えない」
「……」
しばらく雪花と睨み合っていたが……。
「ーーおいNo.12。アタシに用があんだろ? コイツら」
「あっ……」
建物からNo.4が出てきた。
「貴女に会いたかったの」
「……えーっっと。名前、白鳥歌野だっけ?」
「覚えてくれてたのねっ」
「アタシら防人に上等カマしてくれた奴だからなァ」
No.4は歌野たちの前に立つ。
「……で? さっきの会話は聞いてたけど、一応尋ねようか。……ここへ何しにきた?」
「貴女を倒しにきたっ!」
「同じくっ!」
歌野と雪花は迷いなくそう告げた。
「え、ええ⁉︎ ま、まず話し合いじゃあ……」
「みーちゃん、改めて会ってわかったわっ。話し合いしても解決しないと思う。だから倒すっ」
「……ギャアーッギャッギャッギャッ‼︎ 遠慮なく言ってくれるねぇ? 確かにその通りだよ。おおかた、この旭川市でのアタシの振る舞いをやめろってことだろ?」
「ええ、その通り」
No.4は歌野たちに背を向け歩き出す。
「ついてきな。とっておきの場所に案内してやるよ」
No.4は防人専用の戦闘服に着替えて歌野たちを案内する。
……連れられてきた場所は大きめの広場だった。
そこに別の防人、No.29が土を慣らしている。
「えっ⁉︎ ど、どうしてあなたたちが⁉︎」
「No.29。コイツらはお客さんだ。ここで相手してやるから手入れはやめていいぞ」
「は、はい……」
No.29は道具を片付けに行く。
「……ここはな。アタシたちが鍛錬している場所さ。あと、文句がある奴を黙らせる場でもある」
「……ってことは戦ってくれるんだ」
「そうさ。ここでアタシと戦って勝てば、おまえらの要件を叶えてやる。……欲しいものがあるなら勝って手に入れろ。どうだ? わかりやすいだろ?」
「そうだね」
歌野と雪花はその広場に足を踏み入れる。
No.4は頭にかけてあったバイザーを目に装着して準備完了の合図を出した。
「……ちっ」
「……?」
一瞬、雪花から舌打ちが聞こえた気がした……。
「……ああそうだ。最初に聞いておきたいんだが、進化体バーテックスの天秤座、倒したのか?」
「うん。じゃないと、ここで貴女に勝ったって住民の人は安心できない」
「……そうかよ」
「ねぇ、こっちからもいい?」
雪花はNo.4に天秤座を生かしておいた理由を尋ねる。
「貴女が天秤座を倒さないでいたのは、旭川市の人たちへの抑止力に使うため?」
その問いに、少し時間をおいて答えた。
「……ああ。連中がアタシのやり方に不満を持ってくるだろうってのは最初の時点で予想できてた。だから進化体バーテックスを生かしてた。そのおかげでアイツらはアタシを排除するかどうか悩んでたよ。まぁ、わかってて執政してたんだけどな」
「……そう。ありがとね、答えてくれて」
そう言って雪花は槍を出現させ構えた。
「おかげで私は、貴女を躊躇いもなくやっつけられそうだよ」
「……フン。じゃあ始めようか。そっちは三人がかりでいいぜ。戦うのはアタシひとりだ」
「戦うのは私と雪花ちゃん、二人よっ」
「うたのん……」
歌野は水都の肩に手を置く。
「見ててね。頑張ってくるから」
「う、うん」
(ああ、私はいつも見てばかりで何もできないんだなぁ……)
水都を残して歌野はベルトを出現させ構える。
それを見てNo.4は軽く驚いた。
「……! おまえ、勇者だったのか……」
「言ってなかったっけ?」
「あの時はハッタリだと思ってたよ。勇者っていう雰囲気は全然なかったし、銃を突き付けられても微動だにしなかったしな」
「能ある鷹はなんとやらって言うわよ?」
「……なるほどなぁ。おもしれェ」
(……いや、あの時は歌野ちゃんがお肉食べて能力使えなかったからなんだけどねー)
雪花は心の中で微笑していた。
「……んじゃあ開始といこうや! 最初は軽く小手調べでーー」
「ムチムチのぉ〜〜〜」
「ーーいくから……って、え?」
「
何か喋っている最中だったNo.4に歌野からの先制攻撃が決まった。
「ふぐぅあ‼︎」
顔面に直撃して後方に吹っ飛ばされる。
「ウソ……。あの人が吹っ飛ばされるところなんて久しぶりに見た。っていうより人間相手じゃ初めてだよ」
「いや、今のは不意打ちでしょ? それにまだ
広場の外にいるNo.29とNo.12は目の前の光景に軽く衝撃を受けていた。
「……いってて。やりやがったなァ?」
「あれ? 開始の合図はしたよね」
「ーーッ⁉︎」
起き上がったNo.4へ、今度は雪花が槍を突き出した。間一髪でその攻撃を避けたが、雪花の後ろから歌野が畳み掛ける。
「ワンモア、ムチムチのぉぉ
「ぐっふぅ!」
左頬をベルトで殴られ、またしても吹っ飛んだ。
No.4は起き上がると、二人との距離を遠くとった。
「……ふぅ。突然とはいえ、顔面を二度もぶたれるとはなァ。こちとら親にだってぶたれたことねぇのによォ‼︎」
スプリットステップを踏んで、一気に二人との距離を詰めた。
「ーーまぁ、アタシの親はバケモノに喰われたからもういねぇけどっ‼︎」
右手で雪花に殴りかかり、その後に右足で歌野へ蹴りを入れる。
しかし、二人はその攻撃を見事に避けた。
「それはご愁傷様ぁ‼︎」
拳を避けながら槍の穂先を突き出す。
そのカウンターをNo.4は背中に受け、切り傷が入った。
「ーーっってェ!」
「こっちもいくよ。ムチムチの
続いて歌野がベルトを薙ぎ払い、No.4の腹部を命中させた。
またしても地面に倒れ込んだ。
「……」
No.4は地面に背をつけて空を仰ぎ見ていた。
……ここまでは歌野と雪花によるワンサイドゲームに見えた。
「いやぁ、楽しくなってきたなァ……」
「……?」
「秋原雪花ァ。おまえやればできんじゃねぇか。それによ、白鳥歌野。安心したぜ。ちゃんと
仰向けからネックスプリングで起き上がった。
「いいなっ、おまえら。
「「
「当然、戦うのは初めてだから、お互い何の能力者かわかんねぇよなぁ」
「「……」」
「ーー今見せてやるよ」
ーーその時、ガチャ……とNo.4の体から歯車が噛み合ったような音が聞こえた。
「……いくぜ。
膝を曲げて腰を低くした。
「来るよ歌野ちゃん」
「ーーッ⁉︎」
雪花の言葉が言い終わる頃にはNo.4は歌野の目の前に接近していた。
「オラァ!」
「ーーッ⁉︎」
腰を低くした体勢から歌野に向かって右手で掌打を繰り出す。
それを歌野はベルトの両端を掴んで盾がわりにした。
「いい反応だァ!」
「くっ。……ああっ‼︎」
掌打を防いだが、仰け反って体勢を崩した歌野に回し蹴りを浴びせた。
「歌野ちゃーー」
「次はおまえだよ!」
両手両足を使い、雪花へ連撃を食らわせる。
「っ! ……っ‼︎」
雪花も槍で応戦していたが、止まることのないラッシュ攻撃を捌ききれなくなってきた。
「ーーぉらよォ‼︎」
「うあっっ‼︎」
ついには、蹴りを入れられ吹っ飛ばされる。
「ムチムチの……」
「……‼︎」
そこへ、すぐさま歌野が反撃する。
「
No.4は両腕をクロスして防御体勢をとった。
彼女自体に大したダメージは入っていないようだが、何度も何度も攻撃を受け続け、No.4は徐々に後ずさる。
「ハァ……ハァ……」
「くぅ……痛かったなぁ」
「……へへへ」
雪花は立ち上がり、三人は睨み合っている。
「……あ?」
すると、No.4の腕や太ももに僅かな切り傷が入っており、血が滲んでいるのがわかった。
「へぇ。おまえの槍とかち合ってたときに切られてたのか……。あと、ビシバシ叩かれたのも、か」
「武器もなしに戦うからそうなるんだよ」
「武器ならあるさ。アタシの体そのものがな」
No.4は親指を胸に向ける。
「……雪花ちゃん、彼女の能力って?」
「私も知らないの。お互いに、戦っていたところを見たこともないから。多分、向こうも私たちの能力を知らないし」
「ん? アタシの能力が気になるなら教えてやるぜ?」
「「……!」」
「わかったところで、って感じだからな」
ガチャ……。
すると、またNo.4の体から歯車が噛み合うような音がした。
「アタシはな。ギアギアの野菜を食べたギア人間さ。戦闘中に体のギアを上げることでスピードとパワーを上昇させるんだ」
「ギアギアの野菜?」
「敵に能力を明かすなんて、余裕だね……」
「わかったところで、って言ったろ?」
タッタッタ……。
No.4はその場で小刻みにジャンプしている。
「でもま、よくやるよなぁ。おまえは北海道の住民じゃねぇんだろ?」
その状態のまま歌野を指差す。
「ええ、違うわ」
「どうして、よそ者のおまえが首を突っ込む? しゃしゃり出る必要性あんのか?」
「友達が困ってるから‼︎」
歌野は即答で言い放った。
「だから私は貴女を倒す。……ムチムチの野菜の能力者。勇者、白鳥歌野が!」
「歌野ちゃん……」
「へぇ。おまえはそんなの食ったのかっ。聞いたことないがピッタリじゃねぇか。"無知無知"の野菜なんてよっ」
「無知じゃなくて鞭ッ‼︎」
歌野はNo.4へ突っ込む。
「ムチムチの〜〜」
「ーー待って歌野ちゃん‼︎ 敵の挑発だよ‼︎」
「
No.4に向かって繰り出した一撃は……。
「ーーアタシの能力は戦闘中に強さを増す。きっかけは体内のギアが噛み合うことでな」
「……え」
左手だけでベルトの先端を掴んで防がれた……。
「聞こえなかったか? アタシはこの戦闘中にギアを合計二回上げた。つまり今ーー」
No.4は思いっき掴んでいたベルトを引っ張って歌野を無理やり引き寄せた。
「
引き寄せた歌野に右手を拳にしてボディブローを食らわせた。
「ーーッ。がはァア‼︎」
歌野は吐血して地面に倒れる。
「それに、アタシは
一瞬にして、雪花の懐に飛び込んでいた。
「ッ⁉︎」
雪花がそれに気付く頃には、No.4のパンチが雪花の顎を捉えていた。
「ぐッ……」
アッパーカットを決められて雪花もまた、仰向けで地面に倒れ込んだ。
「うたのん⁉︎ 雪花ちゃん⁉︎」
外から見ていた水都に関しては、何が起こったのか分からなかった。
いや、彼女だけでなく、No.29とNo.12も同様だった。
「……ねぇ、今の見えた?」
「見えるわけないよ。
No.4は地面に横たわった二人を見て嘲笑する。
「
未だ起き上がれない歌野の胸ぐらを掴んで引き上げた。
「……っ」
「でもな。
「うあっ」
持ち上げていた歌野を雪花が倒れているところまで投げ飛ばした。
「……けどよくやった方だぜ。アイツらは
外の二人を横目で見ながら言う。
「だが、おまえらでこれなら三大将相手にも
「……三、大将?」
「あん? 三大将を知らねぇのか? 上等カマした相手の組織図ぐらい把握しておけよ」
すでに勝った気でいるのか、悠長に説明し始めた。
「三大将ってのは、今の防人をまとめてる奴らの総称さ。そいつらは前に、No.1であり唯一、本名を名乗れた"楠芽吹"の直属の部下たちだ。そしてその三人が防人の組織を一部改革していった。その改革の一つとして三人は名前を名乗れる
ーーその瞬間、歌野がベルトを振るい攻撃を仕掛けたがNo.4はいとも容易くそれを避けた。
「貴女は……、その人たちを超えるのが夢、なの……?」
「夢ェ?」
その単語に、No.4は間抜けな顔をして見せた。
「……ぷ、くくくっ」
そして盛大に笑い出した。
「ギャーーッギャッギャッギャッ‼︎ 夢なんか誰が見るかよ! 単にその三人の下に居続けるのが嫌なだけさ。そんなかに、最下位がいるしよ……って、ああそうだ。確か、No.2はそれが不満で防人やめたって聞いたな」
「……さっきからベラベラ喋っちゃってからに……」
雪花はふらつきながらも槍を地面に刺して立ち上がった。
ーーしかし、すかさずNo.4に詰め寄られ、頭を鷲掴みにされて地面に押さえつけられる。
「……このクソみたいな世界の中で、夢を見るやつが一体どこにいるってーー」
「ーー私、よッッ‼︎」
歌野は立ち上がりながら叫ぶ。
「私はぁ‼︎ 四国に行って農業王になるッ‼︎ それが私の夢‼︎」
……外の二人は歌野の言っていることを理解できず口を開けていた。
「今、なんて……?」
「……は? 四国に行くって言った?」
すると、No.4はまた大声で腹を抱えて笑い出した。
「ギャアーーッギャッギャッギャッ‼︎ ギャッギャッギャ‼︎ 笑わせること言うなよなっ。……ったく、四国に行くなんざ、冗談でも言わねーよ。ホントに今日はよく笑ったぜ」
「私は本気よ‼︎」
「……おい、冗談で済ましてやってんだァ……。いい加減口閉じろ」
「ーーうっ」
歌野の喉輪に手をかけ、そのまま手に力を入れ始めた。
「っ。ぐぐぐっ!」
「ーーうたのん‼︎」
「よく防人に向かって四国へ行くなんざ言えるよなァ? アア⁉︎」
歌野を地面に倒してその頭を足で踏んづけた。
「いたっーー」
「なぁにが夢は、農業王だァ? 四国へ行くだァ? ……ニンゲンがぁもうとっくに夢見る時代は終わってんだよ‼︎
ぐりぐり、と歌野の頭を踏み躙って高笑いをあげた。
「おまえらもそう思うだろ? なぁ、No.12! No.29!」
「ホントだよねぇ。キャッハハハ! 私だって行けれないしぃ、あの七武勇だって阻まれ続けてるんだからっ」
「……え、えっと」
すぐ賛同して笑っているNo.12と違い、No.29は応えを窮していた。
「……なァ? そう思うよな? 笑えるよな? No.29……」
「は、はい。は、ははは……」
ギロッと睨む眼光に臆してNo.29は迎合してしまう。
「……ってわけだ。ノーギョーオーなんて暇なマネは自分家でやりな。なんなら
と、その時No.4の頭に小石が当たった。
「あいてっ……。あぁ?」
投げてきた方向を向くと……。
「み、みーちゃん?」
「……水都ちゃん?」
いつのまにか、広場内に入ってきた水都の姿があった。
「……なんだよ?」
「う……」
水都は小刻みに震えている声を堪えながらも意を決した。
「うたのんに、謝れッ!!!」
No.4(※女です):憑依型勇者の野菜、ギアギアの野菜の能力者。戦闘中にギアを上げることでスピードとパワーが増す。一速から二速、三速...とある。(MT車みたいだ)
ゴム人間のギア2とはまた違う。
ちなみに本人は使ったことないが
次回 幻想の揺籠